■概要
ノースカスケード国立公園はシアトル周辺の3つの国立公園の中ではややマイナーな印象がありますが、ノースカスケード国立公園を含むカスケードループはAmerican
geographic Traveler's誌に「One of America's grandest, most spectacular
drives」といわせしめたすばらしいドライブコースです。全長400マイルの行程の中で、Puget Sound、カスケード山脈の山々、そして砂漠まで見ることが出来ます。
参考サイト http://www.cascadeloop.com/
→カスケードループマップ
→セントラルワシントンマップ
2001年8月にカスケードループへ旅行に行きましたので、そのときの様子を紹介したいと思います。なお、一般的にはカスケードループを反時計回りに回るのが定番のようですが、今回は逆回りに回ってみました。また、時計の2時から5時に当たる部分については通常のカスケードループを離れ、セントラルワシントンにまで足を延ばしました。そのため、レイク・シェランなどの見所は見逃しています。また、Puget
Sound沿いの部分(8時から10時に当たる部分)もカスケードループに含まれるようですが、そこも今回はパスしています。
■第1日目
George湖
Rainy Pass
Washington Pass展望台より見た山々
Methow Valleyでは準砂漠地帯の景色が続く
西部劇そのもののWithropの町並み
Sun Mountain Lodge
Sun Mountain Lodgeから見た夕焼け
8月の初め頃からアメリカ西部ではあちこちで山火事が起こっています。ワシントン州でもちょうどカスケードループの東端に当たる場所で10箇所近く山火事が起こっていました。出発の2日前になって、2日目の宿を取っていたLeavenworth近くの山火事が拡大して、町の中には煙が立ちこめているというニュースが流れました。心配になって、宿に電話をしてみると「町中は平常通りの営業です」とのことで、とりあえず、出発することにしました。
当日は9時にシアトルの我が家を出発。I-5を1時間ほど北上してBurlingtonの町で20号線に入りました。20号線は片道1車線の一般道ですが、制限速度はだいたい60マイル時で快適なドライブが楽しめます。山岳ドライブといっても日本のように神経を使うようなカーブはほとんどなく、実に快適です。
Concrete、Marblemountという小さな町を過ぎ、1時間半ほどで1番目の見所、Diablo湖、Ross湖があります。わたくしたちは、その2つの湖の手前にあるGeorge湖はゆっくりみたのですが、なんとDiablo湖とRoss湖が一緒にみられる展望台は止まり損ねて見逃してしまいました。それらしき展望台はあったのですが、人もいなかったのでまさかそこがそうだとは思いませんでした。本当はそこからはteal色(緑がかった青)のDiablo湖とJade(ヒスイ)色のRoss湖が見えるそうです。ちなみに、Diabloの発電所には見学ツアーというのもあるそうです。
気づいてみれば、いつのまにかノースカスケード国立公園は終わっていて、いったいどこが国立公園なのかわかりませんでした。たしかに、これではガイドブックなどもこの国立公園をあまり扱っていないのがわかります。
30分ほど進むとRainy Pass、そしてWashington Passがあります。Washington
Passの見晴台(Overlook)は20号線から少し入ったところにありますが、ここからの眺めはダイナミックです。見晴台は崖っぷちに作られていて、足下はるか下に20号線が走っているのが見えます。
Washinton Passを越えてMethow
Valleyに入るとあたりの様子が変わってきます。深い緑の森はまったくみられなくなり、準砂漠のような景色になってきます。窓を開けると湿度が低く、無茶苦茶暑いです。35度くらいはあるかも。これにサボテンがあって、カウボーイが出てくれば、間違いなく西部劇の世界なのですが、残念ながら、サボテンもカウボーイも出てきません。
しかし、Washington Passから1時間ほどもドライブすると西部劇そのもののような町Winthropに着きます。
40店舗くらいの店がすべて西部風の作りになっています1890年代に入植者がやってきたころを真似して作られたそうです。町中には無料の馬車も走っています。うちの息子は馬車に乗れて大喜びしていました。
今日の宿はSun
Mountain Lodge。こんなへんぴな場所にありながら、非常に高い評価を受けるリゾートホテルです。私はてっきりWinthropの町中にあるのかと思ったのですが、実際はLodge専用みたいな一本道をひたすら10マイルほど登った小高い丘の上にありました。
Sun Mountain Lodgeにはプール、ホットタブ、スパ、テニスコートや乗馬などの施設が充実しています。lodgeのまわりにはハイキング用のトレイルも完備していますが、これらもすべてこのLodgeの広大な敷地(2000エーカー)なのだそうです。
部屋のインテリアもとてもおしゃれで感心しました。私達はスタンダードルームに泊まりましたが、1泊160ドル。スポンサー付きでないとちょっと考えてしまいますね。
また、このlodgeから見た夕焼けは抜群でした。食事の方もアメリカにしては量が少なく、きれいな盛りつけがされたものでした。個々の料理はトリプルAのフォー・ダイアモンド賞を受賞したこともあるそうです。
なお、Sun Mountain LodgeにはCottageもありますが、Lodgeから2マイルほど離れていて、Sun Mountain
Lodgeの良さが味わえないような気がしました。
■第2日目
荒涼とした砂漠の光景。360度地平線が見えた。
Crown Point展望台より眺める
Steamboat Rock
Grand Coulee Canyon
Dry Falls
Dry Fallsに水が流れていた頃の想像図
2日目の夜に止まったBestwestern Icicle Inn
Cascade loopの本来のコースだと2日目の宿のLeavenworthまでは97号線を通って、レイクシェランなどに立ち寄りながら進むのですが、それだと3時間程度のドライブで面白味がないので、大きく東に進路を取って、Grand
Coulee Dam、Grand Coulee Canyon、Dry Fallsを見ることにしました。実は、私自身はカスケードループよりこちらの方を楽しみにしていました。
Winthropから20号線、153号線を南下し、Brewsterからは進路を東に取り、コロンビア川沿いを走ります。このあたりから川の両側には崖が切り立っていて峡谷のようになってきます。コロンビア川を離れ、17号線に入ったあたりから再び準砂漠の光景が続き、174号線に入ってからは360度地平線が見えるような荒涼とした景色が広がります。
そうした荒涼とした景色の中に忽然と巨大なGrand
Coulee Damが現れます。Grand Coulee Damは8年の歳月をかけて1933年に完成した世界でもっとも大きなコンクリート建造物です。Grand
Coulee Damは35,000メガワットというアメリカ最大の発電量を誇る水力発電施設であるとともに、乾燥したワシントン州東部への水の供給源としての役割を果たしています。夏の夜にはダムの壁面を使ったレーザーライトライトショーもあります。
155号線をCoulee Cityにむけて南下すると、ここが、今回最大の見所のGrand Coulee Canyonです。まさしくミニグランドキャニオンといった風景で、険しい崖に挟まれた峡谷にはGrand
Coulee Damから引き上げられた水をたたえたBanks Lakeが対照的です。Steamboat
Rock(その名の通り蒸気船のような形です)をはじめとしたダイナミックな景色が広がります。今回の一番のお目当ての場所でしたが、その期待を裏切らないすばらしい景色でした。
Coulee Cityから2号線に入り、17号線へ左折してすぐのところにあるのがDry Fallsです。Dry Fallsはその名の通り、現在では水が流れていませんが、その昔は3.5マイルにわたって400
feetの落差のある巨大な滝だったそうです。ちなみに、ナイアガラの滝は幅1マイル、落差165 feetです。
Dry Fallsの成り立ちはかなりおもしろいので、ちょっと聞きかじりを披露します。
氷河期にGlaicier Lake Missoulaという氷河湖(氷河がダムの役割を果たしている湖)があり、今から1万5千〜2万年前の氷河時代末期に、この氷河が溶けてSpokane
floodという大洪水を引き起こしました。洪水は3000平方マイルに及び、西部ワシントン州からオレゴン州にまでおよびました。その際に、大地に残した大きな爪痕がDry
FallsからSoap Lakeに及ぶ地形です。
なんか今回の旅行は「生きた地理の勉強」といった感じですね。時間があれば、さらに17号線を南下してSoap Lake(その名のごとく石鹸のように白いらしい)などを回るのもいいかも知れません。
Grand Coulee Canyon、Dry Fallsを見てすっかり満足し、このあと、今晩の宿のあるLeavenworthを目指しました。念のためDry
FallsのVisitor CenterでLevenworthまでの道について聞いてみると「Leavenworthは火事のため閉鎖されている」とのこと。まさかと思い、宿に電話をしてみると、多少smokeはあるが大丈夫とのことでした。ほっとして、2号線を西に進む。
再び雄大な景色が広がりましたが、174号線で見た準砂漠の風景とは違って、一面の麦畑でした。。コロンビア川にぶつかるまでの約50マイルはひたすら何もなく、1980年代のポップス(懐メロと言った方がいいか)をかけながら、夫婦で大声で歌いながら楽しみました。
コロンビア川にぶつかると急にリンゴ畑が増え、まもなく、リンゴの産地としても有名なWenatcheeです。ここからは、2号線もhighwayといった趣になり、30分弱でLevenworthに到着。車から降りると、たしかに焦げ臭いにおいがしていて、空にはもやがかかっていました。
夜はLeavenworthのKing
Ludwig's German Restaurantというレストランでドイツ料理とビールを楽しみました。宿の一日市押しのドイツ料理と言うこともありたしかにおいしかったです。Bestwestern
Icicle Inn泊。
■第3日目
Leavenworth
山火事による煙で、もやがかかっています。
Leavenworthの町中にいたヤギ
LeavenworthはもともとはGolden
Rushで栄えたあとゴーストタウンと化していた街並みを、町おこしで南ドイツ風の街並みに変えて、見事に観光地になった町です。現在では年間1万人の観光客が訪れるほどになっています。町にはドイツの民族衣装を着た人が歩いていたり、きれいな花が飾られたりで特に女性には人気があるようです。クリスマスの時期は町全体がデコレーションされ、とてもきれいだそうです。ただ、4ブロックほどの小さなエリアに店やレストランが集中していますので、あまり大きな期待をしていると期待を裏切られます。
私はもっぱらドイツ料理とビールに興味があったのですが、すべてのレストランがドイツ料理のレストランではありませんので気をつけてください。ビールはLeavenworth独特のもののようで、結構おいしかったです。
Leavenworthにはたくさんのモーテルやロッジがありますが、夏場の観光シーズンには早い時期から予約が埋まってしまうようです。1日目の夜にSun
Mountain Lodgeで会った人の話によると、山火事の影響でたくさんの消防士がモーテルに泊まっていて、どこの宿もいっぱいだったそうです。私達は2ヶ月ほど前に予約していたので大丈夫でした。
ついでに、山火事の話をしておきましょう。新聞などではあたかもLeavenworthにまで火の手が及んでいるような書き方をしていましたが、消防士の方たちの懸命の努力のおかげで、Leavenworthの町中や2号線からは火の手が見えるということはありませんでした。しかし、空には常にもやがかかり、煙の臭いがしていました。また、町のあちこちで消防車を見かけました。実は、Leavenworthはたびたび山火事に襲われているらしく、1994年は大火事になり、Leavenworthの町にもかなりの被害が出たようです。
3日目は、ゆっくりとLeavenworthでの買い物を楽しみ、午後3時に、Leavenworthを出発。スキー場で有名やSteven
Passを過ぎた頃から、雨に。途中、雲の中に入って視界が悪くなる箇所があったり、道幅が狭くなるところもありましたが、概ね、60マイル時で走行でき、1時間半ほどでMonroeに到着。そこからは、522号線を走りワイナリーで有名なWoodenvlleに。ちょうど夕方のラッシュアワーにさしかかったので、Bellevueを抜けずに、522号線をそのままシアトル市内まで走り、我が家へ到着。結局Leavenworthから2時間半ほどで到着しました。
■まとめ
結局、今回の旅はトータル565マイルの旅でした。カスケードループだけであれば、400マイルほどですから1泊で回ることも可能だと思います。ただ、ちょっと慌ただしい日程になると思うので、2泊ないし3泊が適当だと思います。
また、2泊以上なら、カスケードループから、Grand Coulee Canyonまで足を延ばされることをおすすめします。