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アメリカでの子供の予防接種

■総論

アメリカの予防接種は日本のものと種類や回数で違いがあります。1年以上の滞在を予定しているなら、やはりアメリカのやり方にあわせた方がよいでしょう。特に、小学校や幼稚園の入学の歳に一定の予防接種が済んでいることを求められることもあります。1年未満の滞在であれば、日本の予防接種に合った形で予防接種をお願いすることもできます。 また、アメリカでは、一度に複数の注射を行うことが一般的です。これも、一度に一種類の注射しかしない日本とは好対照ですが、郷に入っては郷に従えです。

アメリカでの予防接種はアメリカ小児科学会(American Academy of Pediatrics)および CDC(Centers for Disease Control and Prevention,疾病管理予防センター)の勧告に基づいて行われていいます。http://www.cdc.gov/nip/http://www.cispimmunize.org/で最新版を見ることが出来ますので、一度ご覧になって下さい。

■各論

2005年度版の予防接種勧告に基づいて説明します。

各ワクチンについては、親向けの分かりやすいパンフレット(英語)が疾病管理予防センター(Centers for Disease Control and Prevention)のhttp://www.cdc.gov/nip/publications/VIS/default.htmにPDFファイルとしておいてあります。また、最新のものではありませんが、第3者機関がこれらのパンフレットの一部の日本語訳を作っています(http://www.immunize.org/vis/#japanese)。

 

●B型肝炎ワクチン(Hepatitis B vacicine, HepB)
(ワクチン解説パンフレットのPDFファイル英語版日本語版

日本では医療従事者や母親がB型肝炎の子供など特定の人にしか予防接種を行いませんが、アメリカでは原則的に全員に予防接種が行われています。

母親がHBs-Ag陽性でなければ、生直後から2ヶ月に1回目、1回目から1ヶ月以上あけて4ヶ月までに2回目、6-18ヶ月に3回目の計3回接種します。母親がHBs-Ag陽性の場合は生後12時間以内に1回目のワクチンと抗HBs人免疫グロブリンを投与し、1-2ヶ月に2回目、4ヶ月以降に3回目を行います。

また、このスケジュールで接種していない子供(1歳以降になって日本から来た場合など)は、年齢によらず3回の接種(2回目は1回目から4週間以上あけて、3回目は2回目から8週間以上あけて)を受けることを勧められます。

日本では、母親がB型肝炎の感染者でない限り、子供への予防接種は行いません。

 

●ジフテリア、破傷風、百日咳ワクチン(Diphtheria, Tetanus, and Pertussis vaccine)
(ワクチン解説パンフレットのPDFファイル英語版日本語版

以前使われていたDTP (diphtheria, tetanus toxoids, and pertussis vaccine)に代わって、より副作用の少ないDTaP (diphtheria, tetanus toxoids, and acellular pertussis vaccine) が用いられています。

接種は、通常2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、15-18ヶ月、4-6歳の5回行われます。また、ジフテリアと破傷風に関しては、さらに11-12歳の時に1回とその後10年ごとに追加免疫することが勧められています。

日本では、I期として生後3ヶ月以上12ヶ月未満の間にDTaPを接種3回、初回接種終了後12ヶ月以上18ヶ月未満の間にDTaPの追加接種を1回行います。またII期として11歳時にジフテリアと破傷風に関してのみDTトキソイドの追加接種を行っています。

 

●インフルエンザ桿菌タイプBワクチン(Haemophilus Influenzae type b vaccine)
(ワクチン解説パンフレットのPDFファイル英語版日本語版

インフルエンザ桿菌タイプB(Hib)は5歳以下の子供に髄膜炎などを起こす細菌です。いわゆる風邪の一種のインフルエンザウイルスとはまったく別物ですからご注意下さい。

接種は2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、12-15ヶ月の4回行います。ワクチンの種類によっては6ヶ月目の接種をしないで済むものもあります。

日本ではHibの予防接種は行っていません。

 

●ポリオワクチン(Polio vaccine)
(ワクチン解説パンフレットのPDFファイル英語版日本語版

ポリオワクチンには経口タイプのOPVと注射タイプのIPVがあります。OPVは生ワクチンなので、免疫をつける力が強いのですが、まれに(240万人に1人の割合)で実際にポリオにかかる子供がいます。また、糞便中にポリオが排泄されるので、予防接種を受けていない子供がポリオになるケースがごくまれにあります。2000年よりアメリカでは経口ワクチンは原則として使わなくなりました。

接種はIPVを2ヶ月、4ヶ月、6-18ヶ月、4-6歳の4回行います。

日本では標準として生後3ヶ月以上18ヶ月未満にOPVを2回接種しています。

 

●麻疹、おたふくかぜ、風疹ワクチン(Measles, Mumps, and Rubella vaccine, MMR)
(ワクチン解説パンフレットのPDFファイル英語版日本語版

麻疹(Measles)、おたふくかぜ(Mumps、流行性耳下腺炎)、風疹(Rubella or German Measles)に対する予防接種です。個々のワクチンもありますが、MMRとして3種類の混合ワクチンとして接種されることが一般的です。

接種は12-15ヶ月と、4-6歳の2回行われます。12-15ヶ月にワクチン接種した場合、免疫が途中で消えてしまうことが多いので、2回接種となっています。

日本ではMMR混合ワクチンは現在使われておらず、個別ワクチンであり、、麻疹ワクチンは12〜15ヶ月に1回、風疹ワクチンは12〜36ヶ月に1回接種することになっています。しかし、平成18年4月以降は、麻疹・風疹混合ワクチンとして、12〜24ヶ月と、5〜7歳の2回に接種することが決まっています。なお、日本ではおたふくかぜ生ワクチンによる無菌性髄膜炎の問題があって以降、MMR混合ワクチンは使用されておらず、おたふくかぜワクチンの接種自体も、任意接種となっています。

 

●肺炎球菌ワクチン(Pneumococcal Conjugate Vaccine)
(ワクチン解説パンフレットのPDFファイル英語版日本語版

肺炎球菌は髄膜炎、中耳炎などの感染症をおこします。最近、肺炎球菌ワクチンが2歳以下の子供の予防接種としてアメリカ小児科学会の予防接種スケジュールに加えられました。

スタンダードの接種スケジュールとしては、2ヶ月、4ヶ月、6ヶ月、12-15ヶ月時の計4回の接種になります。ただし、使用するVacicineの種類によっては接種回数が少なくても済む場合があります。

2歳以上の子どもでもDay Careに通う場合には接種を受けることが勧められています。

日本では米国で小児向けに使われているものと異なる23価ワクチン(米国の小児向けは7価ワクチン)がハイリスクグループ(脾摘患者、脾機能不全者、鎌状赤血球症、心・呼吸器系の慢性疾患患者、免疫抑制を受けている者)を対象に接種可能ですが、小児向けのワクチンは認可されていません。(2005.10.3に読者の方の指摘で訂正しました)

 

●水疱瘡ワクチン(Chickenpox or Varicella vaccine)
(ワクチン解説パンフレットのPDFファイル英語版日本語版

12-18ヶ月に1回接種されます。接種を受けていない13歳以上の子供と大人は4-8週間の間隔を置いて2回接種します。

日本では任意接種となっています。

 

●A型肝炎ワクチン(Hepatitis A vacicine, HepA)
(ワクチン解説パンフレットのPDFファイル英語版日本語版

アメリカでも一般的ではありませんが、特定の地域では接種が奨励されています。6ヶ月おいて2回接種します。日本では東南アジアなどへの海外渡航する人にのみ接種されています。

 

●日本独自の予防接種

アメリカでは行われておらず、日本独自のものは日本脳炎ウイルスとBCGです。

日本脳炎ウイルスワクチンは第I期として生後6ヶ月から90ヶ月の間に、初回接種2回(標準として3歳)、1年後に追加接種1回(標準として4歳)、第II期として9歳以上13歳未満に(標準として9歳)1回、第III期として14歳以上16歳未満に(標準として14歳)1回おこないます。しかし、2005年に日本脳炎ウイルスとADEM発症の因果関係が疑われたため、現在、接種は中止されています。

BCGは生後0日以上6月未満に1回接種します。その際、ツ反はおこないません。

■標準的な予防接種スケジュール

2ヶ月 B型肝炎、DTaP、インフルエンザ桿菌タイプB、ポリオ、肺炎球菌
4ヶ月 B型肝炎、DTaP、インフルエンザ桿菌タイプB、ポリオ、肺炎球菌
6ヶ月 DTaP、インフルエンザ桿菌タイプB、肺炎球菌
1歳 B型肝炎、インフルエンザ桿菌タイプB、MMR、肺炎球菌、水疱瘡
1歳半 DTaP、ポリオ
4歳 DTaP、ポリオ、MMR

(注)CDC勧告のスケジュールに基づいています。

(注)使用するワクチンによってはここに示したものと回数が異なることがあります。

■参考文献


4ヶ月時

子供が渡米した時期が3ヶ月半だったので、日本では何も予防接種を受けずに渡米しました。

アメリカではまずprimaryの小児科医を決めなければいけません。Belluvueまで行くと、日本人医師もいるのですが、夜中に子供が熱を出したときなどのことを考えると、近くの方がいいと思い、VIRGINIA MASON Sand Point Pediatricsにかかることにしました。ここは無料で日本語の通訳を付けてもらうことができます。

9月末に予約を取りに行きましたが、希望する先生の予約が取れたのは10月27日でした。無料ということなので日本語の通訳もお願いすることにしました。

当日診療所に行くと、通訳の方が待っていてくれました。保険証を出して、簡単な書類を記入して、診察室に入ります。ドクターの助手(看護婦?)が身長体重などを量ってくれました。ドクターの診察は簡単なものでしたが、こちらから希望すれば何でもやってくれました。今後のcheck-upのスケジュールや予防接種のスケジュールを話して診察は終わりです。予防接種はDTaPとHibとIPVの3種類でした。B型肝炎についてはワクチンにトラブルがあったようで、新しいロットができるまでは見合わせているとのことでした。熱冷ましのTylenolをくれ、あらかじめそれを飲ませた上で、3本の注射を両太股にしました。注射をした時は少し泣きましたが、すぐに泣きやんでくれました。

6ヶ月時

12月28日に2回目の予防接種を受けました。接種したのは1回目と同じで、DTaPとHibとIPVの3種類でした。B型肝炎のワクチンも新しいロットが入ったので、どうするかと聞かれましたが、とりあえず見合わせました。B型肝炎は麻疹や風疹などと違い、患者と一緒にいただけではうつらない病気ですから(血液感染のみです)、日本では家族にB型肝炎の患者がいるか、血液汚染を受ける可能性のある職種の人(つまり医療従事者)にしかワクチン接種を行っていません。しかし、アメリカの小学校や幼稚園ではB型肝炎ワクチン接種を済ませていることを入学の条件にしているところも多いようです。なぜ、B型肝炎ワクチンの接種を条件にしているのか、よくわかりませんが、とりあえず、うちの子供は幼稚園に入れる予定もないので、とりあえず見合わせることにしました。

2回目の時もTylenolを飲ませてから、注射を行いましたが、次の日37度前後の軽い発熱がありました。

9ヶ月時

3月7日は3回目のDTaPのみでした。

1歳時

満1歳の検診の際はいったい何本打たれるのだろうと思っていましたが、MMRとHibとChickenPoxの3本でした。注射する際に、MMRは生ワクチンなので、10-14日後に発熱や発疹が出ることがあること、ChickenPoxを打ったところに2週間後くらいに水疱が出ることがあるが、これは感染性があるので、発疹が出た場合は長袖を着て他の人に触れないようにすることを説明されました。ワクチン接種後10日目に38度の熱が出て、その後、体に発疹が出ましたが、3日後に消えました。

1歳半時

1歳半の検診の際にはDTaP、ポリオのワクチン接種を受けました。担当の先生から、「新しく肺炎球菌のワクチンがスタンダードの予防接種に加えられたが、受けるか?」と聞かれました。2歳以下の子どもが受けるべきだということと、値段が結構高い($100ほど)だったので、受けないことにしました。

2歳時

2歳の検診の際は、通常だとワクチン接種はないのですが、将来Day Careに預けることを考えている上に、新しく大学の保険に加入したので予防接種の費用がかからなくなった(AIUの保険では予防接種はカバーされないが、大学の保険では100%カバーされる)ので、今まで受け損ねていた予防接種を受けることにしました。B型肝炎ワクチンは日本では医療職の人ぐらいしか受けませんが、アメリカではすべての子どもが受けることになっています。特に、Day Careに預ける場合などは接種を済ませていることが要求されることがほとんどです。というわけで、今回はB型肝炎と肺炎球菌のワクチンを受けてきました。

更新記録

●2000年2月1日:新規掲載
●2000年6月26日:作者の場合を更新
●2000年11月12日:A型肝炎の記載を追加
●2001年6月2日:肺炎球菌ワクチンの追加、経口ポリオの中止など全面的に情報を最新のものに更新するとともに、作者の場合に2歳時の箇所を追加

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