3. 9. 軟部組織感染症の初期治療

3. 9. 1. 蜂窩織炎

市中感染で非複雑性(血管病変や外傷など無し)の蜂窩織炎

ポイント:

  1. 循環障害や壊死変性のないことが条件
  2. ペニシリンおよび第1世代セフェムが非常に良く効く
  3. 壊死性筋膜炎を見落とさない!(敗血症のサインがある、痛みが強いなど)⇒早急なデブリードメントが必要。見分けるポイントは上記を参照し、疑わしい場合は下の「壊死性軟部組織感染症」フローに従う。

起因菌

初期治療

Streptococcus group A
Staphylococcusaureus
Streptococcus group B

Cefazolin 1g 6時間毎
Ampicillin/sulbactum 1.5g 6時間毎
溶連菌感染であることがはっきりすれば以下がベストである:
Penicillin G+Clindamycin

3. 9. 2. 壊死性軟部組織感染症

ポイント:

  1. 必ず外科的治療(デブリードメント等)を併用する
  2. 必ず検体のグラム染色を行い、起因菌のあたりをつける⇒溶連菌なら大量ペニシリンの適応!!
  3. 起因菌の同定が困難な場合は、迷わず以下の初期治療の(1)等を選択して早急に治療を開始する

起因菌

初期治療

Streptococcus group A
Staphylococcusaureus
Streptococcus group B
 
Clostridium perfringens
複数の腸内細菌(による混合感染)

【特定の暴露を伴うもの】
Vibrio vulnificus(肝臓疾患患者に多く、牡蠣生食などの海産物や海水への暴露有)

Aeromonas hydrophila(免疫不全者に多く、淡水への曝露後に発症したもの)

起因菌不明の場合:
迷わず
ImipenemもしくはMeropenem 0.5g 6時間)で開始し早急に外科的な創部の評価⇒Debridement考慮!

Group A Streptococcusによる重症例
Penicillin G 300mU 4時間毎 もしくはAmpicillin 2g 4時間毎+Clindamycin 600mg 8時間毎

Vibrio vulnificus:Ceftazidime 1g 6時間毎+Minocycline 100mg 12時間毎
Aeromonas hydrophila:Ciprofloxacin 300mg 12時間毎

混合菌感染(腸内細菌によるものが多い)⇒培養結果に基づき抗菌薬を変更する

感染診療の手引き ©2006 Norio Ohmagari.