2020.10.01

本の紹介「電解質輸液塾第二版」

改訂版出来! たくさん刷ったので買って下さい。

電解質輸液塾第2版にあたってのご挨拶を転載します。

「電解質輸液塾」の第1版を出版したのが2013年3月。水・電解質の領域は、新しい薬がどんどん出て、ガイドラインが改定されるような領域ではないから、当分、改訂版は出さなくてもよいと思っていました。

2018年に、機会があり、水・電解質の2大教科書の一つである「Fluid, Electrolyte, and Acid-Base Physiology」を翻訳し、「ハルペリン 病態から考える電解質異常」としてメディカル・サイエンスインターナショナル社から出版させていただきました。この本は、難解であることで知られていますが、この翻訳作業を1人で行うことによって、自分の中の、水・電解質の考え方を再構成することができたと思っています。

ハルペリン翻訳後に、「電解質輸液塾」を読み直してみて気づいたのは、ハルペリンの教えを取り入れたとしても、「電解質輸液塾」は、ほとんど変更不要であるということでした。初学者どころか、腎臓専門医にも十分通用するものであり、水・電解質を学ぶには、ベストな本であるという結論に達しました(自画自賛ですいません)。

一方で、修正したり追加しなければいけないことも出てきました。Kの腎排泄の制御には、生理学で大きな進歩があったので、「尿細管でのK排泄制御の生理学(上級編)」を追加しました。初版に掲載していたTTKGは開発者のハルペリン自体が間違っていたので、もう使わないでくれと言っているので、削除しました。また、この7年間、水・電解質を学生達に教えている中で、気がついた、わかりやすい説明とかも取り入れてブラッシュアップしました。

ということで、本全体にわたってブラッシュアップしましたが、この本の本質は変わりません。改訂版と言うにはおこがましいレベルではありますが、ここに、最新の知見も入れた「電解質輸液塾改訂2版」をお届けできることをうれしく思います。

2019.10.14

本の紹介「僕は君たちに武器を配りたい」

瀧本哲史先生は、いつか「明日の教室」の講師にぜひお呼びしたい人の1人でした。しかし残念ながら今年の夏に亡くなられてしまいました。

この本は瀧本先生の書籍の中でも最も売れた本です。文庫化する際にエッセンスを集め、値段をおさえ誰にでも手に取れるようにされたとのこと。

私が好きな一説を紹介します。

社会に出てから本当に意味を持つのは、インターネットにも紙の本にも書いていない、自らが動いて夢中になりながら手に入れた知識だけだ。自分の力でやったことだけが、本物の自分の武器になるのである。資本主義社会を生きていくための武器は、勉強して手に入れられるものではなく、現実の世界での難しい課題を解決したり、ライバルといった「敵」を倒していくことで、初めて手に入るものなのだ。

「人生ではリスクを取らないことこそが、大きなリスクとなるのである」滝本先生のメッセージをすべての大学生に届けたい。

2019.08.30

本の紹介「「超」AI整理法」

あいかわらず、仕事術の本を読んでばかりで仕事が進みません。

野口悠紀雄氏と言えば、一世を風靡した押し出しファイリングを提案された「超」整理術の作者。78歳なれど、新しいテクノロジーをどんどん使って、ご自身の仕事術の改善に取り組んでいらっしゃいます。

この本も結構役立つことがたくさん書いてあったので、使えそうな仕事術を取り上げてみます。

まずは、情報の整理の方法として、2つのことを強調されています。一つは、情報量が莫大になっていて、情報を捨てることに労力をかけるのは時間の無駄なので、情報を「捨てること」をやめて「検索する」というふうにパラダイムシフトを起こす必要があるということ。もう一つは、「分類するな、ひたすら並べろ」。つまり、フォルダ形式で分類するのではなく、各情報に複数のタグをつけて、タグを検索することで情報を見つけるということです。

野口さんが提案する「超」メモ帳は、グーグルドキュメントにアイデアメモ、新聞記事の見出しの記録、TODOリストや携行品メモ、雑事メモや日記、リンク集というすべての情報を入れる。そして、それを音声検索を使って検索して、取り出すというものです。あとで、検索しやすいように日付やタグを埋め込むというのがコツとのことです。私の場合は、まったく同じことをEvernoteを使ってやっています。ほぼ遜色のないものが作れると思いますが、Evernoteのようなノートアプリを使うか、グーグルドキュメントを使うかは好みの問題でしょう。

野口さんが指摘するように、写真の検索は非常に難しいです。僕は、フォルダに撮影日とキーワード(地名や被写体)をつけてメインのコンピューター上で管理しています。野口さんは、すべての写真をグーグルフォトにおいて、日付と何が写っているかを「超」メモ帳の方に残し、そこから日付を頼りに写真の検索をしているそうです。僕がこの方法に乗り移ろうとすると、グーグルフォトの15Gという容量がネックになります。写真の解像度も落としたくありませんし。

前著でも、強調しておられましたが、音声入力を強く勧められています。特に、あるときパッと浮かんだアイデアを音声入力でメモに残すことを勧められています。長い文章を書くときに重要なのは、文章を書き始めることであり、そのハードルを越えるのには音声入力が有効であることを強調しています。

グーグルレンズの有効性として、検索、印刷物の情報をテキスト化、URLの読み取り、資料やデータの整理(名刺など)をあげられています。

twitterやnoteで、荒削りな物でもいいから文章を掲載し、それをブラッシュアップして、再構成することで本格的な文章に仕上げていくという仕事術を実践されているそうです。

印刷物からwebに誘導する方法としてQRコードの有効性を強調されています。

僕も、Evernoteや音声入力はかなり使っていましたが、この本を読んだ後、noteを始めて、1年後の書籍化を目指しています。また、グーグルレンズはかなり使うようになりました。

2019.07.06

本の紹介「仮病の見ぬきかた」

友人になぜ、最近ミステリーを読まなくなったのかを説明したときに、人が殺されるのが嫌なのと、トリックに偏りすぎるのが嫌いだと、その理由を説明した。ミステリーではあるけど、人が重層性を持って描かれている、佐藤正午が最近のお気に入りだとも話した。

「仮病の見抜きかた」は、珠玉のミステリー短編集である。医療現場が描かれているけど、人は殺されない。

そして、この短編集が素晴らしいところは、まっとうな医学書であると言うことである。

2019年前半の僕のベストブック。いったい、作者は、どんな人なんだろう。一度、話をしてみたい。

  

2017.07.19

佐藤正午のおすすめ本

この記事は、実はだいぶ前に書いておいたのだけど、佐藤正午さんの『月の満ち欠け』が直木賞の候補に選ばれたので、受賞するにしても、受賞しないにしても7月19日にアップしようと思っていました。見事、直木賞受賞おめでとうございます。

昨年末、日本橋の丸善書店で見かけて、「鳩の撃退法」を買った。僕にとっては、かなり例外的な買い方だった。最近は、ハードカバーの本はなるべく避けているし、特に、上下巻に分かれているような本は、努めて避けている。

佐藤正午という作家を、初めて読んだ。「鳩の撃退法」が、どれくらい面白かったかは、昨年の僕のMy best fictionに選んだくらいで、相当面白かった。

僕が知らなかっただけで、佐藤正午は、たくさんの小説を書いている。「鳩の撃退法」以来、遡って、次々と彼の著作を読んでいる。「身の上話」、「アンダーリポート」、「ジャンプ」。どれも素晴らしい。今年の4月には、「月の満ち欠け」という小説が出て、むさぼるように読んだ。

その中でも、「ジャンプ」を読んで、あっと驚いた。

僕は、この1年くらい、本気で、小説を書こうとしているのだけれど、この小説と、僕の書こうとしていた小説の基本的なストラクチャが、とてもよく似ていたのである。もちろん、舞台設定やディテールは全く違うのだけれども、コアになる部分は、よく似ている。

佐藤正午の、どの作品にも通じているのが、偶然に起こる運命的な出会いだと思う。表面的には、ミステリー的な要素を持つ、ラブストーリーであり、小説のストラクチャは、かなり凝っている。時に、難解なほど凝っている。

小説の語りについても、非常にたくみである。人称の選択(一人称か、三人称か)、視点の問題(一人称一視点なのか、三人称一視点なのか、あるいは、1人称と三人称を交互に使うのか)、物語る順序(時間の経過を追うのか、現在と過去を交錯させるのか)など。

とりあえず、僕が読んだ本を紹介しておきます。☆が多いほど、おすすめです。


鳩の撃退法☆☆☆☆
デリヘルドライバー、直木賞作家の津田が主役のミステリー。ダメ男を書かせたら、天下一品の佐藤正午らしい作品。ちょっと長くて、下巻の途中は中だるみするけど。山田風太郎賞受賞作

鳩の撃退法 上
鳩の撃退法 上
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佐藤 正午
小学館
売り上げランキング: 92,388

月の満ち欠け☆☆☆
生まれ変わりという、ありえないことがテーマだけど、最後まで読み進めると、生まれ変わりがあってもおかしくない。くらいの気持ちになります。SF的ミステリー。

<
月の満ち欠け
月の満ち欠け
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佐藤 正午
岩波書店
売り上げランキング: 504

身の上話☆☆☆
書店の店員が、突然、東京に行き、宝くじで2億円当てた。自分の意思とは違う形で事件が次々とおこることに身を任せていく女の話。ミステリーかな。テレビドラマ化もされています。

身の上話 (光文社文庫)
佐藤 正午
光文社 (2011-11-10)
売り上げランキング: 49,499

アンダーリポート☆☆☆☆
交換殺人をテーマにしたミステリー。

アンダーリポート/ブルー (小学館文庫)
佐藤 正午
小学館 (2015-09-08)
売り上げランキング: 158,526

ジャンプ☆☆☆☆☆
コンビニに出かけていくと行って帰ってこなかった彼女。ミステリー的恋愛小説。僕の一番のお気に入り。

ジャンプ (光文社文庫)
佐藤 正午
光文社
売り上げランキング: 248,873

5☆☆☆
結婚8年目の記念にバリ島を訪れた中志郎と真智子。旅行中に起こったある出来事がきっかけで、志郎の中に埋もれていたかつて愛の記憶が蘇る。SF

5 (角川文庫)
5 (角川文庫)
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佐藤 正午
角川書店(角川グループパブリッシング)
売り上げランキング: 263,681

Y☆☆☆
時間を逆戻りできる北川によって、生み出された2つの人生。SF恋愛小説。

Y (ハルキ文庫)
Y (ハルキ文庫)
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佐藤 正午
角川春樹事務所
売り上げランキング: 167,075

永遠の1/2☆☆☆☆
もう一人の自分によって振り回される男の人生。デビュー作。すばる文学賞受賞作。

永遠の1/2 (小学館文庫)
佐藤 正午
小学館 (2016-10-06)
売り上げランキング: 197,592

2017.06.08

2017年6月積ん読本

現在、翻訳の仕事が忙しくて、あんまり本を読めてなくて、すごい勢いで本が積まれています。半分ほどは読み終わっていますので、簡単な感想も合わせて、紹介します。

砂の果実 80年代歌謡曲黄金時代疾走の日々
売野雅勇
朝日新聞出版 (2016-09-07)

「少女A」をはじめ、チェッカーズなどにたくさんの歌詞を提供した売野雅勇さんの自伝。80年代の音楽シーンが好きな方には、かなり面白い本です。

村上春樹 翻訳(ほとんど)全仕事
村上 春樹
中央公論新社

これみると、ほんとすごい量の翻訳をしていることが分かります。自分が、今、翻訳しているから、後半の柴田さんとの対談はかなりおもしろかった。

すごく評判なんだけど、僕が頭悪いからなのか、途中まで頑張って読んだけど、よくわからないので、ほったらかしてあります。

来月、大阪に行くときに利用します。

みみずくは黄昏に飛びたつ
川上 未映子 村上 春樹
新潮社

村上春樹好きなら、読まざるを得ない一冊。

ここから先は、医学書。医学書も4月から5月にかけてはいい本がたくさん出てくる。

INTENSIVIST Vol.9 No.2 2017 (特集:輸液・ボリューム管理)

メディカルサイエンスインターナショナル

すばらしい本です。無茶苦茶売れているみたいです。

ニッチなディジーズ
ニッチなディジーズ
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國松 淳和
金原出版

蹄の音を聞いたら、シマウマを思い浮かべずに、ウマを思う浮かべろ。でも、シマウマの時だってあるんだぞ。

南学 腎臓病学
南学 腎臓病学
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南学正臣
中山書店

名前に圧倒されて購入

実際には、ぼくらは、こうやって臨床推論をやりながら、それにそった身体診察をやっているんですよね。

研修医のアタマと心とからだ (モヤモヤ研修生活をどう乗り切るか?)
水野 篤
メディカルサイエンスインターナショナル

ちょっと、時間が出来たら、読んでみよう。

感染症プラチナマニュアル 2017
岡 秀昭
メディカルサイエンスインターナショナル

すごいベストセラー本になりましたね。なくてはならない一冊。

2017.05.09

僕の新作「なぜパターン認識だけで腎病理は読めないのか?」まもなく発売になります

この半年間で筑波の長田先生と2人で書き上げた腎病理のテキストブックが、いよいよ発売になります。正式発売日は5月20日。月末の日本腎臓学会では、どかんと平積みして売ります。腎臓病を勉強したい人はマストバイの一冊であると言い切れます。タイトルも「なぜパターン認識だけで腎病理は読めないのか?」と、かなりとがったタイトルにしました。

どんな本か理解していただくために、僕が書いた「あとがき」をこちらに、転載しますので、お読み下さい。

*****
「なぜパターン認識だけで腎病理は読めないのか?」のあとがき

これまで、腎病理を勉強しようと思ったことは、何度もあった。東京医学社の「腎生検病理アトラス」も読んだし、いくつかの英語で書かれた腎病理の教科書も読んだ。だから、こんな病気が、こんな病理像を呈するというのはある程度理解している。つもりだ。でも、実際の腎生検サンプルを顕微鏡で見て、診断書を書くことは僕にはできない。僕は、尿細管の研究者としてそれなりのキャリアを積んで、免疫組織だとかは、いっぱいやってきたから、読めたっておかしくないはずなんだけど、読めない。結局は、数年、腎病理の先生の元で修行をしないと腎病理の診断書は書けないものだと思っていた。

長田先生と仲良くなったのは、2年前くらいだった。腎病理の本を書きたいのだけれど、出版社はどこかいいかとか、そういうことを聞かれた。僕は、これまで何冊か単著の本を出していたし、医学出版社にはたくさんの知り合いがいたので、いくつかアドバイスをした。でも、長田先生が腎病理の本を出すところまでには至らなかったようである。

僕は、自分が勉強するときには、無理矢理、人に教えるということをしている。「自分の知っていることを教えるより、自分が知らないことを教える」ということをモットーにしている。いやがる学生をつかまえて教えることもあれば、本を書くこともある。でも、さすがに、腎病理に関しては、自分で本を書くというのは難しいので、どうしたものかと思っていた。そんな時、長田先生から、再度相談があった。

そうだ、長田先生との対談という形の本を書いてしまおう

と思ったのだ。僕が、長田先生に教えを乞うという形で、しかも、対談という形をとることで、新しい形のアイデアが実現できることになった。

この本は、二人の共著という形になっているけど、基本的には、長田先生の本である。でも、腎病理学者である長田先生が無意識におこなっている腎病理読影のプロセスを、ロジックとして言語化することに、僕はそれなりの役目を果たせたのではないかと思う。

もちろん対談本を書いたのは初めての経験だったが、2つの意味で刺激的だった。一つは、この本を作り上げる過程で、腎病理を学ぶことができたこと。実際に腎病理の診断書を書くには、それなりにトレーニングしなければならないだろうけど、診断書を読み解く力は、随分ついたんじゃないかと思っている。もう一つは、本を書くことが好きな人間にとって、こういう、ちょっと変わったプロセスで本を書き上げられたことがとても刺激的だった。

この本が出版される前に、何人かに原稿を読んでもらったんだけど、みんなから、「どうやって、この本を書いたんですか」と、聞かれた。この対談本がどのように作られたか、少しだけ、タネ明かしをしておこう。当初は、2人で本当に対談して、それをライターさんに書き起こしてもらうという案もあったけど、それはボツになった。数時間の対談でまとめられるほど、2人の考えも構造化はできていなかったから。やはり、数ヶ月かけて、お互いがキャッチボールをしながら、書くことになった。長田先生は筑波、僕は東京で、そんなに頻繁に会えるわけではない。そこで、Dropboxを使って、リモートで原稿を作り上げていくというプロセスをとることになった。ただ、実際に、ゼロの状態から、いきなり本を書くことは難しく、何回か僕のオフィスに、長田先生に来てもらって、原稿の方向性というかストーリーを決め、そこから、ディテールを書き進めるような形で原稿を書いていった。なかなか合う時間が取れないので、シカゴのアメリカ腎臓学会に出張しているときに、長田先生が宿泊されているホテルの部屋で二人で話し合いながら書いたと言うこともあった。

対談形式は取っているけど、実際には相手のセリフを勝手に作り上げて、互いに書き進めていったので、後になって「僕は、こんなこと言いませんよ」と言って、書き直すみたいな、擬似的な対談で作り上げた。

本を書き始めるときに2つのことを決めた。一つは、多少、学問的に断定することが難しいことであっても、私たちの意見として、はっきりとしたメッセージを伝える、ということ。もう一つは、この本をはじめから、最後まで読んでもらうことで、実際に、腎病理が読めるようになることにこだわるということだった。

今までになかったような、腎病理の本ができあがったと思う。ただ、ほんとに、腎病理が読めるようになるには、この本を読んだ後、一定期間、トレーニングをしなければならないだろう。でも、この本が、そのトレーニング期間を随分短くしてくれるのではないかと思っている。

2017.05.06

本の紹介か「みみずくは黄昏に飛びたつ」

川上さんの、村上春樹作品の理解すごいっていうのが、印象的な一冊。

村上春樹自身は、そんなこと言ったかなぁとかいって、煙に巻いている感じ。

『騎士団長殺し』は、たぶん、あまり売れ行きがよくなくて、このあと、返本ラッシュになるんじゃないかと思う。僕は、とても楽しめたけど、マーケットと本の出来というのは、一致しないことも多いから。

このインタビュー本の第1章の「優れたパーカッショニストは、一番大事な音を叩かない」は、「MONKEY」で読んで、とても、興味深くて、こうして本に収載されたのはよかったと思います。このインタビューの直後から、『騎士団長殺し』の執筆に取りかかって、10ヶ月で第1稿を書き下ろしたそうです。

村上春樹によれば、『騎士団長殺し』を書き始める時にあったのは、騎士団長殺しというタイトルと、「二世の縁」と第1章の出だしの文章「その年の五月から翌年の初めにかけて、私は狭い谷間の入口近くの山の上に住んでいた。」の3つ要素だけだったそうです。

いまだに、原稿はEG-Wordを使って書いていいるらしく、どんだけ、編集者泣かせなんだろうとか思いますが、なかなか興味深い一冊でした。

みみずくは黄昏に飛びたつ
川上 未映子 村上 春樹
新潮社

2017.02.13

国試が終わって1ヶ月暇な人に勧める10冊〜Part2〜

以前、「国試が終わって1ヶ月暇な人に勧める10冊」が、結構、好評だったみたいなので、第2弾。

前回と重ならないように選んでみました。

上中下と3分冊ですが、こんなタイミングじゃなければ、読めない。

スリー・カップス・オブ・ティー (Sanctuary books)
グレッグ・モーテンソン デイヴィッド・オリバー・レーリン
サンクチュアリパプリッシング

あなたの人生を変えてしまうかも知れない1冊です。

医療系の素晴らしいエッセイを2つ。

決められない患者たち
Jerome Groopman MD Pamela Hartzband MD
医学書院

死すべき定め――死にゆく人に何ができるか
アトゥール・ガワンデ
みすず書房

ここから先はエンターテイメント。古典と言ってもいいのかも知れませんが、読んでいないなら、是非。

楽しめるミステリー3冊を紹介します。

伊坂幸太郎の本格ミステリー。あっと、驚く結末です。

ジャンプ (光文社文庫)
佐藤 正午
光文社

僕が一番好きなミステリー。

ロング・グッドバイ (ハヤカワ・ミステリ文庫 チ 1-11)
レイモンド・チャンドラー
早川書房

ハードボイルドミステリーなら、こちら。

最後に、SFを2冊。

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)
カズオ・イシグロ
早川書房

夏への扉 (ハヤカワ文庫SF)
ロバート・A. ハインライン
早川書房

2016.12.10

本の紹介『研究留学のすゝめ!』

献本ありがとうございます。

僕は、2002年にシアトルでの2年9ヶ月の留学生活を終え、日本に戻りました。その際に、2000年からはじめていた、研究留学ネットの内容を1冊の本にまとめ、「研究留学術」として出版しました。「研究留学術」が出版される前は、研究留学に関する書籍は何冊かあったのですが、「研究留学術」出版以降は、1冊も出版されていません。

こういった、ハウツー物的な内容は、webサイトから情報を得るようになったというのも一つですが、「研究留学術」がこの手の本で、群を抜いて完成度が高く、多くの方から高い評価を得たからだと思っています。自分で言うのも僭越ですが。事実、これまでに、1万3000部ほどが売れ、ロングヒットになりました。

一方で、「研究留学術」は、僕の経験をベースにした本ゆえ、すでに、日本に戻ってきている僕にはアップデートすることもできませんでした。それでも、増刷の際には、ビザの情報などはできる限りアップデートしてきましたし、出版から10年経って、改訂する際には、島岡さんと広田さんと私の鼎談を入れたりしてきました。でも、自分としても不本意な部分もあって、これでいいのかと、ずっと思っていました。

今回、羊土社から出版された「研究留学のすゝめ!」 は、「研究留学術」以降、はじめての研究留学本です。実験医学の連載記事「留学のすゝめ」をベースにまとめられ、多くの方が様々な経験を語られています。多くの方の分担執筆ゆえ、一貫性がない部分はありますが、留学された場所も多様で、研究者のバックグラウンドも多様なので、多くの方に参考になるのではないかと考えています。

僕自身、少しホッとしている部分もあり、次回、出版社から、「そろそろ在庫がなくなってきましたが、増刷どうしますか」と言われたら、「もう、そろそろ、やめましょうか」と安心して答えられると思います。

2016.11.28

本の紹介『自分の時間を取り戻そう』

ちきりん『自分の時間を取り戻そう』が、出版されたので、読みました。

いかに仕事の生産性を高めるかと言うことに焦点を置いた本であり、彼女の提案は、「まず働く時間を短くする」ということ。その中で、生産性の低い仕事があぶり出され、それらに手をつけず、生産性の高いことにのみ集中せざるを得なくなる。もう一つの提案は、「全部やる必要はない」ということを意識することでした。

面白い本だと思うので、是非、一読をお勧めします。

さて、この本の論旨とは、少し離れるかも知れませんが、とても、自分の心に響いた箇所が3つあったので、紹介します。

一つ目は、ちきりんさんにとっての、希少価値。

自分に取っての希少価値を見定めるべしと説いています。多くの方の場合には、お金と時間ということになり、その希少価値をいかに有効に使うかということが生産性向上の重要なポイントになります。

ちきりんさんにとって、お金と時間以外の希少価値は何かというと「頭がきちんと働く時間」だそうで、彼女にとって、「一定レベルの集中力で頭を動かすことができることが可能な4時間」だそうです。若い頃は、もっと長かったのが、現在では、1日4時間になったということ。

実は、僕も、このことは、50歳を過ぎて、痛感しています。自分に取っての一定レベルの集中力で頭を動かすことが可能な時間は、5年前は6時間くらいあったように思うのですが、今では4時間くらいになっています。しかも、僕の場合は、4時間が連続しておらず、午前中の2時間と、夕方頃の2時間に分かれています。6時間くらいあるときは、だいたい、勤務時間から会議とかを抜いた時間に一致していますから。意識すらしなくてよかったわけですが、2+2となると、意識せざるを得ません。なんか、集中できないと悶々として、原稿が進まないということになってしまいます。

その朝2時間、夕方2時間に、いかによけいな会議やら、下らない仕事を入れないで、集中するかということが重要なのです。

これは、なるほどと思ったのは、ちきりんさんはTo do listの立て方です。

「頭が動くときのTo do list」と「頭が動かないときのTo do list」というふうにわけているそうです。「頭が動くときのTo do list」には、原稿執筆、講演の準備、イベントの企画、将棋の練習、なんかをリストアップし、「頭が動かないときのTo do list」には、風呂掃除、ヒールの修理を靴屋に持っていく、冷蔵庫の整理、Facebookのいいね、をリストアップしているそうです。

僕も、今度から、「頭が動くときのTo do list」「頭が動かないときのTo do list」にわけること、積極的にやってみようと思いました。

2つ目は、メールの扱い。

ちきりんさんは10年前から、すべてのメールに返信することはやめているそうです。

「すべてのメールに返信する必要がある」と思っていると、「時間をかけずに返事ができる、たいして重要でもないメールへの返信が優先され」、「後からよく考えて返信しよう」と考えていたメールへの返事が遅れてしまうと言う本末転倒なことが起こる。

メールを読んで、すぐに返事をするかどうかは判断し、もう一度メールが来るまでは返事をしない、と判断した場合には、アーカイブして、受信箱から消してしまうそうです。

あと、日本語変換ソフトに、「りょうかい」とタイプすると、「了解いたしました。よろしくお願いします。」と、「せっかく」とタイプすると、「せっかくお声がけいただきましたのに、貴意にそえず大変申し訳ありません。どうぞよろしくご理解のほどよろしくお願いいたします。」と変換されるそうです。

僕も、かなり、これに近い運用をしていましたが、我が意を得たりと思い、思い切って、さらに、進めていこうと思いました。

3つめは「最後まで頑張る場所は厳選する」という話。

本書では、ラーニングカーブを取り上げて、説明されています。ゼロから8割のデキまでは、2割くらいの時間で到達できるけれど、残りの2割の仕事を仕上げて、完璧にするには、今までの4倍の時間がかかる。

「これは自分に取って勝負の分野だ」と判断するなら、最後まで頑張るべきだけど、自分に取ってたいして重要でない分野なら、8割のデキのところまでいったところでやめるというのが合理的な判断。

この見極めをしっかりすることが重要とのことです。

さらに、私のような、浅く広くしかできない人間にとって、励まされたのは、以下の記述でした。

多くのことに手を出し、その大半を数年でやめてしまう人のことを「なにをやっても中途半端な人」と批判する人がいますが、私は、このスタイルの何が悪いのか分かりません。こういう人は、自分の貴重な時間の学びの生産性が極めて高いフェーズにのみ投入している、とても合理的な人なのです。

というわけで、今まで通り、広く、浅くやっていきます。深くやることもきちんと自覚しながら。

2016.11.22

本の紹介『診断推論のバックステージ』

訳者の獨協医科大学志水太郎先生から、献本いただきました。

元のタイトルは、「Teaching Clinical Reasoning」。志水先生、相変わらず、よいタイトルをつけるなと思いました。僕は、志水先生を、医学界きっての名コピーライターとして尊敬しています。

この本を読んだからと言って、診断推論は教えられないけれど、現在、診断推論を教えている人にとっては、この本を読むことで、何段階も、教える内容が深まるという印象の本です。

本書は米国内科学会(ACP)のTeaching Medicineシリーズの7部作の最終巻です。診断推論をどう教えるかの方法論にとどまらず、その歴史的背景や理論、カリキュラム作成や表か、ファカルティデベロップメント、そして指導者自身がどう伸びていくかについて、きちんとまとめられています。

さっそく、読ませていただいて、現在、自分が行っている診断推論実習のブラッシュアップに役立てたいと思います。

2016.09.04

2016年9月積ん読本

夏休みはかなり本を読みましたが、それでも積ん読本がたまっています。半分ほどは読み終わっていますので、簡単な感想も合わせて、紹介します。

 

マチネの終わりに
マチネの終わりに
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平野 啓一郎
毎日新聞出版 (2016-04-08)

天才ギタリストの蒔野(38)と通信社記者の洋子(40)の大人のラブストーリー。美しい文章。美しいストーリー。パリのシャルルドゴール空港でのトランジットの待ち時間で読んでいたら、とても実感がありました。

黒檀 (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 第3集)
リシャルト・カプシチンスキ
河出書房新社

読書狂の友人に、おすすめの本を聞いたら、間違いなく2015年のベスト本と紹介されたのが本書。40年に及ぶ取材でえがいたアフリカのルポタージュ。

ヨーロッパに留学する11人の若手医師の体験談。私が、推薦の帯を書かせていただきました。「なぜいま、志高い医師が、アメリカではなく、ヨーロッパを留学先に選ぶのか。この本を読んで合点がいきました。」

敬愛する杉本俊郎先生の著書。本書の半分強は、電解質、酸塩基平衡異常の最新のレビュー。ありきたりの解説ではなく、最新の文献を丁寧に読み込んだ素晴らしい内容です。

第47回大宅壮一ノンフィクション賞(雑誌部門)受賞作。セゾングループの総帥だった堤清二氏の最晩年のインタビューをもとに書かれたノンフィクション。堤清二氏の視点で、西武王国創始者である父、堤康次郎、弟の義明について語られています。

死すべき定め――死にゆく人に何ができるか
アトゥール・ガワンデ
みすず書房

現役外科医にして「ニューヨーカー」誌のライターでもある著者ガワンデが、圧倒的な取材力と構成力で読む者を引き込んでゆく医療ノンフィクション。全米75万部のベストセラー。

医師の感情はコントロール可能か?直視されることのない医師の感情-共感や悲しみ、恥やストレス、または訴訟リスクへの対応など、さまざまな問題を紹介。また、それが患者に及ぼす影響についても解説を加える。現役の医師自らがひもとく、感情のルポルタージュ。

人類総がかりでレーザーポインターで照らしたら月の光は変わる?お茶を必死にかき回したら沸騰させられるかな?どのくらい高い空から落とせば、その熱でステーキが焼けますか?元素周期表を現物の元素のキューブを積んで作ったら何が起こる?こうした突拍子もない思いつきも、理系思考をこらして検討すれば、そこからは驚くべき結論が導き出され、何よりその結論は笑える!元NASAの研究者が物理と数学とマンガで読者の疑問に全力を挙げて答える、人気のマンガ科学解説サイトを書籍化したベスト&ロングセラー。

数学する人生
数学する人生
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岡 潔
新潮社

デビュー作『数学する身体』が話題の若き独立研究者、森田真生による編集と渾身の解説で、農耕と研究に明け暮れた孤高の天才数学者・岡潔の魅力を炙り出す。岡の名随筆に加え、食エッセイ、日記、写真、そして岡夫人による文化勲章騒動記も収録。その素顔とともに、数学の枠にとどまらない、人間の本質に迫る思考に触れる、珠玉の選集。

僕がはまっているアウトラインプロセッシングについて、もっとも詳しい本。 2015年に電子書籍として発売された『アウトライン・プロセッシング入門』が、大幅に書き直されて出版されました。

本を読む人だけが手にするもの
藤原 和博
日本実業出版社

「本を読む習慣がある人」と「そうでない人」に二分される階層社会になりつつあるという主張に大いに賛同します。

ぼくらの仮説が世界をつくる
佐渡島 庸平
ダイヤモンド社

1600万部超! 『宇宙兄弟』、600万部超! 『ドラゴン桜』を大ヒットに育て上げた編集者であり、作家エージェント会社「コルク」を起業した、いま注目度ナンバーワンの編集者/経営者、初の著書! 佐渡島さんを間近に見ていた友人から薦められた一冊。

医師のための知的生産術って本をいつか書いてみたいと思っているのです。

価値に基づく診療 VBP実践のための10のプロセス

メディカルサイエンスインターナショナル

EBMを補完する新しい方法論 「価値に基づく診療(VBP)」がよくわかる! 本邦初の実践的解説書

ちきりん氏と、世界一のプロゲーマー梅原大吾氏の異色人生対談。「梅原さんは学校が嫌いで、授業中は寝てばかりいたという。それなのに私の周りにいる、一流大学を出た誰よりも考える力が凄い。いったいどこで学んだの? 学校の役割って何なんだろう……」。そんな、ちきりん氏の疑問から始まったこの対談は、「いい人生の探し方」にまで発展しました。

2016.09.02

本の紹介「科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック」

科研費の時期がやってきました。羊土社の『科研費獲得の方法とコツ』は、科研費申請書の書き方本の先駆者であり、ベストセラーですが、昨年あたりから、本書を追撃する本が、いくつかの出版社から出版されました。よほど、売れるんでしょうね。

さて、本家の児島将康先生は、どうするのかと思っていたら、まったく違うコンセプトの科研費申請書の書き方本を出してきました。

児島先生いわく、『科研費獲得の方法とコツ』が長編小説だとすると、今回の『科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック』は短編小説集とのことです。『科研費獲得の方法とコツ』がベストセラーになる中、たくさんの大学の科研費申請セミナーに呼ばれ、たくさんの相談を受ける中で、科研費申請書を書く研究者に共通した悩む箇所が理解できたとのことです。

そのような陥りやすい箇所を、78の実例を添削する形でアドバイスしているのが本著です。

さっそく読ませていただきましたが、本書は、 『科研費獲得の方法とコツ』に変わる本ではないと思います。

私なりのお勧めとしては、はじめて科研費申請書を書く人には『科研費獲得の方法とコツ』をお勧めします。何回書いても、なかなか通らないという人は、本書を読むことで、展望が開けるかも知れません。また、若手研究者を指導されている方は、本書を読むと、若手研究者が書いた科研費申請書のチェックリストのような使い方ができるのでおすすめです。

というわけで、『科研費獲得の方法とコツ』と本書を、うまく使い分けるといいと思います。他社からも何冊か、科研費申請書の書き方本が出ていますが、児島先生のレベルにはまったく達していませんので、おすすめしません。

科研費申請書の赤ペン添削ハンドブック
児島 将康
羊土社 (2016-09-02)

2016.07.31

本の紹介「シンプルでよく効く資料作成の原則」

先月、紹介した「ノンデザイナーズ・デザインブック」の著者がプレゼンテーションのデザインの本を出していることを知りました。さっそく、買ってみました。

「ノンデザイナーズ・デザインブック」と同様極めて明快です。

プレゼンテーションのコンテンツを考えるときの4つの原則は、明快さ、関連性、アニメーション、プロットです。明快さにおいては、何を省くかを徹底的に考えます。その中で、いかに、文章を短くするか(たとえば、受動態は使わず、能動態で書く、ingは使わない、)など)、自分用のメモは見せない。テキストを分散させる(5つの箇条書きを1枚のスライドに書くより、5枚のスライドに分けた方がよいこともある)。関連性においては、よけいなものを載せない(大学のロゴ、意味のない背景、さえないクリップアート)、関連性のあるグラフィックを使う、です。アニメーションに関しては、控えめに、関連性のあるものを使います。プロットについては、導入部、どこに向かっているのか、終わりをきちんと知らせる。

スライドをデザインするときの4つの原則は、「ノンデザイナーズ・デザインブック」でも、登場した、コントラスト、反復、整列、近接です。

最後に「従うべきでないルール」という章があり、なかなか面白いです。

「スライドを読み上げてはいけない」→そもそも読み上げるような内容をスライドに書いてはいけない。
「セリフフォントを使ってはいけない」→十分な大きさがあれば、セリフフォントも魅力的。
「アニメーションは使ってはいけない」→そんなことはない。
「背景は1種類しか使ってはいけない」→そんなことはない。
「グラフィクスのないスライドを作ってはいけない」→そんなことはない。
などなど

「ノンデザイナーズ・デザインブック」を気に入った方には、是非とも、おすすめしたい

ちなみに、この本の原題は「The non-designer's presentation book」なのですが、そのままのタイトルにしたら、もっと売れるのにって、つくづく思いました。

2016.07.22

本の紹介「色弱の子どもがわかる本」

僕の大学院時代からの同僚、東京慈恵会医科大学の岡部正隆くんが「色弱の子どもがわかる本」という本を出版しました。

岡部君自身、自分が色弱であるそうで、遺伝子の多様性に対応したやさしい社会の実現を目指した「カラーユニバーサルデザイン(CUD)」の普及啓発活動も行なっています。

以下、彼から、この本がどんな本か解説してもらいました

当事者目線で書いたQ&Aコミックブックです。これまで眼科医の執筆した色弱の解説書はいくつかあります。「こんなことが不得意です」「こんなことができないかもしれません」「こんな職業には向いていないかもしれません」といったことが書かれていながら「日常生活には支障ありません」と締めくくられているのがほとんど。母親や担任の先生など、色弱の子の成長を見守る人たちからすれば、「支障はありません」「時に気にする必要はありません」と言われてもどうしていいのやら… そんな不安を少しでも解消できるようにという想いで出版しました。

この4月から学校の色覚検査が希望者に対して再開されました。文科省の通達では、学校側がアフターケアを十分にすることを条件に検査を勧めていますが、誰がどのようなアフターケアをするのかに関しては十分な方策がなく学校現場は混乱しています。

多様性を認める社会の実現のためには、「検査をしてみて、異常と指摘された人に対し、努力して生きていくことを強いる」のではなく、いくらでも工夫できる社会側が寛容になる必要があります。色弱を指摘された児童・生徒はどうしたらいいのでしょう?周りの人はどうしてあげたらいいのでしょう?まずは彼らの特性、困難を理解することから始めませんか?彼らの困難を知ることから我々が成すべき配慮が見えてきます。

2016.07.08

本の紹介「考えながら書く人のためのScrivener入門」

Scrivenerのことは、何回も紹介していますが、僕は、この5年間で、Scrivenerを使って、3冊、単著の本を書き上げました。単著の本を書くというのは、本当にたいへんなことなんですが、Scrivenerのおかげで、ずいぶん、助かりました。やってみたら分かると思いますが、章立てが必要な長い文章をWordなんかでやると、本当につらい作業になります。長い文章を書く人は、是非、Scrivenerを使ってみて下さい。

最近、Scrivenerの使い方をとても分かりやすく書いた、「考えながら書く人のためのScrivener入門」という本が出ました。

確かに、Scrivenerは日本語されていなかったり、Compileという概念がはじめはわかりにくいので、この本読むといいですよ。私もそれなりに使い込んでいるつもりでしたが、いろいろなTIPSを学ぶことができました。

この本を読んで、表示を日本語化するローカライザを作って下さっている人がいることを知りました。Mac版Scrivenerの日本語化(完訳)–あまたの何かしら。これで、とっつきやすくなります。英語版に戻したいときには、ScrivenerのパッケージのContents→ResourcesのJapanese.lprojフォルダを削除するだけ。

あと、とても興味深かったのでは、冒頭にある、小説家・藤井大洋氏のScrivenerの使い方、巻末にある、本書の作者のScrivenerの使い方でした。

2016.07.04

ノンデザイナーズ・デザインブック

僕が「ノンデザイナーズ・デザインブック」に出会ったのは、もう15年以上前。

医者とか研究者とかいっても、結構、デザイン力が必要です。プレゼンテーション、学会発表のポスター、研究会のお知らせのポスター、webを作ったり。そんなノンデザイナーな僕の、基礎デザイン力を作ってくれたのが、この本であることは間違いありません。僕が最初に買ったのは、第1版でしたが、第3版ではフルカラーになり、日本語を使ったデザインサンプルが加わった第4版が、最近発売になりました。

この本は、基本的にテキストデザイン、タイポグラフィーの本です。解説されている原則はシンプルですが、非常にパワフルです。

  • 近接の原則
  • 整列の原則
  • 反復の原則
  • コントラストの原則

イントロダクションの「ジョシュアツリーの悟り」にある一節が、この本の重要性を表しています。

Once you can name something, you’re conscious of it. You have power over it. You own it. You’re in control.

デザイン力をあげたい方は、だまって買って下さい。

2016.06.23

2016年6月積ん読本

今月からは、映画1本/月、本1冊/週、ライブ2本/月をちゃんとやろうと思って、積ん読本シリーズ再開します。

私が敬愛するプログラマー中島聡さんの、時間管理術と言うより、仕事術の本。中島さんは、日本人ながらWindows95を作った、伝説のプログラマーです。彼の時間管理術を一言で言ってしまうと、ロケットスタート(10日間の期限のある仕事であれば、2日間で80%のプロトタイプを作り上げる)ということに尽きます。こういう、時間管理術ができるから、これだけ仕事ができるんだなぁと思いました。僕のような締めきり-drivenな仕事術の人間には難しいです。でも、この本一冊が、彼の自叙伝のようで、とても面白く読めました。

夢幻花 (PHP文芸文庫)
夢幻花 (PHP文芸文庫)
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東野 圭吾
PHP研究所 (2016-04-07)

昔はあれだけ、東野圭吾が好きだったのに、今読むと、とても薄っぺらく感じてしまうのは、なぜでしょうか。

魔法の世紀
魔法の世紀
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落合陽一
PLANETS (2015-11-27)

未来を感じさせる本として、ものすごく脚光を浴びていますが、僕には、イマイチでした。

4月に見た映画「リップヴァンウィンクルの花嫁」は、僕にとって、ベスト3に入る映画でした。監督の岩井俊二さんが事前に、小説を書いて、そのあと、映画を撮影したと言うことで、どんな原作だったのか、知りたくなって、買ってみました。

ハサミ男 (講談社文庫)
殊能 将之
講談社

古い推理小説ですが、最近読んだ推理小説の中では出色の一冊です。なんとなく、グロテスクな印象のするタイトルですが、ハサミ男の心情に寄り添う、やさしい小説です。お勧めのミステリー。

市中病院で基礎研究ができる状態にない方が、毎年一定本数の英語論文を書くための指南書。

ここ数年、僕が単行本を書くときは、必ず、Scrivenerを使っています。残念ながら、Scirivenerは日本語化されておらず、ちょっと、取っつきにくいのですが、この本を読めば、使いこなせるでしょう。

率直な、医療界への提言と受け取りました。

私が大好きな『嫌われる勇気』の第2弾。

大人気の極論で語るシリーズが、ついに、本丸に攻め込みました。極論×岩田健太郎。売れないわけがないでしょう。

僕のように、循環器内科を専門としない内科医にとってありがたい一冊。各分野、こういう形の本が出てくれるといいなぁ。しかし、村川先生は、タイトルをつける名人ですね。

2016.02.23

春休みに読みたい10冊

学生達は、各学年とも、試験を終了して、徐々に、春休みになっています。春休みは、是非、本とカメラを持って旅に出て下さい。

春休みにおすすめしたい10冊を選んでみました。フィクションを6冊、ノンフィクションを4冊選びました。

村上春樹の仕事術とも言える本で、私の愛読書の1冊。

2002年には、不確実な状況下における意思決定モデル「プロスペクト理論」などを経済学に統合したことが画期的な業績として評価され、心理学者ながらノーベル経済学賞を受賞。本書は著者初めての一般向け著作。《ニューヨーク・タイムズ》《ウォールストリート・ジャーナル》《エコノミスト》の各紙誌で年度ベストブックに選出されています。

アドラー心理学の入門書。すべてが理解できているわけではありませんが、とても影響を受けた一冊です。

生物の形や模様が決まる精妙なメカニズムを解説した本です。生物が相似形を保ったまま大きくなるためにはどうしたらよいのかを、亀の甲羅を用いて説明。貝殻の形を決めている等角螺旋運動の話。植物の至る所に現れるフィボナッチ数の話。そして、近藤滋先生の研究テーマでもある、体の模様の数理的解析。シマウマのシマはどうやって作られているかを数理的に説明する、チューリング波の話。あまりに見事で、感動します。

13年間無敗で、「木村の前に木村なく、木村の後に木村なし」とまで言われた圧倒的な強さをもった柔道家である木村政彦についてのノンフィクションです。彼が、なぜプロレスに転向し、力道山と戦うことになり、そして負けたのか。柔道を講道館柔道ではなく、寝技中心の高専柔道から見た本であり、力道山対木村政彦の巌流島対決を、力道山の視点ではなく、木村政彦の視点から見た本です。分厚い本ですが、とてもおもしろい本です。特に、格闘技に興味がある方は、必読の本でしょう。

慶應義塾大学前塾長の安西先生が1985年に書かれた本です。認知心理学そのものの入門書と言うことでなく、問題解決を認知心理学の多様知識をもとに論考を進めるというもの。すばらしい本です。

「村上春樹はまずなにを読めばいい?」そんなあなたへ贈る、ニューヨーカーが選んだ村上春樹の初期短篇集。

夏への扉[新訳版]
夏への扉[新訳版]
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ロバート・A・ハインライン
早川書房

ちょっと時期は違いますが、SFの永遠の名作です。

ロング・グッドバイ (ハヤカワ・ミステリ文庫 チ 1-11)
レイモンド・チャンドラー
早川書房

ハードボイルド私立探偵の代名詞ともいえるフィリップ・マーロウが一人称で語る本書は、レイモンド・チャンドラーの代表作。村上春樹翻訳版。

わたしを離さないで (ハヤカワepi文庫)
カズオ・イシグロ
早川書房

ちょうど、テレビドラマがやっていますが、テレビを見ていた人もいなかった人も、本の方をどうぞ。

2016.01.19

『めくらやなぎと眠る女』と『めくらやなぎと、眠る女』

MONKEY No.7に掲載されている村上春樹インタビュー(聞き手、川上未映子さん)の中に、川上さんが神戸で開かれた震災後の村上春樹朗読会に参加したくだりが書いてあります。

川上さんは、2回行われた朗読会の2回ともに参加しました。朗読したのは「めくらやなぎと眠る女」だったのですが、朗読するには長い短編のため、1回目の会では、みんなが疲れて、脱落してしまったそうです。そこで、村上さんは、一晩で、3/4くらいにブラッシュアップをした「めくらやなぎと、眠る女」を書いて、次の日には朗読したそうです。

あの時、あの場所で、『めくらやなぎと眠る女』は、もう、これ以上ないテキストなわけですよ、あの土地の読者にとって。

と村上春樹さんが言っているわけですが、僕にとっては、『めくらやなぎと眠る女』は、結構難解なテキストで、なぜ、震災後の朗読会での最適なテキストであったかが、よくわかりませんでした。

オリジナルの『めくらやなぎと眠る女』は、『蛍・納屋を焼く・その他の短編』に収載されているのですが、ショートバージョンが、外国の読者向けに編まれた短編集「Blind Willow, Sleeting Woman」に収載しているのを知って、読んでみました。 ちなみに、ショートバージョンであることを明示するために、ショートバージョンは、『めくらやなぎと、眠る女』という具合に、読点が入っています。

でも、やっぱり、このテキストが震災後の朗読会での最適なテキストであるというのがよくわかりませんでした。答えがあるわけじゃないんでしょうが、誰か『めくらやなぎと眠る女』を読んだことがある人と、話をしてみたいなぁ。

めくらやなぎと眠る女
村上春樹
新潮社 (2009-11-27)
売り上げランキング: 45,843

2015.09.15

本の紹介『優雅な留学が最高の復讐である』

本書は島岡要先生が出された最新書籍。

人生で初めて、書籍の解説を書いてくれとのご依頼をいただきました。この本の生まれる場面に立ち会っているものとして、快くお引き受けいたしました。しかし、島岡先生のクリスピーな文章に、解説を付けるというのは人生最大の苦行でした。結局、「解説」のようなものは書けなかったので、この本が生まれるまでのいきさつと、鼎談の内容をご紹介するにとどまりました。私が書いた解説部分を転載する許可を出版社からいただきましたので、掲載することで、本書の紹介とさせていただきます。

 島岡先生から、「私の視点は斜めすぎて、誤解を受けるかも知れないから、もう少し水平な、というか、凡庸な視点で、私の視点をサポートして下さい」とのご依頼を受けました。私は、島岡先生のように、メタ的な立場で研究留学の意義を十分に掘り下げることはできないので、2011年におこなった鼎談(島岡、広田、門川)の内容を紹介することで、島岡先生のご依頼に答えたいと思います。
 まず、私と島岡先生の出会いについてからお話したいと思います。私は、1999年から 2002年にかけて、米国シアトルにあるUniversity of Washingtonに研究留学をしていました。留学中に「研究留学ネット」(http://www.kenkyuu.net)というサイトを立ち上げました。自分が苦労したアメリカ生活の立ち上げを書き残して、私の後にアメリカにいらっしゃる方が同じ苦労をしないことを目的としたサイトだったのですが、結局、ものすごい濃厚な留学者の交流サイトになってしまいました。その後、研究留学ネットをもとに、医歯薬出版社から「研究留学術」という本を出しました。研究留学ネットを見た、島岡さんが声をかけて下さり、2010年に、私がハーバード大学でおこなわれた1週間のワークショップに出席した際に、ボストンでお会いしたのが、島岡先生との初めての出会いでした。
 「研究留学術」が、そこそこの売り上げとなり、発刊から10年経ったので、10年という時間をおいて、研究留学が何であるのか、鼎談をおこなうことになりました。島岡先生と関西医科大学麻酔科の広田喜一先生(当時、京都大学)と私の3人が鼎談のメンバーでした。このときの鼎談が、医学のあゆみ誌上で連載されたインタビューシリーズ「教養としての研究留学」につながったのではないかと思います。
 鼎談の内容を紹介する前に、鼎談のメンバーのバックグラウンドを説明する必要があるかと思います。島岡先生は、著者紹介にもあるように、日本で臨床・研究をおこなった後、米国留学し、ハーバード大学のPI(Principal Investigator)になるまで成功され、4年前に帰国され、研究を続けてらっしゃいます。広田先生は、日本で臨床・研究をおこなった後、米国留学し、短期間ですばらしい論文を書かれ、日本に戻ってからも、臨床・研究において第一線で活躍されています。そして、私も留学するまでは同じようなキャリアでしたが、帰国後は、徐々に、研究の第一戦から退き、現在は、医学教育を主なアクティビティーとしています。三人は、MDという共通点があり、米国への研究留学というところでまでは同じような経歴ですが、その後のキャリアは三者三様です。
 鼎談で盛り上がった議論の一つは、留学先の選択や留学をするかどうかについては、あまり情報を集めすぎずに、上司の命令に従うくらいの方がうまく行く、ということでした。非常にステークが高いときの選択は、人は間違えることが多い。だから、留学するしないとか、そういう判断は、自分で決めるのはよくなくて、リラックスした立場の先輩・上司が行けと言ってくれたのなら、行った方が間違いが少ないと言うことでした。また、島岡先生が、13年間アメリカにいた一番の原因は、無知であったとおっしゃっていました。事前に情報を知っていたら、きっと、アメリカでPIになるなどという大変なことを選ばなかっただろうともおっしゃっていました。今のように何でもwebで情報が得られる現在は、逆に難しくなっているのかも知れませんが、本書で、島岡先生は「悩んだ末に押し切られるように留学の選択をせよ。」とアドバイスされています。
 もう一つ盛り上がったのは、医師の研究留学の効用は何であるのかという点でした。結論は、医師の研究留学の効用は短期的なものではなく、長期的なものであるということでした。短期的な効用は、インパクトの高い論文を書くと言うことですが、研究留学は、それまで順調に論文を書いてきたような人にとっては、プロダクティビティが下がる可能性もありますし、日本でのポストを得るという意味では、むしろデメリットであるとさえ言えます。鼎談の際には、長期的な効用は何かということまでは議論が煮詰まりませんでした。医師の研究留学の長期的効果は、厳密には証明できない神話のようなものであるけれど、この「回り道の神話」を擁護する、身をもって長期的効果を体験した人はたくさんいて、本書では医師の研究留学を「苦い良薬を飲むことを許される優雅な贅沢」と表現され、研究留学を薦めてらっしゃいます。
 さて、ひるがえって、私のキャリアの中で、研究留学はなんであったか、あらためて考えてみました。私の研究留学は、短期的な効用として考えれば、明らかに失敗でした。留学前には、年に数報の論文が出て、非常に研究は順調でしたが、まったくテーマを変えてあらたに挑んだ留学中は、プロダクティビティが明らかに落ちました。また、帰国後は、しばらくは研究にも力を入れていたものの、徐々に、臨床や教育に軸足を移していきました。では、私は、研究留学したことは意味がなかったかと聞かれれば、そんなことはありません。今、大学で得ているポジションは間違いなく、研究留学の効用であったと言い切ることが出来ます。そういう意味で、私は、研究留学の長期的な効用という神話を信じている人間の一人です。
 私は、人生になにか化学反応をおこす一番有効な方法は、場所を移すことだと思っています。しかも、場所は遠ければ遠いほど化学反応はおこりやすい。遠いというのは、物理的な距離の問題でもあり、言語や分化という意味での距離でもあります。そういう意味で、留学は、一つの大きなチャンスだと思います。しかも、ただの旅行でもなく、学生での留学でもなく、研究留学は、行った場所で必死にならざるを得ないので、効果は大きいと思います。しかし、勝手なことを言うようですが、そこでおこる化学反応が必ずしもよいものかどうかは保証が出来ません。また、その時には、よい化学反応が起こっているように思っていても、長い目で見て、その化学反応がよいものではないこともあります。もちろん、逆もあります。しかし、それでも、研究者として生きていくなら、その化学反応は受けるべきです。島岡先生は、いろいろなキャッチコピーで、みなさんを惑わしながら、研究留学を薦めていますが、私から言わせてもらえれば、「つべこべ言わずに留学に行きなさい」ということになります。

※鼎談の内容は『研究留学術 第2版』(医歯薬出版)に収載されています。

2015.08.18

本の紹介『科研費獲得の方法とコツ 改訂第4版』

この本は、羊土社としても破格のベストセラーになったようで、今回、改訂第4版が発行されました。

実は、この本ができあがるきっかけをお手伝いしたこともあって、改訂版が出るたびに羊土社の方が送って下さいます。献本ありがとうございます。

第3版からの2年の間に科研費の仕組みはほとんど変わっていませんが、大学側の状況はかなり変わっていて、とにかく、科研費を獲得することにがむしゃらになっています。私どもの大学でも、科研費申請のサポート体制を大幅に強化して、この秋の科研費申請期を迎えます。

今回の改訂では、研究目的の部分をかなり加筆されたとのことです。また、新たに、学術特別研究員申請の項を追加されています。毎回ながら、丁寧な改訂であり、こういった、児島先生の真摯な改訂作業が、この本の大きな魅力なんだと思います。

科研費を取る人、なかなか取れない人必読の本です。

2015.07.11

本の紹介『できる研究者の論文生産術 どうすれば「たくさん」書けるのか』

気の向いたときに一気に執筆する「一気書き」派(binge wiriting)が使う様々ないいわけ「まとまった時間さえ取れれば、書けるのに」「気分が乗ってくるのを待っている」をばっさりと切り捨て、
1週間のスケジュールの中で執筆にかけるスケジュールを確保し、その時間は執筆に専念する「スケジュール」派になるべきだと説いている。

著者は毎日の朝8時から10時までを執筆時間にあて、その時間はメールのチェックもしないし、会議があっても断るという。そして、毎日の執筆時間に実際にどのくらい執筆したかをExcelで管理している。これによって、無理なく、たくさんの論文、本が書けているという。

村上春樹も『走ることについて語るときに僕の語ること』で、習慣がもっとも大事であって、規則正しい生活を送ることが小説を書き続けることに重要であると説いている。

私も彼らの意見には強く同調するけれど、能力としてそういう規則正しい執筆活動ができない人がたくさんいることも事実である。私なんかはbinge wrintingの最たるものであるが、それでも、わたくしなりの方法がある。それについては、また、いつか書きたいと思う。

でも、年末に向けて、本格的な本を1冊書きたいと思っているので、もう一度「スケジュール派」挑戦してみようかな。

2015.07.07

本の紹介『研究以前のモンダイ 看護研究で迷わないための超入門講座』

JJNスペシャルシリーズは、看護師さん向けのムックですが、看護師の方だけに独占させておくには、もったいないようなすばらしい書籍が結構あります。『医療者のための伝わるプレゼンテーション』とか。

本書は、看護研究の超入門書とありますが、西條先生のSCRM(Structural-construction research method, 構造構成的研究法)の入門書でもあります。西條先生の構造構成主義をなんとか理解したいと思って、いろんな本を読みましたが、この本と『ライブ講義・質的研究とは何か』あたりが、手を出しやすいのではないかと思います。

少なくとも、この本は、研究のためのハウツー本ではありません。むしろ「質的研究が苦手」「事例研究から得られた知見は一般化することはできるのか」といった疑問に、答える本のように思います。私のように、長年、数量的研究しかやったことのない人間にとっては、医学教育研究というのは、本当に苦手でありますが、この本を読むことで、苦手意識が2割くらい減りました。

ということで、数量的研究以外の研究をする人に、是非、おすすめしたい一冊です。看護研究だけに独占させておくのはもったいないです。

2015.07.05

本の紹介『今日から使える 医療統計』

今日から使える 医療統計
新谷 歩
医学書院

週刊医学界新聞での連載記事『今日から使える医療統計学講座』から新谷先生のファンでしたが、昨年の日本透析学会で一緒にセッションをさせていただいて、大ファンになり、本書が出るのを首を長く待ち望んでいました。

新谷先生は、数学科出身で、エール大学で米国で博士号を修めた後、13年間ヴァンダービルト大で生物統計家として活躍されており、昨年、大阪大学に移動されました。このあたりの経緯は今週号の医学界新聞の特集をどうぞ。(https://www.igaku-shoin.co.jp/paperDetail.do?id=PA03131_01)

新谷先生は「医療系論文に多用される統計」「論文査読でチェックされる要点」「医療者が研究に際し陥りがちなポイント」を熟知されており、“できるだけ数式を使わず” 今日から使える統計学の知識を、本書で、わかりやすく伝えています。ものすごく実践的な本です。

学生から、研修医から、専門医まで、臨床研究論文を読む人は、一人残らず買え、そういうレベルの本です。

今年の10月3日の日本腎臓学会東部学術集会の、学生・研修医のための教育セミナーに講師としてお呼びします。

医療統計ビデオ講座も、無料で公開されていて、こちらもお勧めです。http://stat.academy.jp/?page_id=132

2015.07.04

本の紹介『極論で語る腎臓内科』

香坂君がプロデュースする「極論で語るシリーズ」の第3弾。

私の医局の後輩でもある、聖マリアンナ医科大学の今井直彦先生が書かれています。コロンビア大学で内科レジデント、ミネソタ大学で腎臓高血圧内科のフェローを終えてきた彼の、アメリカ的な視点が随所にちりばめられています。

極論で語るとは書いてありますが、まったくの、王道をいく腎臓内科のプラクティスが分かりやすく書いてあります。シンプルなメッセージで書いてありますので、マニュアル的な使い方よりは、通読して、腎臓内科全体を理解するという感じの本だと思います。実際、大変評判もよく、amazonでも1位をキープし続けていますね。

2015.02.20

国試が終わって1ヶ月暇な人に勧める10冊

国試が終わって1ヶ月暇な人に勧める10冊を選んでみました。フィクションを5冊、ノンフィクションを5冊選びました。

海外旅行に行くなら、この上下巻をスーツケースに入れていけば、楽しさ何倍にもなるでしょう。

読むのがとまらなくなる海外ミステリーです。ただし、作者は、3まで書いたところでなくなってしまっていますので、大切に読んで下さい。

マリオネットの罠 (文春文庫)
赤川 次郎
文藝春秋

赤川次郎だと思って馬鹿にしてはいけません。大どんでん返しが連続する、本格ミステリーです。

容疑者Xの献身 (文春文庫)
東野 圭吾
文藝春秋

東野圭吾で一冊選ぶのなら、これですね。

自分の将来を考えたいのなら、きっと参考になると思います。

あなたの仕事術に、きっと影響を与えてくれるでしょう。

福澤先生の著作を読んでいないなら、一番、痛快な、この一冊を。旅先でも読みやすい、現代語訳版をどうぞ。

決められない患者たち
Jerome Groopman MD Pamela Hartzband MD
医学書院

医者になる前に読んでおいて欲しい一冊。

電解質輸液塾
電解質輸液塾
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門川 俊明
中外医学社

1ヶ月間、医学の勉強をする必要はないでしょうが、どうしてもしたくなったら、こちらをどうぞ。

2015.01.30

ミステリー三昧

2015年は電車の中ではスマホをいじらず、ひたすら本を読む!と考えて(どうせ、そのうちいじり出しますが)、週2冊のペースでミステリーを読んでいます。最新のものと、過去の名作を交えながら。

その女アレックス (文春文庫)
ピエール ルメートル
文藝春秋 (2014-09-02)

2014年の「このミス」海外作品第1位。最近のヨーロッパのミステリーは、陰惨さや残虐性が全面に出てしまうのが苦手ですが、ストーリーはやはりおもしろい。

満願
満願
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米澤 穂信
新潮社

2014年の「このミス」日本作品第1位。ハードボイルドなミステリー短編集。6つの短編ともまったく関連性がないが、どれも、すばらしい。

虚ろな十字架
虚ろな十字架
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東野 圭吾
光文社 (2014-05-23)

東野圭吾は好きな作家です。あまりに多作すぎて、ちょっと、ミステリー作家で東野圭吾が好きですとか、いいずらくなっていますが、一定レベルの質を保ちつつ、たくさんの本を書く、やっぱり才能があると思います。勢いで読んだ、「パラドックス13」はまったくの駄作でしたが。

未読の名作ミステリー。恥ずかしくなるくらいの青春ラブストーリーなのだけど、最後から2行目を読むまでは完全にだまされていました。だまされて、あっけにとられて本を閉じた、初めての経験でした。ただ、これは、ミステリーって呼べるのかなぁ。

未読の名作ミステリー。楽しめました。

2014.12.23

2014年12月積ん読本

授業もすべて終わり、年末年始は、読書しまくりたい。

殉愛を読んで以来、ノンフィクション恐怖症みたいなものになっているのですが、この本は、なかなかおもしろかったです。なんで、佐村河内氏と新垣氏が長年にわたって、タッグを組んできたか、腑に落ちました。

内科医としては、自分のテリトリーを少し出て、勉強しなければなりませんね。

この本は、名著と思います。内科医必読。

人生と芸、そして〈東京言葉〉と〈人生の師〉と〈いい女〉等についての遺されたエッセイを集めた一冊です。

食べログの集合知もそれなりに参考にはなるのですが、やはり、エキスパートオピニオンが必要になることも多いです。そんな時には、ミシュランより、東京いい店うまい店を頼りにすることが多いです。

世界最強の商人 (角川文庫)
オグ・マンディーノ
KADOKAWA/角川書店 (2014-11-22)

その後の世界最強の商人 (角川文庫)
オグ・マンディーノ
KADOKAWA/角川書店 (2014-11-22)

オグマンディーの『世界最強の商人』は、ずっと絶版になっていて、以前、1万円以上出して買いましたが、なんと、文庫本になって登場しました。

最近、自分が当たり前と思っているものをどうやったら、学生に伝えられるのか。言語化することって難しいと思いつつ、そのヒントを探しています。

2014.12.01

本の紹介「東大助手物語」

東大助手物語
東大助手物語
posted with amazlet at 14.12.01
中島 義道
新潮社

ひどいアカハラ、パワハラもあったもんだと思いつつ、すっかりフィクションと思っていたら、実は、哲学者の中島義道先生の東大助手時代の体験記らしい。しかも、登場人物は、全部、仮名なのだけれど、登場人物の実名との対照表まで存在する。

2014.10.31

2014年10月積ん読本

10月は本当に忙しかった。積んどいた本も、だいぶ増えました。

ようやく、一息付けそうなので、一気に読書を再開します。

スリー・カップス・オブ・ティー (Sanctuary books)
グレッグ・モーテンソン デイヴィッド・オリバー・レーリン
サンクチュアリパプリッシング

1993年、K2登頂に失敗したグレッグ・モーテンソンは、その時世話になったパキスタンの人々のために何かをしたいと考え、子どもたちのための学校を建てる決心をします。その後の10年余に50を超える数の小学校をパキスタンとアフガニスタンに建設・運営していった彼の取り組みを描くノンフィクションです。しかし、フィクションではないとの指摘が相次ぎ、共著者のデイヴィッド・オリバー・レーリンは自殺しました。 最初から「現実の入り混じったフィクション」と思って読めば良いと思います。フィクションだとしても、よくできたフィクションだと思います。

元祖ライフハックである、知の巨人・梅棹忠夫先生が提唱された「知的生産の技術」を、現代にあわせて再解釈し直した本です。私自身も、同じようなことをやっていたので、とても参考になりました。

30万部を超えるベストセラーになった『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』を12年ぶりに全面改訂。金儲けするより、節約する方が、たぶんお金はたまるんでしょうね。でも、そんなのいやです。

敬愛する名郷先生の著作。

東京大学医科学研究所の上先生の著書。

創価学会と平和主義 (朝日新書)
佐藤 優
朝日新聞出版 (2014-10-10)

集団的自衛権行使容認の閣議決定で注目された公明党。「押し切られた」との見方が大勢だが、佐藤優氏は、はじつは「戦争ができないようにする」一文を盛り込ませたとの見方をしている。

立花隆氏の人気連載「文藝春秋」の巻頭随筆全三十九話がまとめられた一冊。

日野原先生の、渾身の書き下ろし。

日野原先生が書き上げたウィリアム・オスラーの伝記。初版から六六年を経て文庫版で復刊。<

外来診療のUncommon Disease
生坂 政臣
日本医事新報社
売り上げランキング: 6,287

生坂先生の週刊「日本医事新報」好評連載「キーフレーズで読み解く外来診断学」が単行本化。

2013年春に出版した「診断のゲシュタルトとデギュスタシオン」の第二弾。ゲシュタルトは、医学教育においてもっとも重要な概念だろうと思っています。プロの病気の「見ている視線」を追体験できる、貴重な一冊。

読書法、整理法、時間管理法、発想力の鍛え方、現場からの学び方、中期的な目標をどう立てるか…いい仕事をするためのヒントもいっぱい。成績優秀=幸せになる、とは限らない。人生だって戦略的に考えよう。伊藤ゼミ31年間、400人余りが心に抱いて巣立った、教授がいちばん伝えたかったこと。

マスカレード・ホテル (集英社文庫)
東野 圭吾
集英社 (2014-07-18)

マスカレード・イブ (集英社文庫)
東野 圭吾
集英社 (2014-08-21)
売り上げランキング: 119

女性フロントクラークの山岸尚美を主役にした、東野圭吾の新シリーズ。あぁ、これも、テレビ化を狙って書いているんだろうなと思いつつ、一定レベルの水準を維持し、次々と新作を出すことはやっぱりすごい。

伝記 小泉信三
伝記 小泉信三
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神吉 創二
慶應義塾大学出版会

小泉信三先生を知るために2冊読みました。

2014.09.22

『研究者のための思考法』書評

「医学のあゆみ」誌2014年8月16日号に、『研究者のための思考法』の書評を書かせていただきました。許可を得て、こちらに転載します。

現代の日本は、競争原理の前提となる3つの要素(情報開示、人材の流動性維持、セイフティネットの確保)が揃わないうちに、競争原理が導入されてしまい、ともすれば、未来に希望を感じられない世の中になってしまっている。特に、研究者の場合、ポストが限られている中で、ポスドク1万人計画が実行され、常に時限付きの不安定な短期間の職を綱渡りしなければいけない様な状況になっている。

そういった時代の中で研究者が、どのようにキャリアを構築していけばよいのか、大きく社会状況が変わらない中、研究者が幸福で充実した人生を送るためにはどうしたらよいのか、島岡先生は本書で、心理学的、社会学的なアプローチで、アドバイスを送って下さっている。

島岡先生は前書『研究者の仕事術』(羊土社刊)では、膨大なビジネス書を読み込んで、研究者というビジネスの中でいかにキャリアを積むかを指南して下さった。今回は、膨大な心理学、社会学の書籍、文献をお読みになって、エビデンスに基づく、研究者の生き方を指南して下さっている。

本書で取り上げられている10のヒントの中でも、私の胸に響いたのは、第1章の「好きなことをする­天職に出会えなくても、仕事は充実する」と第6章の「研究者のあたらしい働き方–スラッシュのあるキャリア」であった。第1章では、天職の取り扱い方と天職を巡る自分探しの旅を止める方法について述べている。この中で、天職は自分で探すものではなく、まさに天から神様が与えてくれるものであり、受け身でいるべきであると説く。第6章では、1つの専門性にしがみつかずに、Serial Masteryであるべきと説いている。本文を少し引用させていただく。

現代では第1の専門性を身につけ仕事をしていく中で、次の第2の専門性を身につけることが必要になってきます。グラットン教授は専門性を身につけることをMasteryと呼び、第2,第3の専門性を次々と身につけることをSerial Masteryと呼んでいます。Serial Masteryが近未来をしなやかに生き抜くための鍵となるのです。
(中略)
第2のMasteryで仕事を始めたとき、第1のMasteryに関連した仕事を完全にやめてしまわなければ、2つの専門性を1人の人が持つことによる新たな希少性や、2つの専門性の相乗効果による高い付加価値が生み出されることもしばしば起こるでしょう。複数の肩書きを持つと言うこと、たとえば、「医師/コンサルタント」や「研究者/教育者/社会起業家」などを私は“スラッシュのある人生”とよんでいます。これはグラットン教授の言う、Serial Masteryに親和性の高いキャリアモデルだと考えられます。

研究のテーマどころか、キャリアもころころ変わって、自分でも節操なさ過ぎることが悩みであった私に響く、力強い言葉だった。

2014.09.14

電解質を勉強するための良書

学生、初期研修医、および、電解質についてまとめて勉強したいという初学者にまずおすすめしたいのが、手前味噌で申し訳ありませんが、私の著書。

電解質輸液塾
電解質輸液塾
posted with amazlet at 14.09.14
門川 俊明
中外医学社

症例ベースで使うなど、初学者でもクリアカットに理解できるような工夫をしています。この本がマスターできたら、

に進むのがよいでしょう。私の友人でもある柴垣先生が書いた、この本は、本当によくできた本です。レベルとしては、腎臓専門医を目指す人向けと言っていいと思いますが、日頃感じる、水・電解質の疑問のほとんどに答えてくれます。私自身、本書を隅から隅まで読み込んで、自分の知識のブラッシュアップに非常に役立ちました。柴垣 有吾先生の、アメリカ仕込みの臨床腎臓病学の知識は、他の書物と一線を画しています。短期間の間に第3版まで改訂し、最新の知見を盛り込もうとする彼の誠実さを表した良書です。

さて、この次の本となると、残念ながら、日本語のテキストブックでおすすめできるものはありません。一つの道は、個々のトピックごとに、UpToDateを読むというのがよいと思います。それでも、どうしても、テキストブックが読みたいと言うことであれば、

をおすすめします。アメリカでも、電解質を真剣に勉強する人は、みんなこの本を使っています。2014年10月に第6版が出る予定ですが、何回も延期されているので、ホントに出るかどうかは分かりません。

さて、これ以外にも電解質に関しては、いくつかおすすめの本があります。

輸液を学ぶ人のために
和田 孝雄 近藤 和子
医学書院

電解質と言うよりは、輸液の本ですが、私の研究室の大先輩である和田孝雄先生の本。学生時代にご自宅にお邪魔したこともあったのですが、残念ながら、若くしてお亡くなりになりました。和田先生は、多くの「水電解質」の本を書かれていますが、改訂されることがなくなっているにもかかわらず、今でも売れ続けています。

和田先生の著作の中でも、もっとも売れている本が、本書です。和田先生が看護師の方2人に、輸液の基礎を講義していくというスタイルの本です。とても読みやすく、頑張れば1日で読み切れるような本ですが、私は、輸液の考え方を学ぶのにもっとも適した本だと思い、多くの研修医に推薦しています。

輸液の考え方を学びたいという初期臨床研修医向け。

シチュエーションで学ぶ 輸液レッスン
小松 康宏
メジカルビュー社

この本は輸液レッスンというタイトルですが、電解質のホントしても秀逸です。とてもわかりやすい構成です。

電解質の本ではロングセラーの本。見た目はやさしそうですが、中身は意外と歯ごたえがあります。いきなり初学者の方がやっても、跳ね返されてしまうかも知れませんが、ロングセラーなだけの理由があります。

2014.08.10

夏の文庫10冊 2014

夏って言うと、ポケットに文庫を入れて、行く先も決めず、電車にのって旅をする。そんな気ままな旅はできなくなっていますが、せめて、好きな文庫本を読みたい。

私の好きな文庫本10冊を紹介します。

村上春樹の長編小説では、これが一番好き。二番目は、1Q84。

村上春樹の仕事術とも言える本で、私にしては珍しく、何度も読み返しています。

ロング・グッドバイ (ハヤカワ・ミステリ文庫 チ 1-11)
ロング・グッドバイ
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レイモンド・チャンドラー
早川書房

超定番ですが、はずしません。

ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)
スティーグ・ラーソン
早川書房
売り上げランキング: 7,158

徹夜してしまう一冊です。スティーグ・ラーソンは、ミレニアム3まで書いたところで休止してしまっているので、ミレニアム2と3は読まずに大切にとってあります。

白夜行 (集英社文庫)
白夜行
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東野 圭吾
集英社

東野圭吾は大好きな作家です。最近、大量生産でちょっと質が落ちているような気もしますが、本書は間違いがありません。東野圭吾のベストといえば、これですね。

火車 (新潮文庫)
火車
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宮部 みゆき
新潮社

宮部みゆきというか、私の中でのミステリーナンバーワンです。

ドキュメンタリーではピカイチ。格闘技ファンは絶対読むべき。格闘技ファンではない私もはまりました。

心理学者ながらノーベル経済学賞受賞者のカーネマンの代表作。

シャーロック・ホームズの冒険 (新潮文庫)
コナン ドイル
新潮社

シャーロキアンの私は、何度繰り返し読んだことか。

こころ (集英社文庫)
こころ
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夏目 漱石
集英社

先頃、久しぶりに読んで、やっぱりよいなと思いました。

2014.07.05

本の紹介『研究者のための思考法』

島岡要先生に初めてお会いしたのは、私が、Harvard Macy Programに参加するためにボストンを訪問した2010年のことでした。

私は、2010年2月に、腎臓内科から医学教育のポストに移動したのですが、その前の1年くらいは、自分のキャリアについて随分悩んでいました。そんな時、力になったのが、島岡先生が書かれた『研究者の仕事術』でした。島岡先生は当時、ハーバードにいらっしゃったので、一緒に食事をしました。

そんなご縁もあって、島岡先生が日本に戻られた後に、鼎談「研究留学──Ten years after」にお付き合いいただいたり、島岡先生が「医学のあゆみ」誌で連載している、「“教養”としての研究留学」に参加させていただいたりしました。

今回、島岡先生が『研究者の仕事術』の続編とも言える『研究者のための思考法』を出版されました。

研究者の仕事術』のモットーは”プロフェッショナル根性論”でした。『研究者のための思考法』では、”知的しなやかさ”というテーマで、心理学や社会学の重要な知見が、島岡流にアレンジされています。研究者だけでなく、多くの方に読んで欲しい一冊です。

今回、私もキャリアチェンジしましたが、まるで、島岡先生が、私のキャリアチェンジにあわせて、それを応援するかのような本を書いて下さっていただいているのではないかと、自分勝手なことを考えています。

2014.06.30

2014年6月積ん読本

ああ、もう、2014年が半分過ぎてしまった。今月は、医学書が中心です。

コリンズのVINDICATE鑑別診断法
金城紀与史ほか
メディカルサイエンスインターナショナル

「Differential Diagnosis in Primary Care」の日本語版がついに出た!邦題にVINDICATEを入れたのはナイスアイデア!主訴に対して、関連する疾患の発生する部位を解剖学的に思い浮かべ、病因別カテゴリー(“VINDICATE”など)を利用し網羅的に診断をあげていく、「コリンズ先生流」の診断アプローチを指南。5年生、6年生全員に買って欲しい。

僕は病院のコンダクター 日本人ホスピタリスト奮闘記
石山貴章
メディカルサイエンスインターナショナル

日本で5年間の胸部外科研修→アメリカに研究留学→アメリカで内科臨床研修→アメリカでホスピタリストとして活躍。こんな感じに書くと、すごく順風満帆に進んだように思えますが、たくさんの苦労があったそうです。私の留学時代を思い出しました。渡米してホスピタリストの道を選んだ経緯、病院医療をコンダクトするホスピタリストとしての日々の臨床を、具体的に失敗談も含めて自らの言葉で綴られています。

中学生でもわかる iOSアプリ開発講座
林 晃
シーアンドアール研究所

最近、コンピュータに興味を持っている息子と一緒に、iPhoneアプリを作ることにしました。私も、プログラミングは、だいぶご無沙汰なので、このあたりからスタート。

東大教授 (新潮新書)
東大教授 (新潮新書)
posted with amazlet at 14.06.30
沖 大幹
新潮社

ヒラノ教授本みたいなものを期待していたけど、残念な本。

敬愛する加藤眞三先生の著書。「患者中心の医療とは」を考えさせてくれる、素晴らしい本です。

離島医療ならではの、様々な技、知恵が満載の一冊で、おもしろい。

2014.06.23

本の紹介『あなたのプレゼン誰も聞いてませんよ!』

これまで読んだプレゼンテーションにの本でもっともインパクトがあったのは、ガーレイノルズ氏の『プレゼンテーションZEN』です。プレゼンテーションZENの影響を受けて、私のプレゼンテーションもずいぶん変わったように思います。しかし、一番難しかったことが、サイエンティフィックプレゼンテーションに、プレゼンテーションZENの要素を入れることでした。プレゼンテーションZENのやり方は、アイデアを伝えたり、メッセージを伝えたりするには、非常に有効な方法ですが、プレゼンテーションZENのやり方で、学会の一般演題を行うことはできません。サイエンティフィックプレゼンテーションには、プレゼンテーションの明確なルールがあり、インプレッションだけを伝えるのではなく、正確に伝えることが大切です。サイエンティフィックプレゼンテーションに、プレゼンテーションZENの考え方をある程度持ち込むことは重要と思いますが、落としどころがあると考えています。

本書は、タイトルだけ見ると分からないかも知れませんが、サイエンティフィックプレゼンテーションに、どうやって、どの程度、プレゼンテーションZENの要素を持ち込むかについて、非常に実践的な解決策を提示してくれています。掲載されている、たくさんのbefore & afterのスライドを見れば、納得がいくと思います。

というわけで、本書は、研究者、医師で、プレゼンテーションZENの要素を取り入れたい人必読の一冊と言えます。

2014.06.01

本の紹介『嫌われる勇気』

アドラー心理学については、名前しか知らなかったけど、本書を読んだら、様々な自己啓発本の源流になっているということがわかりました。もちろん、たった一冊で理解できるわけではありませんが、本書は、日本でのアドラー心理学の第一人者の岸見先生とライターの方が、非常によくできた対話形式でまとめています。

アドラー心理学を一言で言うことは難しいのですが、私が「こうなりたいと思っている姿」と、非常によく重なっています。もちろん、それを実践するまでには至っていないのですが、とても力づけてくれる一冊で、おすすめです。いくつか気になったフレーズを引用します。

人は誰しも、客観的な世界に住んでいるのではなく、自らが意味づけをほどこした主観的な世界に住んでいます。あなたが変われないでいるのは、自らに対して「変わらない」という決心を下しているからなのです。

誰とも競争することなく、ただ前を向いて歩いて行けばよいのです。いまの自分よりも前に進もうとすることにこそ、価値があるのです。

われわれは他者の期待を満たすために生きているのではない。

人間の悩みは、すべて対人関係の悩みである。われわれは「これは誰の課題なのか?」という視点から、自分の課題と他者の課題とを分離していく必要がある。他者の課題には踏み込まない。あらゆる対人関係のトラブルは、他者の課題に土足で踏み込むこと、あるいは自分の課題に土足で踏み込まれることによって引き起こされる。「馬を水辺に連れて行くことはできるが、水を呑ませることはできない」

というわけで、おすすめの一冊。

2014.05.31

2014年5月積ん読本

女のいない男たち
女のいない男たち
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村上 春樹
文藝春秋 (2014-04-18)

村上春樹の恋愛ものは、セックスの話ばかりになるので、ちょっとなぁ。短編集としては、『東京奇譚集』の方が好き。

ドーキンスの自伝がおもしろくないわけがない。これは、夏休みの読書に撮っておこう。第2巻は2015年に発売とあるし。

Google Scholarを英語論文を書くためのツールとして使うという話を、ある場所でするので、確認用に買ってみた。

慶應幼稚舎と慶應横浜初等部 (朝日新書)
石井 至
朝日新聞出版 (2014-05-13)

同級生の山内君が初代部長として立ち上げに奔走する横浜初等部を理解したくて。

昔の有名人の病気や死因を、現代の医学の知識で診断し直す

茨木先生の漫画の本は、ためになって素晴らしい。ナイチンゲール観が180度変わりました

写真構図のルールブック
内池 秀人 福井 麻衣子
マイナビ

最近、写真の構図をどうするかにはまっています

30年も漢文から離れると、また、漢文を習ってみたくなる。

臨床に不可欠な学び方覚え方テクニック
デーソン エバンス ジョー ブラウン
プリメド社

イギリスの医学教育って、そうなんだ。

診断法を評価する (臨床家のための臨床研究デザイン塾テキスト)
杉岡隆 野口善令 大西良浩
特定非営利活動法人 健康医療評価研究機構

尊敬する野口先生による診断学の本。

不定愁訴のABC
不定愁訴のABC
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Christopher Burton
日経BP社

これも竹本毅先生の翻訳。すばらしい。

もしドラみたいな本です。

神社の事って、何にも分かっていないで、拝んでいたんだなぁと。

シャーロック・ホームズの思考術
マリア コニコヴァ Maria Konnikova
早川書房

最近、シャーロックを見て、また、シャーロック・ホームズ熱がぶり返しています。

2014.05.05

AORファン必携の一冊『AOR Lihght Mellow Remaster Plus』

もともとAORは大好きな音楽で、80年前後(私が大学生の頃)には相当な数のCDを買っておりました。今でも、Boz ScaggsとかAl Jarreauが来日すれば、頑張ってチケット取って、ライブを見に行っています。

最近、お気に入りのバーが地元で出来たのですが、ここの音楽の品揃えが、まさしく私のツボそのもので、飲みに行くたびに、この曲知っているかと、マスターとAOR勝負になるので、最近、手放したCDをiTunes StoreやAmazonでぞくぞく買い戻しています。

AORマニアなら絶対に持っていないといけない本があります。金沢寿和さんが書かれた『AOR Lihght Mellow Remaster Plus』です。AORの図鑑的なモノで、私なんかは、この本読んで、手持ちのAORかけているだけで、幸せになってしまいます。

ただ、残念ながら、この本絶版で、しかも、中古市場ですごく人気があるので、定価の5倍くらいの値段で取引されています。そんなわけで、私も手に入れていなかったのですが、マスターとの勝負に勝つために、買いました。ホント、AORファン必携の一冊です。一万円出しても惜しくありません。

AOR Light Mellow Remaster Plus (POP CULTURE SERIES)
金沢 寿和
エクシードプレス

この本も見つつ、私が、AORの名盤を5枚選ぶとしたら、こんな感じでしょうか。

シルク・ディグリーズ(エクスパンディッド・エディション)
ボズ・スキャッグス
Sony Music Direct (2007-04-04)

Nightfly
Nightfly
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Donald Fagen
Warner Bros / Wea (1993-04-21)

ハード・キャンディ
ハード・キャンディ
posted with amazlet at 14.05.05
ネッド・ドヒニー
ソニー・ミュージックレコーズ (1990-08-01)

ブルー・デザート(SHM-CD紙ジャケット仕様)
マーク・ジョーダン
ウ゛ィウ゛ィト゛・サウント゛ (2010-08-25)

イヴニング・スキャンダル
ボビー・コールドウェル
ビクターエンタテインメント (2005-10-19)

実は、この本には、和モノを扱った、これまた必携の本があります。こちらは、最近、再販されたので、通常価格で手に入ります。いや、この本も素晴らしい本で、見ていると次々とAmazonでCDをぽっちってしまうという恐ろしい本でもあります。

Light Mellow和モノSpecial ~more 160 items~
金澤寿和 + Light Mellow Attendants
ラトルズ

こちらの中身もそのうち紹介します。

2014.04.29

本の紹介『診断戦略: 診断力向上のためのアートとサイエンス』

ここ数週間、夢中になって読んだ本。ここに書かれた多くのアイデアは暗黙知として、多くの医師の診断推論のツールとして使われてきたかも知れません。しかし、その概念を言語化することで大きな価値が付加されます。ティアニー先生はじめたくさんの医師の激賞の通りだと思います。

私も、この本を読みながら、自分の中に潜む言語化されていないフレームワークを言語化し、臨床推論の実習に役立てたいと思います。

2014.04.25

若い人がよい医学書を書く時代

新しい医学書はたいてい手に取っている医学書オタクです。

最近、『ジェネラリストのための内科診断リファレンス』が書店で平置きされているの見てびっくりしました。何がびっくりしたって、718ページで、内科の全分野を網羅した本を、卒後12年の医師が一人で書いたというのです。

私なんか、200ページの本を半年くらいかけて、フウフウいいながら、書いているわけですから、恐れ入ります。是非、定期的に改訂して、不動の地位を築いていっていただきたいです。

以前にも紹介した、倉原優先生。『「寄り道」呼吸器診療』が素晴らしかったので、知り合いの編集者に教えたら、すぐに、お願いに行ったらしく、さらさらさらと、半年で、素晴らしい本を書きました。彼も卒後9年目と若い。

呼吸器の薬の考え方,使い方
倉原優
中外医学社

もう一人、すごい人を紹介しておきましょう。竹本毅先生です。彼は、自分で本を書くと言うより、海外の素晴らしい本を訳しています。どれも、一人で訳しています。どれも、無茶分厚くいけど、すばらしい訳がついています。

考える技術 臨床的思考を分析する 第2版
Scott D. C. Stern Adam S. Cifu Diane Altkorn
日経BP社

イン・ザ・クリニック -診療現場ですぐに役立つエビデンス-

メディカルサイエンスインターナショナル

JAMA版 論理的診察の技術
デヴィッド L サイメル ドルモンド レニー
日経BP社

医学書というのは、大学教授とか、権威のある人が、編者におさまって、医局の人とか若い人に書かせるというパターンが多いです。でも、見ていただければ分かるように、そういう本でよい本は、なかなかないです。私の持論は「よい本は単著である必要がある」です。そういうことを考えると、権威者は、とても、単著を書くほどの時間はありません。また、権威者がよい本を書く能力があるというわけでもありません。よい本を書く能力は、経験とともに養われることは、おそらくないと私は思っています。逆に言えば、若くても、よい本を書ける人は書けるということです。出版不況になって、医学書出版社の編集者の方も、よい本を書いてくれる人を必死になって探しています。そういう中、ここにあげたようなスーパースターが出てきたと言えます。若い人がよい医学書を書く時代がやってきたと言っていいでしょう。

2014.04.20

本の紹介『インセンティブプレゼンテーション』

医療者・研究者を動かす インセンティブプレゼンテーション
杉本真樹
KADOKAWA/アスキー・メディアワークス

記憶に残るプレゼンは、「ストーリー」と「順序」が重要。「なぜ」から始めることを意識することで、プレゼンテーションは見違えるようによくなる。実際に、著者が、3人の方のスライドに手を入れ、Before-Afterをやっているのが、なかなか興味深かった。

2014.03.30

2014年3月積ん読本

本読む余裕がないのに、おもしろそうな本がどんどん見つかって、積み方も半端ない感じになっています。4月になったら、本もばりばり読んでいきたい。

現在、おもしろさナンバーワンの本。丁寧に読みすぎていて、まだ、完読できていませんが、読み終わり次第、詳細をお伝えします。

フラニーとズーイ (新潮文庫)
サリンジャー
新潮社 (2014-02-28)

村上春樹訳が文庫で登場。サリンジャーは訳者にあとがきやまえがきをつけることを許さないらしく、村上春樹の解説が別冊で挟み込まれています。

ナイン・ストーリーズ (ヴィレッジブックス)
J.D.サリンジャー
ヴィレッジブックス

ついでに、サリンジャーをもう一つ、手に入れておきました。

モチベーション3.0』がおもしろすぎたので、ダニエルピンクの本をもう一冊。

私も土橋さんにならって、オフィスをシンプルにしたい!

フロイト、ユングと並び「心理学の三大巨頭」と称される、アルフレッド・アドラーの思想(アドラー心理学)を、「青年と哲人の対話篇」という物語形式を用いてまとめた一冊。

書くことについて (小学館文庫)
スティーヴン キング
小学館 (2013-07-05)

2001年に「小説作法」として翻訳されたスティーヴン・キングの名著を、新たに平明で簡潔な文章で訳した新訳版。新たに巻末には著者が2001年から2009年にかけて読んだ本の中からベスト80冊を選んだリストを掲載。

今年1年かけて、eポートフォリオについて調査研究するにあたって、一番、参考になった本。

Institutional Research(IR)について勉強したいなぁと思って、手に入れた本。

Institutional Research(IR)について勉強したいなぁと思って、手に入れた本。

国際バカロレアについて勉強したいなぁと思って、手に入れた本。

途中まで、めちゃくちゃおもしろかったのだけど、最後はちょっと尻つぼみかな。

今こそ、東洋の知恵に学ぶ
鴇田正春
メトロポリタンプレス

2012年、低迷する日本が陰の時代から陽の時代へ移行する。政財官のリーダーたちに助言を与えてきた著者が、混迷の時代を生き抜くための法則をまとめた一冊。

東京タクシードライバー
山田清機
朝日新聞出版 (2014-02-07)

私の友人の著作。人間交差点に似ているような、タクシードライバーの人生をほろっと描いています。

最近の医学書院のケアをひらくシリーズは、ほんと傑作揃い。

ダン・ブラウンの『インフェルノ』を理解するには、ダンテ『神曲』を理解しなければならない。謎と暗号に満ちた「世界文学の最高傑作」を、豊富な図版と共にわかりやすく解説した本。

医学部教育や卒後臨床研修だけでは学ぶことが難しい,指導医に必要なリーダーとして医療チームを率いる技術や教育する技術を,「リーダーシップ」「マネジメント」「教育」の3つの側面から解説した本。

2014.03.02

本の紹介『日本人研究者のための120%伝わる英語対話術』

日本人研究者のための120%伝わる英語対話術〜ネイティブの発音&こなれたフレーズで研究室・国際学会を勝ち抜く英語口をつくる!
浦野 文彦 Marjorie Whittaker Christine Oslowski
羊土社

ワシントン大学でPIとして活躍される浦野博士が、発音教育で有名なWhittaker先生と、アメリカと日本の研究室での経験があるOslowski先生が書いた本です。

解説編では日本人が苦手な発音やコミュニケーションのコツ、役立つフレーズなどを紹介。実践編では、実際の場面を例に、ラボなどで役立つ実践的な英語表現を学べるほか、注意したい発音のポイントも解説しています。音声も羊土社のウェブサイトからダウンロードできます。

留学が決まった方、留学までの1ヶ月、徹底的に、この本をやってみてはいかがでしょうか。

2013.12.16

2013年12月積ん読本

今月は、結構、読書時代がはかどっていて、積ん読本というか、ほとんど既読本の紹介となります。

タイトルは、もちろん『もしドラ』のぱくりです。私も、ビジネス書や自己啓発本は結構読んでいるので、期待して読みました。しかし、実際には、ご自身のこれまで歩んでこられた道の紹介ととLifehackを紹介されたにとどまっています。ビジネス本と研究者の仕事術を有機的に結びつけたホントしては名著である『研究者の仕事術―プロフェッショナル根性論』をおすすめしたいと思います。

教場
教場
posted with amazlet at 13.12.16
長岡 弘樹
小学館

去年は『64(ロクヨン)』と『ソロモンの偽証』という鉄壁の2冊があったのと打って変わって、今年は、ミステリー界にとっては不作と言われているらしいです。『このミス』第2位、『週刊文春ミステリー』第1位のこの本を読んでみました。警察学校という舞台設定も、短編の連作で一冊に仕上がっている点も、ちょっと変わった一冊です。この本が、あまり、私の好みの本ではありませんでした。

医学部の大罪 (ディスカヴァー携書)
和田 秀樹
ディスカヴァー・トゥエンティワン

和田先生による、医学部批判の本です。的を得ている部分もあれば、的外れな部分もあり。

私は堀江さんの考えには共鳴することがかなりあります。誤解されてしまっている部分も多い方だと思いますが、今回は、丁寧に説明して誤解を受けないようにしていくそうです。これからの活躍に期待しています。

連続企業爆破事件を追ったノンフィクション。

Light Mellow和モノSpecial ~more 160 items~
金澤寿和 + Light Mellow Attendants
ラトルズ

この本が手に入って、すごくうれしい!絶版になっていて、中古だと数万円していた本が、改訂されて再発売。私の音楽の原点はなんなんだろうと思っていたのですが、それが、80年代のシティポップスであったことを再確認できました。ただただ、Light Mellowなアルバムの名盤を紹介している本です。

長崎の教会
長崎の教会
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白井 綾
平凡社

この本読んだら、また、長崎の教会巡りに出かけたくなりました。前回、半分は回らずに残しておいたので、近いうちに、是非。

インターネットで医楽しよう
諏訪 邦夫
中外医学社

インターネットでと書かれていますが、インターネットの記事などを参照しながら、書かれていますが、インターネットはどうでもよいというか、諏訪先生のエッセイです。諏訪先生は、本当にたくさんの著作を書かれています。私のアンテナにひっかかる本もたくさんあります。麻酔科を本業とされている先生で、いつかお会いしてみたいと強く思います。2011年11月に山道からの滑落事故に遭われ、幸い、神経麻痺などにはならなかったものの、極端に意欲が落ちてらっしゃると前書きに書かれています。

2013.11.27

本の紹介『もしも心電図が小学校の必修科目だったら』

発売して、すぐに購入して、パラパラと読んで、しばらくほっておきした。でも、ここのところ、ずっと、ベストセラーにランキングされていて相当売れているようで、先週末の福岡出張の時に通読しました。

香坂先生は、我が慶應の若きエース循環器内科医で、教育の場面では、一緒に仕事をさせていただくことも多いです。本書は、彼が、医学界新聞で連載していた「循環器で必要なことはすべて心電図で学んだ」をまとめたものです。まとめるときに、「もしも心電図が小学校の必修科目だったら」というタイトルをつけて、各科目に配置し直したというのは、なかなか、よいアイデアでしたね。心電図をマスターするというより、心電図を通して、循環器内科を俯瞰するような内容です。体系的と言うより、一つ一つが独立したエッセイのようでもあり、彼の循環器内科の知識の深さとウィットが、大変知的興味をくすぐる一冊になっています。

この本読んでいたら、私も「電解質の深イイ話」という本でも書いてみたくなりました。

2013.11.02

本の紹介『東大病院研修医』

前の2作「東大脳の作り方」「東大医学部–医者はこうして作られる」も興味深く読みましたが、前二作では、「桜蔭の1番、現役で東大理科三類」という著者のイメージが前面に出た印象を受けました。

本書では、彼女の2年間の初期研修(市中病院で1年、東大病院で1年)の様子が描かれています。当初、「精神科か皮膚科」を志望していた彼女が、意外にも外科を選んだ過程が書かれています。エピローグで書かれていた文章が印象的でしたので、引用します。

「余裕のない中でも、素直さと謙虚さを失わず、求められる仕事に真摯に向き合えること。メンタルが荒んでも仕方のない毎日でも、穏やかでフラットな精神状態を保ち、他人に優しく、自分に厳しくいられること。
こう書いていると、まるで聖人君子を目指すような気分になってきますが、そういう人になりたいから外科を選んだんだろうし、それで間違ってなかったと思っています。自分も、つくづく面倒なプライドを持ったものですが、そのストイックさを枯らせたら、自分ではないなあと言う気もします。
ライフワークバランスがもてはやされて久しい世の中ですが、いろんなものと折り合いつけて働くなんて、もっと年を取ってからでも、いくらでもできます。まだ若いうちから、仕事で傷つかない生き方なんて、心底つまらないと思います。努力の対価が点数で付く世界でずっと生きてきて、バランスと能率に縛られていた私を変えたのが、二年間の初期研修でした。
医者の仕事は、はっきり言って非効率とアンバランスの塊です。そこで多少の自己犠牲を厭わず、本気で立ち向かうからこそ、この仕事は尊いんだと思います。どこまでやれるのかは未知数ですが、たとえ自己満足でもいいから、守りには入りたくないです。新たな場所でも自分らしさをついえさせず、毎日を嘘のない笑顔で、働いて行ければと思います。」

もちろん、研修医の労働環境が非人間的であるべきだとは思いませんが、自分のことを振り返ってみれば、365日休みがなく、週のうち半分以上が当直で忙しかった1年目の研修医のときが一番充実して楽しかったです。毎日、たくさんのことを覚え、少しずつ先輩や同僚、まわりの医療職、患者さんの信頼を獲得していく喜びを感じた一年でもありました。初期研修は、どんな病院でやるのでも、どんな診療科でやるので、とことんやってみれば、自分の思ってもいなかった部分が引き出される可能性もあります。

2013.10.23

本の紹介『安部公房とわたし』

安部公房とわたし
安部公房とわたし
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山口 果林
講談社

この本、言ってみれば暴露本です。著者の山口果林は安部公房と不倫関係にあり、安部公房が山口果林のマンションで倒れ亡くなるなど、十分にセンセーショナルでした。

でも、安部公房がなくなって20年も経つと、暴露本の放つ毒のようなものはかなり薄まっています。安部公房研究家にとっては、新しい事実も明らかになるという意味では一級の文献とも言えるでしょう。

でも、どこかもの悲しくて、暴露本なのか、安部公房を振り返る本なのか、山口果林の自伝なのか、よくわからなくなりましたが。やはり、ただの山口果林の自伝なのだと思います。

文章もどこかまとまりがなくて、落ち着かないのですが、230ページに紹介されている、安部公房没後十年を記念して、郷土誌「あさひかわ」に投稿した「安部公房氏と旭川」という文章は抑制が効いた素晴らしい文章だと思いました。

2013.10.18

本の紹介『流星ひとつ』

流星ひとつ
流星ひとつ
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沢木 耕太郎
新潮社

『流星ひとつ』は34年前に沢木耕太郎が直前に電撃的な引退を発表した藤圭子におこなったインタビューによるノンフィクションです。結局、沢木耕太郎は思うところがあって、この本は出版せずに、1冊だけ作って、アメリカに渡った藤圭子に渡しただけでお蔵入りになっていました。今回、藤圭子がなくなったことを機に出版されたものです。

このノンフィクションの一番の特徴は、すべてがインタビューの会話文だけで構成され、地の文がまったくないことです。芸能界、マスコミ不信に陥っていた藤圭子と、丹念に会話を重ねて、彼女の魅力が引き出されています。

2013.10.16

腎臓内科学推薦図書アップデート

腎臓内科学の教科書

体液異常と腎臓の病態生理
ヘルムート・G. レンケ ブラッドリー・M. デンカー
メディカルサイエンスインターナショナル

Renal Pathophysiology: The Essentialsの第2版の翻訳です。RoseとRennkeによる第1版からRennkeとDenkerが引き継ぎ、10年ぶりに改訂されたました。本書は生理学の観点から、腎臓病の病態生理を解説した本です。そのまま臨床に役立つ、というわけではありませんが、1週間くらいかけて、本書をうんうんうなりながら、考えながら、読み終えると、腎臓内科学の理解に一段あがった自分に気づくと思います。

腎臓専門医を目指す人向き。

Comprehensive Clinical Nephrology: Expert Consult - Online and Print, 4e
Jurgen Floege MD Richard J. Johnson MD John Feehally DM FRCP
Mosby

以前は、腎臓内科の教科書と言えば、BrennerのKidneyでしたが、今では、本書がもっともアメリカでも読まれている教科書です。図や表も見やすく、よい教科書だと思います。数年に一度改訂されており、アップデートされています。

水・電解質・輸液

水・電解質、輸液は、どの科でも必要な知識であるにもかかわらず、多くの研修医が苦手意識を持っているため、良書を探しています。たくさんの書籍の中から、以下の4冊の本をおすすめします。(一応、私も水・電解質の専門家と自称しています)

書籍ではないので、ここではとりあげていませんが、臨床の現場で、もっとも使える水・電解質のマニュアルはUpToDateです。UpToDateを始めたBurton Roseは水・電解質の第一人者であり、UpToDateの水・電解質のほとんどの章は彼が書いています。

輸液を学ぶ人のために
和田 孝雄 近藤 和子
医学書院

私の研究室の大先輩である和田孝雄先生の本。学生時代にご自宅にお邪魔したこともあったのですが、残念ながら、若くしてお亡くなりになりました。和田先生は、多くの「水電解質」の本を書かれていますが、改訂されることがなくなっているにもかかわらず、今でも売れ続けています。

和田先生の著作の中でも、もっとも売れている本が、本書です。和田先生が看護師の方2人に、輸液の基礎を講義していくというスタイルの本です。とても読みやすく、頑張れば1日で読み切れるような本ですが、私は、輸液の考え方を学ぶのにもっとも適した本だと思い、多くの研修医に推薦しています。

輸液の考え方を学びたいという初期臨床研修医向け。

電解質輸液塾
電解質輸液塾
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門川 俊明
中外医学社

初学者がいきなり、柴垣先生の「より理解を深める!体液電解質異常と輸液」に入れないだろうと思って、そこまでのつなぎとして私が書いた本です。症例ベースで使うなど、初学者でもクリアカットに理解できるような工夫をしていますので、学生、初研修医の方におすすめです。

私の友人でもある柴垣先生が書いた、この本は、本当によくできた本です。レベルとしては、腎臓専門医を目指す人向けと言っていいと思いますが、日頃感じる、水・電解質の疑問のほとんどに答えてくれます。私自身、本書を隅から隅まで読み込んで、自分の知識のブラッシュアップに非常に役立ちました。柴垣 有吾先生の、アメリカ仕込みの臨床腎臓病学の知識は、他の書物と一線を画しています。短期間の間に第3版まで改訂し、最新の知見を盛り込もうとする彼の誠実さを表した良書です。

さらに勉強したい人は、是非、BUrton Roseが書いた名書である、本書に進んで下さい。アメリカでも、電解質を真剣に勉強する人は、みんなこの本を使っています。

マニュアル、ガイドライン

マニュアルとしては、本書がもっともよいと思います。アップデートも頻繁で現在、第6版になっています。

WM腎臓内科コンサルト (ワシントンマニュアル)

メディカル・サイエンス・インターナショナル
売り上げランキング: 914,843

ワシントンマニュアルのコンサルトシリーズ。腎臓専門医を目指す人向き。

CKD診療ガイド2012
CKD診療ガイド2012
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東京医学社
売り上げランキング: 35,810

このガイドラインは必読でしょう。

血液透析

私が書いた本です。本来、非透析専門医向けに書いたものですが、専門医を目指す人にも格好の入門書になっていると思います。発売以来、透析関連ではダントツで売れている本です

臨床透析ハンドブック 第4版

メディカルサイエンスインターナショナル
売り上げランキング: 327,527

さらにもう一歩進んだ内容を勉強するとなると、これでしょうか。ただし、アメリカと日本では、保険の制約など様々なことによって、異なることがあります。また、血液透析に関して言えば、日本の方がアメリカよりレベルが高いので、そういった意味でも、本書に書かれた医療がベストプラクティスではないということも頭の片隅においてお読み下さい。

透析患者への投薬は、なかなか難しい。本書の総論を読んで、考え方を学び、実際の投薬の際には随時、本書で確認することが必要。必携の一冊。

腎病理

腎生検診断Navi
腎生検診断Navi
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片渕 律子
メジカルビュー社

初心者向けの腎病理の本としては、これをおすすめします。

腎病理の本でもっともたよりになるのが本書です。ただし、プリント版は現在、絶版になっていて、電子書籍のみ手に入ります。2014年中には、改訂版が発行される予定です。

2013.09.30

2013年9月積ん読本

9月はだいぶ本を読んで紹介しましたが、読む冊数<買う冊数なので、積まれる本の山がどんどん高くなっています。

敬愛するSFCの秋山美紀先生の著作。秋山先生が関わられたコミュニティヘルス活動を紹介しながら、課題解決に役立つ方法や具体的なヒントが提示されています。

戦士の休息
戦士の休息
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落合 博満
岩波書店

落合氏が、こんなに映画好きだったとは知りませんでした。野球以外趣味がないとご自身でも仰る中で唯一とも言える趣味が映画鑑賞だそうです。彼のベスト10は

  1. チキチキバンバン
  2. 白い恋人たち
  3. ゴッドファーザー
  4. アラモ
  5. 黄色いリボン
  6. ローマの休日
  7. マイフェアレディ
  8. 007シリーズ
  9. 黒部の太陽

だそうで。10位は、今後生まれる名作のために、あえて空席としています。

Evernoteとアナログのメモを療法使うことで、アイデアを生み出すという本。私の今のやり方によく似ていて、合点がいきます。

臨床研究の道標(みちしるべ)―7つのステップで学ぶ研究デザイン
福原 俊一
特定非営利活動法人 健康医療評価研究機構

福原先生が主催される「臨床研究デザイン塾」は、ずっと参加したいと思っているのですが、なかなか都合が付かないうちに年齢制限で参加できなくなってしまったので、本書を買って、臨床研究の基礎を学んでいます。とても良い本です。

襲名犯
襲名犯
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竹吉 優輔
講談社

江戸川乱歩賞受賞作はあたりはずれが大きい。どっちかというと自分的にははずれが多い。

この本、コンパクトだけどすごくいい本です。ビジネスコンサルがよく使うツール、SWOT解析とか、オズボーンのチェックリストとか、セブンクロス法とか、コンパクトに69個紹介しています。私は、個人的には、あんまり好きではないのですが、教育の世界にも結構使われているので、こういう本が一冊あるととても便利です。

こういう本は、もう買うのはやめようと思いつつも、立ち読みでぱらぱらしていたら、ずいぶん納得する部分があって、買ってしまいました。「引き受けた仕事は、その場で5分間だけすぐやる」というのは、なかなかよいアイデアだと思います。

吉田類、なぎら健壱、太田和彦とかと、酒場を巡る本。最後に乗っていた、よい酒場リストがうれしい。

村上春樹が絡んだ本を手当たり次第買うのもどうかと思いますが、村上春樹が訳した短編のラブストーリー10編を集めた、短編集です。

最近になって、私は小説よりノンフィクションが好きなのだと分かってきました。特に、社会の裏側の話が好きです。

ここに書いてあることなかなか参考になりました。スライドに必要な情報は

  1. メッセージ
  2. グラフ/チャート・表のタイトル
  3. グラフ/チャート・表
  4. 脚注
  5. 出所
  6. ページ番号

の6つ。通常、僕らが、スライドタイトルにしている部分に、メッセージを2行以内で入れるというのがボストンコンサルティングの流儀らしいです。

もう、手に入りにくくなっているので、とりあえず、古本で手に入れておきました。

そして日本経済が世界の希望になる (PHP新書)
ポール・クルーグマン
PHP研究所

アベノミクスの理論的支柱であるノーベル賞経済学者が「ロールモデルとしての日本」の可能性を語り尽くした一冊。

この本、マウスを扱う研究者必携の本です。最近の、学研メディカル秀潤社はヒット続き。

2013.09.23

本の紹介『波紋と螺旋とフィボナッチ: 数理の眼鏡でみえてくる生命の形の神秘』

この本、秀潤社の方に、いただいたのですが、はじめはまったく期待していませんでした。私は、ヘタレ研究者でもあるのですが、なにしろ、科学の読み物が苦手。一般的な科学の素養がありません。

でも、この本、おもしろかった!

本書は、『細胞工学』の人気連載「こんどうしげるの生命科学の明日はどっちだ!?」が待望の単行本化ですが、生物の形や模様が決まる精妙なメカニズムを解説した本です。生物が相似形を保ったまま大きくなるためにはどうしたらよいのかを、亀の甲羅を用いて説明。貝殻の形を決めている等角螺旋運動の話。shくぶつの至る所に現れるフィボナッチ数の話。そして、近藤滋先生の研究テーマでもある、体の模様の数理的解析。シマウマのシマはどうやって作られているかを数理的に説明する、チューリング波の話。あまりに見事なので、ちょっと、感激しちゃいました。

「研究論文や申請書におけるジンクピリチオン効果」の話など、近藤先生の軽妙で楽しも満載の一冊です。近藤先生は、今年の分子生物学会の会長ですが、きっと楽しい大会になるでしょう。

2013.09.17

本の紹介『バイオ研究者が生き抜くための十二の智慧』

PIも研究以外の雑用で忙しい。でも、世の中には、このような雑用を簡単に片付けるためのノウハウを持ったスマートなPIがたくさんいます。本書は、中山敬一先生をはじめ錚々たるPIが、PIの仕事術を紹介した本です。かなりおもしろかったので、詳しく紹介します。

第 1 章 ラボノートの書き方

東京大学の水島昇先生は、ラボノートの総目次を定期的に作ることを勧めています。

第 2 章 試薬・実験データの管理

医科歯科の鰐田先生のラボでは、試料管理ソフトとして、ダイナコム社のLab Secretaryというソフトを使っているそうです。どんなソフトかちょっと興味があります。ver 4ということなので、結構浸透しているのかも知れません。

第 3 章 書類整理術

慶應の佐谷秀行先生の書類整理術は、(1)捨てる、(2)生の書類として「超」整理術の方法で封筒に入れてキャビネット保管、(3)スキャンしてEvernoteに飛ばす、(4)PC内のフォルダに整理してDropboxで保管。なかなか機能的で、しかも無理がなく、クラウドを利用しているので便利そうです。

第 4 章 EndNote を活用した文書作成術

九州大学の中山敬一先生がEndnoteを使って、業績集の作り方を紹介しています。

第 5 章 マテリアルリクエストへの対応

九州大学の中山敬一先生は、これまで、2000件あまりのリクエストに応えてきましたが、大切なことは、どんどん配ってしまう、マテリアル供与の見返りとして共著を要求することは原則としてしないということだそうです。手間を減らすために、簡易版のMTAや公的バンクに供託することを勧めています。

第 6 章 論文レフェリーコメントと闘う心構え

大阪大学の仲野徹先生がレフェリーコメントと戦う心構えを紹介されています。

第 7 章 論文レフェリーをこなす

九州大学の中山敬一先生は、論文レフェリーは、非常に憂鬱な作業であるが、それを断るのも良心が痛むと仰っています。しかし、断る場合には、「現在、他にたくさんの審査を抱えているので今回は勘弁して欲しい」「学会に出席するために2週間は外出するので対応できない」のどちらかの英文をコピペして使っているそうです。そして、必ず、別のレフェリーを推薦しているとのこと。実際に引き受けて、コメントを書くときには、(1)論文の内容のまとめ(Figureのタイトルをすべてコピペして、それをつなぎ合わせて、そこにいろいろと修飾語を付け加えたりして作っているそうです)、(2)全体的な印象とジャッジ、(3)個別の質問、(4)マイナーコメントという構成にしているそうです。文例もかなりたくさん紹介して下さっていますし、踏み込んだ内容で、いくつかのアイデアは使わせていただこうと思いました。

第 8 章 オーサーシップ

東京大学の水島昇先生がオーサーシップを決める原則について解説されています。

第 9 章 Skype でラボミーティング

テキサス大学の上野先生がSkypeでのラボミーティングについて話をしています。私も、最近になってはじめてSkypeミーティングを経験しましたが、画面共有などを使えば、かなり使い勝手は良いと思いました。より快適なWebミーティングにするには、Skype Premiumアカウント、または、GoToMeetingやWebExというサービス(これらはホスト以外はアカウントが不要という利点があるが、料金は高額)があるそうです。

第 10 章 Journal Club

東北大学の中山啓子先生は、ご自身のラボでやっているJournal Clubのやり方について詳細に紹介して下さっています。

第 11 章 メディアを介した研究成果の発信

東京大学の東原和成先生が、メディアの取材への対応について解説されています。

第 12 章 プレスリリースの書き方

生理学研究所の小泉周先生が、プレスリリースの書き方について、かなり詳細に解説されています。私も、最近、そのような仕事のお手伝いをしているので、さっそく、使わせていただこうと思いました。

番外編 
 ①ベンチワークの匠:ヒト型ロボット研究員『まほろ』
 ②マウス系統の寄託と提供~(理研BRC 編)
 ③バイオラボ秘書の仕事術

本書は、細胞工学の連載をベースにして、書き下ろしを加えて一冊にまとめたものです。あけすけな中山先生の記事をはじめ、私は大変おもしろく読ませていただきましたが、もう少し価格が安かったら良かったなぁと思いました。

2013.09.12

フィンランドの小学生による「議論のルール10」

フィンランド国語教育を5つのメソッドで解説する『図解フィンランドメソッド入門』を読んでいて、あっ、これいいなと思ったので、紹介します。

フィンランドの小学校で議論の時のルールとして、みんなで決めたことだそうです。

議論のルール

  1. 他人の発言をさえぎらない。
  2. 話すときは、だらだらとしゃべらない。
  3. 話すときに、怒ったり泣いたりしない。
  4. 分からないことがあったら、すぐに質問する。
  5. 話を聞くときは、話している人の目を見る。
  6. 話を聞くときは、ほかのことをしない。
  7. 最後まで、きちんと話を聞く。
  8. 議論が台無しになるようなことを言わない。
  9. どのような意見であっても間違いと決めつけない。
  10. 議論が終わったら、議論の内容の話はしない。

この本、薄い本ですが、なかなか良い本です。

図解 フィンランド・メソッド入門
北川 達夫 フィンランドメソッド普及会
経済界

2013.09.02

本の紹介『木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか』

この本、前から買ってあったのですが、大宅壮一ノンフィクション賞も獲得し、圧倒的な高評価なるも、この700頁近い厚さゆえ、読み始めたら、仕事に支障が出るだろうなと思い、なかなか、手をつけられずにいました。私は結構速読ではあるものの、完読までに1週間近くかかってしました。

13年間無敗で、「木村の前に木村なく、木村の後に木村なし」とまで言われた圧倒的な強さをもった柔道家である木村政彦についてのノンフィクションです。彼が、なぜプロレスに転向し、力道山と戦うことになり、そして負けたのか。柔道を講道館柔道ではなく、寝技中心の高専柔道から見た本であり、力道山対木村政彦の巌流島対決を、力道山の視点ではなく、木村政彦の視点から見た本です。

筆者は、格闘技ライターで、本書はゴング誌で4年間にわたって連載されていた記事故、前半1/3はやや資料的な記述が多く、少々もたつきましたが、この本のメインイベントである巌流島対決のあたりからは、一気に読み進めました。本のタイトルも、絶妙だなぁ。もちろん、力道山を殺したのは、木村政彦ではありませんが、木村政彦は、自分の念で力道山を殺したと言っています。

噂通り、とてもおもしろい本でした。特に、格闘技に興味がある方は、必読の本でしょう。

本を読んでも読まなくても、日常の仕事にはなんら影響がないことが実証されましたので、これからは、がんがん本を読んでいきたいと思います。

2013.08.30

本の紹介『Dr.夏秋の臨床図鑑 虫と皮膚炎』

Dr.夏秋の臨床図鑑 虫と皮膚炎
夏秋 優
学研メディカル秀潤社

月曜日の外来には、週末に虫刺されになった人とかがよく来ます。私自身、あぶとぶよの違いも分からないような人間なので、通り一遍の手当しか出来ないのですが、この本を見て、考えを改めました。たまたま本屋で見つけ、12000円もしたのですが、夢中で読みました。この本は、「虫による皮膚疾患のアトラス」であると同時に、「人に皮膚炎をおこす虫の図鑑」でもあります。Dr. 夏秋、直接は存じ上げませんが、間違いなく、虫オタクだと思います。しかも、出版社が学研というのがいけています。

この値段なのに、発売2ヶ月で5500部売れているらしいです。

2013.08.29

本の紹介『医療関係者のための Google & クラウド活用ガイド』

Gmail、Google検索、Google Scholar、Googleカレンダー、Mendeley、Google Drive、ストレージサービスといった感じ。紹介されているサービスも、かなりGoogle寄り。

どれも丁寧に解説されているけど、「あっ、こんな使い方もあるのね」といった驚きが少ない本でした。どちらかというと、「○○がしたい→△△のサービスを使えば、こんな使い方が出来るよ」というLifehackの紹介が中心の本の方が私は好きです。

2013.08.23

本の紹介『科研費獲得の方法とコツ 改訂第3版~実例とポイントでわかる申請書の書き方と応募戦略』

この本、羊土社の中でも、相当なヒット本になりました。しかも、児島先生はとても真面目な先生なので、毎年ルールの変わる科研費の仕組みを、webでもフォローし、そして、毎回大改訂をおこなって、改訂第3版まできました。

科研費申請書を初めて書く人、いつも採用されない人は、絶対、読むべきです。科研費の審査の仕組み、通る科研費申請書の書き方が分かります。これ読まずして、毎年落ちているというのはもったいない。少なくとも若手Bは業績をあまり問われないのですから、アイデアと書き方次第です。

私は、今年は、更新年ではないので、他人事のような気分ですが。

2013.08.18

2013年8月積ん読本

7月は本の紹介やりそこねたので、たくさんたまっています。

「迷ったら、二つとも買え!」書店で見たとき、私と同じような人がいると思って、買ったのですが、読んでみたら、全然私とは違いました。買いたいと思ったら、迷わずに、買うべきと言う信念は私と同じ(もちろん、買い物の金額は、島地さんに比べて1桁少ないです)ですが、決定的に違うことがありました。それは、私には所有欲というものがないということ。つまり、コレクションして、部屋に飾って愛でるという気持ちはまったくありません。だから、使うつもりのものしか買いません。ただ、実際に買ってみて使い物にならないことに気付くことが多く、その点、浪費家であることは否定しません。

真夏の方程式 (文春文庫)
東野 圭吾
文藝春秋 (2013-05-10)

映画を見た後、原作はどうなっているんだろうと気になって、読んでみました。驚いたことに、映画は、原作にものすごく忠実です。あえて言えば、前田吟がちょっと違うかな。杏は彼女しかいないというくらいはまっています。で、内容はどうかと言えば、いまいちかなぁ。私は東野圭吾は好きですが、ガリレオシリーズはあまり好きではないのです。

永遠の0 (講談社文庫)
永遠の0 (講談社文庫)
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百田 尚樹
講談社

4年前から読まずに積んで置いたのですが、ついに読みました。おもしろいとはおもいますが、私は戦争物はあまり好きではないので、、、、。

ハードカバーの時に読みましたが、もう一度読みたくなって、文庫を買い直しました。

ここまで、くると、「キャリアポルノ」とか言っていられない。林さんががすごいことは認めるけど、自分は、ここまで押し出せないなぁ。そういえば、情熱大陸に出ていた林真理子さんの執筆スタイルに完動しました。原稿用紙に黒のサインペンで原稿を書くのですが、その早さがすごい。原稿用紙1枚を1−2分で書き上げていました。やっぱり、天才なので、このくらいのこと言っても許されます。

医療安全がらみの勉強をしている中で、読みました。

敬愛する山本雄士先生の著作。「投資型医療」を実現するために、以下の7つの提言をされています。
1. 社会全体でイノベーションを促進しよう
2. 病気にならない、病気にさせないための投資をしよう
3. 開かれた医療でケアの勝ちを追求しよう
4. 情報の集約と開示をしよう
5. 資源の最適再配置をしよう
6. 政策立案と合意形成のプロセスを進化させよう
7. Small-Winを広げよう

私が、今まで習ってきた中でもっとも強烈なインパクトを残された土屋先生のこんな本があると見つけて、思わず買ってみました。でも、タイトルの「ミイラとなって昭和に出現」の部分はいらないのじゃないかと思いました。中身は、ごく普通の、福沢諭吉と医学の接点を丁寧にたどった本です。

2013.08.11

本の紹介『後世への最大遺物・デンマルク国の話』

最近、年月を加算式で考えることより、減算式で考えることが多くなってきました。自分は、今まで何年かけて○○をやってきたという思考パターンではなく、あと自分に残された時間はどのくらいだろうから、その中で何をやっていけるかという思考パターンです。

47歳という年齢は、日本人の男性の平均寿命からみても、半分以上が過ぎていることは間違いありませんし、生きている間、すべての時間が健康で今と同じような頭脳を保てるわけではありません。今年、大きな怪我をして、ほんとに、自分に残された時間で、何をしたいか。やっぱり、本当に自分が好きなこと、自分がやるべき事にきちんと時間を使っていこうという思いが強くなりました。

さて、この本は、内村鑑三が、明治27年におこなった講演「後生への最大の遺物」という講演と、明治44年におこなった講演「デンマルク国の話」の二編が収録されています。本当は、「デンマルク国の話」に惹かれて、この本を購入し、読み始めたのですが、私にとっては、「後生への最大の遺物」の方がおもしろかったです。後生へ残していくべき第1のものは金である。金を貯める才能がなければ、事業である。事業をなす社会の位置もなければ、思想である。本を書くこと、または、教えることによって、思想を残す。思想も残せないとしても、誰にでも出来ることがある。それが、勇ましい高尚なる人生を送るということである。と説きます。

金を貯める才能はないと思いますが、何か、事業を残し、自分の思想を残したいという気持ちは強くあります。あんまり、迷っている時間はないので、突き進みましょう。

2013.06.25

本の紹介『モチベーション3.0』

医師のキャリア、生涯教育について、Facebookに1週間ほど前に以下のように書きました。

従来、頼りになった組織は、これからは、だんだん、危うくなっていくので、ゆるやかなつながりを大切にしていきたいと思います。また、そのような社会の変わり目に対応できるような柔軟さを身につけていなければいけないと思います。そして、今まで高いハードルだと思っていたものはずいぶん低い垣根になっているので、勇気を持って飛び越えられるしなやかさを持ち続けていたいと思います。

そしたら、一つ、質問されました。「組織が頼りにならなくなり、つながりと言っても、そちらもずいぶん頼りがいがなさそうに思えます。今後、どうやって、自分のキャリアや学習を考えていけば良いのでしょうか?」。答えになっているかどうか分かりませんが、是非、ダニエルピンクの書いた、『モチベーション3.0』を読んでみて欲しいと思います。

彼の主張をまとめておきます。

社会や人を動かす基本ソフト(OS)として、人類最初のものは、生存を目的とする原始的なものだった。生理的動因がすべての行動を規定していた。この初期のOSをモチベーション1.0と呼ぶことにする。19世紀以降、いわゆるアメとムチに基づく、与えられた動機づけによるモチベーション2.0が導入された。このOSはルーチンワーク中心の時代には有効であったが、21世紀を迎えて機能不全に陥っている。21世紀のモチベーションは自分の内面からわき出る「DRIVE」に基づく、モチベーション3.0が有効である。モチベーション3.0には三つの重要な要素がある一つは、自律性(オートノミー)、自分の人生を自ら導きたいという欲求のこと。二番目は、熟達(マスタリー)、自分にとって意味のあることを上達させたいという衝動のこと。三番目は目的、自分よりも大きいこと、自分の利益を超えたことのために活動したい、という切なる思いのこと。

もちろん、社会の組織が、いきなり、すべてモチベーション3.0に置き換わらないと思っています。でも、モチベーション3.0的な考え方を身につけることは、これからの世の中を渡っていく、しなやかさを身につけることに必要なことと思います。

2013.06.16

2013年6月積ん読本

木曜日あたりから、急に自分探しの読書の旅に出たくなって、乱読。

結論から言えば、一番期待していた、ちきりんさんの「未来の働き方を考えよう 人生は二回、生きられる」には、ひどくがっかりし、「一生モノの勉強法―京大理系人気教授の戦略とノウハウ」もがっかり。「中央線がなかったら 見えてくる東京の古層」と野村監督の「監督の器 」はけっこうおもしろくて、平野啓一郎氏の「私とは何か――「個人」から「分人」へ」が、腑に落ちて、旅は終了。

最近、仕事がたまっているせいか、本を読んでいても、入り込めない自分がいます。

40代を境目に、二種類の人生を生きようという本。かなり期待していたけどがっかり。前半の、今まで当たり前だったことが、当たり前でなくなっていることは、よくわかりました。でも、この本の主張である「人生を2回生きる」というのは、1回目の人生でそこそこ成功しなければ、2回目の人生は難しいと思う。ちきりんさんは、1回目の人生を元手に2回目の人生を模索しているわけだから、まったく違う人生を生きているわけではないと思うんですよね。

私も、仕事場での顔、学生向けの顔、家での顔、遊びでの顔、まったく違うからなぁ。

中央線がなかったら 見えてくる東京の古層
陣内 秀信 三浦 展
エヌティティ出版

まさにブラタモリの世界。暗渠マニアになりそうです。もう少し、歩けるようになったら、暗渠をたどりたいと思います。中央線沿線にお住まいの方にはおすすめ。

監督の器 (イースト新書)
監督の器
posted with amazlet at 13.06.16
野村克也
イースト・プレス

私、野村監督の解説って結構好きなんですよね。古田が、あれだけ野村監督に教育されたけど、もともと、捕手向きの性格ではなく、目立ちたがり屋で、投手のような性格だった。野村監督の教育が活かされたのは、リードより、打撃であり、投手のような性格は、ちょうど戦力が低下して、堪え忍ばなければ行けない状態のヤクルトの監督になってもうまくいかなかった。とか、おもしろかったです。

あまり参考にならず。

がっかり。

まだ、手つかず。

2013.06.06

本の紹介『「寄り道」呼吸器診療』

この本を見て、「やられた」と思いました。実は、この何年間も、私がやろうと思っていたことをこの本の著者に実際にやられてしまったからです。

私は、この数年間、きちんと腰をすえて、腎臓内科の臨床をしっかり勉強したいと思っていました。もちろん、持続力がなく、努力も下手な人間ですので、なんらかのメディアを使って、自分を律する必要があると思っていました。その方法として、Journalに掲載された腎臓病の臨床に関わる気になる論文を取り上げ、ブログで紹介するということをやりたかったのです。そのために、ドメイン(nephrology.jp)も用意して、Wordpressをインストールしてありました。でも、私が教育の部署に移って、すっかり、そんな時間もとれなくなってしまい、このプロジェクトは頓挫しておりました(今でも、開始したいという意思は持っていますが)。

本書の著者の倉原氏は、卒後7年目の若手の呼吸器専門医で、まさに私がやろうとしていたことを、「呼吸器内科医」というブログでおこなっていました。私は知らなかったのですが、今、読んでみると、とても質の高く、毎日更新されている素晴らしいサイトです。

かねがね、後輩が、どうやって臨床の勉強をしたらいいですか?と聞かれたときに、アウトプットを定期的に出すような工夫をするのがいいと答えていました。その方略の一つが、ブログであるとも、言っていましたが、みんな?という顔をしていました。

「寄り道」呼吸器診療の本の出来が、すべての人に勧められる呼吸器内科の定番本かと言われれば、NOかもしれません。少なくとも、呼吸器診療全体をオーバービューするという目的の本ではないと思います。しかし、どのReseach Questionも、実際に呼吸器診療をおこなう際にわき起こる純粋な質問であり、それらに一つ一つ文献を上げながら、エビデンスをまとめています。エビデンスを集めて、無理矢理答えを出してしまうのではなく、分からないものは分からない、悩ましいことは悩ましいままにしてあるところも好感が持てます。著者が呼吸器診療を行う上での疑問を解決する過程そのものが、一冊の本になったと言えます。

著者紹介に書かれた、「子供の頃からの夢だった医師になることができ、自分を支えてくれたあらゆる人に感謝している毎日です」という言葉が、素敵ですね。

私も、子供の頃から医師になるのが夢でした。こうして夢を叶えられていることに、もっと感謝して、真摯な気持ちで医学、医療にもう一度向き合いたいと思いました。

というわけで、この本の紹介と言うより、倉原医師の医師としてのありように感銘を受けたことを紹介する記事になってしまいました。

2013.06.05

本の紹介「レジデント必携!知っておきたいメンタルケアの知識」

まだ、若手の精神神経科医の方のようですが、前著の「一般臨床医のための メンタルな患者の診かた・手堅い初期治療」の時から、注目していまして、非専門医に上手に、精神神経科領域の知識をわかりやすく伝えてくれる良書です。聖路加でしっかり内科医としてのトレーニングを受けている著者だから、内科医が手を出すべきものと、専門医にゆだねるべきものを明確にしてくれており、安心感があるのでしょうね。特に、私のように、きちんと精神神経科のトレーニングを積んでいないような人間には、一冊目としておすすめです。

2013.05.12

本の紹介『プレイフル・ラーニング』

プレイフル・ラーニング
上田 信行 中原 淳
三省堂

本書は、様々なオルタナティブな学びの場づくりの実践を繰り返してきた、同志社大学の上田伸行さんの実践の歴史、彼が影響を受けてきた理論や思想の歴史を東京大学総合教育研究センター中原淳さんが紹介することで、クオリティの高い、革新的な「オルタナティブな学びの場」を作り出すために必要なことを紹介する本です。自分の教育の考え方がそれほど間違ってなかったことが確認できたと共に、ラーニングデザイン研究の理論的背景も学べ、とてもよい本でした。

東京大学総合教育研究センター中原淳による前書きが素晴らしかったので、長いですが、引用します。

「学び」や「教育」の言説空間において、ここ十数年で起こった変化を、3つのワードで端的に表現するとしたら、あなたは、何という用語を選びますか?

(中略)

仮に、僕が、この問いを投げかけられたとしたら、こう答えるかもしれません。それは「オルタナティブ」「インタラクティブ」「アマチュア」の3つのワードです。

「オルタナティブ」とは「既存のものとは別の」という意味であり、「インタラクティブ」とは「双方向性」、そして「アマチュア」とは「教育の非専門家」を示します。

3つのワードを選ぶことで僕が描き出したい、この10年の変化は、こういうことです。

つまり「教育の非専門家(アマチュア)が、自分の専門性や経験を元に、既存の(学校)教育ではない”オルタナティブな学びの場”を組織するようになってきた。そこに志や興味関心を同じくする人々が集い、双方向(インタラクティブ)のコミュニケーションを取りつつ、学ぶようになってきた」ということです。誤解を避けるために断言しておきますが、教育専門家の役割が低下したと言うことではありません。むしろ彼らの専門性はさらに高度なものが求められています。教育の専門家と連携/補完/役割分担するかたちで、教育の非専門家による学びの場の創出が増えてきているのです。

具体的には、組織外で開催される様々な勉強会や交流会。はたまた、キャリアやイノベーションなど、各種のテーマに基づき開催されているワークショップなどが想定できるでしょうか。近年「朝活(早朝に行われる勉強会)」という言葉も生まれました。都市全体を「大学」に見立てた自主的な学習共同体も出現しています。

子供を対象にしたワークショップも全盛期を迎えています。アートや造詣を行うワークショップ、プログラミングを行うワークショップ。様々なものが提唱され、実践されています。

これらの隆盛を支えた要因は、多種多様です。しかし、おそらくインターネットやソーシャルメディアが引き起こした「動員の革命」は、こうしたオルタナティブな学びの空間への周知に一役買っています。

かくして–現在では主に都市部が中心ですが–様々な人々が、自分の専門や経験を活かし、「単位にも学位にもつながらない学びの場」を組織するようになってきました。いわゆる「ワークショックバブル」と呼ばれるような様相を呈しているのが「現在」であると思います。

(中略)

しかし、一方、このバブル状況において、憂慮するべき事態も生まれてきているようにも思います。最大の憂慮すべき事態は、「クオリティが玉石混淆である」という点です。誰もが「教え手」になれるということは、必然的に「クオリティの格差」が生まれることを意味しています。一言で言えば、「それぞれの専門性や経験に根ざした素晴らしい学びの場」が生まれる一方で、「学びを生み出す以前のレベルの場」も存在する、ということです。

学習内容がそもそも不明確なまま、参加者に学びを強制し丸投げして、主催者側が自己陶酔しているパターンもあり得ます。不適切なファシリテーションによって、学習者を必要以上に混乱させていたりする事例は枚挙にいとまがありません。活動を詰め込みすぎて、内省を行う時間がないこともあります。また、あるところで自分が経験した教育手法を絶対化、教条化、固定化し、学習者に息苦しい学習機会を提供している場合もあり得ます。それらは「オルタナティブ」「インタラクティブ」「アマチュア」の3つのワードが必然的に抱えざるを得なかった負の部分です。それら3つの概念は、素晴らしい学びの機会を創出する一方で、他方、闇を生み出しうるものなのです。

2013.05.05

2013年5月積ん読本

素晴らしい天気のGWも、家での静養を余儀なくされているので、好きな音楽を聴きながら、読書三昧のGWを送っています。

今年の4月から、NHKのラジオで「英語で読む村上春樹」という放送が始まって、聞いているのですが、その題材が、「象の消滅」なので、買ってみました。こうやって、順番が組み直されると、印象が変わりますね。

小林秀雄の没後30年記念特集として、未発表の小林秀雄と河上徹太郎の対談音声がCDで付録として付いているということで買ってみましたが、私としては、養老孟司氏の『ウィーンと治療ニヒリズム』の方が興味深かったです。一昨年訪れたウィーン大学医学部のNarrenturmとJosephinumなどが紹介されていました。

キャパの十字架
キャパの十字架
posted with amazlet at 13.04.24
沢木 耕太郎
文藝春秋

NHKのテレビ番組はそれほどおもしろくなかったので、買うのを躊躇していたのですが、入院中にお見舞いでいただいたので、読んでみようと思っています。

考える生き方
考える生き方
posted with amazlet at 13.05.04
finalvent
ダイヤモンド社

極東ブログ』の作者であるfinalvent氏の著作。55歳になって、これまでの半生を振り返るという内容。沖縄問題や、リベラルアーツを学ぶことなど、結構おもしろかったです。

決められない患者たち
Jerome Groopman MD Pamela Hartzband MD
医学書院

著者のGroopmanはハーバード大学の医学部教授で、『医者は現場でどう考えるか』の著者でもあります。最善の選択はいかになされるかということを、多くの患者における選択のプロセスと通して語っています。興味のある方は、是非、HONZのレビューをお読み下さい。

かなり期待していたのですが、『ねじまき鳥クロニクル』を読んでいないと、すべては理解できないです。『ねじまき鳥クロニクル』を読んでから、読み直します。

地下鉄サリン事件の被害者に直接会って、話を聴くという形のノンフィクション。

現代落語論 (三一新書 507)
立川 談志
三一書房

古い本ですが、立川談志による落語論。落語はあまり得意ではないのですが、プレゼンテーションの勉強になるかなと思って、読んでいます。

読んでみて、自分が知っているお店が10%程度しかないので、すっかり、こういう世界からは隔絶されてしまったと思いました。

構造主義は苦手なので、まさに、寝ながら学びたいと思います。

この本は、良い本です。フルカラーで1000円を切っているので、コストパフォーマンスも高い。

プレゼンテーションに関する『実験医学』人気連載を書籍化したもの。

あの難解であるも名著であるサパイラが、須藤先生たちの苦労の末、翻訳されました。

同僚である、香坂先生の本。この本は、彼の本の中でも秀逸の出来です。心電図を勉強する本ではなくて、心電図を通して、循環器内科を俯瞰するような一冊。

またしても、香坂先生の本。

本書で紹介されている血液ガスの7ステップ解析は、はじめて見る解析手法です。初心者にはかえって難しいように思いましたが、自分でも検証してみたいと思います。

聖路加の長浜先生の編集によるもの。輸液の部分の基本的な部分は、教えるのが簡単なのですが、応用編となると、正解がない世界になるので、教えるのに苦労しています。本書は、その応用編にもかなり踏み込んでいますので、勉強させていただきたいと思います。

2013.04.23

本の紹介『診断のゲシュタルトとデギュスタシオン』

4月は、医学書マニアにとってはうれしい月。たくさんの医学書が出版されます。近年の出版不況のせいか、非常にアイデアにとんだ良書が多くなったと個人的に感じています。今日、ご紹介する『診断のゲシュタルトとデギュスタシオン』も、そんな良書です。

ゲシュタルトは、ドイツ語の「形」のことです。「見た目」と言った方がわかりやすいでしょうか。

その病気の患者さんを見た経験がある医師は、見ただけで診断が出来るけれども、見たことがない人には、好発年齢、性差、症状を伝えてもなかなか診断が思い浮かびません。そういう病像を全体としてとらえて診断することがゲシュタルト診断なんだと私なりに考えました。教科書からは学べないけれども、臨床の現場ではもっとも重要な臨床能力の一つです。以前、どの大学でもあった、患者さんに講堂に来てもらって行うような臨床はそのようなゲシュタルト診断を醸成するには有効な教育方法であったのでしょうが、現在では、そのような教育手法が行われることは少なくなっています。そういう意味で、ありそうでなかった、医学書です。

たとえば、偽痛風の章で、須藤先生は、偽痛風を「退院熱または転院熱」として遭遇することが多いと指摘されています。また、PMR患者が起き上がる様子のスケッチなどは、まさに、ゲシュタルトそのものでしょう。

この本が驚異的なのは、単著ではなく、たくさんの方が執筆している本にもかかわらず、非常によく出来ていると言うことです。これは、編者の岩田先生の力なのでしょう。

2013.04.15

『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』にとりかかります

手に入れるのが、ちょいと遅れました。

以前、bodyhacker氏に、村上春樹の著作をいろいろ勧めていただいたのですが、村上春樹氏のエッセイや短編はとても好きなのですが、長編は、読めるものと読めないものがはっきりしています。読めたのは、高校生の時に『ノルウェイの森』、最近になって『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』『1Q84』くらいです。いずれも、とてもおもしろかったです。『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』が発売される前に読了しようと思って、『ダンス・ダンス・ダンス』に再チェレンジしたのですが、読めませんでした。読めないというのは、10ページ、20ページと読み進めても放り出してしまうのです。

さて、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』はどうでしょうか。のってしまえば、一晩で読めてしまうと思います。

2013.04.11

『電解質輸液塾』上梓しました

私の著書7冊目となる単行本『電解質輸液塾』を中外医学社より上梓しました。

学生時代から、電解質の勉強は好きで、それゆえに、腎臓内科を自分のスペシャリティとして選び、研究グループも腎生理グループに入ったわけです。ずっと電解質の研究ばかりをしてきたわけではありませんが、Gitelman症候群など、ライフワークのように研究を続けています。

ご存じのように電解質というのは、奥が深く、学生や研修医でも苦手意識の強い分野です。電解質の教育は、私自身のライフワークと考えていました。昨年から、学生にも集中して教える機会ができ、これをきっかけに、本にまとめ上げようという気持ちが生まれました。

少し、本書のコンセプトを説明しておきたいと思います。電解質の教科書として、柴垣先生の『より理解を深める!体液電解質異常と輸液』があります。うちの教室の後輩たちには、この本で勉強することをすすめているのですが、初学者にはややハードルが高いようです。そこで、初学者が、柴垣先生の本に入る前段階の本を作りたいと考えていました。つまり、学生やレジデントがこの本のターゲットです。もちろん、ここをターゲットとした本には、黒川先生の『水・電解質と酸塩基平衡 Short Seminars』や、今井先生の『酸塩基平衡、水・電解質が好きになる』という大先輩の素晴らしい本があるわけで、私などは若輩者なのですが、その分、真摯に向き合って、工夫をしながら書き上げました。初学者だけでなく、もう一度、電解質を勉強しなおしたいという人にもおすすめしたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

電解質輸液塾
電解質輸液塾
posted with amazlet at 13.04.10
門川 俊明
中外医学社

2013.03.16

本の紹介「問題解決の心理学」

自分の研究テーマの一つとして、しばらくは「臨床推論」をやっていこうと思っています。今まで、推論の過程を言語化できなかったことがはがゆくて、認知心理学の観点から臨床推論を見直そうと思って、すすめていただいた入門書がこれ。慶應義塾大学前塾長の安西先生が1985年に書かれた本です。認知心理学そのものの入門書と言うことでなく、問題解決を認知心理学の多様知識をもとに論考を進めるというもの。すばらしい本です。ただし、まだ、私の中で、臨床推論に直接結びつけられていないので、もう何冊か読んでから、もう一度戻ってこようと思っています。

2013.02.24

2013年2月積ん読本

単行本は脱稿できたのだけれど、なかなか読書する時間は取れませんね。週に何冊も積み上がっていきます。

最近、ネット上で話題になっている2冊。どちらも、結構歯ごたえがありそうなので、まだ、手がつけられていません。

なめらかな社会とその敵
鈴木健
勁草書房

興味を持って買いあさっているのは、認知科学の入門書。

人はいかに学ぶか―日常的認知の世界 (中公新書)
稲垣 佳世子 波多野 誼余夫
中央公論社

次は、医療コミュニケーションの本

次は、生命倫理の本

ケースブック医療倫理
赤林 朗 家永 登 中尾 久子 森下 直貴 大林 雅之 白浜 雅司 村岡 潔
医学書院

医療倫理学のABC 第2版
服部 健司 伊東 隆雄
メヂカルフレンド社

あとは、雑多な医学書

病院の世紀の理論
病院の世紀の理論
posted with amazlet at 13.02.18
猪飼 周平
有斐閣

少し力を抜いたものも。この辺は、一瞬で読了できる。

児玉光雄の読むだけでテニスが上手くなる本
児玉 光雄
ベースボールマガジン社

2013.02.18

本の紹介「まんが医学の歴史」

まんが医学の歴史
まんが医学の歴史
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茨木 保
医学書院

この本、興味を持っていたのですが、今日、朝日メディカルを読んでいたら、作者の茨木先生のインタビューがあったので、買って読んでみました。

茨木先生は、産婦人科医にして、プロの漫画家。医事新報に載っている猫山先生の四コマ漫画で知られています。医者になってから、趣味の漫画を始めたのかと思ったら、はじめから漫画家志望で、手塚治虫先生にあこがれて、医学部に入ったそうです。医学部学生のときに、手塚先生に「俺みたいに半端物にならないで、きちんと医者になりさい」と言われ、産婦人科医になったそうです。それでも、少しずつ漫画の仕事も増えてきて、勤務医から開業したときの3年間くらいは、漫画家としての収入の方が多かったそうです。

ちなみに、この「まんが医学の歴史」は、医史学の入門書として大変優れたものです。医史学が好きで、自分で調べられ、5年間かけて書かれたという名作です。まんがということで侮ることなかれ、おすすめの一冊です。

2012.12.19

日野原先生が薦める「医学徒のためのベッドサイドライブラリー20冊」

ウィリアムオスラーは、医学生やレジデントが夜床につく前の30分間は、毎晩本を読むことを薦め、「医学生のベッドサイドライブラリー」として、『平静の心』の中で紹介しています。

  1. 旧約・新約聖書
  2. シェイクスピア
  3. モンテーニュ『エッセー』
  4. プルターク『英雄伝』『倫理論集』
  5. マルクス・アウレリウス『自省録
  6. エピクテトス『要録』
  7. トマス・ブラウン『医師の信仰・壺葬論
  8. セルバンテス『ドンキホーテ
  9. エマソン『エマソン選集』
  10. オリバー・ウェンデル・ホームズ『朝の食卓』シリーズ

日野原先生は、オスラーにならって、医学徒のためのベッドライド・ライブラリーとして、20冊の本を推薦されています。(*)は、20冊の中から、特に勧める7冊。

  1. ウィリアム・オスラー『平静の心』(*)
  2. マルクス・アウレリウス『自省録
  3. プラトン全集
  4. フーフェランド『医戒』
  5. シェークスピア『マクベス
  6. トルストイ『イワン・イリッチの死
  7. V. E. フランクル『夜と霧』(*)『それでも人生にイエスという
  8. M. ブーバー『我と汝
  9. E. エリクソン『老年期-生き生きしたかかわりあい
  10. サン・テグジュペリ『星の王子様
  11. H. ホイヴェルス『人生の秋に
  12. M. フーコー『臨床医学の誕生
  13. Cicely Saunders "Living with Dying".
  14. 細川宏『病者・花-細川宏遺稿詩集』(*)
  15. E. フロム『愛するということ』(*)
  16. 片山敏彦訳『リルケ詩集
  17. アン・リンドバーグ『海からの贈り物』(*)
  18. E. キャセル『癒し人のわざ』(*)
  19. 夏目漱石『思い出す事など
  20. 日野原重明『医の道を求めて-ウィリアム・オスラー博士の生涯に学ぶ
  21. P. タマルティ『よき臨床医を目指して』(あとから追加された)(*)

今年は、原稿に振り回されて、なかなか読書をする時間がなかったので、寝る前の30分は気持ちを落ち着かせて、これらの本を読んでいこうかなと思っています。

2012.12.18

本の紹介『日野原重明ダイアローグ』

2年前の富士研という医学教育者の研修合宿や、今年の医学教育学会などで、日野原先生に近く接する機会があり、日野原先生のすばらしさを知ることができました。

日野原先生のすばらしさは、たくさんあるわけですが、私が強く感じるのは、主張が首尾一貫変わらないこと。勤勉であること。そして、ユーモアがあることです。

日野原重明ダイアローグ
日野原 重明
医学書院

本書は、「医学界新聞」紙上に掲載された日野原先生の講演、対談、座談会などをまとめた本です。年代としては、1980年前後のものが多く、亡くなる1年前の武見太郎先生との対談もあります。30年も前なのに、どれも、まったく古くなく、日野原先生の主張は、今の医学界でも色あせていません。こうして振り返ってみると、医学教育、研修制度、プライマリ・ケア、ホスピス、診療録、臨床疫学の在り方など、日野原先生が、今日の医療の先駆者であることがよくわかります。

2012.11.26

2012年11月積ん読本

単行本の脱稿が遅れに、遅れ、なかなか本を読む時間もなくて、本もなるべく買わないようにしているのですが、衝動買いしてしまう本もあります。今月は、本当に、積ん読本。キーワードは、「意思」と「決断」。ちょっと、歯ごたえがある本も多く、どれも、はじめの数ページしか読んでいません。

64(ロクヨン)
64(ロクヨン)
posted with amazlet at 12.11.27
横山 秀夫
文藝春秋

広田さんも含め、絶賛の嵐。警察小説の横山秀夫の会心の一冊。

 

採用基準
採用基準
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伊賀 泰代
ダイヤモンド社

伊賀泰代さんが、「ちきりん」さんだという噂のようですが、そんなことは別にしても、良い本。

 

2002年には、不確実な状況下における意思決定モデル「プロスペクト理論」などを経済学に統合したことが画期的な業績として評価され、心理学者ながらノーベル経済学賞を受賞。本書は著者初めての一般向け著作。《ニューヨーク・タイムズ》《ウォールストリート・ジャーナル》《エコノミスト》の各紙誌で年度ベストブックに選出されています。去年、広田さんが、推薦して下さっていたのですが、私は、原書は無理なので、日本語訳を待っていました。

 

行動経済学をキーワードに本屋を巡っていて、おもしろそうだと手に取ってみました。

 

この本も、ベストセラー本で、去年から、買おうかと思いつつ、やめていたのですが、まとめ買いしたときに、なぜか入っていました。東大×京大×マッキンゼー式・決断の技術! 教室から生徒があふれる京大の人気授業「瀧本哲史の意思決定論」を1冊に凝縮したもののようです。

 

梅棹忠夫先生の思想と生涯

2012.10.19

2012年10月積ん読本

またまた、amazonのAPIのルールが変わって、アマゾンのサーバーがXSLTをサポートしなくなってしまって、もう、私のプログラミング能力では、ついていけないので、本の紹介のamazonのリンクの部分は、amazletさんのお世話になることにしました。

思考のレッスン (文春文庫)
丸谷 才一
文藝春秋

先日、亡くなられた丸谷才一氏の本を読んだことがなかったので、『思考のレッスン』を買いました。この本は、丸谷才一氏がインタビュー形式で、「考えること」「書くこと」「読むこと」について語っています。私は、日本の古典文学には疎いのですが、丸谷氏の学問への考え方に、とても共感を覚えました。「遊び心を持ちながらも、痛快な人生を送りたい」というのは、私も同じだ!と思いました。

 

ザ・プレゼンテーション
ナンシー・デュアルテ
ダイヤモンド社

副題が、「人を動かすステーリーテリングの技法」なっているように、プレゼンテーションと言うよりは、聴衆の心を動かすストーリーテリングないしはスピーチの技法の紹介の本です。

本書の著者ナンシー・デュアルテ氏は、実はアル・ゴアの『不都合な真実』のプレゼン制作にもかかわった陰の立役者。スティーブ・ジョブズ、レーガン元大統領、リチャード・ファインマン、ベンジャミン・ザンダーなどなど、歴史に残る圧巻の名プレゼン事例を紹介しています。著者はこれらをつぶさに分析することで、優れたプレゼンには共通する「型」が存在することを証明しています。

読み進むうちに、なるほどと思いますが、このような人を動かすスピーチの技法は、生まれ持っているのが大半で、努力で改善できる部分は少ないというのが私の考えです。たとえば、大統領の演説1回分をプロデュースすることはできても、その大統領のスピーチ能力を改善するのは難しいと思うのです。

 

あたらしい書斎
あたらしい書斎
posted with amazlet at 12.10.19
いしたにまさき
インプレスジャパン

小学生の時には、兄弟3人で一つの机をシェアしていた私は、大人になったら、絶対書斎を持ってやると思っていました。幸い、今は、書斎を持たせていただいていますが、まだ、うまく使い切れていないというか、私の知の発信基地にはなり得ていない感じです。

 

星の巡礼 (角川文庫)
星の巡礼 (角川文庫)
posted with amazlet at 12.10.19
パウロ・コエーリョ
角川書店

気持ちにまったくゆとりがなくなったときの処方箋が、この本、パウロコエーリョ「星の巡礼」にのっていました。

☆スピードの実習
二十分間、普通歩く速さの2分の1の速度で歩く、周囲のこまごまとしたこと、人々に十分に注意をはらうこと。特に、昼食の後におこなうのが最も望ましい。この実習を七日間、繰り返しおこなう。

この実践をおこなうだけで、本当に、今まで見えてこなかったものが見えてきます。おすすめです。

 

The臨床推論―研修医よ,診断のプロをめざそう!

南山堂
売り上げランキング: 5542

私も、大学で、模擬患者さんを使った、初診外来実習で、臨床推論を5年生に教えています。そこで蓄積してきたノウハウを本書と照らし合わせることで、アタマがすっきりしました。特に、大西先生自身が書かれた章は大変参考になりました。今後は、もう少し、認知心理学的な要素を入れ、実習を改善するとともに、なんらかの研究につなげたいと思っています。この本は、研修医向けと言うより、研修医の指導医向けの本ですね。

 

単行本の時に読みたいと思っていて、いつの間にか文庫になったので買いました。今月末のアメリカ出張の時にでも読もうと思っています。

 

新訳 成功の心理学 人生の勝者に生まれ変わる10の方法
デニス・ウェイトリー
ダイヤモンド社

「ザ・シークレット」のロンダ・バーンが「師」と仰ぐ著者の代表作で、30年近く読み継がれている名著が復刊したものです。自分の中に、「ハングリーな自分」が出てきたときに読もうと思って、積んでおきます。

2012.10.17

本の紹介「プレゼンテーションZen 第2版」

プレゼンテーションZen 第2版
ガー・レイノルズ Garr Reynolds
ピアソン桐原

プレゼンテーションZEN」は、プレゼンテーションをする人マストリードの一冊で、以前、私のブログでも紹介させていただきました。

ガーレイノルズのプレゼンテーション本は、「プレゼンテーションZEN」の後、

の2冊が出版されています。今回、3年ぶりに、原典とも言える「プレゼンテーションZEN」が改訂され、第2版となりました。

見た目、255ページ→333ページにページ数が増え、価格も2300円から2600円に上昇しています。また、ガーレイノルズがこの本のエッセンスを語る、50分ほどのDVDがついているのが、大きな変更点です。

3割のページ数はどこに反映されているのかと言うこと、「第9章、聴衆と心を通い合わせる」が大幅に書き足されていることと、「第10章 聴衆をプレゼンテーションに引き込む」が新しく書き足されていることです。また、あらたに取り上げられているプレゼンターとしては、日本人から、千葉県の中学3年生、山本恭輔氏と、神戸大学の杉本真樹氏の2人が取り上げられているのが目立っています。

第1版を持っている人は、第2版を追加購入する必要はなさそうですが、まだ、「プレゼンテーションZEN」を読んでいない人は、絶対に読むことをおすすめします。

2012.08.23

積ん読本2012年8月

カラマーゾフの妹

著者:高野 史緒、出版社:講談社 (2012-08-02)

本年度江戸川乱歩賞受賞作

世界文学の最高峰として名高い『カラマーゾフの兄弟』には第二部があるはずでした。ドストエフスキーはその予告をしながら、ついに書き上げることなく世を去りました。大胆にも、その第二部を書いたのが、本書です。

やっぱり、『カラマーゾフの兄弟』を読んでいない私には、ミステリーとしての驚きが感じられませんでした(ちなみに、江戸川乱歩賞選者の一人の東野圭吾は、『カラマーゾフの兄弟』を読んでいないが、本作を受賞作に推薦しています)。というわけで、まずは『カラマーゾフの兄弟』を読まなきゃと買いましたが、5分冊なんですね。ちょっと、すぐには読み始められそうにもありません。


カラマーゾフの兄弟1 (光文社古典新訳文庫)

著者:ドストエフスキー、出版社:光文社 (2006-09-07)

5分冊だし、登場人物がロシア人で名前が覚えにくいので、とりあえず、積ん読。


海辺のカフカ (上) (新潮文庫)

著者:村上 春樹、出版社:新潮社 (2005-02-28)

夏っぽい村上春樹が読みたくて、買ってはみたものの、まだ、積ん読。


虚像の道化師 ガリレオ 7

著者:東野 圭吾、出版社:文藝春秋 (2012-08-10)

「ガリレオシリーズ」の最新短編集。10月にもう一冊短編集が出るので、また、ドラマで、ガリレオシリーズが再開するのですかね。


人間の建設 (新潮文庫)

著者:小林 秀雄、出版社:新潮社 (2010-02-26)

広田さんおすすめの一冊。小林秀雄と、数学者岡潔の対談というより雑談。初めのうちは、対話がちぐはぐでかみあっていませんが、途中から、岡先生が圧倒していきます。おもしろい。おすすめの一冊です。


主体性は教えられるか (筑摩選書)

著者:岩田 健太郎、出版社:筑摩書房 (2012-03-13)

おまえ読んでおけと、言われた気がするので、読みます。


学歴革命 秋田発 国際教養大学の挑戦

著者:中嶋 嶺雄、出版社:ベストセラーズ (2012-03-20)

最近、教養教育はどうあるべきかと考えているので、そのヒントになればと言うことで、注目されている秋田国際教養大学の本。この間、すぐ横をタクシーで通りましたが、本当に山の中にありました。


2012.07.23

積ん読本2012年7月

今月の積ん読本、ご紹介します。少数精鋭ですが、今月はかなりおすすめの本が多いです。

街場の文体論

著者:内田樹、出版社:ミシマ社 (2012-07-14)

内田先生の本、最近は、やや食傷気味で避けていたのですが、この本はおもしろかった。神戸女学院大学の最終講義「クリエイティブ・ライティング」を文章化した一冊。


仕事はどれも同じ 「今やっている仕事」を「やりたい仕事」にする方法

著者:フォルカー・キッツ、出版社:阪急コミュニケーションズ (2012-06-28)

この本については、時間ができたらきちんと紹介したいと思います。超おすすめの一冊。


新東京いい店やれる店

著者:ホイチョイ・プロダクションズ、出版社:小学館 (2012-07-10)

ホイチョイ・プロダクションズって、なつかしいなぁ。「見栄講座」は、バブル時代のマストアイテムでしたね。この本は、1994年に出版された第1弾の第2弾。

いや、この本、馬鹿にできない。東京にお住まいの方で、私と同姓代の方はかなり楽しめます。おすすめ。


小商いのすすめ 「経済成長」から「縮小均衡」の時代へ

著者:平川 克美、出版社:ミシマ社 (2012-01-20)

内田樹先生のお友達の平川 克美さんの本。「グローバルななことも大事だけど、ローカルなものも大切にしていきたい」という私の気持ちにとても響いた一冊。


インビジブルレイン (光文社文庫)

著者:誉田哲也、出版社:光文社 (2012-07-12)

夏休みは、本を読みまくろうと思って、いろいろ買い集めています。まずは、これを第一弾として読む予定。


2012.06.29

「新版 医師のためのモバイル仕事術: iPad/iPhoneを使い倒す!」発売されました

本日「医師のためのモバイル仕事術」の改訂版である「新版 医師のためのモバイル仕事術: iPad/iPhoneを使い倒す!」が発売となりました。

改訂版とは言っても、ほとんど書き直したまったく新しい本です。まぁ、私のコントリビューションは少ないですが。

アマゾンでは一時売り切れになっていますが、そのうち入ると思いますので、是非、ご購入を。

2012.06.22

積ん読本2012年6月

今月の積ん読本、ご紹介します。怒濤の講義ラッシュが終わったので、最近は、1日1冊ペースで本を読みまくっています。

楽園のカンヴァス

著者:原田 マハ、出版社:新潮社 (2012-01-20)

美術ミステリーとでもいうものか。読んでいると、ダヴィンチコードを彷彿する。文体にはややぎこちない部分はあるが、ミステリーとしてはなかなかおもしろい一冊でした。おすすめ。山本周五郎賞受賞し、2012年ナンバーワンとの呼び声も高いです。


媚びない人生

著者:ジョン・キム、出版社:ダイヤモンド社 (2012-05-25)

慶應SFCのゼミ生の卒業へのはなむけの言葉「キムゼミ最終講義 贈る言葉」をまとめたものです。


ハーバード白熱日本史教室 (新潮新書)

著者:北川 智子、出版社:新潮社 (2012-05-17)

アメリカで日本人が日本史の研究をすることの意義というのが私にはよくわからないのですが、ここまで言われるといったいどんな授業なのか聞いてみたくなりました。


驚きの介護民俗学 (シリーズ ケアをひらく)

著者:六車 由実、出版社:医学書院 (2012-03-07)

最近、医学書院の編集者、白石正明氏(@shiraishimas)の本は飛び抜けて質が高いです。『逝かない身体―ALS的日常を生きる (シリーズケアをひらく)』『リハビリの夜 (シリーズケアをひらく)』いずれも名著です。この本も含めて、もっと多くの方に読んでもらえたらと思います。


理科系の作文技術 (中公新書 (624))

著者:木下 是雄、出版社:中央公論新社 (1981-01)

1981年出版のロングセラー。調査報告、出張報告、技術報告、研究計画の申請書などといった文章を理系の人間もかかなければいけないのですが、デコレーションを廃し、必要な情報に絞り込み、論理的に記述する方法を解説しています。

大学院生を指導するような教員は一読をおすすめします。


歪笑小説 (集英社文庫)

著者:東野 圭吾、出版社:集英社 (2012-01-20)

札幌出張の際に暇つぶしで買った本。一つ一つの短編は、小ネタ過ぎて、読むのがだんだんいやになってきたのですが、半分を超えてから、短編が複合的につながっているのがわかってきて、どんどんおもしろくなりました。


医者が大学を辞めるとき

著者:小鷹昌明、出版社:中外医学社 (2012-06)

医者になってどうする!』を書かれた小鷹先生は、2012年に大学をやめて、南相馬市民病院で働き始められました。そのときの、思いを綴った本です。


2012.06.13

「新版 医師のためのモバイル仕事術: iPad/iPhoneを使い倒す!」まもなく発売です

3月から、必死になって、「医師のためのモバイル仕事術」の改訂作業をやっています。というか、私のパートは随分少ないので、私と言うより共著者の讃岐先生や編集社の方がやって下さっています。

6月29日発売予定で、すでに、Amazonでも予約を受け付けていて、これで、WWDC2012でiPhone5やiPad4が出ちゃったら、いったいどうなるのか、勝手にハラハラしていたわけですが、無事、WWDC2012を乗り越えられ、なんとか発売にこぎ着けられそうです。

私のパートで、「海外でiPhoneを使う」というのがあって、かなり気合いを入れて、書いたつもりだったのですが、最近、ソフトバンクから、「海外パケットし放題」なるアプリが出ていることを知って、徒労感たっぷりになっています。でも、私の説明をよく読んで、このアプリを使えば、間違いありません!っと、声を大にして言いたいです。

そろそろ、案内しても良さそうなので、「新版 医師のためのモバイル仕事術: iPad/iPhoneを使い倒す!」絶賛予約受付中です。

2012.06.09

医学部受験本を読みあさりました

医学部を目指す高校生達が、どのように医学部をとらえているのかを知りたくて、医学部受験本を読み漁ってみました。

はじめの2冊は、実際の医師が医学部を受験したいと思う学生に対して、医師になると言うことはどうなのかを解説した本で、どちらかというと、現在の「成績がよいから医学部を目指す」という状況に警鐘を鳴らしている本です。あとの2冊は、朝日新聞と旺文社が、医学部受験生に、医学部で学ぶこと、医学部を卒業した後のキャリアについて客観的な情報を与える本になっています。普通、後者の2冊のどちらかを買うのでしょうが、医学部を受けたいと思う人は、早い時期に前者2冊のどちらかを読んで欲しいと思います。

医学部を受験する前に読む本

著者:早川 豊、出版社:中外医学社 (2003-09)

この本は、1992年に出版されて、2003年までに、6回の改訂を経ています。その当時、本当に正直な、医学部を目指す人向けの唯一の本でした。医学部を受験したいという人みんなに読むことを薦めていました。

10年ぶりくらいに読んでみましたが、その頃と今では、まったく、医学部卒業生のキャリアについては社会情勢が変わっています。臨床研修制度の必修化、医学部定員の大幅増員、専門医制度が確立、ジェネラリストに対する見方が大きく変わったこと。だから、この本を鵜呑みにできないのですが、社会情勢が変わっても、根っこの本質的な部分は十分通用するように思います。早川豊氏というのはペンネームで、昭和30年生まれの医師の方のようです。


医者になってどうする!

著者:小鷹昌明、出版社:中外医学社 (2009-08)

今、医学部を目指す高校生に勧めるとしたら、この本です。タイトルからしてもわかるように、医師になってもいいことばかりでないことがはっきりと書いてあります。それでも医学部を目指す高校生に熱いエールを送っています。小鷹 昌明氏は獨協大学の神経内科に勤務されていましたが、2012年4月に、一念発起され、南相馬市立病院に移られています。


医学部に入る 2012 (週刊朝日MOOK)

朝日新聞出版、2011-09-03

医学部受験MOOKとして正当派の一冊。医学生や医師の紹介、インタビュー記事も多く、値段も安いです。でも、きわめて表層をながめているような感じがしてなりません。


医学部受験の総合的研究

著者:岩嶋 宏恭、出版社:旺文社 (2008-05)

旺文社らしい、医学部の現状、医学部卒業後のキャリアの現状を丹念に詳細に書いています。後半1/4は医学部受験対策です。2008年なので、ちょっと古くなっているので、改訂が望まれますが、ほとんどの部分は今でも通用すると思う。


2012.06.04

本の紹介『名作マンガで精神医学』

名作マンガで精神医学

著者:林 公一、出版社:中外医学社 (2012-05-25)

名作マンガを通して、「統合失調症」「うつ病」「高次脳機能障害」「パーソナリティ障害」について精神医学的な解説を加えるという内容。

各章の中心となるのは、
一章 統合失調症─『わが家の母はビョーキです』 (中村ユキ)
二章 うつ病─『ツレがうつになりまして。』 (細川貂々)
三章 高次脳機能障害─『日々コウジ中』 (柴本 礼)
四章 パーソナリティ障害─『ブラックジャックによろしく』 (佐藤秀峰)

監修者の村松先生の前書きにもあるように、

“臨床医学を学ぶ時、最も有用な資料は実例のケースレポートであるが、現代では個人情報の問題等のため、実例の発表は学会でもかなりの制約がかかるようになっている。そんな状況下にあって、『わが家の母はビョーキです』『ツレがうつになりまして。』『日々コウジ中』は、医学文献としてもきわめて貴重なものである。”


2012.05.18

積ん読本2012年5月

久方ぶりに、積ん読本紹介します。

ナミヤ雑貨店の奇蹟

著者:東野 圭吾、出版社:角川書店(角川グループパブリッシング) (2012-03-28)

東野圭吾にしては、異色の作品。ミステリーではなく、ファンタジーで泣かせるような作品。それでも、やはり一定水準を超えているのだから、東野圭吾はすごい。


舟を編む

著者:三浦 しをん、出版社:光文社 (2011-09-17)

本屋大賞第一位になったので、どこの本屋にも一番目立つところに積んでありますね。辞書編纂という特殊な仕事の話ですが、三浦しをんらしい、軽やかな文章です。


母の遺産―新聞小説

著者:水村 美苗、出版社:中央公論新社 (2012-03)

日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で』で評判になった、水村美苗氏の最新作。こちらも、かなり評判になっている小説です。かなり本格的なので、読み始めるのはもう少し先かな。


ピーコ伝 (文春文庫PLUS)

著者:ピーコ、出版社:文藝春秋 (2003-09)

古本屋で手にとって、引き込まれるようにして立ち読みしていて、半分くらいまで読んでしまいました。申し訳ないので、購入して、家で残り半分を読みました。


オリンパスOM-D E-M5オーナーズBOOK (Motor Magazine Mook カメラマンシリーズ)

モーターマガジン社、2012-04-27

OM-Dはかなり気に入っている、現在メインのカメラなのですが、オリンパスの操作系に慣れていないので、買ってみました。


毒婦。 木嶋佳苗100日裁判傍聴記

著者:北原 みのり、出版社:朝日新聞出版 (2012-04-27)

2009年に首都圏で起きた連続不審死などに関わったとして、10件の罪で起訴された木嶋佳苗被告の裁判傍聴記。読み始めたら、読みふけってしまう可能性が高いので、積んであります。


ナラエビ医療学講座―物語と科学の統合を目指して

著者:斎藤 清二、出版社:北大路書房 (2011-04)

表紙にだまされてはいけません。読みやすさにもだまされてはいけません。とても勉強になりました。エビデンス・ベイスト・メディスン(EBM:科学的根拠に基づく医療)とナラティブ・ベイスト・メディスン(NBM:物語と対話に基づく医療)を共に大切にする医療の在り方について書かれた本です。


2012.04.03

本の紹介『研究留学術(第2版)』

私の処女作にして、最も売れた本、『研究留学術』が、10年目にして『研究留学術 第2版』として、改訂されました。

『研究留学術』のほとんどの情報は、インターネット上に公開しているにもかかわらず、堅実に売れ続け、出版社から改訂を勧められていました。しかし、この本は、私自身の研究体験談を元にしているので、改訂するためには、私がもう一度留学して、最新情報を元に書き直す必要があります。そんなことはできないので、重版のたびに細々とビザ情報などを最新のものにしていたのですが、さすがに、10年ですので、絶版にするのは惜しいと思って、どうすればよいかと考えていました。

その中で、思いついたのが、10年間を経て、留学についての対談をおこない、それを追加収載するというものでした。その企画におつきあいいただいて、2011年夏に、島岡先生、広田先生と京都で鼎談をおこないました。この鼎談は実に率直で愉快な内容ですので、これだけ読んでいただいても大変面白い内容になっています。

30ページ増えているにもかかわらず、価格も据え置きにして下さいました。すでにお持ちの人が買う内容かと言えば、そこまでの内容ではないかもしれませんが、是非とも、後輩を留学させる際に購入をすすめて、貸してもらって、鼎談の内容をお読み下さい。

もともとこの本は、私一人の留学体験だけでなく、様々な道を進んだ10人の留学体験記も掲載しています。そして、今回、10年間を振り返る鼎談を付け加えたことによって、横方向だけでなく、時間軸方向にも広がりが出て、研究留学を様々な角度から考えられる一冊になったと自負しています。

今後とも、どうぞ、よろしくお願いします。購入はアマゾンでどうぞ。

PS. 現在、アマゾンでのタイトルが、『研究留学術(第2版)–研究者のためのアメリカ研究ガイド』と間違っています。そのうち、直してくれると思います。

2012.03.19

積ん読本2012年3月

最近、本の紹介が少ない、と、各所からおしかりを受け、紹介すべき本がだいぶたまっているのですが、少々事情があって、本の紹介が出来ずにいました。

このサイトで本の紹介をする際には、書影をAmazonからいただいたり、Amazonのリンクを作ったり、著者名や、出版社を拾ってきたりと結構面倒くさいのですね。そのため、Amazonのページで紹介したい本のページで、Bookmarkletを実行すると、下のようなHTMLタグをはき出すようなプログラムを作って利用していました。パブリックなサービスだと、Amazletとかありますが、カスタマイズできないし、ロゴが入ったりするので、頑張って、PerlやXLSTのプログラムを自作していたのです。

われながら、便利なプログラムで、愛用していたのですが、2月末くらいからこのプログラムが動かなくなってしまって、大変困っていました。今日、半日がかりで、ようやく修正が出来ました。

こういう時は、だいたい原因は簡単なわけで、Amazon Producting APIのバージョンの2009-07-01版が期限切れになっていて、2011-08-01版に指定し直さなければいけないというものでした。特に、XLSTファイルのヘッダー部分を直さなければならないのに、Amazon側でキャッシュされていて、なかなか変更が反映されないことに気づかず、4時間くらい、あーでもない、こーでもないと時間をつぶしてしまいました。シアトルにいるときは、日本に帰ったら、サンデープログラマーになりたいとか、思っていましたが、とても、そんな時間はないですね。プログラミングスキルが落ちているのに、こんなサイトを自前で維持していくのは段々つらくなってきました。

ということで、だいぶ、話はそれましたが、積ん読本と読了本の紹介です

東大医学部 - 医者はこうして作られる

著者:安川 佳美、出版社:中央公論新社 (2012-01-24)

この本は、医学部で教育に携わるものとして、大変、興味深く読ませていただきました。


二流小説家 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)

著者:デイヴィッド・ゴードン、出版社:早川書房 (2011-03-10)

もともと、海外ミステリは苦手なのですが、あちこちで最優秀賞を取っているので読んでみました。通常、50ページを過ぎた頃から、引き込まれるように読むのですが、この本は、150ページを過ぎても、まだ引き込まれません。この後に、期待しています。


ロング・グッドバイ (ハヤカワ・ミステリ文庫 チ 1-11)

著者:レイモンド・チャンドラー、出版社:早川書房 (2010-09-09)

村上春樹が『ロング・グッドバイ』は、特別な一冊だと言っていたのがよくわかりました。ミステリー、ハードボイルドとして、最高の一冊です。

最近は、新しく出たミステリーを読むより、名著と誉れ高いミステリーを読むようにしています。どうせ、人生で読める本の数などたかがしれているのですから、ハズレをひいたらもったいないですもんね。


国際論文English査読・執筆ハンドブック

著者:C.S. Langham、出版社:医歯薬出版 (2011-09)

最近、査読の時の文章があまりに画一的になってしまうので、少し、幅を広げようと思って買ってみました。査読用の英文って、世の中に出回っていないので、貴重です。


医師のためのパフォーマンス学入門 ―患者の信頼を得るコミュニケーションの極意―

著者:佐藤綾子、出版社:日経BP社 (2011-12-15)

仕事上、必要かと思って。


ナラティブ・メディスン―物語能力が医療を変える

著者:Rita Charon、出版社:医学書院 (2011-08-24)

興味深いのですが、しばらく積ん読状態になっています。


必ずできる!iPadプレゼンテーション

著者:松茂 幹、出版社:日経BP社 (2011-03-24)

「モバイル仕事術」の改訂作業に、大いに参考にさせていただきました。ただし、この本が出てから、かなり、iPadの仕組みが進化しています。


男の隠れ家 2012年 04月号 [雑誌]

朝日新聞出版、2012-02-27

自分の机の上に積んどいたら、息子が興味深そうに手に取っていて、びっくりしました。本好きにはたまらない、一冊です。


シャンタラム〈上〉 (新潮文庫)

著者:グレゴリー・デイヴィッド ロバーツ、出版社:新潮社 (2011-10-28)

「徹夜必至の一冊」ということで、みんなが勧めるので、一応、買っておきました。上中下、三冊なので、これを読むのは夏休みですね。


理系のためのクラウド知的生産術 (ブルーバックス)

著者:堀 正岳、出版社:講談社 (2012-01-20)

堀さんの本は、かなり信用しています。ブルーバックスと言うことで、かなり手頃で、おすすめです。


ヤクザと原発 福島第一潜入記

著者:鈴木 智彦、出版社:文藝春秋 (2011-12-15)

暴力団専門ライターの方が、原発作業員に潜り込んで書いたノンフィクションです。


あんぽん 孫正義伝

著者:佐野 眞一、出版社:小学館 (2012-01-10)

佐野さんが書くと、ノンフィクションぽくなって、良い感じです。


全国 城攻め手帖

著者:風来堂、出版社:メディアファクトリー (2012-01-20)

この本、相当マニアな本ですが、城に不案内な私にも面白いです。この本片手に、全国の城めぐりをしてみたい。


飼い喰い――三匹の豚とわたし

著者:内澤 旬子、出版社:岩波書店 (2012-02-23)

名著『世界屠畜紀行』の続編的な本です。


2011.12.22

積ん読本2011年12月

年内に、単著にメドを付けたいと思って、そっちに気持ちがいってしまって、なかなか本が読めません。週3冊くらいは買っているので、どんどん積まれていっています。

アメリカ出張の際に読んだ、ミレニアム1とマネーボールは面白かったですね。

というわけで、積ん読本と読了本の紹介です

「YUIGON ~もはや最期だ。すべてを明かそう。」

著者:浜田 幸一、出版社:ポプラ社 (2011-05-20)、ASIN:4591124460【amazon.co.jp

小説より、きっとおもしろいに違いないと思って買いました。


「モチベーション3.0 持続する「やる気!」をいかに引き出すか」

著者:ダニエル・ピンク、出版社:講談社 (2010-07-07)、ASIN:4062144492【amazon.co.jp

各所で話題になっている本ですが、この手の本は積み続けられる可能性が高いんだよな。


「物語論 (講談社現代新書)」

著者:木村 俊介、出版社:講談社 (2011-11-18)、ASIN:4062881292【amazon.co.jp

僕は、木村俊介さんのインタビューがとても好きです。これだけ若くて、上手はインタビュー記事が書ける人はなかなかいないです。私は、生まれ変わったら、インタビュワーか編集者になりたいと思っているのです。


「iPhone習慣術」

著者:堀 正岳、出版社:インプレスジャパン (2011-12-09)、ASIN:4844331175【amazon.co.jp

ただのiPhoneの使い方の本ではなく、iPhoneを使ったLifehack本です。


「Facebook HACKS!~仕事、生活、人生までもが一変する実践テクニック~」

著者:小山龍介、出版社:日経BP社 (2011-10-13)、ASIN:4822248720【amazon.co.jp

Facebookは、いまだに、よく使い方がわからないので、1冊くらい読んでみようと思って、本屋で見つけた本。


「医学部受験の闇とカネ (経営者新書)」

著者:長澤潔志、出版社:幻冬舎 (2011-11-28)、ASIN:434499812X【amazon.co.jp

医学部受験の歪んだ実態を赤裸々に暴くとは、言っても、たいしたことがなかった。


「「やめること」からはじめなさい (星海社新書)」

著者:千田 琢哉、出版社:講談社 (2011-11-25)、ASIN:4061385070【amazon.co.jp

いろんな本の焼き直しみたいな本で、本屋で間違って買ってしまった。


「スティーブ・ジョブズは何を遺したのか (日経BPパソコンベストムック)」

日経BP社、2011-11-26、ASIN:4822268705【amazon.co.jp

「Steve Jobs」があまりにビジュアルが少ないので、その補足として買いました。


「旅カメラPENとノスタルジック写真 ~フォトグラファーが教えるアートフィルター撮影テクニック (Books for Art and Photography)」

著者:山崎 麻里子、出版社:技術評論社 (2011-11-30)、ASIN:4774149381【amazon.co.jp

PENのアートフィルターは本当におもしろくて、ついつい使ってしまう。でも、これ使っていると写真の腕が上がらないんだろうなという罪悪感がいつもつきまとう。


「一般意志2.0 ルソー、フロイト、グーグル」

著者:東 浩紀、出版社:講談社 (2011-11-22)、ASIN:4062173980【amazon.co.jp

小難しい本みたいだけど、是非とも読んでみたい。


「マネー・ボール (RHブックス・プラス)」

著者:マイケル・ルイス、出版社:武田ランダムハウスジャパン (2006-03-02)、ASIN:4270100281【amazon.co.jp

映画を見ようと思って、その前に読みました。マネーボールが、アスレチックスのサイバーメトリクスを使った、チーム強化法の話だということは知っていました。でも、それが、映画になるのかなと思っていましたが、ちゃんとドラマになっていましたね。面白い小説でした。


「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (上) (ハヤカワ・ミステリ文庫)」

著者:スティーグ・ラーソン、出版社:早川書房 (2011-09-08)、ASIN:4151792511【amazon.co.jp

「ミレニアム1 ドラゴン・タトゥーの女 (下) (ハヤカワ・ミステリ文庫)」

著者:スティーグ・ラーソン、出版社:早川書房 (2011-09-08)、ASIN:415179252X【amazon.co.jp

海外のサスペンスは苦手。その理由は登場人物の名前が覚えられないから。しかも、この小説は、スウェーデンが舞台で、登場人物の名前が、スウェーデン語で、さらに読みにくい、、、。(登場人物一覧が、すごく役立ちます)

しかし、その欠点を補ってあまりあるくらい、面白かった。本当は、10まで構想が出来ていたけれど、3を書き終えた時点で作者は急逝してしまったとのこと。

残りの2と3は大切に読もう。


「うほほいシネクラブ (文春新書)」

著者:内田 樹、出版社:文藝春秋 (2011-10-19)、ASIN:4166608266【amazon.co.jp

内田樹先生の映画評を集めたもの。正月に映画を借りてくるときの参考にしようと思って。


「統計・確率思考で世の中のカラクリが分かる (光文社新書)」

著者:高橋洋一、出版社:光文社 (2011-10-18)、ASIN:4334036457【amazon.co.jp

高橋先生の辛口は好きなんです。


「本へのとびら――岩波少年文庫を語る (岩波新書)」

著者:宮崎 駿、出版社:岩波書店 (2011-10-21)、ASIN:4004313325【amazon.co.jp

以前、こちらでも紹介した、宮崎駿氏が岩波少年文庫から50冊を選び、コメントを付けたのが、前半部。後半は、震災前後のエッセイを収めています。


2011.12.21

本の紹介「トラオ 徳田虎雄 不随の病院王」

「トラオ 徳田虎雄 不随の病院王」

著者:青木 理、出版社:小学館 (2011-11-30)、ASIN:4093798281【amazon.co.jp

「なんで、医者になりたいと思ったのですか?」よく聞かれますが、小学生くらいの時から、そうなると思っていて、なぜ、なりたいのかということは考えたこともありませんでした。でも、小学生の時に、「人体の不思議」みたいな本を読みあさっていたから、とにかく、人体のしくみや、病気のしくみ、そういうものを知りたいというのがあったのかもしれません。

中学生の時に読んだ本で、1つとても印象に残っている本があります。それが、徳田虎雄氏が書いた「生命だけは平等だ」という本です。ただ、ただ、圧倒されました。でも、心酔しなかったのは、どこか、キワモノのような印象を感じ取ったからかもしれません。

徳田虎雄氏は、皆さんご存じのように、徳州会グループを一代で作り上げた病院王であり、また、一方で、衆議院議員でもあった方です。徳之島の選挙活動のすごさも、よくメディアで報道されていました。

彼は、10年前にALSを患い、政界を引退しましたが、今でも、呼吸器を付けながらも、湘南鎌倉病院の特別室から、徳州会グループを動かしています。本書は、本人へのインタビューをはじめ、関係者への取材を元に構成した、徳田虎雄の半生記。

帯の「ぎょろり、ぎょろり」というのと、表紙の写真が写真が印象的。おもしろくてあっというまに読み切りました。


2011.12.01

本の紹介「日本人研究者のための絶対できる英語プレゼンテーション」

「日本人研究者のための絶対できる英語プレゼンテーション」

著者:Philip Hawke、出版社:羊土社 (2011-11)、ASIN:4758108420【amazon.co.jp】【目次

タイトルの通り、日本人研究者が英語プレゼンテーションができるようになるための指南書。英語だけの問題ではなく、スライドの作り方、言語コミュニケーション、非言語コミュニケーションまで網羅しています。若手日本人研究者の発表をネタに、解説を進めています。

たくさんの文例が載っているわけではなく、本当に、この一冊で「絶対できる」ようになるわけではありません。ただ、できるようになるための、インターネットサイトやPodcastの紹介などもしており、親切な本です。どちらかというと、実は、指導者向けに最適な本なのではないかと思いました。この本には、英語プレゼンテーションをおこなう際の詳細なチェックリスト(100を越える)が冒頭に載せてあり、それに沿って解説が進んでいます。このチェックリストを元にしながら、指導するのは、とても有効だと思いました。

発音の部分にもかなりのページを割いていますが、やはり、Nativeにチェックしてもらわないとダメなんだろうと思いました。

原稿を読むべきかどうかについては、この本では、スクリプト(原稿)を暗記して、本番では、それを見ないで発表することを勧めています。そう言う経験を何回か経験すれば、だいぶ、慣れてくるのではないかということでした。

意外に感心したのは、次の2点。

英語でのプレゼンテーションでは、できるかぎり、会話調の英語をつかうべきだということ。具体的には、フォーマルに聞こえるラテン語系の動詞を避けて、ゲルマン語系の動詞を使う。受動態ではなく能動態を使う。抽象的な概念を示す名詞(たとえば、depletion)は、同等の動詞(we depleted)に置き換える。といった具合です。

レーザーポインターはうまく使えない人が多い(グルグル回して、見づらい)ので、レーザーポインターが必要なくてもすむようなアニメーションを使うのが効果的と主張しています。確かに、それはそうかもしれません。あと、最近は、スクリーンではなく、液晶ディスプレイが導入されている会場ってありますよね。あれ、実は、レーザーがすごい見づらいのです。私も前回の市民講座は立派なホールだったのですが、液晶ディスプレイだったので、レーザーがまったく映らず、指で指したりして苦労してやりました。そう言うこともあるって事は知っておいた方がいいですね。

ということで、研究室に1冊あるとよい良書です。


2011.11.09

「スティーブ・ジョブズ」本の賛否両論

発売初日、下巻「スティーブ・ジョブズ II」は本屋に山積みになっていたのにがbk1からなかなか届かず、我慢が出来ず本屋で買ってしまったら、翌日、bk1から届いて、2冊持ち状態に。→欲しい人、あげますよ。ただし、取りに来てくれる方。

下巻「スティーブ・ジョブズ II」も2日ほどで一気に読んでしまいました。

率直な感想として、私は面白かったです。下巻の内容は、リアルタイムで知っていたことがほとんどでしたが、それでも、こうやって、Steve Jobsの人生をクロニカルに振り返ることが出来て幸せでした。Steve Jobsが、そんなに天才でもないこと、人柄がいいわけではない(というか、かなり悪い)ことも知っていました。でも、それを、暴露本のようにセンセーショナルに書くのではなく、多くの関係者の取材を通して、客観的に伝えていること、作者に敬意を表します。いずれにしても、波瀾万丈なSteve Jobsの一生を、亡くなられてから、わずか1ヶ月というタイミングで振り返られたことがよかったです。

ここに来て、いろんなところから、「スティーブ・ジョブズ I」「スティーブ・ジョブズ II」の書評が出てきました。一つは、池谷裕二さんが読売新聞に書いた書評です。まぁ、無難な書評であり、好意的な書評です。

一方、朝日新聞の山形浩生氏の書評は、そうとう辛口。にもかかわらず、朝日新聞は書評タイトルを「「天才」の生と死いちはやく活写」としている。そんなことはどうでもよいのですが、山形浩生氏の主張は、本書には目新しいことがまったくなく、無理矢理新規性を出そうとして、些末なエピソードを詰め込んだせいで、ムダに分厚いという指摘です。彼が古参のパソコンマニアで、彼には、アップル草創期からのジョブスの活動はリアルタイムで知っていると言うことなのでしょう。

池谷さんのつぶやきによると、「実は、山形さんのコメントのほうが、私の実感に近いのですが、」とのこと。えっ、と思いましたよ。正反対じゃん。まぁ、大新聞の書評だから、思ったようには書けないのかもしれないのですが。

2011.11.01

本の紹介「スティーブ・ジョブズ I」

今どの本屋でも大量山積みの本です。スティーブ・ジョブズ本は、過去にもたくさん出されていますが、どの視点から書くかで、まったく異なる本になってしまう。それくらい、スティーブ・ジョブズの人生が波乱に満ちていて、気性も激しかったと言うことでしょう。近年は、iPhoneのヒットや、プレゼンテーションのうまさから、ポジティブに評価している人が多いですが、暗黒の時代のアップルを知っている立場からすると、決してよいところばかりではありません。

本書「スティーブ・ジョブズ I」は、スティーブ・ジョブズ本人が、取材をOKし、自伝として公認した唯一の本です。というか、むしろ、死期を予感し、子供の達に自分がどんな人生を送ってきたか、正確に書いて欲しいと、アメリカ を代表する伝記作家ウォルター・アイザクソンに依頼したと言われています。書いた内容について、一切文句を言わないから書いて欲しいと。

伝記作家ウォルター・アイザクソンらしく、非常に緻密で第三者の立場をかたくなに守っているというのが本書の特徴とも言えます。本書を読むと、傍若無人なスティーブ・ジョブズに驚くかもしれません。

上巻では、スティーブ・ジョブズがアップルを追い出されて、NeXTと立ち上げ、ピクサーを買い取った当たりまでを描いています。私が、Macに触れ始めたのは、20年前ですから、ちょうど、上巻の内容は、私がMacに触れ始める前のところまでになります。

写真がふんだんに掲載されているわけでもありません。是非とも、ネットでApple IIやMacintoshの写真を探して、それを見ながら、読んだらいいと思います。また、1984年のMacintoshの発表会がどれだけ熱狂的だったのか、、Youtubeの動画を見ながら読めば、楽しいと思います。伝説の1984のコマーシャルも、現物を見た方がよいです。たくさんの登場人物がいますが、それをWikipediaで追っかけてもおもしろい。

この本は、スティーブ・ジョブズ正史とも言えるものです。淡々として、客観的な視点の本ですが、それでも、スティーブ・ジョブズの人生があまりに波瀾万丈なので、面白すぎます。

明日は、ちょうど、下巻「スティーブ・ジョブズ II」が届きます。楽しみ。

2011.10.29

「レジデントのための血液透析患者マネジメント」増刷

レジデントのための血液透析患者マネジメント」の増刷が決まったとのうれしいお知らせ。増刷というのは、初刷りで印刷した部数が完売しそうなので、追加で印刷すると言うこと。

皆さんもご存じのように、日本には、再販制度というのがあって、本は発売されると、とりあえず、いろいろな書店に並ぶことになりますが、6ヶ月後に売れなければ、出版社に返本してもいいというルールになっています。したがって、正確な売り上げ数というのは、出版社でも半年以降にならないと把握ができません。書店からの追加注文や、医学書書店からの反応を見て、売れ行きが良好だという判断なのでしょう。

特に、初版→二刷りというのは、出版社にとっても、著者にとっても大きな意味があります。一般的に、初刷りを売りきれるかどうかが、出版社にとっての損益分岐点だと言われています。したがって、初刷りが売りさばけないとなると、出版社は赤字。二刷り以降に進めば、出版社に利益が入ると言うことになります。今回は、企画を自分で持ち込んだものですから、なんとしても、初版は売り切りたいと思っていたので、とりあえず、義理は果たせたとホッとしています。

構想8年、執筆1年の本ですから、定期的に改訂もおこなって、長く読み続けられる本になってくれるといいなと思っています。

川崎医科大学の柏原教授、東海大学の深川教授、中部労災病院の藤田先生から、あたたかい書評をいただくことが出来ました。ありがとうございました。

2011.10.21

「13階段」と「果つる底なき」

さっそく、「13階段」を手に入れて、読み始めたのですが、なにか、違和感が、、、、。結末が予想できる。デジャヴ感が、、、。読み進めるうちに、この本読んだことがある!と気がつきました。こういうことよくあるんですよね。特に、東野圭吾の本で頻発します。

ということで、池井戸潤氏の本を選ぶことに。同じサラリーマン小説系は避けたかったので、江戸川乱歩賞を受賞したデビュー作「果つる底なき」を選びました。ストーリーのテンポの良さとかから、きっと、この方は、放送作家出身なのかなと思ったら、もともとは、銀行マンで、その後、企業コンサルタントをやりながら、ビジネス書を書いていた人なのだそうです。そして、1ヶ月で、初めて小説にチャレンジしたのがこの作品とのこと。「1ヶ月しか時間は取れないから、取材する時間もない。そのために銀行員時代に体験した債権回収の出来事がそのまま題材となって出てきます」と、池井戸潤氏が自作を語っているBOOK asahi.comの記事、に書かれていました。とてもテンポがよく、最後までじっくり読ませるハードボイルド的な推理小説でした。

2011.10.15

「下町ロケット」と「ジェノサイド」

先日の積ん読本でも紹介しましたが、「下町ロケット」と「ジェノサイド」両方ともなかなか面白かったです。もちろん、両方とも予定調和的な結末を迎えますので、その辺を、なだかなぁと思い始めてしまえば、底の浅さが見えてしまいますが、エンターテイメントとしてはどちらもよくできた本だと思います。

両者に共通しているのは、理系的な専門知識が満載な事、男中心のストーリー展開と言うことでしょうか。

どちらがおすすめかと言えば、「ジェノサイド」です。スケールが大きく、展開が早く、みるみるはまっていきますね。薬学、医学、生物学の知識が結構出てきますが、実現可能かどうかは別にして、かなり、いい線を行っているように思います。SFですから、もちろん、現実的に可能なストーリーではないですが。イメージは、「ジュラシックパーク」とか「パラサイトイブ」を読んだときに似ています。高野和明さんというのは、特に、生物学を学んだこともないようですから、それで、ここまで書ききるのは見事です。ただ、半分は、戦争物ですから、好き嫌いは分かれると思います。私は、久しぶりにむさぼるようにして、一日で読み切ってしまいました。そのくらい、「はまる」本だと思います。

秋の夜長にどうぞ。

PS. 高野和明氏は私の中学高校の1年先輩でした。江戸川乱歩賞を取られた「13階段」も読んでみよう。

2011.10.11

積ん読本2011年10月

8月のウィーン旅行を終えてしまったら、すっかり、読書とは縁遠くなってしまいました。原稿とかがたまっているから、電車の中や寝る前の時間も、それらのことが気になって、あえて、本を遠ざけていました。

では、その結果、仕事が進んでいるかというと、NOでありまして、せめて、1日のうち、一定の時間は本を読んでいた方がいいと思うようになって、この週末で、「下町ロケット」を読みました。

というわけで、積ん読本と読了本の紹介です

「下町ロケット」

著者:池井戸 潤、出版社:小学館 (2010-11-24)、ASIN:4093862923【amazon.co.jp

第145回直木賞受賞作。男っぽいというか、サラリーマン小説である。すかっとするストーリーであるが、すべて予定調和と言われてしまえば、その通り。いかにも、ドラマ向きの小説です。


「ジェノサイド」

著者:高野 和明、出版社:角川書店(角川グループパブリッシング) (2011-03-30)、ASIN:4048741837【amazon.co.jp

「下町ロケット」の次は、この本と思っています。


「スミスの本棚 私の人生を変えたこの一冊」

著者:テレビ東京報道局ワールドビジネスサテライト、出版社:日経BP社 (2011-09-22)、ASIN:4822248682【amazon.co.jp

第一線で活躍する経営者、文化人、俳優、作家はどんな本を読んでいるのか?42人の座右の書を紹介する1冊。こういう本、ついつい読んでしまって、ますます、積ん読本が増えてしまうのです。


「明暗 (新潮文庫)」

著者:夏目 漱石、出版社:新潮社 (2010-01)、ASIN:4101010196【amazon.co.jp

本当は、ウィーンの出張の際に読みたかったのですが、手を付けられませんでした。次の海外出張で是非。


「続 明暗 (ちくま文庫)」

著者:水村 美苗、出版社:筑摩書房 (2009-06-10)、ASIN:4480426094【amazon.co.jp

ご存じのように、夏目漱石の「明暗」は、夏目漱石の死によって、途中で終わっているのですが、その続きを書いたという本。たいてい、こういうものは、駄作が多いのですが、この本は、結構、評判がいいので、「明暗」と一緒に、次の海外出張で。


「日の名残り (ハヤカワepi文庫)」

著者:カズオ イシグロ、出版社:早川書房 (2001-05)、ASIN:4151200037【amazon.co.jp

「私を離さないで」がよかったので、カズオイシグロで次に手を出すとしたら、これですね。


「トム・ソーヤーの冒険―トウェイン完訳コレクション (角川文庫)」

著者:マーク トウェイン、出版社:角川書店 (2005-01)、ASIN:4042142079【amazon.co.jp

マークトウェインの言葉がとても好きだから、子供の頃に戻って、もう一度、読み直したいと思っています。


「暴力団 (新潮新書)」

著者:溝口敦、出版社:新潮社 (2011-09-16)、ASIN:4106104342【amazon.co.jp

今、話題になっている本。見知らぬ世界の基礎知識が得られて、なかなか、よかったです。


「スティーブ・ジョブズ I」

著者:ウォルター・アイザクソン、出版社:講談社 (2011-10-25)、ASIN:4062171260【amazon.co.jp

スティーブジョブス本は、過去に何冊か出されていますが、唯一、本人が取材をOKして、自伝として公認した本。スティーブジョブスの死によって、発刊が1ヶ月早まりました。ベストセラー必至の本です。


「スティーブ・ジョブズ II」

著者:ウォルター・アイザクソン、出版社:講談社 (2011-11-02)、ASIN:4062171279【amazon.co.jp

下巻の方も発刊が早まったようです。


2011.08.19

本の紹介「科研費獲得の方法とコツ 改訂第2版」

「科研費獲得の方法とコツ 改訂第2版」

著者:児島将康、出版社:羊土社 (2011-08-10)、ASIN:4758120269【amazon.co.jp

去年、初版が出たときにも、こちらで紹介したら、すごい反響があって、ものすごく売れた本です。おそらく、昨年の羊土社のベストセラーなのではないでしょうか。

こういう本は、毎年、科研費のポリシーが変わると使い物にならなくなっちゃうなと思いましたが、児島先生、ちゃんと、最新のデータに基づいて、平成23年度版をきちんと作られました。ちゃんと、科研費シーズン前に出すのですから、羊土社も気合いが入っています。

第2章と、第3章は第1版とまったく変わっていません。大きく変わったのは、第1章です。すでに、第1版をお持ちの方は、買い換える必要はないと思いますが、今年初めて、科研費を申請する方、今まで科研費に通ったことがないという方には、マストバイな一冊と思います。

前書きに、「こんな本を書いている自分自身が科研費通らないわけにはいかないと、去年の科研費申請には相当プレッシャーがかかった」と告白されています。児島先生ご自身の実物の申請書や、落ちた方の実例、通った方の実例などがあり、とても誠実に書かれた本です。

私も、今年は、科研費申請しなきゃいけない年なので頑張ります。


2011.08.05

腎臓内科学の勉強

教育部門に移って、なかなか、じっくり腎臓内科学の勉強をする機会が減ってしまいそうだったので、週に一回、卒後5-8年目の若手有志と一緒に、1時間の勉強会を2年前からやっています。

自分一人だとなかなか読めないような重たい本を教科書にしていて、これまでに、以下の3冊を読みました。

臨床透析ハンドブック第4版

より理解を深める!体液電解質異常と輸液 3版

腎生検病理アトラス

どの本も、腎臓内科医であれば、一度は読んでおくべきと思うような良書でした。そして、次の教科書。最近出版された、次の本にしました。

シュライアー腎臓病と病態生理

かなり分厚く、読みでがある本です。半年くらいかけて、じっくり勉強したいと思います。

2011.08.01

本の紹介「Amazonランキングの謎を解く」

私の書いた本「レジデントのための血液透析患者マネジメント」は、なかなかAmazonに入荷せず、一瞬15冊入荷されましたが、その後、再び、在庫切れという状況が続いています。なんか、ビジネスチャンスを失っているような気もしますが、息の長い本になって欲しいので、まぁ、いいかと。

自分の本のAmazonの在庫状況を見ながら、ついつい目がいってしまうのが、Amazonランキング。入荷があったときには、3桁台まで上昇しましたが、その後、在庫切れになったら、1万-3万台あたりをふらふら。

ところで、このAmazonランキングというのはどうやって計算しているのでしょうか?Amazonランキングの更新頻度が1時間に一回だから、当然、1時間当たりの売上冊数によると考えたくなります。1時間に何冊も売れる本はそれでよいのですが、ロングテールビジネスをおこなっているAmazonにおいては、大部分の本が1時間当たりの売上冊数はゼロなはずです。1日で売れた数、1週間で売れた数、1ヶ月で売れた数に、係数をかけて、ランキングをはじき出しているのでしょうか?Amazonが取り扱う、大部分の本は、年に5冊くらいが売れるロングテール本だと言われています。そうすると、Amazonが扱う300万点もの書籍すべてに、それぞれ一意のランキングを付けるには、どういう計算方法を用いているのか?考えると、とても不思議な感じがしてきます。

ちょうど、そんなことを考えていたとき、いつも行く日本橋の丸善に、「Amazonランキングの謎を解く: 確率的な順位付けが教える売上の構造」が平積みされていました。タイトルを見ると、ビジネス書みたいな感じがしたのですが、パラパラと見ると、本格的な確率論の本。さっそく、購入して(私がリアル書店で本を買うのはよほどのことです)、あまりに面白く、あっという間に、読んでしまったので、みなさんにおすすめしたいと思います。

著者の服部哲弥氏は、慶應義塾大学経済学部教授で、確率論、数理物理学の研究者です。Amazonの内部の人間ではないので、実際に、Amazonのランキングがどのように計算されているかについて解説しているわけではありません。Amazonランキングを題材として、数理物理学を展開している本です。つまり、Amazonランキングを計算する数理モデルを構築し、サンプルデータ(いくつかの書籍のAmazonランキングを毎日書き写して採取したもの)を用いて検証するということをやっている本です。

Amazonのランキングの計算方法を推測する上で、著者が採用したモデルは「move-to-front規則」(最後に売れた順に並べる、つまり、注文のたびに1位にジャンプする)というモデルです。たしかに、これは、自分の本のランキングをながめていても起こる現象で、順位が、10万台であろうと、100万台であろうと、1回注文すると、順位が、おおむね1万位台または2万位台に一気に上がります。実際には1位ではありませんが、本研究では、研究対象をロングテールの本にしぼり、1位と1万位が同等と見なせる単純化したモデルを用いているので、モデル内では同じ意味合いと考えて下さい。

そして、もう一つ重要なことは、検証対象を、1週間に1冊以下しか売れないような、Amazonが取り扱っている大多数の本にしぼったことです。よく売れる本(ビッグヒット書籍)と大多数のあまり売れない本(ロングテール書籍)では、Amazonランキングの計算の仕方が異なる可能性があり、著者は、ロングテールのランキング1万位以下の書籍のAmazonランキング計算方法に焦点を当てました。

著者はパレート分布に基づき、非常に単純なランキングの数理モデルを構築しました。そして、サンプルデータのランキングの時間変化のデータを統計的に当てはめて、各種係数を決めています。それによれば、著者の構築した数理モデルはランキングの推移と、非常によく一致しており、ランキングの数理モデルが正しいことを検証しています。

中身の1/3くらいは、かなり本格的な数学なので、私もついて行けないのですが、この本で、Amazonランキングの意味するものが 、明確になりました。

1万位以下のAmazonランキングでは、そのランキングが意味するものは最後に売れてからの経過時間と考えるとよいようです。

順位 最後に売れてから
70万位 72日
60万位 41日
50万位 26日
40万位 16日
30万位 9日
20万位 4.5日
10万位 36時間
5万位 13時間
4万位 9時間
3万位 6時間

1万位以内(上位)のAmazonランキングは、実際の売れ行きとイメージが近いと理解できます。

順位 平均注文時間間隔
10位 5秒/冊
100位 1.5分/冊
1000位 30分/冊
1万位 7.5時間/冊

上記、テーブルは、いずれも「Amazonランキングの謎を解く」服部哲弥著から引用。

さらに、この本がすばらしいところは、ランキング計算モデルを、実際のサンプルデータに当てはめて、係数を決めた結果、実は、「Amazonはロングテールビジネスではない」ということを明らかにしたということです。つまり、ほとんど売れない本は、コストがかからないと言っても、Amazonの収益にはほとんど寄与しておらず、実際には、Amazonは「よく売れる本」で収益を得ていると言うことです。すでに、「Amazonはロングテールビジネスではない」というのは、私の書いた本のような、たいしして売れない本が、ずっと在庫されないままになっているという事実とも一致しているのかもしれません。詳しくは、本書を読んで下さい。

本格的な確率論で、ついて行けていない部分もあります(そう言う人には、読み飛ばせる工夫がしてありますのでご安心下さい)が、かなりおもしろい本です。久方ぶりに、楽しく数学と接することができました。おすすめの一冊です。

Amazonで詳細を見る

2011.07.31

積ん読本2011年7月

長崎、広島と出張が続き、7月はバタバタしましたが、大学は夏休みに入りました。教員とは言え、診療、研究活動、2学期に向けての各種講義の準備などがあり、まるっきり休みというわけではありませんが、講義もなく、委員会もほとんど8月はお休みになるので、少し、気分的にもゆったりしています。

今年は、家族での夏休み旅行はなし。本をたくさん読みたい。単行本の執筆、連載記事のスタートもしたい。いつもとは違う8月になりそうです。

「Amazonランキングの謎を解く: 確率的な順位付けが教える売上の構造」

著者:服部 哲弥、出版社:化学同人 (2011-05-30)、ASIN:475981339X【amazon.co.jp

この本は、かなり掘り出し物の本だと思っています。アマゾンの売り上げランキングを数学的に解析するという本。あっ、ビジネス書ではないですよ。本当の数学です。でも、これ、すごくおもしろい。まもなく、読み終わりますので、レビューを書きますね。


「池澤夏樹の世界文学リミックス」

著者:池澤 夏樹、出版社:河出書房新社 (2011-04-16)、ASIN:430902033X【amazon.co.jp

夏休みと言えば、新潮文庫の100冊。今年の、100冊の内、何冊読んだことがあるかなと思ったら、20冊くらいでした。

さて、新潮文庫の100冊とは全然違うのですが、河出書房新社から発行されている池澤夏樹=個人編集世界文学全集が出ています。この本は、池澤夏樹自ら、全集に選んだ本を、興味深く、紹介している本です。この本を読んで、おもしろそうな本を、世界文学全集から選んで、読んでみようかな。これが、今年の夏の過ごし方です。


「お金はいつも正しい」

著者:堀江 貴文、出版社:双葉社 (2011-06-21)、ASIN:4575303283【amazon.co.jp

堀江さんのことは、個人的にとても好きです。自分が正しいと思うことを、率直に全力でやっている人と考えています。不器用なところで、いろいろ問題になるのでしょうが。以前から、彼のメルマガを購読しているのですが。すごいですね。収監されたにもかかわらず、毎週、量、質ともに充実したメルマガです。

この本は、収監直前に書かれた本です。若者向けの本ですが。あいかわらずの堀江節が味わえます。


「マネー避難 危険な銀行預金から撤退せよ!」

著者:藤巻健史、出版社:幻冬舎 (2011-06-23)、ASIN:4344020103【amazon.co.jp

特に、守るほどの資産はないのですが、デフォルトの危機がせまり、円高も1ドル78円まで進み、少し、真剣に考えようかと思っています。


「大局観 自分と闘って負けない心 (角川oneテーマ21)」

著者:羽生 善治、出版社:角川書店(角川グループパブリッシング) (2011-02-10)、ASIN:4047102768【amazon.co.jp

かれこれ、3ヶ月積ん読になっている。そろそろ読みたい。


「パブリックスピーカーの告白 ―効果的な講演、プレゼンテーション、講義への心構えと話し方」

著者:Scott Berkun、出版社:オライリージャパン (2010-10-27)、ASIN:487311473X【amazon.co.jp

この本は、プレゼンテーションの本質に迫った本。プレゼンテーションの良書。近いうちにレビューを書きます。


「「患者様」が医療を壊す (新潮選書)」

著者:岩田 健太郎、出版社:新潮社 (2011-01)、ASIN:4106036711【amazon.co.jp

この本も、なかなか積ん読状態を解消できずにいます。


「ケニアのスラムで高血圧を治さない―類化性能と別化性能」

著者:岩田 健太郎、出版社:克誠堂出版 (2011-03)、ASIN:477190376X【amazon.co.jp

この本も、なかなか積ん読状態を解消できずにいます。


「養老孟司の大言論〈1〉希望とは自分が変わること (養老孟司の大言論 1)」

著者:養老 孟司、出版社:新潮社 (2011-02)、ASIN:4104160040【amazon.co.jp

養老先生の本だからと、3冊まとめ買いしてしまいました。この夏には読みましょう。


「養老孟司の大言論〈2〉嫌いなことから、人は学ぶ (養老孟司の大言論 2)」

著者:養老 孟司、出版社:新潮社 (2011-03)、ASIN:4104160059【amazon.co.jp

養老先生の本だからと、3冊まとめ買いしてしまいました。この夏には読みましょう。


「養老孟司の大言論〈3〉大切なことは言葉にならない (養老孟司の大言論 3)」

著者:養老 孟司、出版社:新潮社 (2011-04)、ASIN:4104160067【amazon.co.jp

養老先生の本だからと、3冊まとめ買いしてしまいました。この夏には読みましょう。


「ベストプロフェッサー (高等教育シリーズ)」

著者:ケン ベイン、出版社:玉川大学出版部 (2008-05-01)、ASIN:4472403625【amazon.co.jp

2学期に向けて、読んでおきたいと思っています。


「社会は絶えず夢を見ている」

著者:大澤 真幸、出版社:朝日出版社 (2011-05-18)、ASIN:4255005834【amazon.co.jp

かなり、重たい本なので、なかなか手が付けられません。


「英語流の説得力をもつ日本語文章の書き方」

著者:三浦 順治、出版社:創拓社出版 (2009-06)、ASIN:487138246X【amazon.co.jp

指導する大学院生や若い医師の方の日本語の文章(たとえば、抄録や、各種申請書)のリライトをする機会が多いのですが、この本は、私が今まで無意識でおこなってきたリライトを、構造化してくれました。

この本を読むと、リライトのポイントを意識化することが出来、リライトの腕が上がります。なかなかの良書。


2011.07.13

本の紹介「裸のプレゼンター」

「裸のプレゼンター」

著者:ガー・レイノルズ、出版社:ピアソン桐原 (2011-07-08)、ASIN:4864010552【amazon.co.jp

本書は、プレゼンテーションZENで知られるガー・レイノルズのプレゼンテーション本の第3弾。1冊目が、プレゼンテーションZENの神髄とも言える「プレゼンテーションzen」、2冊目は、デザインに特化した「プレゼンテーションzenデザイン」。その後、入門書的な「ガー・レイノルズ シンプルプレゼン」という本が出ていますが、本作が実質的な3冊目と考えてよいでしょう。

さて、3冊目の「裸のプレゼンター」はどんな本かというと、非常に本質的、哲学的な本です。上級者向けの本です。前2冊、少なくとも「プレゼンテーションzen」を読んだことがない人には、何も響かないと思います。

プレゼンテーションzen」は、世の中にあふれているプレゼンテーションの価値観の破壊、プレゼンテーションをシンプルにすることを主張していました。「パワーポイントの死」と呼ばれることを中心として、まず、パワーポイントの呪縛から離れなさいという主張であったと思います。そして、この本では、パワーポイントの呪縛から離れて、プレゼンテーションとはなんなのかに迫った本です。前2冊が、プレゼンテーションの準備にほとんどページを割いていたのに対し、本書では、プレゼンテーションの実施にほとんどのページを割いています。

本書の主張をひとことでまとめるなら、「会話型のプレゼンテーションを目指せ」ということになるでしょうか。そのことを実践するための具体的な手法が事細かに示されているわけではありません。

私なりにこの本に書かれたことを実践するためには何をしたらよいか考えてみました。その結論は、以下の5つを実践することだと思います。

・PowerPointのテンプレートは使わないこと(使うのはすべて白紙のテンプレートのみ)
・箇条書きは使わないこと、
・アニメーションとページ切り替え効果を一切使わないこと
・演台を取り除いてステージの中央に立つこと
・プレゼンテーション中に、スクリーンを見ないこと

かなり、難しいでしょうが、上級者を目指す人は考えてみて下さい。上級者を目指すプレゼンターに本書をお勧めします。ただし、「プレゼンテーションzen」を読んでからです。


2011.07.10

本の紹介「レジデントのための血液透析患者マネジメント」

レジデントのための血液透析患者マネジメント

著者:門川 俊明、出版社:医学書院 (2011-06)、ASIN:4260013874【amazon.co.jp

私の第6冊目となる著作です。6月15日に発売されていたので、早く、紹介しようと思っていたのですが、Amazonでのステータスが、ずっと、「一時的に品切れになっています」が続いていて(実際には、取り次ぎがまったく扱っていなかったのだと思う)、ここで紹介するのは、Amazonに入荷してからにしようと思っていました。今日見たら、大量といっても15冊ですが、入荷されていましたので、紹介文を書くことにします。

この本がどんな本であるかは、医学書院のサイトに、まえがき、目次が掲載されていますので、ごらんになって下さい。出版に当たって、読者対象をレジデントに絞った方がよいと言うことになったので、「レジデントのための」とタイトルに付けていますが、私が初めに付けたタイトルは、「非専門家のための血液透析入門」というものでした。医学書店に行けば、透析の書籍が非常にたくさんありますが、実は、すべての本が「専門家のための 」本です。しかし、今の時代、自分は透析にはかかわらない分野を専門にしているつもりでも、実際には、透析患者を受け持つことが多くなっています。専門家でなければ、血液透析お手上げとなる事が多いでしょうが、主治医が血液透析患者のマネジメントをわかっているかどうかは、患者管理において、きわめて重要だと思っています。すべての医師が血液透析を施行出来る必要はない。けれども、すべての医師が血液透析患者をマネジメントすることが必要なのです。だから、本書の対象者はレジデントを含めた透析非専門医ということになります。専門家でない人向けなので、わかりやすく書くことを心がけましたが、決して、内容は薄っぺらなものではありません。本格的なものですので、透析専門医の人にも十分お役に立てるものだと思っています。

この本にかけた自分の思いを少し紹介したいと思います。

私は、これまで、「研究留学術」、「透析導入テキスト」、「バイオ研究がぐんぐん進むコンピュータ活用ガイド」、「Illustratorのやさしい使い方から論文・学会発表まで」、「医師のためのモバイル仕事術―iPad/iPhoneを使い倒す!」の5冊の書籍を上梓していて、この本が6冊目となります。しかし、本書は、自分の中では特別な意味のある一冊です。

これまでの5冊は、すべて、他の方の力を借りて、書き上げたものです。「研究留学術」は実質的には単著なのですが、研究留学の仲間たちに留学談を書いてもらったので、全部が自分の筆によるものではありません。今回は、完全なる単著です。前から、すべてを一人で書き上げた本を出版したいと思っていました。

また、これまでの5冊は、すべて、自分が企画したものではありませんでした。そういえば、「透析導入テキスト」は、自分で出版社を探したのでしたが、他の4冊は、出版社の方から話を持ちかけられたものでした。今回は、どうしても、売れて欲しい。自分でも売れる本にできる自信があったので、自分で出版社探しをしました。あえて、一番大きな出版社、「医学書院」にお願いしました。

今回は、初めて自分の本業の内容で書きました。臨床において、門川が専門にしているのは何なのか、そんな名刺代わりになるものが欲しかったと言うこともあります。私は、アメリカから帰国して、8年間、血液透析を生業としてやってきました。今でも、血液透析の仕事は続けていますが、本業は医学教育になりました。だから、自分の中で区切りをつけ、自分が経験したもの、学んだものを、一度、まとめたい、そういう思いで、書きました。

一人でも多くの方に読んでいただきたいと思います。


2011.07.05

本の紹介「誰も教えてくれなかった診断学」

「誰も教えてくれなかった診断学―患者の言葉から診断仮説をどう作るか」

著者:野口 善令、出版社:医学書院 (2008-04-01)、ASIN:4260004077【amazon.co.jp

多くの方が、診断学のテキストとして、薦める本書。しかし、すでに絶版となっており、Amazonのマーケットプレースで、倍近くのお金を払って手に入れました。

この本は、レジデント向けというより、レジデントや学生に臨床推論を教える指導者向けの本だと思います。私も、年間を通して、学生に臨床推論を教えていますが、なかなか自分では言葉にまとめ上げられなかった臨床推論での頭の使い方を明文化している名著だと思います。

ただ、この本は、あくまでも、臨床推論を教えるための方法論を解説しているだけで、実際に臨床推論を教えるためには、様々な症候、場面に応じた「カード」を作っていなければいけません。だから、指導者も、この本の方法論に基づいて、「カード」を研究医・学生と作っていく必要があります。本書が、カード作りに役立つ書籍としておすすめしているのが、以下の書籍。

10分間診断マニュアル 第2版 -症状と徴候-時間に追われる日々の診療のために-
Saint-Frances Guide to Outpatient Medicine (Saint-Frances Guide Series)
Primary Care Medicine: Office Evaluation and Management of the Adult Patient (Primary Care Medicine ( Goroll ))
診察エッセンシャルズ―症状をみる危険なサインをよむ
セイントとフランシスの内科診療ガイド 第2版
研修医当直御法度―ピットフォールとエッセンシャルズ
研修医当直御法度症例帖
救急総合診療Basic20問―最初の1時間にすること・考えること (総合診療ブックス)
ERの哲人―救急研修マニュアル

カード作りには熱心で優秀な指導者が必要です。

いずれにしても、医学書院は、ちゃんと、増刷して、この本を普及すべきと思います。


2011.06.28

積ん読本2011年6月

6月は学会もあって、慌ただしかったのですが、週1冊くらいで本が読めました。しかし、週4冊くらいのペースで本を購入しているので、差し引き、週3冊が積ん読に、、、。

現在の興味は、ゲーム理論の概要を勉強したいなぁということと、少し古典を読みたいということです。

今回は、ちょっと気軽な本が少ないので、当分、積ん読かもしれません。

「ゲーム理論の思考法」

著者:川西 諭、出版社:中経出版 (2009-09-01)、ASIN:4806134708【amazon.co.jp

ゲーム理論を勉強したいなぁと思って、本屋で見ていて、一番良さそうだった本。「囚人のジレンマ」を代表とする典型的なゲーム理論がわかりやすく解説されています。


「心理パラドクス―錯覚から論理を学ぶ101問」

著者:三浦 俊彦、出版社:二見書房 (2004-10)、ASIN:4576041681【amazon.co.jp

著明なパラドクスが知りたくて購入した本。


「新訂 福翁自伝 (岩波文庫)」

著者:福沢 諭吉、出版社:岩波書店 (1978-10)、ASIN:4003310225【amazon.co.jp

説明は不要と思いますが、福沢諭吉先生の自伝です。「福翁自伝」読んでないって、あり得ないと言われて、一応、積んどいています。


「飛ぶ教室 (光文社古典新訳文庫)」

著者:ケストナー、出版社:光文社 (2006-09-07)、ASIN:4334751059【amazon.co.jp

少し古めの児童文学が最近のお気に入りであります。


「イワン・デニーソヴィチの一日 (新潮文庫)」

著者:ソルジェニーツィン、出版社:新潮社 (1963-03)、ASIN:4102132015【amazon.co.jp

スゴ本でおすすめされていた本。ちょっと、重たい本みたいなので、当分、積んどくことになりそうです。


「方法序説 (岩波文庫)」

著者:デカルト、出版社:岩波書店 (1997-07-16)、ASIN:4003361318【amazon.co.jp

この本も知らない人もいないでしょうが、企業のエグゼクティブに愛読書のアンケートを取ると、必ずベスト1になるそうです。薄いですが、読み甲斐がありそうなので、ちょっと時間がかかるかな。


「存在の耐えられない軽さ (池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 1-3)」

著者:ミラン・クンデラ、出版社:河出書房新社 (2008-02-09)、ASIN:4309709435【amazon.co.jp

いつか、映画とともに、読みたいと思っていた本です。友人のベストおすすめな映画なので。原作を読んでから映画を読むべきか、映画を見てから原作を読むべきか。私は、絶対に前者なんです。というわけで、夏の旅行で読もうと思っています。


「最終講義-生き延びるための六講 (生きる技術!叢書)」

著者:内田 樹、出版社:技術評論社 (2011-06-24)、ASIN:4774147095【amazon.co.jp

2011年1月22日に行なわれ、多くの人々に感銘を与えた内田樹先生の最終講義を含む、6つの講義が収録されています。


「アット・ザ・ヘルム -自分のラボをもつ日のために- 第2版」

メディカルサイエンスインターナショナル、ASIN:489592680X【amazon.co.jp

絶対のおすすめ本の「アット・ザ・ヘルム」の改訂版です。PIの方はもちろん、これから、留学しようとする人には、絶対のおすすめ本です。


「アット・ザ・ベンチ バイオ実験室の統計学 -エクセルで学ぶ生物統計の基本-」

メディカルサイエンスインターナショナル、ASIN:4895926710【amazon.co.jp

これも、アット・ザ・ベンチの姉妹本です。パラパラと見た感じは、まぁまぁというところでしょうか。


2011.06.27

本の紹介「1秒もムダに生きない 時間の上手な使い方」

「1秒もムダに生きない 時間の上手な使い方 (光文社新書 525)」

著者:岩田健太郎、出版社:光文社 (2011-06-17)、ASIN:4334036287【amazon.co.jp

このタイトル、岩田先生の本でなければ、買わなかったです。

本書は、岩田健太郎先生のタイムマネジメント術、さらにはライフハック術を紹介した本です。

「1秒もムダに生きない」タイムマネジメント術が満載で、圧倒されるのではという不安がありましたが、読み進むうちに、そうではないことがわかり、ホッとしました。岩田先生は「1秒もムダに生きない」という生き方を、読者に強要しているわけではありません。ご自身も、「トースト、バタージャム、サラダ、コーヒーという朝のアイテムをしっかりと楽しむ。ここに長い時間をかける」「休憩をしっかりする、休養をしっかりとる」とおっしゃっています。本書で伝えたいことは、「時間を削り取り、時間を慈しむ。この相矛盾する態度をうまく混在させて、時間を上手に使っていく」ということです。

「1秒もムダに生きない」生き方は私にはできません。むしろ「他人から見たらムダと思われるようなこと」を大切にしています。もちろん、ムダの定義は非常に主観的なものですが、、、。仕事の切れ目に、学内をふらふら歩いて、同僚や後輩と会って、無駄話をする。そういう時間を大切にしたいと思っています。飲みに誘われたら、よっぽどのことがない限り断りません。結構、緊急の仕事が詰まっていても、ついつい行ってしまうのです。自分がやるべき仕事はきちんとやっているつもりですが、その上で、本業とはあまり関係のない本を書いたり、こんなブログを書いたりしています。でも、それら「他人から見ればムダなこと」が、自分が自分であるための、かなり本質的なものであるのです。

私自身、時間の使い方は下手くそです。だから、「ライフハック本」とか「タイムマネジメント本」を読むことは大好きです。ただし、そう言う本を読むときには、なるべく、本とは距離感を持ちながら読むようにしています。つまり、「こうしろ!」とか「あなたのここがダメ!」といった意見はさらっと流し、自分に役立ちそうなことだけ、参考にすると言う感じです。

本書には、岩田先生らしい、たくさんのライフハック術、タイムマネジメント術が紹介されています。

「テストの採点は、テストの日にやる」これは、私も心がけていることのひとつです。頭が一番集中している(ノっている)時に、関連したことを一気に済ませてしまうと言うことですね。似たようなこととして、私の場合、講義の準備は、前年の講義の直後にするようにしています。講義をおこなっていると、スライドをこうしておいた方がよかったなとか、この話題には触れなくてもよかったなという反省があります。そういう反省点や改善点は、時間がたつと忘れてしまうので、講義の直後に、全部やってしまうのです。あっ、もちろんん、毎年、同じ講義をやっているわけではありませんよ。反省点はその日のうちに反映させてしまうという意味です。

「パソコンとは適度につきあう」これも、そうですよね。私は、コンピュータおたくのように誤解されていますが、基本的に、コンピュータやOSはデフォルトのまま使う人間です。ハードウェアとか、ソフトウェアをいじり出すときりがないのがわかっているので、「コンピュータに振り回されずに、コンピュータを使いこなす立場でいたい」と思っています。

「三日坊主はかまわない」「翻訳の薦め」「スライドを使わない講義」「自分の知らない世界と出会う」などなど、他にもたくさんのライフハック術が紹介されています。


2011.06.19

本の紹介「超!文献管理ソリューション」

「超!文献管理ソリューション」

著者:讃岐 美智義、出版社:学研メディカル秀潤社 (2011-05-31)、ASIN:4780908434【amazon.co.jp

本書は、讃岐氏が「研究者のための文献管理PCソリューション」として、改訂を続けていた本の実質的な改訂版である。旧タイトルからPCを除き、サブタイトルに、「〜PubMed/医中誌検索からクラウド活用まで〜」となっていることから、この本の改訂の趣旨がよくわかる。

文献管理ソフトの代表ソフトEndnoteも、Endnote Webとの連携が図られた。さらには、今後、文献管理ソフトは、Endnoteに取って代わって、Mendeley、Zoteroといったクラウドを前提とした文献管理ソフトが文献管理のメインストリームになっていく可能性が高い。そのような状況を配慮し、いち早く、大規模改訂を行ったのであろう。

今の時代にあった適切なソフトを取り上げ、丁寧に解説している。

すべての画面キャプチャーも、常に最新のものを用意している。医中誌Webは4月25日に、ver. 5にアップグレードされたばかりだが、きちんとver.5の画面キャプチャーが使われている。

非常に丁寧で、誠実な一冊である。文献検索・管理の入門書として、まちがいない一冊として、薦めておく。


2011.06.15

私の新しい本「レジデントのための血液透析患者マネジメント」が出版されました

私の新しい本が出版されました。

自分が書いた本の中では、6冊目になります。1冊目が「研究留学術」、2冊目が「透析導入テキスト」、3冊目が「バイオ研究がぐんぐん進むコンピュータ活用ガイド」、4冊目が「Illustratorのやさしい使い方から論文・学会発表まで」、5冊目が「医師のためのモバイル仕事術―iPad/iPhoneを使い倒す!」。

6冊目は、「レジデントのための血液透析患者マネジメント」という本です。6冊目ですが、自分の中では特別な意味のある一冊です。

これまでの5冊は、すべて、他の方の力を借りて、書き上げたものです。「研究留学術」は実質的には単著なのですが、研究留学の仲間たちに留学談を書いてもらったので、全部が自分の筆によるものではありません。今回は、完全なる単著です。前から、すべてを一人で書き上げたいと思っていました。

また、これまでの5冊は、すべて、自分が企画したものではありませんでした。そういえば、「透析導入テキスト」は、自分で出版社を探したのでしたが、他の4冊は、出版社の方から話を持ちかけられたものでした。今回は、どうしても、売れて欲しい。自分でも売れる本にできる自信があったので、あえて、一番大きな出版社、「医学書院」に自分からお願いしました。

今回は、初めて自分の本業の内容で書きました。今までのは、あまり、大きな声で言えるような内容ではなかったのです。

私は、アメリカから帰国して、8年間、血液透析を生業としてやってきました。その中で、自分が経験したもの、学んだものを、一度、まとめたい、そういう思いで、書きました。おいおい、中身のご紹介はしますが、AMAZONでも、まだ、予約のみです。AMAZONは、新しい本の在庫が不安定なので、もし、よろしければ、予約されることをおすすめします。

2011.06.13

本の紹介「ガー・レイノルズ シンプルプレゼン」

「ガー・レイノルズ シンプルプレゼン」

著者:ガー・レイノルズ、出版社:日経BP社 (2011-03-31)、ASIN:4822230546【amazon.co.jp

この本は、「プレゼンテーションZEN」のダイジェスト版のような本です。実は、本を読んだまま、付属のDVDを見ないで放置していたのですが、ちょっと時間があったので、見てみました。

このDVDは日経ビジネスアソシエが主催したガーレイノルズのプレゼンテーションに関するプレゼンテーションでした。90分近くでかなりボリュームがあります。DVDを見て気づきました。この本自身、このプレゼンテーションを編集部の人がテープ起こしして、少し書き足したんだなと言うことです。

というわけで、本の作り方は安易ではありますが、このDVD自体は、プレゼンテーションZENのコンセプトを気軽に知るにはとてもよいものであります。ガーレイノルズは英語で話していますが、非常にわかりやすい英語ですし、日本語字幕も付いています。ガーレイノルズのプレゼンテーションは、もっとストイックなものなのかと思っていたのですが、非常にナチュラルでハートウォーミングな印象でした。

そう言えば、DVDを見ていて気づいたのですが、ガーレイノルズのプレゼンテーションの最前列に、黒川清先生が座ってらっしゃいますね。そういえば、最近は、PowerPointを使わないプレゼンテーションにされるなど、確かに、プレゼンテーションZENに影響されているのかもしれません。

ガーレイノルズの著作は、原典と呼ぶべきものが、「プレゼンテーションZEN」(紹介記事)、その後、デザインに特化した「プレゼンテーションZenデザイン」が出ました。そして、三作目の「Naked Presenter」は「裸のプレゼンター」として、7月8日に出版されます。これも、楽しみですね。私は予約しました。


2011.05.29

積ん読本2011年5月

新しい年度に入って、今年から新しくおこなう講義の連続で、その準備に時間がかかった上、震災でキャンセルされていた様々なイベントがリスケジュールされたので、正直、あまり本を読む時間がなかったです。でも、購入ペースは落ちていないので、次々と積ん読状態に、、、。でも、寝る前にパラパラめくっているので、忘れないうちに、ご紹介を。

「読んでいない本について堂々と語る方法」

著者:ピエール・バイヤール、出版社:筑摩書房 (2008-11-27)、ASIN:4480837167【amazon.co.jp

私も、きちんとも読んでいないのに、ブログで本の紹介をすることがあります。

この本も、そんな感じのブロガー向けの本なのかなと思って、ジャケ買いしてしまいました。そしたら、、、、。とんでもない。かなり本格的な本でした。出てくる本もプルーストとか、古典文学ばかり。「本を読む」ということについて、考え直させてくれます。


「iPhone英語勉強法 多読&多聴トレーニング」

著者:松本 秀幸、出版社:日本実業出版社 (2011-03-17)、ASIN:4534048068【amazon.co.jp

最近、すっかり英語を使う機会が減ってしまっているなぁ。

私が留学していた頃と違って、iPhoneとかを使えば、ほとんど無料でたくさんの学習素材があります。安く、効率よく英語を勉強したい方におすすめ。


「ガー・レイノルズ シンプルプレゼン」

著者:ガー・レイノルズ、出版社:日経BP社 (2011-03-31)、ASIN:4822230546【amazon.co.jp

この本は、「プレゼンテーションZEN」のダイジェスト版のような本です。プレゼンテーションZENを理解するには、「プレゼンテーションZEN」は少々、読みにくいかもしれません。そんな人は、DVDとともに、この本を読むのがよいでしょう。でも、本当に、プレゼンテーションZENを理解したいなら、「プレゼンテーションZEN」を読んで下さい。


「異端の系譜―慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス (中公新書ラクレ)」

著者:中西 茂、出版社:中央公論新社 (2010-11)、ASIN:4121503716【amazon.co.jp

将来は、SFCの教員になりたい!と言っても、みんな信じてくれない。でも、本気ですよ。


「長崎の教会 (NHK美の壺)」

日本放送出版協会、ASIN:4140812893【amazon.co.jp

7月に長崎に講演に行きます。金曜日なので、その後、2泊くらいして、少しゆっくりしてこようかと思っています。

昔から、長崎県に点在する古い教会を写真を撮りながら巡ってみたいと思っていました。でも、この本を見てみたら、長崎、平戸、五島列島と、かなり広範囲に点在しているようです。長崎は行くとしても、平戸に向かうか、五島列島に向かうか、迷っています。詳しい人がいたら、教えて下さい。


「自分の小さな「箱」から脱出する方法」

著者:アービンジャー インスティチュート、出版社:大和書房 (2006-10-19)、ASIN:4479791779【amazon.co.jp

もう、こういう、自己啓発本を読むのは、やめようと思っていたのですが、ついつい。前書きが正直いただけなかったなぁ。


「佐野洋子〈追悼総特集〉 (文藝別冊)」

河出書房新社、2011-04-14、ASIN:4309977510【amazon.co.jp

私の大好きな絵本「百万回生きたねこ」の作者、佐野洋子さんの追悼ムックです。私は、佐野さんのことはよく知らなかったのですが、かなり、個性的なおもしろい方だったようです。


2011.05.22

本の紹介「中央線で行く東京横断ホッピーマラソン」

「中央線で行く東京横断ホッピーマラソン (ちくま文庫)」

著者:大竹 聡、出版社:筑摩書房 (2009-08-10)、ASIN:4480426272【amazon.co.jp

最近、毎日のようにホッピーを飲んでいる。ホッピーが体にいいとか、安いとか、そう言うことではなく、ホッピーを置いているお店の雰囲気が好きなのだ。

本書は、中央線を一駅ずつ降りて、ホッピーが飲めるお店に一つ入っては、次に進む。スタートが、東京駅で、高尾駅まで32駅。高尾からの復路では、京王線で、ホッピーマラソンを続けている。

まぁ、タモリクラブ的な本ですね。でも、そのばかばかしさがかなり好きです。

あっ、ホッピーって知らない人もいますかね。ホッピーは、ビールの廉価版のような麦酒飲料です。ホッピーそのものだけを飲んでいる人を見たことがありません。基本的なルールとして、焼酎にホッピーを加えて飲みます。だから、ホッピー+焼酎をホッピーセットと呼びます。おそらく、これは、ホッピーだけだとアルコール度数が低すぎて、酔わないので、焼酎でアルコール度数をあげているのだと思います。だから、焼酎だけを追加したい人は「中おかわり」、ホッピーだけを追加したい人は「外おかわり」という形で追加します。ちなみに、ホッピーには、白と黒がありますが、黒も黒ビールほどのえぐみはありません。

とりあえず、私の目標は、1年かけて、この本に載っているお店をすべて制覇してやろうというものです。つきあってやってもいいぞ、というかたがいらっしゃいましたら、是非、お声がけ下さい。


2011.05.19

本の紹介「夜間飛行」

夜間飛行」は、サンテグジュペリの隠れた名作と言われています。もちろん、サンテグジュペリの隠れていない名作は、「星の王子様」。

ジブリの宮崎駿さんも、「夜間飛行」ファンらしく、もっとも好きな本の一つと述べています。「夜間飛行(新潮文庫)」の表紙のイラストも提供しているほどです。

私も、以前、「夜間飛行(新潮文庫)」を買って、読もうとしたのですが、これが、訳文が難しすぎる。堀口大学さんの訳文は、ファンも多いのですが、私には難しすぎて、この本を読めずにいました。原文は、フランス語ですから、さらに、無理ですね。

しょうがないので、「夜間飛行(まんがで読破)」を読んで、もう一度トライしたのですが、やはりダメでした。

そしたら、昨年、光文社から「夜間飛行(光文社古典新訳文庫)」が出ました。これは、読みやすい。

「星の王子様」をイメージして読むと、あまりに違うのでびっくりすると思います。作者のサン=テグジュペリは、実際に、航空郵便のパイロットで、彼の半自伝的な本です。

読みたかった1冊が読めて、幸せです。

2011.04.26

日本医書出版協会で電子書籍の講演をした

日本医書出版協会で「電子書籍」について話して欲しいという依頼があったのが、1月。しかも、聴衆は医学出版社の専門家の方々。基本的には頼まれた講演は断らないことにしているので、これも、電子書籍を知るいい機会だと思っていましたが、さすがに、心配になってきたので、しっかり準備をすることにしました。

まず、講演に向けておこなったのは、

ブレインストーミング

出版界の方2人にお願いして、食事をとりながら、2時間話しまくって、講演の骨格を作りました。

そのあと、客観的なデータを見ながら、自分の仮説が間違っていないことを確認するために、以下の5冊をはじめとした、たくさんの資料を読み込むのに約1ヶ月。さらに、自分の大学の図書館の方に数回のレクチャーを受けました。

ひとりブレインストーミングには、最近手に入れた、ローディアのdot padのNo. 38が大活躍。

今日は、本当に満員で、しかも、ほとんどすべての医学出版社の偉い方ばかりでびっくりしましたが、自分のペースで話すことができました。よく考えてみれば、素人が専門家に向かって歯にものきせず、えらそうにしゃべっているのですからおそろしいです。でも、みなさん、喜んでいただけたようでよかったです。

まったくの新しい分野だと、1時間話すのに、100時間くらい準備が必要ですね。とりあえず、現在は、電子出版をよく知る人と論議をしても、負けない自信があります。

「出版大崩壊 (文春新書)」

著者:山田 順、出版社:文藝春秋 (2011-03-17)、ASIN:4166607987【amazon.co.jp

今、電子出版をめぐる状況を把握したいのであれば、ベストの一冊。帯には、「禁断の書」などと書いてあるが、決してセンセーショナルな本ではなく、長年、出版社の編集長を務め、その後、実際に、電子出版の会社を立ち上げようとした(しかし、現実的にペイしないということがわかりペンディングした)ということから、冷静に、日本における電子出版事情を解説しています。

日本では、まだまだ電子出版は普及していない(唯一、普及しているのは、携帯エロ小説というのが意外)が、今後、本が減って、電子出版に移行する流れには逆らえないということ。そして、その流れは、出版社だけでなくて、文筆業を生業とする人にも強いダメージを与えること。悲観的な予想で結んでいます。


「電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)」

著者:佐々木 俊尚、出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン (2010-04-15)、ASIN:4887598084【amazon.co.jp

佐々木氏の非常に緻密な解説。基本的には、佐々木氏は、電子書籍バンザイ。どんどん進めるべきという考えです。しかし、佐々木氏が描く電子書籍の世界は、アメリカでは、1年、2年のうちにやってくるでしょうが、日本にやってくるにはまだ時間がかかると思います。理論的には、電子書籍バンザイ。でも、さまざまな権利関係で、日本ではそううまくいかないでしょうね。


「電子書籍の時代は本当に来るのか (ちくま新書)」

著者:歌田 明弘、出版社:筑摩書房 (2010-10-07)、ASIN:4480065768【amazon.co.jp

この本もバランスが取れていてよかったです。特に、Googleの狙う、すべての書籍をデジタル化するプロジェクトの話が詳しくてよかったです。


「電子書籍元年 iPad&キンドルで本と出版業界は激変するか?」

著者:田代真人、出版社:インプレスジャパン (2010-05-21)、ASIN:4844328700【amazon.co.jp

この本もよい本だと思いますが、上記の3冊を読むうちに、電子書籍業界に詳しくなってしまって、ほとんど、知っていることばかりになってしまいました。


「我、電子書籍の抵抗勢力たらんと欲す」

著者:中西 秀彦、出版社:印刷学会出版部 (2010-07)、ASIN:4870852004【amazon.co.jp

印刷業界紙のエッセイをまとめた一冊で、電子書籍の話は、はじめの数個のエッセイで触れられています。印刷会社の方が、電子出版において、著者と電子出版プラットフォームを結びつける立場として適任という指摘。なるほどと思いました。


2011.04.20

本の紹介「工学部ヒラノ教授」

「工学部ヒラノ教授」

著者:今野 浩、出版社:新潮社 (2011-01)、ASIN:4103147628【amazon.co.jp

案の定、「私を離さないで」は、なかなかページが進まず、一緒に読み始めた本書が予想外におもしろく、一気に読み切ってしまいました。

小説の体裁を取っていますが、実は、登場人物はほとんど実名で登場しますし、著者が歩んだ筑波大学→東工大→中央大という舞台はそのままです。ある意味、内情暴露本なのですが、著者の軽妙な語り口でまったく嫌みがありません。大学でおこっていることは小説よりはるかにおもしろいと言うことでしょう。

初めて知る、工学部の内情。

工学部ヒラノ教授の役得は、「1に好きな研究ができること。2に若くて優秀な学生とともに過ごせること。3に好きなときに海外出張できること」だそうです。

そして、工学部の教えは、

第一条 決められた時間に遅れないこと
第二条 一流の専門家になって、仲間たちの信頼を勝ち取るべく努力すること
第三条 専門以外のことには、軽々に口出ししないこと
第四条 仲間から頼まれたことは、(特別な理由がない限り)断らないこと
第五条 他人の話は最後まで聞くこと
第六条 学生や仲間をけなさないこと
第七条 拙速を旨とすべきこと

だそうです。

私も、今年から医者より、研究者より、教員である時間が長くなり、ヒラノ先生の悲哀がとっても身にしみました。


2011.04.18

カズオイシグロ

私は、半年前まで、カズオイシグロのことを知りませんでした。半年くらい前に、名前だけ知ったのですが、なぜ、カタカナ?そういうレベルでした。

日曜日の夜にNHKでカズオイシグロの番組をやっていましたた。ETV特集「カスオイシグロをさがして」という番組です。

その中の福岡センセイとカズオイシグロの対談がまったくもって退屈。このインタビューが番組全体のリズムを崩していて、残念ながら、この番組を見ていても、カズオイシグロが、どうして、そこまで人気がある作家なのかまったくわかりませんでした。

しょうがないから、まずは、一冊買って読むしかないなと思い、「私を離さないで」を丸善で購入しました。AMAZONには、まったく在庫がありませんでした。

私は、英語の小説(もちろん翻訳しているもの)を読むのがきわめて苦手なので、読了確率10%以下ですが、読み終わった暁には、また、紹介したいと思っています。

2011.04.15

本の紹介「モモ」ミヒャエル・エンデ

「モモ (岩波少年文庫(127))」

著者:ミヒャエル・エンデ、出版社:岩波書店 (2005-06-16)、ASIN:4001141272【amazon.co.jp

子供向けに書かれた小説ですが、大人が読んでも楽しめる小説です。

イタリア・ローマを思わせるとある街に現れた「時間貯蓄銀行」と称する灰色の男たちによって人々から時間が盗まれてしまい、皆の心から余裕が消えてしまう。しかし貧しくとも友人の話に耳を傾け、その人自身をとりもどさせてくれる不思議な力を持つ少女モモが、冒険のなかで奪われた時間を取り戻すというストーリー。

時間に追われ、ものの本質、余裕を持つことを忘れてしまった、現代人への警鐘を鳴らした一冊。

スリリングなストーリー展開で、あっという間に読み終えることができました。岩波少年文庫は、本当に、よい作品が多い。


「エンデの遺言 ―根源からお金を問うこと (講談社プラスアルファ文庫)」

著者:河邑 厚徳、出版社:講談社 (2011-03-22)、ASIN:4062814196【amazon.co.jp

「モモ」「はてしない物語」などで知られるファンタジー作家ミヒャエル・エンデが日本人への遺言として残した一本のテープ。これを元に制作されたドキュメンタリー番組(1999年、NHK放送「アインシュタイン・ロマン」)から生まれたベストセラー書籍。


2011.04.11

積ん読本2011年3月

ほとんどの研究会、会議、夜の予定がキャンセルされ上、一冊目が脱稿できたので、ゆっくり本を読む時間が取れるようになりました。3月の積ん読本、紹介し忘れていたので、取り急ぎ。すでに、読み終わったものも多いのですが、、、。

「枠からはみ出す仕事術」

著者:美崎 栄一郎、出版社:サンマーク出版 (2011-03-14)、ASIN:4763131400【amazon.co.jp

著者の美崎栄一郎さんは、花王で、数々のプロジェクトに携わるかたわら、社外の活動で、築地朝食会などの人気勉強会を主催する「スーパーサラリーマン」です。やる気と成果を最大にする26のスイッチを紹介した本です。

会社の枠だけに収まらずに、少しだけ、はみ出す。その極意を紹介した本です。


「「結果を出す人」はノートに何を書いているのか」

著者:美崎 栄一郎、出版社:ナナ・コーポレート・コミュニケーション (2009-09-11)、ASIN:4901491938【amazon.co.jp

枠からはみ出す仕事術」を読んで、すっかり美崎栄一郎さんのことが気に入ったので、美崎さんの一番売れた、この本を購入しました。ノートを中心にしたライフハック本です。この本は、自分のライフハックを考え直す上で、たくさんの示唆を与えてくれました。でも、私は、このようなノートの使い方はできません。ルールを考えて、ノートを使い分けるなんて事はできません。私のノート術は、すべてをモレスキンに書くことと、それ以外に一切ルールを設けないことです。


「「結果を出す人」はノートに何を書いているのか 実践編 」

著者:美崎 栄一郎、出版社:ナナ・コーポレート・コミュニケーション (2010-06-25)、ASIN:4904899016【amazon.co.jp

「結果を出す人」はノートに何を書いているのか」の続編。いろんな方が、どんなノート術を使っているを紹介。私は、前著よりこっちの方が、読んでいて楽しかったです。でも、私のノートのルール(ノートの使い方にルールを一切設けない)は変わりません。


「[書類・手帳・ノート・ノマド]の文具術 楽しんで仕事の効率をあげる!」

著者:美崎 栄一郎、出版社:ダイヤモンド社 (2011-01-28)、ASIN:4478013144【amazon.co.jp

これも美崎さんの本。文具フェチの私にとっては、とても楽しい一冊でした。役に立つ文具、デザインのよい文具を紹介すると同時に、それをどうやって使いこなすか。たくさんのアイデアの詰まった一冊です。


「麒麟の翼 (特別書き下ろし)」

著者:東野 圭吾、出版社:講談社 (2011-03-03)、ASIN:4062168065【amazon.co.jp

本の帯には、加賀恭一郎の最高傑作とある。買いたいけれど、今は読む時間がない。文庫本になるのを待つか、、、。


「バムとケロのもりのこや」

著者:島田 ゆか、出版社:文溪堂 (2011-01)、ASIN:4894237075【amazon.co.jp

バムケロシリーズは、私が一番好きな絵本の最新シリーズ(2006年9月7日のブログ参照)。島田ゆかさんは、寡作なので、新しい本が出るのが、本当に待ち遠しいのですが、待っただけの価値のある本です。


「After the Quake: Stories (Vintage International)」

著者:Haruki Murakami、出版社:Vintage (2003-05-13)、ASIN:0375713271【amazon.co.jp

神の子どもたちはみな踊る」の英訳本。


2011.02.19

積ん読本2011年2月

現在、執筆が佳境にさしかかっているため、積ん読本がどんどん増えて、なかなか書評を書けないものですから、とりあえず、紹介だけしておきます。

「ライフハッカー[日本版] 辛そうで辛くない人生と仕事が少し楽になる本」

著者:ライフハッカー[日本版]編集部、出版社:朝日新聞出版 (2011-02-18)、ASIN:4023308587【amazon.co.jp

「ライフハッカー[日本語版]」から選りすぐった人生に役立つTips集


「キュレーションの時代 「つながり」の情報革命が始まる (ちくま新書)」

著者:佐々木 俊尚、出版社:筑摩書房 (2011-02-09)、ASIN:4480065911【amazon.co.jp

ベストセラー本「電子書籍の衝撃」の続編。


「イングリッシュ・モンスターの最強英語術」

著者:菊池 健彦、出版社:集英社 (2011-01-26)、ASIN:4087860019【amazon.co.jp

引きこもり留学でTOEIC990点満点を24回更新中。


「英語達人列伝―あっぱれ、日本人の英語 (中公新書)」

著者:斎藤 兆史、出版社:中央公論新社 (2000-05)、ASIN:4121015339【amazon.co.jp

歴代の英語の達人、岡倉天心、野口英世、白州次郎ら、10人を紹介。


「街場の大学論 ウチダ式教育再生 (角川文庫)」

著者:内田 樹、出版社:角川書店(角川グループパブリッシング) (2010-12-25)、ASIN:4043707045【amazon.co.jp

内田樹先生の大学論。


「村上春樹 雑文集」

著者:村上 春樹、出版社:新潮社 (2011-01-31)、ASIN:4103534273【amazon.co.jp

これ、とってもおもしろくて、もったいなくてなかなか読めません。


「もういちど 村上春樹にご用心」

著者:内田 樹、出版社:アルテスパブリッシング (2010-11-19)、ASIN:4903951375【amazon.co.jp

これも、もったいなくて、今は読めない。


「スティーブ・ジョブズ 驚異のプレゼン―人々を惹きつける18の法則」

著者:カーマイン・ガロ、出版社:日経BP社 (2010-07-15)、ASIN:482224816X【amazon.co.jp

だいぶ、病状が悪化しているようですが、また、あのプレゼンが見たい。


「BEST of 東京いい店うまい店」

著者:文藝春秋編、出版社:文藝春秋 (2010-11-26)、ASIN:4163733701【amazon.co.jp

ミシュランより、はるかに常識的だと思う。


2011.01.04

本の紹介「医療者のための伝わるプレゼンテーション」

「医療者のための伝わるプレゼンテーション」

医学書院、ASIN:4260011650【amazon.co.jp

最近、ちらちらとこの本を紹介していますが、読み終わったので、本格的に紹介しておこうと思います。

プレゼンテーションについての本と言えば、PowerPointなどのソフトウェアの使い方の本であったり、PowerPointのスライドのデザインをどうするかという本がほとんどです。

しかし、プレゼンテーションのデザインの際には、プレゼンテーション全体のデザインをどうするかと言うことが重要であり、その次が、1枚1枚のスライドのデザインの話になるわけです。しかし、このプレゼンテーション全体のデザインに言及しているプレゼンテーションの本はきわめて少ないです。特に、医学のプレゼンテーションでは皆無でした。

本書は、メディカルプレゼンテーションとしては、唯一、プレゼンテーション全体のデザインの仕方に、しっかりと言及し、特に、プレゼンテーションによる教育効果につてい本格的に取り組んだ唯一の本です。

また、医療者のプレゼンテーションというのは、学会発表だけでなく、学会発表、多職種カンファレンス、患者教育、など様々な場面が存在します。また、PowerPointプレゼンテーションだけでなく、ポスタープレゼンテーション、板書、ハンドアウトだけのプレゼンテーションなど、形態も多様です。そのような、多様なシチュエーションに言及しているのも本書の特徴です。

だまされたと思って、一度読んでみて下さい。


2010.12.20

本の紹介「絶対ブレない「軸」のつくり方」

「絶対ブレない「軸」のつくり方」

著者:南 壮一郎、出版社:ダイヤモンド社 (2010-12-10)、ASIN:4478015082【amazon.co.jp

年末になると、自分を総括するような、そして、力をもらえる本が読みたくなります。IDEA*IDEAで紹介されていた本書を手に取り、一気に読み終えたのでご紹介します。

「メージャーリーグのオーナーになる」という小さいときからの夢をもとに、投資銀行を辞めて、ゼロからスタートして、楽天イーグルスの立ち上げスタッフになるまでの話です。もちろん、「メジャーリーグのオーナーになる」という夢は叶えられていないのですが、著者の行動力、軸のブレなさ、読んでいてホレボレします。

私の中で一番印象に残った言葉は、

面倒なことにこそ巻き込まれよう

これは、私が、この10年くらいモットーにしていることです。仕事の上でも、プライベートでも、ボランティアに近いこと、断ってもよいようなことはたくさんあります。仕事で言えば、論文の査読、学内の委員会、断れば断れますが、私は、原則的には断りません。

そして、私が心がけていることは、

巻き込まれるなら、中心に行け

ということです。委員会でも、末席で、いやそうな顔して参加するのではなく、どうせ参加するのなら、進んで輪の中心で働こうと言うことです。


2010.12.19

積ん読本2010年12月

年末ってみなさん好きですか?私はあまり好きではありません。12月31日という動かせない締め切りの元に、年賀状とか、大掃除とか、1年の総括とかが、否応なしに待っている、本をじっくり読む時間もない。

というわけで、2010年12月の積ん読本のご紹介。今年中に読んでおきたい本ばかりなのですが、果たして、読めるのかしら。最近、読書量が減っています。一番の原因は、電車の中で、twitterのタイムラインを見ることが多くなり、本を開くことがなくなったことだと思います。。

寝る前の、積ん読本読書は、だいたい、5分くらいで眠りに落ちてしまっていますし。

「イシューからはじめよ―知的生産の「シンプルな本質」」

著者:安宅和人、出版社:英治出版 (2010-11-24)、ASIN:4862760856【amazon.co.jp

マッキンゼー→脳科科学者(エール大学PhD取得)→マッキンゼー→YAHOOというかなり変わった経歴の方。彼のブログのエントリー「圧倒的に生産性の高い人(サイエンティスト)の研究スタイル」を読んでいただくと、この本の意図がよくわかると思う。

年末までには読み切りたい一冊。

「量子の社会哲学 革命は過去を救うと猫が言う」

著者:大澤 真幸、出版社:講談社 (2010-10-08)、ASIN:4062165570【amazon.co.jp

大澤「先生のことは、週刊医学新聞204号の、「リハビリの夜」の作者、熊谷晋一郎との対談記事を読んで知りました。ちなみに、この対談、かなりおもしろいです。


「東京百年レストラン ‐大人が幸せになれる店‐」

著者:伊藤章良、出版社:梧桐書院 (2010-12-07)、ASIN:4340100080【amazon.co.jp

レストランガイドで、ここまで、レストランへの愛情が伝わってくる本はありません。幸い、私が行ったことがあるのは1店だけ。世界で最高の美食の街、東京は奥が深いです。


「人生を無理なく変えていく「シフト」の法則 (ハヤカワ新書juice)」

著者:ピーター・アーネル、出版社:早川書房 (2010-11-26)、ASIN:4153200158【amazon.co.jp

作者の減量体験記が全面に出ているように思えますが、「無理なく」自分を変える方法満載の一冊です。


「Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2010年 06月号 [雑誌]」

ダイヤモンド社、ASIN:B003H2ECD4【amazon.co.jp

ドラッカーのオリジナル論文を読んでみたくて、古本屋で手に入れました。


「ニコン D7000 完全ガイド (インプレスムック DCM MOOK)」

著者:高橋 良輔、出版社:インプレスジャパン (2010-12-10)、ASIN:4844329545【amazon.co.jp

11月にD7000を購入して、メインカメラにしつつあります。D300に比べて、結構変わったこともあったので、買ってみました。どっちかというと、D7000でデジ一デビューといった人向けかな。


2010.11.29

「医師のためのモバイル仕事術―iPad/iPhoneを使い倒す!」Amazonの在庫あります

「医師のためのモバイル仕事術―iPad/iPhoneを使い倒す!」

著者:讃岐 美智義、門川 俊明、出版社:学研メディカル秀潤社 (2010-09)、ASIN:4780908310【amazon.co.jp】【bk1

10月1日に正式発売以来、一瞬だけ、Amazonに在庫が入りましたが、その後、1ヶ月近く、Amazonは在庫切れ。昨日から、ようやく、十分な在庫がAmazonはに入ったようです。また、いつ在庫切れになるかわからないので、お求めの方はお早めにどうぞ。


2010.11.26

積ん読本2010年11月

ちょうど、一ヶ月空きました。頚椎ヘルニアの調子はやはりわるくて、長時間のタイピングができません。ついつい億劫になり、ブログを更新できませんでした。少しずつ、やっていくことにします。

というわけで、2010年11月の積ん読本のご紹介。一部、既読です。

今回は、名著の続編というのが多い。

「ひとつ上のGTD ストレスフリーの整理術 実践編 仕事というゲームと人生というビジネスに勝利する方法」

著者:デビッド・アレン、出版社:二見書房 (2010-11-26)、ASIN:4576101714【amazon.co.jp

名著「ストレスフリーの仕事術」の続編


「博士漂流時代 「余った博士」はどうなるか? (DISCOVERサイエンス)」

著者:榎木 英介、出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン (2010-11-16)、ASIN:4887598602【amazon.co.jp

あの榎木さんの処女作。


「知的余生の方法 (新潮新書)」

著者:渡部 昇一、出版社:新潮社 (2010-11)、ASIN:4106103931【amazon.co.jp

大ベストセラー「知的生活の方法」の続編。


「知的生活の方法 (講談社現代新書 436)」

著者:渡部 昇一、出版社:講談社 (1976-04-23)、ASIN:4061158368【amazon.co.jp

上記の本のベースになった本。いつか読みたいと思っていました。


「〈JJNスペシャル〉医療者のための伝わるプレゼンテーション」

医学書院、ASIN:4260011650【amazon.co.jp】【bk1】【目次】

この本ばかにできないっていうか、プレゼンテーションの本としては、1,2を争うデキの本です。


「ティアニー先生の臨床入門」

医学書院、ASIN:4260011774【amazon.co.jp

名著「ティアニー先生の診断入門」の第2弾。


「英日日英 プロが教える基礎からの翻訳スキル」

著者:光藤 京子、出版社:三修社 (2008-09-22)、ASIN:4384055064【amazon.co.jp

最近、英語力の低下が著しく、リハビリをかねて、むりやり英語を使わなければいけない状況に陥らせようと考えています。


2010.10.12

本の紹介「残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法」

「残酷な世界で生き延びるたったひとつの方法」

著者:橘玲、出版社:幻冬舎 (2010-09-28)、ASIN:4344018850【amazon.co.jp

この作者の著作はたびたび手を伸ばしてしまうのだが、残念ながら、心地よい感覚が残って読み終えたことがない。本書もそうだった。テーマ設定は秀逸で、盛り上げ方は上手なのだが、中身がうすい。

本屋で私の目をひいたのは、「自分を変えることができるか」「他人を変えることができるか」という、第1章と第2章の目次である。著者は、最近話題になった勝間和代と香山リカの論争からスタートして、自己啓発を否定し、「自分を変えることはできない」と主張している。また、第二章では、オウムからスタートし、「他人を変えることもできない」と主張する。

本書のスタイルは、動物行動学や心理学、脳科学から様々な例が引きながら論を進めるというものである。それぞれの引用自体は興味深いものだが、それらの引用をつないで、主張につながる糸が見えてこない。本書の最終的な主張は、帯にも書いてある「伽藍を捨ててバザールに向かえ!」「恐竜の尻尾のなかに頭を探せ!」なのだが、その結論自体は、ここ5年間くらいで言い古されているものなので、理解できるとしても、「自分を変えることはできない」「他人を変えることもできない」ことから、どうつながっているのか、まったくわからなかった。

理解するために、もう一度読み直そうか悩む。でも、きっと、読み直しても理解できない気がする。

あっ、ちなみに、私の考えは、「自分を変えるのはかなり難しい」そして、「他人を変えるのはもっと難しい」である。だからといって自己啓発や宗教を否定するつもりはまったくない。


2010.10.10

本の紹介「大金持ちも驚いた105円という大金」

「大金持ちも驚いた105円という大金」

著者:吉本 康永、出版社:三五館 (2009-05-22)、ASIN:4883204685【amazon.co.jp

成毛眞ブログで紹介されていて気になった一冊。

私は、本書で「せどり」という職業というか、ビジネス手法があることを初めて知った。

著者は、地方の予備校教師にして、定年を間近に控え、4000万円のローンをかかえ、路頭に迷いそうになる。若いときからたくさんの本を読んでいて、たまたま、手元にある本をアマゾンマーケットプレースに出品したら高く売れたことをきっかけに、「せどり」稼業に精を出すようになる。

ブックオフの105円コーナーの中で、高い値が付きそうな本を見つけて買い求めては、それを、それなりの値段をつけて、アマゾンマーケットプレースに出品するという形で利益を得ていく。このように、「同業者の中間に立って品物を取り次ぎ、その手数料を取ること」を「せどり」という。

著者は結局、予備校の仕事はやめて、「せどり」稼業に専念し、月に100万円を超える売り上げを得るようになる。ただ、それだけの本なのだが、彼の独特の文章力と、ところどころにはさまれる、高額で売れた商品の紹介に引き込まれて、あっという間に読み切ってしまった。

私は、一度だけブックオフに蔵書を売ったことがあるが、その値の付け方にあきれ果ててしまった。ブックオフの買い取り値の根拠がどのようになっているかはわからないが、少なくとも本を愛して、価値の高い本に高い値をつけるという方法ではなかった。

そこに、105円コーナーに価値のある本が紛れ込むという余地が生まれる。そのような、価値より安く売られている本をめざとく見つけるのが、「せどり」屋なのである。また、アマゾンマーケットプレースという仕組みが、リアルの古書店を開かなくても、本をさばけるという機会を与えてくれている。

だから、本の価値に無頓着なブックオフとアマゾンマーケットプレースという場が、たまたま作ってくれたビジネスチャンスであり、おそらく、「せどり」の市場は大きなものではなく、たくさんの業者が参入できるものではないし、いつ崩壊してしまうかわからないビジネスモデルである。

私は、前から、アマゾンマーケットプレースで1円で売られている本があることが不思議でならなかったが、この本を読んで、1円でも儲けることの出来る仕組みがわかった。1円で出品されている本でも、発送料として、お客は、360円が取られる。ただし、このとき、amazonから出品者に払われるのは260円+1円である。普通は、赤字になるわけだが、大手の古本屋だと、大量発送することで、宅配料の割引を受けることで、なんとか、261円以下で発送できるらしい。まぁ、それでも、1冊で、数十円の利益にしかならないのだが。

著者は、最高1ヶ月に150万円ほどの売り上げがあったようだが、その場合、純利益は、半分弱だそうだ。しかし、これだけの売り上げを得るためには、毎日何カ所ものブックオフをまわり、家には、10000冊を超える在庫を抱える必要があるとのこと。サイドビジネスで「せどり」稼業をしても、せいぜい、10-20万円の売り上げしか期待できないようである。

私は、こういう、裏稼業というか、自分の知らない世界を覗くのが好きなので、とてもおもしろく読めた。


2010.09.30

本の紹介「医師のためのモバイル仕事術―iPad/iPhoneを使い倒す!」

「医師のためのモバイル仕事術―iPad/iPhoneを使い倒す!」

著者:讃岐 美智義、門川 俊明、出版社:学研メディカル秀潤社 (2010-09)、ASIN:4780908310【amazon.co.jp】【bk1

讃岐美智義さんが、書かれた「医師のためのモバイル仕事術iPad/iPhoneを使い倒す!」をお手伝いさせていただきました。一応共著者にしていただいていますが、私が書いたのは、1/5くらいです。

すでに、iPadやiPhoneは持っているけど、もう一歩、進めて使いたいという方向けの一冊です。

讃岐さんは、iPad/iPhoneを使いこなしていますが、私はたいして使いこなしていません。そういう二人の微妙な協調関係がなかなかよいものに仕上がったのではないかと思います。

iPhone4の発売から、一気に、一冊の本が出来る。そのスピード感がすごかったです。実際には、7月の末にほとんど影も形もなかったのですから、そこから、一気にこうして本になるすばらしいです。秀潤社の編集者の方は、なかなかのやり手です。

10月1日に正式発売ですが、まだ、本屋には並んでいるかわかりません。Amazonには、現在、在庫があるようです。

(追記)
と、思ったら、一瞬で在庫が売れ切れてしまったようです。すぐに、入荷するようですが、楽天ブックスにはわずかに在庫があるようです。


2010.09.22

「Illustratorのやさしい使い方から論文・学会発表まで」増刷

私が書いた「Illustratorのやさしい使い方から論文・学会発表まで」(羊土社)の増刷が決まりました。

出版社は、売れそうな部数を推察して、初回の刷数を決めます。それが、だいたいはけたところで、まだ売れそうなら増刷になるわけです。私が書くようなニッチな領域の本は、たいてい、初刷で、2000部程度のことが多いです。しかし、日本の本の流通というのは複雑で、半年は本屋に並んでいても、売れなければ、出版社に返本されます。だから、どのくらい売れているのかというのは、増刷がかかるかどうかまで、よくわかりません。増刷がかかれば、そこそこ売れていると言うことになります。

でも、それより大きな意味が増刷にはあって、一般的に、出版社に利益が生まれるのは、増刷がかかってからと言われています。ですから、増刷がかかると言うことは、私のようなものの書いた本を出版して下さる出版社への義理が果たせることになるのです。

私が、これまで出版してきた単行本は、全部で、4冊あるのですが、幸いにもIllustrator本以外の本は、順調に増刷がかかっていました。ここに来て、ようやくIllustrator本にも増刷がかかり、なんとか、義理を果たせた気がしています。

今回、増刷にあたって、自分の書いたものをもう一度読み直してみましたが、「Illustratorのやさしい使い方から論文・学会発表まで」は、なかなか、よい本だと自画自賛しています。

これからの学会シーズンで発表を控えている人は、是非、お買い求めを。

2010.09.17

積ん読本2010年9月

最近、積ん読本に対する考え方が変わってきました。

私は、いつもベッドサイドに、積ん読本10冊くらいを積んでいます。その日の気分で読み始めて、おもしろかったら、翌日、そのまま鞄に入れて読み続けます。つまらなければ、翌日は、他の本。でも、時に、また、読み出すこともある、という状態。

以前は、本を途中までしか読まないことに対して罪悪感が強かったのですが、最近では、つまらない本に時間を奪われる方がもったいないと考えて、つまらないと思ったら、すぐに捨てています。

あと、ここで、積ん読本として紹介してしまえば、書評を書かなきゃという荷が降りるので、気持ちが楽になります。もちろん、おもしろい本は紹介しますが、つまらない本をそこまで読み込むのはばからしい。

というわけで、2010年9月の積ん読本のご紹介。一部、既読です。

「ウェブで学ぶ ――オープンエデュケーションと知の革命 (ちくま新書)」

著者:梅田望夫、出版社:筑摩書房 (2010-09-08)、ASIN:4480065679【amazon.co.jp

ただいま半分くらいまで読んでいます。なかなかおもしろい。


「STATIONERY HACKS!」

著者:土橋 正、出版社:マガジンハウス (2009-10-01)、ASIN:4838720289【amazon.co.jp

文房具本好きなんですよね。寝る前にパラパラ見るのが楽しい。


「ロング・グッドバイ (ハヤカワ・ミステリ文庫 チ 1-11)」

著者:レイモンド・チャンドラー、出版社:早川書房 (2010-09)、ASIN:4150704619【amazon.co.jp

この本は、中学生の時に読んでいるのですが、あまり好きではありませんでした。村上春樹の訳で、どのように印象が変わるか期待。


「本当の自分を見つける文章術」

著者:ブレンダ・ウェランド、出版社:アトリエHB (2004-11)、ASIN:4990121929【amazon.co.jp

他で絶賛されていたので買ってみた。


「それでもなお、人を愛しなさい―人生の意味を見つけるための逆説の10カ条」

著者:ケント・M・キース、出版社:早川書房 (2010-08-21)、ASIN:4152091541【amazon.co.jp

本屋ではおもしろそうに見えたのだが、中身は薄い。


「臓器は若返る メタボリックドミノの真実 (朝日新書)」

著者:伊藤 裕、出版社:朝日新聞出版 (2010-08-10)、ASIN:4022733535【amazon.co.jp

身内本。是非、お買い求め下さい。


「時生 (講談社文庫)」

著者:東野 圭吾、出版社:講談社 (2005-08-12)、ASIN:4062751666【amazon.co.jp

スコットランドの帰りの飛行機の中で読了。なかなかよかった。東野圭吾のベスト5に入るかな。


「私が彼を殺した (講談社文庫)」

著者:東野 圭吾、出版社:講談社 (2002-03-15)、ASIN:4062733854【amazon.co.jp

スコットランドで読もうと思ったが、ここまで手が回らなかった。


「マルコム・グラッドウェル THE NEW YORKER 傑作選1 ケチャップの謎 世界を変えた“ちょっとした発想”」

著者:マルコム・グラッドウェル、出版社:講談社 (2010-07-07)、ASIN:4062159155【amazon.co.jp

全3部作の第1冊目。昔は、めんどくさいから、こういう時は、3冊まとめて買っていたが、最近は、1冊買って気に入ってから、次のを買うようになった。少しは大人になった。2冊目は「マルコム・グラッドウェル THE NEW YORKER 傑作選2 失敗の技術 人生が思惑通りにいかない理由」。3冊目は「マルコム・グラッドウェル THE NEW YORKER 傑作選3 採用は2秒で決まる! 直感はどこまでアテになるか?」です。


2010.09.14

モレスキンを使いこなせない人にすすめる「モレスキンを使いこなすためのたった一つのルール」

私の現在のLifehackを支えているのは、iPhoneとモレスキン。私、モレスキンは、昔は、なかなか上手に使えなかったのです。でも、あることを心がけるようになったら、使えるようになりました。 それは、

モレスキンを使うルールをすべてなくすこと

でした。たとえば、日にちが変わったら必ず新しいページから書き始めるとか、そういうフォーマットに関する取り決めをすべてなくす。書く内容にも自由。備忘録でもいいし、ブレインストーミングでもいいし、お絵かきでもよいのです。私の場合、だいたい、電車の中で、原稿の素案を書いたり、講演を聴きながら、自分の思ったことを書き付けたり、ちょっとした備忘録に使ったりしています。あとで、使うかもしれないし、使わないかもしれない、そういう意識をすべてなくして、ただのメモ帳として使っています。こんな使い方をしていても、1冊で2ヶ月くらいもちます。

さて、モレスキンには、たくさんの種類があります。多くの方は、オリジナルのハードカバーが好きだと思いますが、私には、少し固すぎます。だから、ソフトカバーがお気に入りです。 ちなみに、中身は、スクェア。丸善とかに行ったときに、「ソフトカバーのスクウェア」をまとめ買いします。

筆記具の方は、最近、お気に入りなのが、万年筆。でも、残念なことに、モレスキンの紙質は、万年筆には合わないと思います。万年筆のインクが滲んで裏うつりしてしまうのです。 だから、筆記具も決めずに、手近にあるものを使っています。ただし、時に、カバンの中のペンを探してしまうことがあるので、一応、バックアップ用の筆記具をモレスキンにくっつけています。モレスキンにはペンホルダーがないので、「トラベラーズノート ペンホルダーM」をつけています。このホルダー、なかなかフィット感がよくて、よいですよ。 それに合うボールペンとしては、LAMY picoがおすすめのようです。 うん。この組み合わせなかなかよいです。 でも、実際に、picoを使う機会はそんなに多くありません。あくまで、すぐに筆記具が見つからないときのバックアップです。

そう言えば、先日、「モレスキン 「伝説のノート」活用術」(堀 正岳、ダイヤモンド社) という本を見つけて、さっそく読んでみました。ここに事例としてあげられているのは、他の人が見てもうなるようなものばかり。がちがちに書式やルールを決めた事例が多かったです。私のモレスキンの使い方とは、好対照なので、そういう使い方を目指す人には参考になる事例も多いと思います。

私にとって、役だったのは、最後の章の「モレスキンノートと相性のよい文房具」の章でした。

モレスキンを楽天で探す

2010.09.04

本の紹介「感染症外来の帰還」

「感染症外来の帰還」

著者:岩田 健太郎、出版社:医学書院 (2010-04)、ASIN:4260010093【amazon.co.jp

外来で感染症を見ると言うことに関しては、ピカイチの本である。私は、スコットランドに向かう機内の中で、ちょうど8時間ほどで読み切った。この本は、こうやって、一気に読んだ方が効果が高いのだと思う。

ただ、この本はアプローチに主眼を置いているので、では、実際にどうするかと言う点にまでは踏み込んでいないこともある。その場合は、青木眞先生の「レジデントのための感染症診療マニュアル 第2版」ですね。こっちは、通読はなかなか難しいので、関連した事象について、章単位で拾い読みするのがいいでしょう。


2010.09.02

本の紹介「科研費獲得の方法とコツ」

「科研費獲得の方法とコツ」

著者:児島 将康、出版社:羊土社 (2010-08-17)、ASIN:4758120137【amazon.co.jp

世の中は、徐々に、科研費申請ムードが漂っていますが、絶好の本が出ました。

児島 将康先生と言えば、以前、こちらでも紹介した「論文作成のテクニック」を公開されている先生です。

科研費の申請書はどう書いたらよいのか?各研究室で門外不出のテクニックなどもありそうですが、私自身、大学院時代に教えていただいやり方でなんとなくやっています。1回基盤Cで落とされた以外は、学術振興会特別研究員、萌芽研究、基盤Cx2と今のところ、まずまずの勝率です。内容は一定レベルはないとダメだけど、最終的には申請者の業績で決まるものと個人的には信じています。1度落とされた基盤Cは、なぜ落とされたのかわからなかったので、翌年、同じ内容で出したら通りました。

さて、科研費獲得のコツってあるのでしょうか?学術振興会や文部科学省が、「こう書けばよい」というものを公開していない以上、審査員が内情をばらす以外、「正しい申請書の書き方」はわからないはずですよね。一応、落ちたときは、一行くらいの「落ちた理由」が書かれてきますが、まったく参考になりません。

でも、著者は、出来るだけたくさんの事例(通った事例、落ちた事例)を集めて、紹介しています。ご自身の、申請書は丸々全部公開しています。「こう書けば絶対に通るというコツはないが、あきらかにこれは通らないという申請書は明確に指摘できる」と、きわめて誠実に、科研費の申請書の書き方を説明しています。

科研費獲得のコツがあるのかどうか?是非、この本を買って試して下さい。初めて申請書を書く研究者や、なかなか通らないという研究者には、大きな助けになる1冊だと思います。


2010.08.25

積ん読本

積ん読本がだいぶたまってきています。

「プレゼンテーション Zen」

著者:Garr Reynolds、出版社:ピアソンエデュケーション (2009-09-07)、ASIN:4894713284【amazon.co.jp

2年前に購入して、イマイチと思って、捨ててしまった。「プレゼンテーションZenデザイン」が出たので、もう一度買い直して読んでいます。今回読んだら、むちゃくちゃおもしろい。読み終わったら、レビューを書きます。


「プレゼンテーション Zen デザイン」

著者:Garr Reynolds、出版社:ピアソンエデュケーション (2010-06-25)、ASIN:4894713993【amazon.co.jp

「プレゼンテーションZen」の続編。


「Keynoteでプレゼン。」

著者:羽山 博、出版社:ビー・エヌ・エヌ新社 (2010-03-22)、ASIN:4861007054【amazon.co.jp

ちらっと見た感じは、自分の知らないテクニックは載っていない。でも、Keynote初めての人には良いと思います。


「さらば厚労省 それでもあなたは役人に生命を預けますか?」

著者:村重 直子、出版社:講談社 (2010-08-06)、ASIN:4062161486【amazon.co.jp

半分くらいまで読んだけど、同じことの繰り返しになってきて、あきてきた。一種の暴露本なんだけど、暴露本はあまり好きではない。


「Twitterで英語をつぶやいてみる (生活人新書)」

著者:石原真弓、出版社:日本放送出版協会 (2010-05-07)、ASIN:4140883200【amazon.co.jp

これ。なかなか、役に立ちます。もう一つTwitterアカウントを立てて、そっちは、英語でやろうかな。


「仕事の成果が激変する 知的生産ワークアウト―あなたが逆転するための73のメニュー」

著者:奥野 宣之、出版社:ダイヤモンド社 (2010-05-28)、ASIN:4478013314【amazon.co.jp

著者は、ベストセラー「情報は1冊のノートにまとめなさい」の著者の一冊。なかなかおもしろかった。読了。

「街場のメディア論 (光文社新書)」

著者:内田 樹、出版社:光文社 (2010-08-17)、ASIN:4334035779【amazon.co.jp

早く、これ読みたいのだけど、内田先生の本を読むのは、結構、体力が必要なので、もう少し積ん読。


「日本辺境論 (新潮新書)」

著者:内田 樹、出版社:新潮社 (2009-11)、ASIN:4106103362【amazon.co.jp

上記の本と一緒に、買って積ん読。


「心のなかの幸福のバケツ」

著者:ドナルド・O・クリフトン、出版社:日本経済新聞社 (2005-05-25)、ASIN:4532312159【amazon.co.jp

自己啓発本。読みたくなる気持ちになるまで、積ん読。


「仕事は楽しいかね?」

著者:デイル ドーテン、出版社:きこ書房 (2001-12)、ASIN:4877710787【amazon.co.jp

自己啓発本。読みたくなる気持ちになるまで、積ん読。


「もうひとつの謎解き―医師の眼で読む、おすすめ小説23 (へるす出版新書)」

著者:小川 道雄、出版社:へるす出版 (2010-07)、ASIN:489269682X【amazon.co.jp

おもしろそうかなと思って買ってみました。未読。


2010.08.21

あなたは本に赤ペンで線を引きますか?

自分は、学生時代から、本に線を引くのがとてもいやでした。本は、できるだけ汚さないように読んでいました。その理由はなんだったのでしょうか?

単純に、本を汚すと財産価値が下がってしまうと考えていたのかもしれません。もしくは、線を引いた本を誰かに見られて、「こんなところに線を引いているんだ」と思われるのがイヤだったのかもしれません。

でも、10年くらい前からは、赤ペンをひきまくるようになりました。線を引くだけでなく、本を読んで考えたことを余白に書き込んだり、本のまとめみたいなものを裏表紙に書いたり。

なんで、そんなことを始めたのか?それは、昨日のエントリーで書いた「本を読んでも、ストーリーをすべて忘れてしまう」からなのです。本を読むことは、それ自体がエンターテーメントなので、楽しく忘れてしまえばいいのですが、やはり、せっかく読んで得られたこと、そこで、自分が考えたことを残しておきたい、と思うようになりました。

推理小説の場合は、赤ペンで線を引いたりしませんが、もう少し、濃い内容の場合には、赤ペンをひきます。その本に書かれていることも大事ですが、それを読んだ自分がどう考えたかの方が重要なわけです。そして、そういうものは、すぐに忘れてしまうので、その場でメモって置かないと忘れてしまいます。だから、私が読んだ本は、かなり汚くなってしまいます。

そして、時間があれば、このブログで、メモした箴言を紹介したり、自分の意見を書いたりします。まぁ、時間がなかなかないので、読んだ本の1/3くらいですけれどね。ここで紹介したあとは、よっぽど好きな本でなければ、そのまま捨ててしまいます。紹介できなかった本の2/3は紹介するほどもない本でもないので、やはり捨ててしまいますが、いつかは紹介した本というのも少数ながらあって、そういった本が本棚を埋めています。だから、私の本棚は、そういう本か、レファレンスみたいな本か、買ったけど読んでいない本か。でも、ばんばん捨てちゃうので、あんまり本があるわけではありません。

そんなに、捨てちゃって、また読みたくなることはないのか?ごく、たまに、あるんですよね。そういう時は、もう一度買います。たとえば、最近、「プレゼンテーションZen」を買い直しました。それは、続編の「プレゼンテーションZenデザイン」を手に入れたからです。でも、そんなこと、1年に1冊か2冊ですから、「あとで読みたくなるかもしれない」と思って、びくびくして全部取っておく方がスペース取ってしまって無駄ですよね。

友人の本好きで、赤ペンはひかない、本は絶対に捨てない。折に触れて読み返したいから。という人がいました。本棚が大変なことになっているそうです。まぁ、そうでしょうね。

2010.08.20

あなたは本のストーリーをどのくらい覚えていますか

2つ続けて本に関するエントリーを書こうと思います。

先月から、岩波少年文庫の宮崎駿が選んだ50冊を読みあさっています。まず、一番初めに手に取ったのが、「星の王子さま」。

小学生の時に数回読んでいますが、今回、30年ぶりくらいに読んだのです。数回読んだ私に残っている「星の王子さま」の記憶は、うわばみの絵だけ。ストーリーはまったく覚えていなく、なんで、うわばみの絵で、名作になっちゃうんだろうと思っていました。

それが、30年ぶりに読んだら、新鮮で。そして、泣きました~~~。

いい本ですね。是非、みなさんも読み返してみて下さい。この本は、子供の本ではなく大人の本ですね。理解するにはある程度の社会経験が必要だと思いました。

というわけで、私は「星の王子さま」に限らず、ほとんど、読んだ本のストーリーを覚えていないのです。

本好きの人と話していて感じるのが、「よく、そんなにストーリーを覚えているなぁ」ということ。どうやって、そんなにストーリーを覚えているのでしょう。

たしかに、私はものすごい速読です。推理小説の文庫だと半日くらいで読み切ってしまいます。ストーリーを覚えている人は、熟読派なのでしょうか。それと、私の場合、ほとんど例外なく1回しか読みません。本好きの人は、好きな本は何回も読む。1回でよくわからなければ、もう一度読むとおっしゃいます。

そういえば、こんなことがありました。

一時、東野圭吾にはまっていたときがあって、毎週1冊くらいのペースで読んでいました。基本的に、本をとっておかない性質なので、本屋で、どの本は読んで、どの本は読んでいないかわからなくなることがあるのです。特に、東野圭吾のように多作の作家の場合。

これは、読んだことがないはずだと思って、「悪意」という本を買って読み始めました。20ページくらい読んだら、作者が同じだから、似たような雰囲気の本だなぁと思っていました。50ページくらい読んだところで、なんか、犯人がわかったぞ、っと得意になってきました。そしたら、ほんとに、犯人もトリックも予想した通り。そして、最後まで読み切ったところで、「あっ、この本読んだことがある」。

そんなこともあったくらいです。

ということで、本好きではあるのですが、あまり深く、じっくり読むようなタイプではないのです。

2010.08.16

本の紹介「仕事するのにオフィスはいらない 」

「仕事するのにオフィスはいらない (光文社新書)」

著者:佐々木 俊尚、出版社:光文社 (2009-07-16)、ASIN:4334035159【amazon.co.jp

最近、できるだけ、新書は読まないようにと思っていたのです。あまりに、中身がうすっぺらで、独善的なものが多いので。でも、こちらの記事を見て、本の書き方という部分がおもしろそうだったので、佐々木氏のワーキングスタイルである、ノマドワーキングについて書いている本書を買ってみました。

私が、一番興味をひかれたのが、第2章の「アテンションコントロール」でした。つまり、ノマドワーキングは、場所も時間も自由になるので、アテンションコントロールできないとうまくいかないというものです。自由なスタイルであることにかまけて、ネットサーフィンにはまってしまうような人は向かないということですね。

あとは、彼の紹介している仕事のプロセスとしてACDCというのに、ひどく合点がいきました。

A-Acquisition:情報、アイデアなどを取得するプロセス

C-Classify:情報、アイデアなどを整理するプロセス

D-Dig:情報、アイデアなどを掘り下げるプロセス

C-Collaborate:情報、アイデアなどを連携させ、実際の業務に取りかかるプロセス

という4つのステップに分けています。この話は、自分の原稿の書き方を見直すきっかけになったので、明日にでも、もう一度取り上げます。

自分一人のワーキングスタイルを紹介しているのではなく、ノマドワーキングをしている様々な人のワーキングスタイルを紹介していて、興味深かったです。少し、新書を見直しました。


2010.08.08

宮崎駿が選んだ50冊

岩波少年文庫の中は創刊60年を記念して、宮崎駿が選んだ50冊というキャンペーンをおこなっています。岩波少年文庫の中から、宮崎駿氏が50冊を選んで、それぞれに、短い書評を付けています。宮崎駿氏は、作品のインスピレーションを、これら岩波少年文庫から得ていることはよく知られていますが、実際に、岩波少年文庫をよみあさったのは20歳を過ぎてからだそうです。

現在上映中の「仮ぐらしのアリエッティ」の原作も、岩波少年文庫の「床下の小人たち、(著者)ノートン」ですね。

たまたま、「宮崎駿が選んだ50冊の直筆推薦文展」というイベントを見かけました。

実は、小学生の頃は、シャーロックホームズとルパンばっかりを読んでいて、名作と呼ばれる本も読みそこねているのが多いのです。50冊が平積みで売られていたので、ついつい、大人買いをしそうになりましたが、こらえて、2冊だけ買い求めました。2冊読み切ったら次に進むため、50冊をリストしておきます。

2010.08.05

本の紹介「君たちに伝えたい3つのこと」

少し、余裕が出てきたので、1週間に本を1冊読んで、ここで紹介できるようにしたいと思います。

まずは、「君たちに伝えたい3つのこと」(中山 敬一、ダイヤモンド社)が話題になっていると聞いてさっそく買って読んでみました。

本の帯には、こんな風に書いてあります。

「内容が過激すぎる」と専門雑誌の掲載がボツになり、ネットで話題となった「仕事と人生について享受からのメッセージ幻の原稿」完全版書籍化。

あぁ、あれですね。九州大学の中山教授と言えば、ご自身のウェブサイトに「教授からのメッセージ」として、かなり強烈な文章を掲載されており、以前に、こちらのブログでも紹介させていただきました。その文章を、実験医学で連載するはずだったけど、ボツになり、ダイヤモンド社で単行本としてまとめられたようです。

本のタイトル「君たちに伝えたい3つのこと」とある、「3つのこと」とは何か?

私がお伝えしたいのは、次の3つです。
1. 人生には「目標」と「戦略」が必要で、それは理性的に自分で決められる。
2.誰かのためでなく、自分のために生きよ。結果としてそれが人の役に立つ。
3.まずはルーチンワーカーではなく、クリエイターを目指すべき

とあります。

第4章から第6章が、単行本としてまとめるにあたって追記された部分だと思います。こちらは、やや辛口ではあるものの、まっとうなことが書かれています。気になったのは、「女性研究者にとっては、結婚は△、出産は×」くらい。

第1章から第3章にあたる部分は、オリジナルの「教授からのメッセージ」を元に、ふくらませて書いた部分だと思いますが、この部分は、読み進むにつれ、違和感を感じました。

オリジナルの「教授からのメッセージ」に書かれていたのは、「基礎研究に進みたいけど、臨床を少しやってみたいという人に、それは時間の無駄だから、一刻も早く基礎研究をスタートしなさい」というものでした。確かに、基礎医学研究で世界トップになりたいのであれば、医学部卒業後、すみやかに基礎医学研究をスタートさせた方が良いでしょう。しかし、本書は、医学部の卒業生が一人でも多く基礎医学研究に進んでもらいたいがために、医学部卒業生のキャリアパスを、ゆがめて描写しているように感じました。

「臨床医=ルーチンワーカー、研究者=クリエーター」である。

医学部を卒業すると、典型的な「ルーチンワーカー」である臨床医と、典型的な「クリエイター」である研究者という正反対の道が待っているのです。

理系のトップクラスの頭脳を大量に抱え込んでいる医学部では、学生の多くがクリエイターの道を歩んで欲しいと願っています。

しかしながら次に述べるように、現状では全国の神童たちを集めておきながら、そのほとんどをルーチンワーカーに仕立て上げている点、医学部の問題は非常に根が深いと言わざるを得ないでしょう。

医学部を卒業したら、臨床を経験せずに基礎医学研究に打ち込む研究医と、マニュアルに沿ってルーチンワークをおこなう臨床医しか進む道はない。本当にそうなのでしょうか?

臨床の現場で見つかる生体の謎、病気の謎に迫るには、知的興味を持った臨床の現場に立つ、臨床医の関与が必須です。ガイドラインやマニュアルさえあれば、医療は出来るものというわけではありません。ルーチンワークのように医療を提供する人もいるかもしれませんが、自分の知的な興味を満足させながら、診断・治療方法の開発をおこなっている臨床医もたくさんいます。つまり、臨床医といえどクリエイティブ度は様々であり、多様な人材がいて、医療の世界も、医学研究の世界も支えられているのだと思います。

さらに、私の感じた違和感の根源は、この本を文系の方やビジネスパーソンの方にも読んでもらうために、「研究者」を「クリエーター」と言い換えたことにあります。医学部卒業生のキャリアパスとしての「研究者」の位置づけは、一般社会の「クリエーター」と一緒なのでしょうか?

クリエーターとは、具体的には何なのか?著者の定義によれば「個を主張すること自体で日々の糧を稼いでいるプロ」とあります。例としてあげているのは、芸術家、プロスポーツ選手です。

著者は、「すべての職業は、ルーチンワーカーとクリエイターの2種類に大別される。」としていますが、クリエイティブ度は種々の度合いがあり、クリエーターとルーチンワーカーは、その両極端にあり、職業はルーチンワーカーとクリエイターの2つに分けられるようなものではないと思います。著者の論法によれば、一般社会人も、「個を主張すること自体で日々の糧を稼いでいるプロ」を目指せ、ということになるのでしょうが、実社会にそぐわない意見のように思います。

私としては、おすすめしたい本というわけではありませんが、「教授からのメッセージ」を読んで、興味をもたれた方は、どうぞ。

2010.07.02

2010年上半期に売れた本

2010年上半期に研究留学ネットを通して、amazon.co.jpで購入された書籍でどんなものが売れたか集計してみました。定番本(統計、英語)と人気のある本(切磋琢磨するアメリカの科学者たち研究者の仕事術研究留学術)、あとは、What's new!で紹介した本という形で落ち着いたランキングでした。

  書名    
1 切磋琢磨するアメリカの科学者たち~米国アカデミアと競争的資金の申請・審査の全貌 amazon.co.jp 本blog紹介記事
2 やるべきことが見えてくる研究者の仕事術~プロフェッショナル根性論 amazon.co.jp 本blog紹介記事
3 研究留学術~研究者のためのアメリカ留学ガイド amazon.co.jp 本blog紹介記事
4 理系のための人生設計ガイド amazon.co.jp 本blog紹介記事
5 ハーバードでも通用した研究者の英語術~ひとりで学べる英文ライティング・スキル amazon.co.jp 本blog紹介記事
6 バリの賢者からの教え~思い込みから抜け出す8つの方法 amazon.co.jp 本blog紹介記事
7 臨床医による臨床医のための本当はやさしい臨床統計~一流論文に使われる統計手法はこれだ! amazon.co.jp  
8 最新EndNote活用ガイドデジタル文献整理術 第4版 amazon.co.jp 本blog紹介記事
9 JMP活用 統計学とっておき勉強法~革新的統計ソフトと手計算で学ぶ統計入門 (ブルーバックス CD-ROM) amazon.co.jp 本blog紹介記事
10 これから論文を書く若者のために 大改訂増補版 amazon.co.jp 本blog紹介記事
11 相手の心を動かす英文手紙とe‐mailの効果的な書き方~理系研究者のための好感をもたれる表現の解説と例文集 amazon.co.jp 本blog紹介記事
12 日本人研究者が間違えやすい英語科学論文の正しい書き方~アクセプトされるための論文の執筆から投稿・採択 amazon.co.jp 本blog紹介記事
13 プロフェッショナルの条件~いかに成果をあげ、成長するか (はじめて読むドラッカー (自己実現編)) amazon.co.jp 本blog紹介記事
14 ポスター発表はチャンスの宝庫!~一歩進んだ発表のための計画・準備から当日のプレゼンまで amazon.co.jp 本blog紹介記事
15 法とは何か (岩波新書) amazon.co.jp 本blog紹介記事
15 細胞夜話 amazon.co.jp 本blog紹介記事
15 アクセプトされる英語医学論文を書こう!~ワークショップ方式による英語の弱点克服法 amazon.co.jp 本blog紹介記事
18 知の技法~東京大学教養学部「基礎演習」テキスト amazon.co.jp 本blog紹介記事
18 Illustratorのやさしい使い方から論文・学会発表まで~すぐに描けるイラスト作成のコツと研究者のためのポスタ amazon.co.jp 本blog紹介記事
19 プレゼンの極意を盗め!~スライド・動画・アニメなどナマ資料DVD付 amazon.co.jp  
19 GraphPad Prismによる生物統計学入門 amazon.co.jp 本blog紹介記事
19 医学・生物学研究者のための 絶対話せる英会話~研究室内の日常会話から国際学会発表まで amazon.co.jp 本blog紹介記事
19 考えあう技術 (ちくま新書) amazon.co.jp 本blog紹介記事

リベラルアートとして読んでおくべき本』で紹介した本はとても注目を集めたらしく、ワンセットで買われる方が多いようで、10人前後の人がまとめ買いして下さっています。

実は、最近の明らかな傾向は、Amazonを介して、本を買う人より、電子小物などを買われる方の方がだいぶ増えていると言うことです。売上高では、間違いなくそうですし、売り上げ個数でも、書籍は半分以下になっている用です。

書籍以外では圧倒的にレーザーポインタが人気です。リモコン付きレーザーポインタの紹介記事を読んで下さっている方が多いのだと思います。廉価版グリーンポイントレーザーのロジクールR800が大人気で、これまでの王者サシ-41という赤色レーザーを一気に抜き去りました。

  商品名  
1 ロジクール プロフェッショナル プレゼンター R800 amazon.co.jp
2 コクヨS&T レーザーポインター for PC(ハンディタイプ) サシ-41 amazon.co.jp
3 KOKUYO レーザーポインタ IC-GREEN for PC サシ-81N(ペンタイプ, 緑色光, パワーポイント操作機能) amazon.co.jp
4 コクヨS&T レーザーポインター<GREEN>(UDシリーズ) ELA-GU94 amazon.co.jp
5 太陽誘電製 That's CD-Rデータ用 48倍速700MB プリンタブル スピンドルケース50枚入 CDR80WPYSBV amazon.co.jp
6 KOKUYO プレゼンテーションマウス EAM-ULW2 (ハンディタイプ, パワーポイント操作機能) amazon.co.jp
7 コクヨS&T レーザーポインター for PC(ペンタイプ) サシ-51N 赤色光・パワーポイント対応タイプ amazon.co.jp
8 I-O DATA USB 2.0/1.1接続 33メディア対応マルチカード リーダー・ライター(ブラック) USB2-W33RW/B amazon.co.jp
9 KOKUYO レーザーポインタ for PC サシ-51N(ペンタイプ, パワーポイント操作機能) amazon.co.jp
10 グリーンハウス USB2.0カードリーダ/ライタ(SDHCカード) ホワイト GH-CRSDHC amazon.co.jp

2010.06.09

本の紹介「理系大学院留学」

「理系大学院留学―アメリカで実現する研究者への道 (留学応援シリーズ)」

著者:カガクシャ・ネット、出版社:アルク (2010-03-31)、ASIN:4757418566【amazon.co.jp

カガクシャ・ネットは、海外の理系大学院を受けた若い研究者のコミュニティです。当初は、メーリングリストを活動の中心としていましたが、2007年からは、メールマガジン「海外の大学院留学生たちが送る!サイエンス・実況中継」を発行しています。10年にもわたって、地道に活動を続けてこられたのは、うまく協調作業が進んできたおかげで、一人の人に負担がかかりすぎなかったと言うことなのでしょう。代表の杉井さんとは、10年間にわたって、ときおりお会いして情報交換してきました。

彼らの活動の集大成とも言える成果が本書です。

カガクシャ・ネットのそもそもの結成の経緯は、以前、私が運営していた研究留学ネットMLであったのではないかと推察しています。したがって、これまで、彼らの活動を見てきた私が、彼らが成し遂げた(というにふさわしい本だと思う)成果である本書を、献本いただきながら、2ヶ月も放置していたのは怠慢としか言いようがありません。申し訳ありません。

アメリカでポスドク留学する人の数は、明らかに減っています。それでも、私が留学した当時は、結構な数がいました。たとえば、私の大学の同級生100人のうち10人くらいが同時期に留学していました。911という治安の問題もあったと思いますが、もっと大きな問題として、日本でのポスドクが無計画に量産された割にテニュアポジションが増えなかったというポスドク問題、ポスドク留学のかなり多くの人数を占める医師の留学希望が減っていることなどにより、おそらく、私が留学していた当時の半分以下になっているのではないかと思われます。ただ、このようなポスドク留学の情報は、身近に経験者を捜すことが難しくない上に、インターネットの発達により、以前に比べて情報が得やすくなったと思われます。

一方で、海外の大学院留学となると、今でも、情報がかなり少ない状況です。海外の大学院留学は実質的な授業料がかからないことや、専攻分野の変更に寛容であることなど、重要な部分の情報でさえほとんど行き渡っていません。

本書では、海外の大学院留学を考える人にとって、プラクティカルな情報を与えてくれる唯一の書であるといえます。また、カガクシャ・ネットの人脈によって、豊富な体験談が集められている点も貴重です。

カガクシャ・ネットでは、柿内賢信記念賞というグラントを獲得し、世界各地で活躍する超一流の研究者のインタビューを敢行しました。小柴昌俊、石井裕、浅田春比古といったそうそうたる面々です。そのインタビューというか、先輩研究者からの若き科学者へのエールもPart IIIにまとめられています。

ということで、海外の大学院留学をちょっとでも考えている人は、必須の本です。というか、将来、世界的なレベルで研究をしたい学部生は、この本を買って、海外大学院留学というキャリアパスがあることを知っておく必要があると思います。


2010.05.27

本の紹介「研究者の英語術」

「ハーバードでも通用した研究者の英語術」

著者:島岡 要、出版社:羊土社 (2010-03)、ASIN:4758108404【amazon.co.jp】【bk1】【目次

先日、ボストンで著者の島岡さんとお話をさせていただいたときに、もうすぐ2冊目の本が出るからと、教えていただいていておりました。帰国後、さっそく、献本いただいていたのですが、私の怠慢で、2ヶ月近く放置してしまいました。すいません。

研究者の英語術とは何か?限られた時間の中で、優先順位をつけるとすれば、ライティングの力であると、割り切ったことが、最大の特徴です。「流暢な英語が話せるようになる」という希望を捨てる勇気、と「機能的な英文が書けるようになる」という希望を持つ勇気、この言葉がこの本の理念を表しています。

しかし、本当に、英語が話せなくてもよいかといえば、もちろん、答えはノーなのです。でも、英語というと、どうしても英会話に重点を置きがちな日本人研究者に、もっと、きちんとした英語で論文やグラントを書かないと、研究者としては一人前にならないぞ伝えています。そう言う観点で書かれた英語本はこれまでなかったですね。

実は、ライティングに関して言うと、どのように書くかより、何を書くかすら日本人研究者にはわからないことが多いのです。

私が大学院生の時に、指導教授から、英語論文の査読をやってみろと言われたことがあります。自分の論文を書いたことがなかった私にとっては、論文にコメントをすることができても、査読ってどうやって書くの?何を書くの?まったくわかりませんでした。表立って、論文の査読はこう書きなさいとエディターが指定することはありませんが、実は、暗黙のフォーマットがあるのです。そのことに気づいたのは、自分の論文をいくつか発表し、論文の査読をいただいてからでした。たとえば、Major Revisionであれば、はじめに、その論文の要点をまとめたあと、どのような部分が評価できるかを書きます。その研究価値は認めつつ、以下の問題(concernという言葉の使い方もこのとき知りました)があるとして、その問題を箇条書きでリストアップする。多くの査読者は、そのようなフォーマットで書きます。

残念ながら、本書には、査読の書き方という章はありませんが、論文を投稿する際のカバーレター、推薦状、CVといった、滅多に見る機会のない、研究者に必須の文章の貴重な文例がたくさん載っています。

それだけで、この本は、自分で独立するつもりのある研究者には必須の英語本であると言えます。

ロジックの通った英語を書く。これについては、科学のわかるネイティブに一つ一つ添削してもらって、トレーニングするのがいいのでしょうね。なかなか、そう言う恵まれた環境にいる方は少ないと思いますが。


2010.05.03

村上春樹のおすすめ本

今年のGWは天気がいいですね。

私は、朝早起きしてテニス。そのあと、大学か自宅で、申請書書き。夜は本を読みまくるというような過ごし方をしています。連休明けにでかい審査があるので、申請書書きは手を抜けないのですが、少しだけ、生活のペースをスローにすることが出来ています。

1Q84がたいそう気に入ったので、村上春樹に詳しい友人に、次の1冊は何にしたらよいかと聞いてみました。ちなみに、私自身は、「1Q84」「ノルウェイの森」しか読んでいません。

気軽に聞いたのですが、相当詳細な「村上春樹のおすすめ本」を教えてもらったので、皆さんにも公開。

客観的には『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』が彼の最高傑作とみなされていると思います。確かに良い小説です。

村上春樹の小説は短編、中編、長編の三本たてです。それぞれから選びました。

短編集では『東京奇譚集』か『中国行きのスロウ・ボート』小説を選ぶとすると、『神の子どもたちはみな踊る』に収録の”タイランド”が好きです。

中編では『1973年のピンボール 』か『国境の南、太陽の西

長編では、『ダンス・ダンス・ダンス』か『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』 を推しておきます。

とりあえず全部買って、かたっぱしから読んでいます。

2010.04.29

本の紹介「1Q84」

1Q84のbook1book2book3と一気に1週間あまりで読み切りました。

book1book2だけを読んだら、ただのエロ小説なのではと思う人も多いかもしれませんが、book3を読めば、これは、純愛小説なのであろうというのが私の感想です。私はどちらかというと、村上春樹作品のシンボルや比喩の多さに、途中で疲れてしまうので、たぶんにミステリーの要素も含んでいるせいか、これだけ分厚い3冊を短期間で読み終えられたことに少々ビックリしています。

book3が出ると、アナウンスされた時点で、book1book2book3が出てからにしようと思って、積ん読状態にしておいたのですが、book1book2を早々に読み終えてしまった人には、book3をどのような思いで読んだのでしょうかね。

噂では、book4が出るとか。でも、Happy Endが大好きな私としては、もう、book3で終わりでいいじゃないかという思いもあります。

いろんなレビューを読んでいると、批判的なコメントも結構ありますが、小説というのは、作者と読者の関係のみで決まるわけですから、そういうものは、無視して、、、、

私は、1Q84好きです。

 

 

2010.04.19

おすすめのドラッカー本

ドラッカーは、イメージとして、企業経営に関する本が多いように思うかもしれませんが、決してそんなことはなく、企業経営に関わらない人にも有益な本が多いです。

ドラッカーの著作を何冊か持っているのですが、私が読み通した本は「経営者の条件」だけ。他の本はパラパラ程度だったので、もう一度、読んでみたいなと思ったら、本屋で見つけたのは、「週刊 ダイヤモンド 2010年 4/17号」。もっと知りたいドラッカー特集をしています。もし、ドラッカーの膨大な著作の中からどの本を読めばよいのか、そのガイドとなります。

さて、「週刊 ダイヤモンド 2010年 4/17号」を読んで、このブログを読んでいるような方々にお勧めする本は以下の3つだと思います。

プロフェッショナルの条件

著者:P・F. ドラッカー、出版社:ダイヤモンド社 (2000-07)、ASIN:4478300593【amazon.co.jp

これが、第一番目におすすめでしょうね。

原書名は『THE ESSENTIAL DRUCKER ON INDIVIDUALS』で、著作10点、論文1点から個人の生き方に関するエッセンスを抜き出し、ドラッカー自身が加筆・削除・修正したものです。つまり、オリジナル版ではなく、ベスト盤のような位置づけですが、はじめて読むドラッカー本として、おすすめ。


経営者の条件

著者:P.F.ドラッカー、出版社:ダイヤモンド社 (2006-11-10)、ASIN:4478300747【amazon.co.jp

経営者の条件というタイトルがよくないと思うのですが、この本は、知的生産をする人には、非常に示唆に富んだ好著です。原著のタイトルは、The Effective Executiveで、ドラッカーは成果を上げる人のことをすべて、エグゼクティブと呼んでいます。

私は、選書版を持っているのですが、選書版にはない、序章「成果をあげるには」が入っているらしいので、買い直そうと思っています。


マネジメント [エッセンシャル版]

著者:P・F. ドラッカー、出版社:ダイヤモンド社 (2001-12-14)、ASIN:4478410232【amazon.co.jp

マネジメントになるので、3番目と言うことにしましたが、この本がドラッカーの代表作であり、『もしドラ』のネタになった本です。


下記の2部作は、北海道の熱心なドラッカリアンの佐藤等氏が書かれた、ドラッカーの理論を実践するためのワークブックです。

本の中には、実践シートがついていて、そこに、自分の手で書き込む形式になっています。ドラッカーのたくさんの著作のエッセンスが集められていて、すぐに、ドラッカー理論を実践したい人にはよいかもしれません。

実践するドラッカー【思考編】佐藤 等[編著]、ダイヤモンド社

「強み」「貢献」「集中」など、自分自身を「成長」させるために必要な「思考」をテーマにしています。

実践するドラッカー【行動編】佐藤 等、ダイヤモンド社

「時間管理のコツ」のほか、意思決定・決断の要諦、目標管理の方法、計画と実践の秘訣など、成果をあげる人の行動習慣をテーマにしています。

2010.04.17

本の紹介「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

著者:岩崎 夏海、出版社:ダイヤモンド社 (2009-12-04)、ASIN:4478012032【amazon.co.jp

表紙を見て、ちょっと、電車の中では読みにくいなぁと思っていたのですが、ベストセラーになっている『もしドラ』を読みました。

もしドラ』は、都立高校の野球部のマネージャーになった川島みなみが、勘違いから手にしたドラッカーの『マネジメント』を参考に、野球部の強化に取り組み、甲子園を目指すという青春ストーリーです。実は、野球部のマネジメントを題材とした、ドラッカーの理論のケーススタディになっています。

野球部のマネージャー業にでもドラッカーの『マネジメント』は通用することを通して、ドラッカーの考え方の普遍性を示すことになる不思議な本です。好き嫌いは分かれるかもしれませんが、私は、よくできたドラッカーの入門書だと思いました。

著者の岩崎氏は、AKB48を秋元康氏と一緒にプロデュースしていた方で、主人公の川島みなみも、AKB48の峰岸みなみがモデルなのだという。私は、AKB48まったくわからないのですが、AKB48好きな人にもお勧めな一冊。

もう少し、ドラッカーをきちんと読みたい人のお薦め本は、、、、次のエントリーで。


2010.04.13

積ん読

本屋が好きなので、しょっちゅう出かける。1回出かけると、せっかく来たのだからと、5、6冊買い求める。家でパラパラとするものの、なかなかじっくり読む時間がない。でも、また、本屋に行ってしまう。

時に、献本をいただいたりする。amazonでまとめ買いなどしてみる。

いつの間にやら、私の机の上には積ん読本が山になっています。

献本いただいた、「研究者の英語術」「理系大学院留学」ただいま、じっくり読んでおりますので、書評の方は、もう少しお待ち下さい。

2010.02.22

本の紹介「細胞夜話」

「細胞夜話」

著者:GEヘルスケアバイオサイエンス(株) 藤元宏和、出版社:パレード (2008-09-01)、ASIN:4434121634【amazon.co.jp

バイオダイレクトメールに掲載した細胞夜話のバックナンバーが一冊にまとまりました。

キット全盛、プロトコールが完備された時代には、あまりピンとこないかもしれませんが、私のように手探りで、Molecular Cloningを読みながら、必死にやっていた古い人間には、とても興味深い話のオンパレード。

Hela細胞の由来ぐらいは知っていましたが、さすがに3T3細胞が「"3" day "T"ransfer interval, "3" x 105 cells per 20-cm2 dish」の略だったとは知らなかったなぁ。

いろんな名前に、研究者のドラマが隠れていて、細胞のトリビアの固まりみたいな一冊です。かなり、楽しく読めました。

ただ、ページの下に書いてある、読者からのコメントに何の意味があるのか、私にはよくわかりませんでした。


2010.02.21

リベラルアートとして読んでおくべき本、全部買いそろえました

リベラルアートとして読んでおくべき本』を紹介したところ、多方面から、反響がありました。

とりあえず1冊くらい読んでみようと思ったのですが、、、、、。

結局、まとめ買いすることにしました。

山形大学医学部の学生には負けないように、今年中に読破します。

2010.02.17

リベラルアートとして読んでおくべき本

山形大学医学部長の嘉山孝正先生の講演を聴きました。中医協のメンバーであり、次期がんセンター理事長に内定するなど、オピニオンリーダーとしても、もっとも旬な医療人の一人であることは間違いないでしょう。

今回の講演は医学教育で、山形大学の医学部2年生に「リベラルアートとして読んでおくべき本」として課題にしている10冊というのが気になりました。その10冊を紹介しておきます。

学生から感想文を集めて、医学部長自ら、一人一人にコメントを書いてらっしゃるそうです。

講演後、食事をご一緒させていただきましたが、オフレコな話満載だったので、ここでは、、、。

2010.02.13

本の紹介「カッコウの卵は誰のもの」

「カッコウの卵は誰のもの」

著者:東野 圭吾、出版社:光文社 (2010-01-20)、ASIN:4334926940【amazon.co.jp

とりあえず、6ヶ月ぶりくらいに読む本として、選んだのが、東野圭吾の最新作のこの一冊。

スキーの元日本代表・緋田には、同じくスキーヤーの娘・風美がいる。母親の智代は、風美が2歳になる前に自殺していた。緋田は、智代の遺品から流産の事実を知る。では、風美の出生は? そんななか、緋田父子の遺伝子についてスポーツ医学的研究の要請が……。さらに、風美の競技出場を妨害する脅迫状が届く。複雑にもつれた殺意……。

まぁ、ある意味、東野圭吾らしい一冊ではありますが、私の中では、あまり上位にはランクインしませんでした。


2010.01.09

積ん読本のどれを持って行くか

明日から1週間の海外出張。

少し、時間も取れそうなので、久しぶりに、ゆっくり本を読みたいなと思っています。ほんと、この半年は、ゆっくり本を読めていなかったので、積ん読本が大量にたまっています。

こんなに時間が取れる時じゃないと読めない、大作にしようと思っています。

第一候補は、オスラー先生の本。パラパラとは読んでいるのですが。もう一度しっかり読み直したい。今の自分には一番必要な本でしょうか。

平静の心―オスラー博士講演集
オスラー
医学書院
売り上げランキング: 20790

第2候補は、1Q84。上下だとあまりに厚いのがためらわれる。

1Q84 BOOK 1
1Q84 BOOK 1
posted with amazlet at 10.01.10
村上 春樹
新潮社
売り上げランキング: 165

第3候補は、ドラマも始まってちょうどいいですね。

坂の上の雲〈1〉 (文春文庫)
司馬 遼太郎
文藝春秋
売り上げランキング: 75

第4候補は、エンターテイメントなら、これかな。

新参者
新参者
posted with amazlet at 10.01.10
東野 圭吾
講談社 (2009-09-18)
売り上げランキング: 509

どの本も結構かさばるのが、難点

2009.12.25

2009年のベスト〜本〜

早くこの企画スタートしなきゃと思っていたのですが、ほんと、時間がなくてすいません。年末まで、いっきに更新します。

2009年のベスト企画は、まず本から。

例年ですと、フィクション部門から1冊とノンフィクション部門から1冊選ぶのですが、今年は、ほとんど本を読む時間がなくて、フィクションをほとんど読んでいません(買ってはあるので積ん読になっています)。

というわけで、今年はノンフィクションだけ。

よかった本は、

この三冊は、2009年の私に強い力を与えてくれました。ありがとう。

あえて、一冊あげるなら、「研究者の仕事術」でしょうか。

2009.12.01

2009年11月に売れた本

2009年11月に研究留学ネットを通して、amazon.co.jpで購入された書籍でどんなものが売れたか集計してみました。定番本(統計、英語)と人気のある本(切磋琢磨するアメリカの科学者たち研究者の仕事術研究留学術)、あとは、What's new!で紹介した福岡先生の本という形で落ち着いたランキングでした。

  書名  
1切磋琢磨するアメリカの科学者たちamazon.co.jp
2やるべきことが見えてくる研究者の仕事術amazon.co.jp
3最新EndNote活用ガイドデジタル文献整理術 第4版amazon.co.jp
4臨床医による臨床医のための本当はやさしい臨床統計amazon.co.jp
5研究留学術amazon.co.jp
6動的平衡amazon.co.jp
7医薬研究者のための統計ソフトの選び方amazon.co.jp
8JMP活用 統計学とっておき勉強法amazon.co.jp
9ライフサイエンス英語 類語使い分け辞典amazon.co.jp
10ライフサイエンス論文を書くための英作文&用例500amazon.co.jp
11医学統計のためのGraphPad Prismハンドブックamazon.co.jp
12 日本人研究者が間違えやすい英語科学論文の正しい書き方 amazon.co.jp
13世界は分けてもわからないamazon.co.jp
14GraphPad Prismによる生物統計学入門amazon.co.jp
15StatView‐医学‐統計マニュアル - スタットビュー5.0対応版amazon.co.jp
16iPhone情報整理術amazon.co.jp
17ライフサイエンス 文例で身につける英単語・熟語amazon.co.jp
18ライフサイエンス英語表現使い分け辞典amazon.co.jp
19ラボ・ダイナミクスamazon.co.jp
20初心者のための動物実験手技 1amazon.co.jp
21医薬研究者のためのケース別統計手法の学び方amazon.co.jp
22数学いらずの医科統計学 - コンピュータ・エイジのための統計学指南amazon.co.jp
23流れがわかる学会発表・論文作成How To - 症例報告、何をどうやって準備する?amazon.co.jp
24減らす技術 The Power of LESSamazon.co.jp
25相手の心を動かす英文手紙とe‐mailの効果的な書き方amazon.co.jp

書籍以外では圧倒的にレーザーポインタが人気です。リモコン付きレーザーポインタの紹介記事を読んで下さっている方が多いのだと思います。サシ-41という赤色レーザーが大人気。そして、廉価版グリーンポイントレーザーのロジクールR800も上位に食い込んできました。10000円以下のポインターをマイポインターとして持つ人が増えたのでしょうね。

  商品名  
1 コクヨS&T レーザーポインター for PC サシ-41amazon.co.jp
2ロジクール プロフェッショナル プレゼンター R800amazon.co.jp
3コクヨS&T レーザーポインター ELA-GU92amazon.co.jp
4 KOKUYO プレゼンテーションマウス EAM-ULW2 amazon.co.jp
5KOKUYO サシ-2 指示棒amazon.co.jp
6 KOKUYO レーザーポインタ IC-GREEN for PC サシ-81N amazon.co.jp
7 コクヨS&T プレゼンテーションマウス ELA-MRU41amazon.co.jp
8 コクヨS&T レーザーポインター for PC サシ-51N 赤色光・パワーポイント対応タイプamazon.co.jp

2009.11.20

福岡伸一先生の講演を聴いてきました

福岡伸一先生の講演を聴いてきました。

福岡先生と言えば、以前、ここでも紹介した「生物と無生物のあいだ」が生物学をテーマとした本としてはありえないほど売れまくったことで有名です。最近は、週刊文春のエッセイやテレビのコメンテーターとしても活躍されています。

ワクワクしながら、講演に出かけたのは久しぶりでした。

テーマは「動的平衡」。内容は非常に多彩であったので、紹介しきれませんが、私が一番興味を持っていたのが、あのような文章を書く先生がどのようなプレゼンテーションスタイルで話をされるかということでした。

そのプレゼンテーションスタイルは、予想を超えたものでした。かなり上級者向けのプレゼンテーション技術ですが、よどみなく1時間話されていました。スライドを見せるのではなく、あくまでも演者の話が主体であり、スライドはその補足とも言えるスタイルです。まさに、福岡先生の本そのままのトークになっていました。あのプレゼンテーションを、初心者がやったら絶対に失敗するでしょうね。

講演終了後に、最近出版された「世界は分けてもわからない」をいただきました(サイン入り)。実は、「世界は分けてもわからない」はこの講演に合わせて、数日前から読んでいて、ものすごく引き込まれていたのですが、全部は読み切れていませんでした。

会場の一角で、本を売っていたので、ご本人に、どの本がおすすめですかといったら、「動的平衡」をまだ読んでいないなら読んで下さいということだったので、そちらも購入して、サインをいただきました。

2009.11.14

本の紹介「医学統計のためのGraphPad Prismハンドブック」

「医学統計のためのGraphPad Prismハンドブック」

著者:祝部 大輔、出版社:日本評論社 (2009-08)、ASIN:4535600279【amazon.co.jp】【bk1

GraphPad Prismはスタットビューなき、現状において、SSPS、JMPとならんで、候補となり得る統計解析ソフトです。GraphPad Prismの日本語解説書が出ました。これは、祝部先生が書かれているので、GraphPad Prismを買う人はマストバイな一冊でしょ。

ただし、私が、GraphPad Prismを使わないのは、P値の実数値が出ないこと(P<0.05を満たしているかどうかは出る)です。この本をパラパラと読むと、その部分は改善されていない様子。


2009.11.01

2009年10月に売れた本

2009年10月に研究留学ネットを通して、amazon.co.jpで購入された書籍でどんなものが売れたか集計してみました。今回特徴的だったのは、What's new!で紹介したらすぐに、皆さんが購入してくれたという点です。特に、第1位になった、「研究者の仕事術」(私の書いた書評はこちら)は是非、多くの方に読んでいただきたい本です。

  書名  
1 やるべきことが見えてくる研究者の仕事術–プロフェッショナル根性論 amazon.co.jp
2 最新EndNote活用ガイドデジタル文献整理術 第4版amazon.co.jp
3 iPhone情報整理術 ~あなたを情報"強者"に変える57の活用法!(デジタル仕事術シリーズ) amazon.co.jp
4 切磋琢磨するアメリカの科学者たち–米国アカデミアと競争的資金の申請・審査の全貌amazon.co.jp
5 新版 文献管理PCソリューション–PubMed/医中誌検索から論文執筆までamazon.co.jp
6 研究留学術–研究者のためのアメリカ留学ガイドamazon.co.jp
7 臨床医による臨床医のための本当はやさしい臨床統計–一流論文に使われる統計手法はこれだ! (EBMライブラリーamazon.co.jp
8 GraphPad Prismによる生物統計学入門amazon.co.jp
9 Rによるデータサイエンス - データ解析の基礎から最新手法までamazon.co.jp
10 ライフサイエンス英語 類語使い分け辞典amazon.co.jp
11 初心者のための動物実験手技 1amazon.co.jp
12 医学・生物学研究者のための 絶対話せる英会話–研究室内の日常会話から国際学会発表まで amazon.co.jp
13 困った状況も切り抜ける医師・科学者の英会話–国際学会や海外ラボでの会話術と苦情、断り、抗議など厄介なamazon.co.jp
14 学会出席・研究留学のための理科系の英会話 改訂版(CD付)amazon.co.jp
15 小さな小さなクローディン発見物語?若い研究者へ遺すメッセージamazon.co.jp
16 数学いらずの医科統計学–コンピュータ・エイジのための統計学指南amazon.co.jp
17 相手の心を動かす英文手紙とe‐mailの効果的な書き方–理系研究者のための好感をもたれる表現の解説と例文集amazon.co.jp

書籍以外では圧倒的にレーザーポインタが人気です。リモコン付きレーザーポインタの紹介記事を読んで下さっている方が多いのだと思います。今回は、ものすごい変動がありました。今までは、グリーンレーザーが圧倒的な人気機種だったのですが、サシ-41という赤色レーザーながら、デザインがいいタイプがバカ売れ。あまり販売点数を言うのもはばかれるのですが、1日1個以上売れています。5000円台に突入し、マイポインターとして持つ人が増えたのでしょうね。

  商品名  
1コクヨS&T レーザーポインター for PC(ハンディタイプ) サシ-41amazon.co.jp
2 コクヨS&T レーザーポインター(UDシリーズ) ELA-GU94amazon.co.jp
3 コクヨS&T レーザーポインター <IC-GREEN>for PC サシ-81N 緑色光・パワーポイント対応タイプamazon.co.jp
4 コクヨS&T レーザーポインター for PC(ペンタイプ) サシ-51N 赤色光・パワーポイント対応タイプamazon.co.jp
5 KOKUYO プレゼンテーションマウス EAM-ULW2 (ハンディタイプ, パワーポイント操作機能)amazon.co.jp
6 KOKUYO レーザーポインタ IC-GREEN for PC サシ-81N(ペンタイプ, 緑色光, パワーポイント操作機能)amazon.co.jp
1KOKUYO サシ-1 指示棒amazon.co.jp

2009.10.25

本の紹介「ライフサイエンス論文を書くための英作文&用例500」

「ライフサイエンス論文を書くための英作文&用例500」

著者:河本 健、出版社:羊土社 (2009-10)、ASIN:4758108382【amazon.co.jp】【bk1】【目次

羊土社から出ているライフサイエンス英語シリーズ「類語使い分け辞典」「英語表現使い分け辞典」 「論文作成のための英文法」「文例で身につける英単語・熟語」に続く第5弾。私は、これまでの4冊の中で、一番愛用しているのは、「類語使い分け辞典」です。これは、本当に役立っています。

ライフサイエンス英語シリーズは、ライフサイエンス辞書(LSD)プロジェクトが構築した、ライフサイエンス分野の専門英語のコーパスをもとに作られています。簡単に言えば、ライフサイエンス分野の学術誌の英文をコンピュータ解析して、頻度情報をもとに、ライフサイエンスの学術論文で好まれて使われる英語を明らかにしたデータベースです。

本書は、第1部と第2部に分かれていて、第1部では、論文執筆の際に日本人がつまずきやすいポイントについて解説。第2部では、主語と動詞の組み合わせをに特化した使い分け辞典になっています。私が、一通り読んでみた感想としては、第1部はある程度、英語論文を執筆した人には、頭の整理になって役立つと感じました。

2009.10.24

本の紹介「最新EndNote活用ガイドデジタル文献整理術 第4版」

「最新EndNote活用ガイドデジタル文献整理術 第4版」

著者:讃岐 美智義、出版社:克誠堂出版 (2009-10)、ASIN:4771903603【amazon.co.jp】【bk1】【目次

Endnoteに関する本はこれしかない、というのが、讃岐さんの書かれている「デジタル文献整理術」です。こういったコンピュータソフトの本というのは、ソフトがメジャーアップデートしてしまうと、かなり利用価値が下がってしまうのですが、Endnoteのアップデートに合わせて、きちんと改訂されて、はや第4版。Endnoteの最新版のX3に対応しています。Endnoteのマニュアル自体、分厚くてとても読めるものではありませんので、その代わりとしても使えますが、マニュアルとは違ったユーザーの立場から要点をまとめたガイドですので、Endnoteを持っている人は、必携の一冊です。


2009.10.17

本の紹介「iPhone情報整理術」

「iPhone情報整理術」

著者:堀 正岳、出版社:技術評論社 (2009-10-21)、ASIN:4774140279【amazon.co.jp】【bk1

発売前の本なのですが、都内の一部の書店で先行販売しているのを作者のブログLifehacking.jpで聞きつけて、紀伊国屋新宿南口店でゲット。一気に読了。

著者の考えは、コンピュータの中身をいつでもiPhoneでも閲覧できるように、持ち出したり、クラウドコンピューティングを推し進めるという考え方。確かに、そうできるのだろうなと理解できるのですが、私のiPhoneスタイルとは違うなと感じました。私の、iPhone像は、あくまでもPDA+インターネットなのです。

とても、参考になりましたが、逆に、まだまだスキマはあるなと実感した次第。私なりのiPhoneライフスタイルを今後、紹介したいと思っています。

コンピュータの中身をいつでもiPhoneでも閲覧できるように、持ち出したいという人には、かなりの良書です。


2009.08.30

本の紹介「やるべきことが見えてくる 研究者の仕事術」

やるべきことが見えてくる 研究者の仕事術
著者:島岡要、出版社:羊土社【amazon.co.jp】【目次

著者の島岡要氏は、麻酔科の臨床医から基礎医学者に転身し、現在、ハーバード大学医学部准教授として、自分のラボを運営されています。2年ほど前から始められた「ハーバード大学医学部留学・独立日記」というブログを始められ、私も愛読しています。また、2008年1月から10月まで、実験医学誌上で連載された「研究者のためのプロフェッショナル根性論」も人気エッセイでした。その連載記事などを元に一冊の本にまとめられたのが、本書です。

本書は、従来、ビジネスパーソンに向けて書かれた様々な仕事術や理論を、ビジネスパーソンとは全く異なる職種である科学者に、モディファイしながら、アプライするというあらたな試みをした一冊です。

よき時代の研究者のロールモデルは、興味のあることをただひたすら研究するような仙人のような学問人であったと思いますが、そのようなロールモデルが通用しない時代になってきました。ポストがないまま、流動性だけが高まるという、いびつな日本の研究者社会においては、多くの人の将来が不透明になっています。そのような時代においては、研究者という職業にビジネスセンスを取り入れざるを得なくなっており、著者の試みは非常に当を得ているといえます。本書は研究者ビジネス書としては、おそらくはじめての著作であると同時に、マスターピースとも言える一冊だと言えます。

内容は多岐にわたっており、引用されている書籍や、言葉、理論なども膨大なものなので、一部しか紹介できませんが、マイクロマーケティングの考え方をもとに、まずは、小さな自分の世界でトップに立つことを目指すという考え方、スムーズな研究者の「変化」の取り扱い術[ズーム]plus、GTD(Get Things Done)による時間管理術など、これまでビジネス書で語られてきた、理論や戦略を研究者に当てはめていく様子はとても興味深いものです。

ビジネスパーソンの仕事術を研究者の仕事術にあてはめるという著者の試みたアプローチに対し、当然考えられる批判は、サイエンスはビジネスではないという批判でしょう。ビジネスとサイエンスのもっとも大きな違いは、サイエンスには創造性が必要だということだと思います。では、サイエンスにおける創造性とはなにか、という議論になります。2000年頃に、免疫学会がウェブ上で「創造性とは何か」という議論をおこなっていましたが、その際の議論も一点に収束はしていないように、非常に難しい問題です。ひとつの意見として、著者はロバート・K・メルトンの言葉を引用しています。それによれば、

創造性とは誰も出来ないような斬新な考え方をする、他人とは質的に異なる「ユニークな能力」ではなく、必然的に起ころうとしている発見を誰よりも早くつかみ取る「効率のよさ」のこと

としています。つまり、本書で提唱してきた効率的に仕事をできる方法を身につけることが、研究者において創造性を高めることと矛盾しない、と著者は結論したいのだと思います。

「好きな分野より、得意な分野を選択すべき」「人生には二種類ある:失敗も成功もしない人生と、失敗もするが成功もするる人生がある」という言葉は、若い人、岐路に立った人たちに、力を与えるものです。これらの言葉を引用されているのは、おそらく著者自身の体験談に基づくものと想像されますが、残念ながら、個人の体験談にはあまり深入りされていません。自己啓発書は所詮、一個人の与太話であるということで、本書では体験談はあえて避けられたのかもしれません。一方で、「日本人中年男性研究者のための英語力向上作戦」では、ご自身の体験をいきいきと述べられており、とても興味深いチャプターになっています。

本書の帯に推薦の言葉を書いているのが「ウェブ進化論」で有名な梅田望夫さんであることからも、本書は科学者だけではなく、知的生産をおこなうすべての人に読んでもらいたい1冊です。

最後に、私の心に強く響いた前書きの一節を引用します。

今までの蓄えをうまく使ってあとは楽して逃げ切りたいという、私が“ヘタレ”と呼んでいるマインドセットを、私自身を含め多くの人が心に片隅に持っているのではないでしょうか。

(中略)

研究者がプロフェッショナル/エキスパートを目指す過程では、仕事の最大の報酬とは人間的な成長なのです。成長にともないより大きな仕事に取り組むチャンスが巡ってくるので、決して楽になることはありません。楽しいことも増えますが、同時に苦しいことも増えるのです。これがプロフェッショナル/エキスパートとして働き・生きることの醍醐味なのです。自分自身がそうであったように、環境の変化に直面して足がすくみ、“ヘタレ”な選択をしそうになったときに、本書で紹介した先人の言葉が勇気ある選択をする助けになれば幸いです。

2009.08.22

みんなに読んで欲しい「研究者の仕事術」

私のサイトでは、研究者の視点でおすすめの書籍を紹介してきました。1年か2年に1冊くらい、これはマストバイの本だなと思う本が世の中に登場してきます。

これまでの例で言えば、

といった本です。

今回、久しぶりに、これは、みなさんに強力におすすめしたいという本が出版されました。

それは、ハーバード大学医学部の島岡要先生の書かれた「研究者の仕事術」です。実験医学の人気連載記事をベースにまとめられたものです。島岡先生のブログ「ハーバード大学医学部留学・独立日記」も是非、読んでみて下さい。

とりあえず、目次はこちらを見ていただいて、内容などについては、全部読み終わったところで詳しく紹介します。

2009.08.17

本の紹介「減らす技術」「断る力」

木曜日くらいから、通勤電車はがらがら、仕事場でも、人が少なくなってきた感じ。

私自身は夏休みを取っていたわけではないのですが、こういう、多くの人が休みを取っている中で、仕事をするのって、とても好きなのです。ワーカホリックではありません。みんなが忙しくなってきたところで、きちんと夏休みを取る予定です。

さて、あんまり電話とか、雑事がこないような状況に私がするのは、机周りを思い切って捨てまくってすっきりすること。そして、髪を切ることです。つまり、いらないものを整理して捨てると言うことですね。

最近、つくづく思うのは、些末なことをいかに断るか、本当に自分がしたいこと、しなければいけないことに集中すべきかということ。

というわけで、そんなことを書いてある本を2冊紹介。

「減らす技術 The Power of LESS」

著者:レオ・バボータ、出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン (2009-08-05)、ASIN:4887597304【amazon.co.jp】【bk1

言っていることは、なるほどフムフム。今、自分が考えていたこととまさにしっくり来ます。

「世間で紹介されている生産性を上げるコツには、(中略)何をすべきかを考えるより、とにかくなんでも手早くすませることに終始している。(中略)急ぎのタスクを一気に片付けるワザや、洪水のようにおそってくる仕事や情報を次々と裁いていくテクニック。しかし、そんなやり方では、飛び込んできたものを何もかもやる羽目になってしまう。」

まさに、その通りである。本書が提案する人生をシンプルで生産的にする6つの原則は、

  1. 制限する
  2. 本質に迫ることだけを選ぶ
  3. シンプルにする
  4. 集中する
  5. 習慣化する
  6. 小さく始める

ただ、内容が薄っぺらく、30分で斜め読み終了。


「断る力 (文春新書)」

著者:勝間 和代、出版社:文藝春秋 (2009-02-19)、ASIN:4166606824【amazon.co.jp】【bk1

私、勝間さんは、いまいち苦手なのですが、上の本なんかに比べたらはるかに緻密に論理が展開されています。この本は良書だと思います。


2009.07.15

本の紹介「新人デザイナーのためのデザイン・レイアウトが上手になる本」

「新人デザイナーのためのデザイン・レイアウトが上手になる本」

著者:柘植 ヒロポン、出版社:ソシム (2008-07)、ASIN:4883376109【amazon.co.jp】【bk1

スライドやポスターなど、ちょっとしたデザインが必要になることって、私の世界でもあります。そうしたときに役立つ、デザインの原則や、気の利いたデザインのヒントをくれます。本書ではデザインの4要素、文字、写真、配色、構成で4章に分かれています。 悪い例と、それをどうやって直すと、よくなるかが示されていて、とても実践的。

その手の本としては、「ノンデザイナーズ・デザインブック」がベストセラーです。こちらもおすすめ。


2009.07.14

本の紹介「たのしい写真―よい子のための写真教室」

「たのしい写真―よい子のための写真教室」

著者:ホンマ タカシ、出版社:平凡社 (2009-05)、ASIN:4582231179【amazon.co.jp】【bk1

この本、青山ブックセンターで見つけたのですが、タイトルの『たのしい写真』とは裏腹に、写真家ホンマタカシ氏による、かなり本格的な写真論です。

私にとっては、写真技術と写真集をつないでくれた本。今まで、有名な写真家の写真を見て、どこがいいのかわからないということがたくさんありましたが、この本を読み終えると、少しわかったような気がします。気がしただけかもしれませんが。


2009.07.13

本の紹介「白衣のポケットの中―医師のプロフェッショナリズムを考える」

「白衣のポケットの中―医師のプロフェッショナリズムを考える」

著者:宮崎 仁、出版社:医学書院 (2009-04)、ASIN:4260008072【amazon.co.jp】【bk1】【目次

日本内科学会プロフェッショナリズム委員会のワーキンググループによるプロフェッショナリズム論をまとめた1冊です。医学教育では、医師のプロフェッショナリズムの関心が高まっていますが、まとまった本はありませんでした。プロフェッショナリズムは非常にプロフェッショナリズムはこうあるべしというのもなかなか結論が出ないものですが、医師のプロフェッショナリズムに真剣に正直に本音を、各先生が書かれているのがとても、印象深い好著です。


2009.07.07

本の紹介「ライフサイエンス 文例で身につける英単語・熟語」

「ライフサイエンス 文例で身につける英単語・熟語」

著者:河本 健、出版社:羊土社 (2009-07)、ASIN:4758108374【amazon.co.jp】【bk1】【目次

ライフサイエンス辞書プロジェクト発の書籍として「ライフサイエンス英語 類語使い分け辞典」「ライフサイエンス英語表現使い分け辞典」「ライフサイエンス論文作成のための英文法」が発行されてきましたが、本書はその第4弾ということになります。これまでの3冊の中では、私は「ライフサイエンス英語 類語使い分け辞典」を愛用しています。

本書は、今までの3冊のような辞書的な使い方をするのではなく、一通り通読して、学習することを想定しています。ライフサイエンス分野の論文でよく使われる用法が使われている適切な415の例文を通して、ライフサイエンスで必要な英単語力、熟語力をつけるという趣旨になっています。

学部生、大学院生で、夏休みを使って、英語力アップを、という人にぴったりかと思います。


2009.07.04

2009年上半期に売れた本

2009年1月から6月までに研究留学ネットを通して、amazon.co.jpで購入された書籍でどんなものが売れたか集計してみました。もっとも売れた本ベスト20は以下の通りです。「理系のための人生設計ガイド」が新しい売れ筋リストに入りましたね。あとは、英語と統計関係が売れ筋みたいです。

  書名  
1研究留学術amazon.co.jp
2 切磋琢磨するアメリカの科学者たちamazon.co.jp
3 理系のための人生設計ガイドamazon.co.jp
4 今日の治療薬 2009amazon.co.jp
5 相手の心を動かす英文手紙とe‐mailの効果的な書き方amazon.co.jp
6 Illustratorのやさしい使い方から論文・学会発表までamazon.co.jp
7 困った状況も切り抜ける医師・科学者の英会話amazon.co.jp
8 治療薬マニュアル 2009 (2009)amazon.co.jp
9 ポスター発表はチャンスの宝庫!amazon.co.jp
10 GraphPad Prismによる生物統計学入門amazon.co.jp
11 落下傘学長奮闘記amazon.co.jp
12 日本人研究者が間違えやすい英語科学論文の正しい書き方amazon.co.jp
12 医薬研究者のための統計ソフトの選び方amazon.co.jp
14 医学・生物学研究者のための 絶対話せる英会話amazon.co.jp
15 理系のための研究生活ガイドamazon.co.jp
15 JMP活用 統計学とっておき勉強法amazon.co.jp
15 学会出席・研究留学のための理科系の英会話 改訂版(CD付)amazon.co.jp
18 入門 医療統計学amazon.co.jp
18 理科系のための入門英語プレゼンテーションamazon.co.jp
20 JMPによる統計解析入門amazon.co.jp

書籍以外では圧倒的にレーザーポインタが人気です。リモコン付きレーザーポインタの紹介記事を読んで下さっている方が多いのだと思います。上位4機種は定番になりつつあります。

  商品名  
1コクヨS&T レーザーポインター サシ-41amazon.co.jp
2 コクヨS&T レーザーポインター サシ-81Namazon.co.jp
3 コクヨS&T レーザーポインター ELA-GU91amazon.co.jp
4 コクヨS&T レーザーポインター サシ-51Namazon.co.jp
5 KOKUYO プレゼンテーションマウス EAM-ULW2amazon.co.jp
6 I-O DATA USBマルチカード リーダー・ライター USB2-W33RW/Bamazon.co.jp
7 KOKUYO レーザーポインタ サシ-81 amazon.co.jp
8 アルカリ乾電池単五2本シュリンクパック LR1XJ/2Bamazon.co.jp
9 Microsoft Wireless Notebook Presenter Mouse 8000 9DR-00003amazon.co.jp
10 KOKUYO プレゼンテーションマウス EAM-ULW1Namazon.co.jp

2009.07.02

本の紹介「バリの賢者からの教え」

「バリの賢者からの教え~思い込みから抜け出す8つの方法~L’homme qui voulait etre heureux」

著者:ローラン・グネル、出版社:二見書房 (2009-03-02)、ASIN:4576090178【amazon.co.jp】【bk1】【目次】

私も、時々、自己啓発というか、スピリチュアルな本を読みます。最近、とてもよかった本を1冊紹介します。

パリ在住の教師の男性が、バリ島を旅行をした際に、伝説的な治療師である「賢者」の元を訪れ、1週間の過程で、自分の思いこみから解き離たれるという1冊です。

たまたま、私の悩んでいることにずばり回答してくれたので、珍しく、3回も読み返しました。

読みやすいですし、それほどスピリチュアル過ぎなくて、おすすめ。


2009.06.15

本の紹介「越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文」

「越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文 (ディスカヴァー携書)」

著者:越前 敏弥、出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン (2009-02-18)、ASIN:4887596898【amazon.co.jp】【bk1

この文訳せますか?

I waited for fifteen minutes - they seemed as many hours to me.

という帯の宣伝文句に惹かれて、買ってしまいました。

本書は「ダヴィンチコード」などの翻訳で有名な翻訳家で、長年の翻訳学校で教えた経験から、「日本人にとって誤訳しやすいパターンの英語」を集め、それを解説している本です。

Some women often complain about what they feel is unjust.

とか、難しい単語はないけれど、誤訳しやすい文章のオンパレード。

しかし、私は、数ページめくったときに、激しいデジャブのような感覚に襲われました。これは、私が、大学受験の時に使っていた、伊藤和夫先生の「英文解釈教室」の世界だと。そうしていたら、案の定、後ろのページにある著者のインタビューで、この本は、伊藤和夫先生の「左から右へ訳す」という教えそのものであると告白されていました。

なんか、25年前の風景が思い出されました。伊藤和夫先生は、駿台予備校の名物英語教師。正直言って、授業はそんなにすごくはなかったような気がしましたけど、伊藤先生の英語構文読解の理論とそれを表した著作は、本当に、繰り返し勉強しました。

この本の趣旨とは違うのでしょうけど、とても懐かしく感じてしまいました。


2009.05.19

本の紹介「EndNote100の裏ワザ」

「EndNote100の裏ワザ」

著者:冨澤 康子、出版社:秀潤社 (2009-03)、ASIN:4879623822【amazon.co.jp】【bk1】【目次

たまたま2カ所から、献本をいただきましたので紹介させていただきます。

Endnoteは、論文執筆にはなくてはならないソフトですが、使ったことがない人にはなかなか敷居の高いソフトです。しかし、これで、一度、論文の参考文献リストを作ってしまうと絶対に手放せなくなる1本です。私もかれこれ15 年くらい愛用しています。

分厚いマニュアルに挫折した初心者の方には、Endnoteの解説本が大変力になってくれるのですが、これまで、バイブル的に使われてきたのは、讃岐さんの書かれた「最新EndNote活用ガイド デジタル文献整理術」でした。

ずいぶんなニッチな領域だと思うのですが、この領域に「EndNote100の裏ワザ」という本が出ました。こちらは、網羅すると言うよりもQ&Aで裏技というかTIPSを紹介するというタイプの本です。まったく、使ったことがない人が使うと言うより、ある程度使える人向けなのかなぁと思いました。


2009.05.04

本の紹介「猫を抱いて象と泳ぐ」

「猫を抱いて象と泳ぐ」

著者:小川 洋子、出版社:文藝春秋 (2009-01-09)、ASIN:4163277501【amazon.co.jp】【bk1

私は、世間的に見れば、そこそこ本が好きな類の人間だとは思うのですが、得意分野が非常に狭く、基本的にミステリーとノンフィクションしか読みません。ファンタジーは、かなりの苦手分野です。この本、帯を見て、ノンフィクションなのかと思ったのです。

数ページ読んで、間違いなくファンタジーだと確信して、1ヶ月くらいほったらかしにしておいたのですが、急に、読みたくなって、一気に完読してしまいました。ファンタジーの世界観に自分がはまりこむまでに1ヶ月の時間が必要だったようです。

「猫を抱いて象と泳ぐ」は、チェスを題材した小説で、主人公の少年が、ロシアのチェスの名手、アリョーヒンを模したチェス人形の中に入って、リトル・アリョーヒンとして働きます。「博士の愛した数式」を書かれた小川洋子さんの小川ワールドそのものなのでしょう。静かで、詩的で、美しくも、悲しい物語でした。私は、ほとんどチェスを知りませんが、十分楽しめました。でも、チェスを知っていたらもっと楽しめたことでしょう。小説の中で進行していく棋譜は、盤上の詩人と呼ばれたアレキサンドリア・アリョーヒンの棋譜そのものを使っているらしいです。


2009.04.18

本の紹介「博士号を取る時に考えること取った後できること」

「博士号を取る時に考えること取った後できること―生命科学を学んだ人の人生設計」

著者:三浦 有紀子、出版社:羊土社 (2009-03)、ASIN:475812003X【amazon.co.jp】【bk1】【目次

博士号に関する書籍には、「博士号とる?とらない?徹底大検証!―あなたが選ぶバイオ研究人生」という名著がありますが、それに比べたら、前半部分の総論的な部分は、やや劣るかなと言う印象。でも、後半部分で、事例から学ぶ『研究』と『キャリア』のマネジメント術という形で、審良静男 博士、森下竜一 博士、加藤茂明 博士、中辻憲夫 博士のキャリアパスが紹介されていたのは、とても興味深く読みました。いずれにしても、日本での博士号の意義が変わるには、博士号を取る人ではなく、社会が変わらないとダメなんだと言うことが実感でした。


2009.04.17

本の紹介「理系のための人生設計ガイド (ブルーバックス)」

先日紹介した本の中で、一番反応があったのが坪田先生の書かれた「理系のための人生設計ガイド (ブルーバックス)」でしたので、詳しく紹介します。

「理系のための人生設計ガイド (ブルーバックス)」

著者:坪田 一男、出版社:講談社 (2008-04-22)、ASIN:4062575965【amazon.co.jp】【bk1

私も坪田先生と同じ大学で働いていますが、直接話をしたことはないので、客観的に本書の感想を述べさせていただきます。

本書は「理系のための研究生活ガイド (ブルーバックス)」の続編という位置づけだと思いますが、私はこの前作があまり好きではありませんでした。本作も、基本的には同じスタンスの本ですから、出版されてから半年くらい読まずにいたのですが、私の今のおかれた状況が、本書を手に取るきっかけになったのかもしれません。

本書は、好き嫌いがはっきり別れる本だと思います。坪田先生の話はまったくの正論なのですが、あまりにもストレートな内容な故、嫌悪感を持つ人もいるかもしれません。大学教授になるためにはどうしたらいいのか、多くの方が考えているけど、そうはっきりと言うなよ。収入5000万円とか、はっきり言うなよと思われる方も多いでしょう。

でも、冷静になってみると、この本は、みんなに大学教授になることを薦めている本ではありません。あくまで、一つの事例として、もし、大学教授を目指すなら、もっと具体的に、何歳に何を、何歳に何をという、具体的な小さな目標を立てて、大きな目標に近づくべきだという至極まっとうなことを具体的に説いているに過ぎません。

読者の目標が坪田先生の目標とあまりに違う場合には、違和感を感じてしまうでしょうが、私は、理系研究者、中でも、臨床医学に関わる研究者には、キャリアパスを考えるための指針を与えてくれる良書だと思います。


2009.03.26

今月読んだ本

今月読んだ本を紹介しようと思っていたら、並行して数冊読んでいてなかなか読み終わらないので、とりあえず、タイトルのみ紹介。このうちの何冊かは後日、紹介します。

「落下傘学長奮闘記―大学法人化の現場から (中公新書ラクレ)」

著者:黒木 登志夫、出版社:中央公論新社 (2009-03)、ASIN:4121503104【amazon.co.jp】【bk1

この本は、かなりおもしろいです。


「理系のための人生設計ガイド (ブルーバックス)」

著者:坪田 一男、出版社:講談社 (2008-04-22)、ASIN:4062575965【amazon.co.jp】【bk1

最近読んだ本では、ある意味もっとも影響を受けた本かもしれない。


「徹底抗戦」

著者:堀江貴文、出版社:集英社 (2009-03-05)、ASIN:4087805182【amazon.co.jp】【bk1

まあまあ。でも1時間ちょっとで読み終わってしまった。


「僕たちの好きな東野圭吾 (別冊宝島 1609 カルチャー&スポーツ) (別冊宝島 1609 カルチャー&スポーツ)」

宝島社、ASIN:4796669213【amazon.co.jp】【bk1

あまり役立たなかった。


「すべての情報は1冊の手帳にまとめなさい」

著者:蟹瀬誠一&「知的生産」向上委員会、出版社:三笠書房 (2008-12-18)、ASIN:4837923003【amazon.co.jp】【bk1】【目次】

現在、積ん読状態。


「無一文の億万長者」

著者:コナー・オクレリー、出版社:ダイヤモンド社 (2009-02-14)、ASIN:4478005613【amazon.co.jp】【bk1

まだ、途中まで。


「天空の蜂 (講談社文庫)」

著者:東野 圭吾、出版社:講談社 (1998-11)、ASIN:4062639149【amazon.co.jp】【bk1

東野圭吾の本としては異色の本。まずまず。


「「知の衰退」からいかに脱出するか?」

著者:大前研一、出版社:光文社 (2009-01-23)、ASIN:4334975607【amazon.co.jp】【bk1

かなり期待して読んだが、あんまりおもしろくなかった。


「大誘拐―天藤真推理小説全集〈9〉 (創元推理文庫)」

著者:天藤 真、出版社:東京創元社 (2000-07)、ASIN:4488408095【amazon.co.jp】【bk1

「20世紀傑作ミステリーベスト10」国内部門第1位作品ということで、期待して読んだが、期待はずれだった。


2009.01.01

2008年にamazonを通して売れたアイテム

明けましておめでとうございます。

2008年1月1日から、2008年12月31日に売れたものの統計を取ってみました。ほぼ定番と言われる書籍に人気があり、英語関係の本がずらりと並んでいます。赤字は昨年のベスト20には入っていなかった新作です。今年出した私の新刊書、「Illustratorのやさしい使い方から論文・学会発表まで」は年の瀬が迫ってから出版されたこともあり、7位止まりでした。いい本だと思うので、是非、買って下さい。

また、レーザーポインタ付きリモコンの紹介記事のおかげで、レーザーポインタ付きリモコンが大人気です。

  書名  
1 コクヨS&T レーザーポインター for PC(ハンディタイプ) サシ-41 amazon.co.jp
2 コクヨS&T レーザーポインター -IC-GREEN-for PC サシ-81N 緑色光・パワーポイント対応タイプ amazon.co.jp
3 切磋琢磨するアメリカの科学者たち-米国アカデミアと競争的資金の申請・審査の全貌 amazon.co.jp
4 研究留学術-研究者のためのアメリカ留学ガイド amazon.co.jp
5 相手の心を動かす英文手紙とe‐mailの効果的な書き方-理系研究者のための好感をもたれる表現の解説と例文集 amazon.co.jp
6 KOKUYO プレゼンテーションマウス EAM-ULW2 (ハンディタイプ, パワーポイント操作機能) amazon.co.jp
7 Illustratorのやさしい使い方から論文・学会発表まで-すぐに描けるイラスト作成のコツと研究者のためのポスタ amazon.co.jp
8 ポスター発表はチャンスの宝庫!-一歩進んだ発表のための計画・準備から当日のプレゼンまで amazon.co.jp
9 コクヨS&T レーザーポインター for PC(ペンタイプ) サシ-51N 赤色光・パワーポイント対応タイプ amazon.co.jp
10 困った状況も切り抜ける医師・科学者の英会話-国際学会や海外ラボでの会話術と苦情、断り、抗議など厄介な amazon.co.jp
11 最新EndNote活用ガイドデジタル文献整理術 第3版 amazon.co.jp
12 KOKUYO レーザーポインタ IC-GREEN for PC サシ-81 (ペンタイプ, 緑色光, パワーポイント操作機能) amazon.co.jp
13 日本人研究者が間違えやすい英語科学論文の正しい書き方-アクセプトされるための論文の執筆から投稿・採択 amazon.co.jp
14 理科系のための実戦英語プレゼンテーション amazon.co.jp
15 GraphPad Prismによる生物統計学入門 amazon.co.jp
16 日本人研究者が間違えやすい英語科学論文の正しい書き方-アクセプトされるための論文の執筆から投稿・採択 amazon.co.jp
17 Illustrator CS3の仕事術 amazon.co.jp
18 文献管理PCソリューション 第2版-PubMed/医中誌検索から論文執筆まで Win+Mac amazon.co.jp
19 KOKUYO プレゼンテーションマウス EAM-ULW1(ハンディタイプ, パワーポイント操作機能, レシーバー収納式) amazon.co.jp
20 医学・生物学研究者のための 絶対話せる英会話-研究室内の日常会話から国際学会発表まで amazon.co.jp

他にも多くの本を紹介していますので、「研究者の書棚」をご覧下さい。

2008.12.25

2008年のベスト~本~

12月は毎年「私のベスト」シリーズを書いていたのですが、すっかり、書きそびれてしまいました。残り1週間、頑張ります。

2008年ベスト~本~のドキュメンタリー部門は、「赤めだか」(著者:立川 談春)ですね。詳しいレビューは2008年8月1日のWhat's new!をご覧下さい。一応、私小説的な体裁は取っていますが、ドキュメンタリー部門と言うことにさせて下さい。

 


一方、フィクション部門では、ちょっと小ぶりなものが多く、東野圭吾も、これだっという感じではなく、ちょっと軽すぎて申し訳ないのですが、エンターテイメントとして楽しめたと言うことで、「インザプール」(著者:奥田 英朗)をベストとして選びたいと思います。詳しいレビューは2008年4月20日のWhat's new!をご覧下さい。

 


2008.11.02

東野圭吾ラッシュ

私が去年から、東野圭吾にはまっていることは、何回か書いています(2007年8月18日2007年8月25日)。気軽な感じで読めることもあり、出張や旅行に出るときに読んで、彼の著作の半分くらいは読み終えました。

さて、東野圭吾作品は、最近、ドラマ化や映画化ラッシュ。昨年、連ドラになった「ガリレオ」シリーズは、福山雅治がはまり役であり、主役の刑事を男性から女性にするなど、原作とはかなり変わっていますが、ドラマとして楽しませていただきました。

私が東野圭吾作のベストワンと認定した(2006年12月30日)「容疑者Xの献身」が現在ロードショーになっていますが、周りの人は見に行っているものの、なかなか見に行けていません。原作がどのように映像化されているのか、気になっています。

現在ドラマが始まった、「流星の絆」は、宮藤官九郎がまったく原作と違った味付けのドラマに仕上げていますが、これはこれでありなのかと。

ガリレオシリーズは、前回のドラマのクールで原作を全部使い果たしてしまったので、もう、ドラマのガリレオはやらないのかと思ったら、出ましたよ、ガリレオシリーズ続編が。しかも、2冊も。「聖女の救済」は長編。「ガリレオの苦悩」は短編集。この1週間読みたくてうずうずしていたのですが、ようやく、「聖女の救済」を読めました。なかなか、楽しめました。

 

「聖女の救済」

著者:東野 圭吾、出版社:文藝春秋 (2008-10-23)、ASIN:4163276106【amazon.co.jp】【bk1

ガリレオ最新作。こちら長編で、「容疑者Xの献身」に似た感じ。


「ガリレオの苦悩」

著者:東野 圭吾、出版社:文藝春秋 (2008-10-23)、ASIN:4163276203【amazon.co.jp】【bk1

ガリレオ最新作。こちらは短編集。


「容疑者Xの献身 (文春文庫 ひ 13-7)」

著者:東野 圭吾、出版社:文藝春秋 (2008-08-05)、ASIN:4167110121【amazon.co.jp】【bk1

私の東野圭吾作ナンバーワン。直木賞受賞作でもあります。文庫化されましたので、買い求めやすくなりました。


「流星の絆」

著者:東野 圭吾、出版社:講談社 (2008-03-05)、ASIN:4062145901【amazon.co.jp】【bk1

ドラマを見てから、原作を読むと、ずいぶん雰囲気が違うと感じるかも。


2008.10.27

「Illustratorのやさしい使い方から論文・学会発表まで」の舞台裏

拙著「Illustratorのやさしい使い方から論文・学会発表まで」の実物が、ようやく私の手元にも届きました。今回は、本書にまつわる裏話を一つ。

この本は、もともと、私が書きたいと思って企画したわけではありません。羊土社の方とは、前著のときからおつきあいがあり、どんな企画の本があったらいいのかということを、不定期に、無責任にお話をしていました。ある日、実験医学誌上の「研究者のためのイラスト実践講座」という秋月さんの連載の話になって、そのときに、こういうのが一冊の本になるといいですよね。ついでに、一枚刷りのポスターの話とか載せたら受けますよって話になりました。編集部の方が、どなたか、書いてくれる人はいませんかね。なかなかいませんよね。という話から、いつの間にやら、「先生どうですか」ということになって、私はまったく無理ですとお断りしたのですが、ポスターの記事くらいならと、だんだん押し切られて、返事は次回と保留ということで、なんとか勘弁してもらいました。

私、Illustratorについて書くほど、Illustratorについて詳しくない初心者だし、時間的にも無理なので、本当に断ろうと思ったんですよ。本当に。でも、意志が弱いって言うか、断りきれず、最終的に引き受けることになってしまいました。

当初の締め切りからだいぶ過ぎていたのですが、最後の締め切りに追われていた頃に、あ~、このことは書いておこうと思って書いた記事が、「学びたければ、他人に教えろ」なのです。

ということで、私が学んだ程度の内容の本なので、お勧めするのも恐縮しているのですが、今、こうやって手に取ってみると、なかなか、よくできた本だなと。

Illustratorを使った、複雑なイラスト(動物、臓器)の描き方、一枚刷り大判ポスターの作り方、論文Figureの使い方といった、多くの人が知りたいと思われるポイントが過不足なくまとまっていると思います。特に、12月の日本分子生物学会年会・日本生化学会大会 合同大会(BMB2008)で一枚刷りのポスターを作ろうという方なんかには最適かと。

ところで、私としては、Amazonで買っていただくのがうれしいので、Amazonの在庫状況を見ているのですが、発売日の10月24日にデータベースに載ったものの、「予約」扱い。しかも、著者に私の名前が入っていない、、、。Amazonに連絡して、著者名が間違っていると報告(1日で訂正されました)。

10月25日に「この商品は現在取り扱いできません」となり、夕方に一瞬、在庫2冊の表示が出るものの、一瞬で売れてしまったらしく、その後、「この商品は現在取り扱いできません」に戻ってしまいました。

10月27日には、「在庫切れ」に表示が変わったものの、夜には「通常3~5週間以内に発送します」に。

なんだかなという感じですが、おそらく、数日でAmazonに在庫されると思いますので、今しばらくお待ち下さいませ。

2008.10.24

本の紹介「Illustratorのやさしい使い方から論文・学会発表まで」

構想1年、書き始めてから1年かかった、私の4冊目の本が出版されましたので、紹介させていただきます。

「Illustratorのやさしい使い方から論文・学会発表まで」

編著:門川 俊明、著:秋月 由紀、出版社:羊土社 (2008-10)、ASIN:4758108129【amazon.co.jp】【bk1】【本書の特設サイト

私が、本格的に、Illustratorを使うようになったのは、2003年にポスター発表で、一枚刷りポスターを作りたいと意を決したときでした。一枚刷りポスター作成にはIllustratorがよいということはわかっても、その作り方を書いている本もなければ、Webサイトの情報もほとんどない状態でした。DTP(Desktop Publishing)の知識がまったくなく、「えっ、トンボって何ですか」というレベルの私が、Illustratorで1枚刷りポスターを作り、出力センターで打ち出すのは、かなり大変でした。その当時は、日本の研究者で一枚刷りポスターを作っている人は少数でしたので、自分がポスターを作ったときの作業工程をwebサイトに書いたら、ずいぶん反響がありました。

最近では、論文投稿時のFigure作成の際に、出版社側から、解像度やファイル形式についてかなり厳しい注文がつくようになりました。以前は私もPowerPointでFigureを作っていたのですが、最近では、Illustratorで作るようになりました。

Illustratorはページ数の少ない印刷物作成にもっとも使われているソフトであり、ポスター作成、論文のFigure作りなどの必要性が高まっていることを考えると、PowerPoint、Photoshop、MS Word、MS Excelなどと並んで医学・バイオ研究者がマスターしなければいけないソフトウェアになってきていると感じます。しかし、研究者向けのIllustratorに関する情報というのは思いのほか少なく、多くの研究者が手探りで進めている状態だと思います。

2006年の秋から冬にかけて、この本の共著者である秋月さんが、実験医学誌上で「研究者のためのイラスト実践講座」という連載を全5回でおこないました。Illustratorをつかって、バイオ関係のイラストを描くという趣旨の連載でしたが、とても好評で、私もずいぶんと参考にさせていただきました。少し複雑な図形、医学・バイオの領域で言うと、実験動物、臓器のイラストなどはPowerPointでは役不足ですから、この方面でもIllustratorは必須です。

秋月さんの「研究者のためのイラスト実践講座」の連載記事をベースにしたIllustratorを使ったイラストの描き方と、私が以前から考えていた、Illustratorを使った一枚刷りポスターや論文FIgureの作成法を中心にして、研究者向けのIllustrator本を書けば、きっと多くの医学・バイオ研究者向けの有用な本ができるのではないかと考えたのが、この本の成り立ちです。

私はIllustratorマニアでもなく、Illustratorに関していえば、むしろ初心者~中級者程度の熟練度です。この本の作成には秋月さん、羊土社編集部の方々の大きな助けを借りています。したがって、この本自体、Illustratorに関してはまったく初めての方でも読み進められるようにしてあります。

この本を通して、
・ちょっと複雑なイラストを作りたい。
・1枚刷りのポスターを作りたい。
・投稿論文のFigure作りで苦労したくない。
といった研究者の方々の要望に少しでもお応えできればと考えた一冊です。

【目次】

基本編 Illustrator の基礎知識
1)医学・バイオ研究者に役立つIllustratorの使い方【門川俊明】
2)Illustratorとは【秋月由紀】
3)Illustratorのメリット【秋月由紀】
4)Illustratorの描画のしくみ【秋月由紀】
5)さあ,Illustratorを使おう【秋月由紀】
実践編 身近な題材をもとにイラスト作成に挑戦【秋月由紀】
1)細胞を描く
2)受容体を描く
3)シグナル伝達を描く
4)DNAを描く
5)オルガネラを描く
6)実験器具を描く
7)マウスを描く
8)臓器を描く
応用編 学会発表・論文作成への活用【門川俊明】
1)1枚刷りポスターに挑戦
2)論文のFigureを作成する
3)Illustratorで作ったイラストをPowerPointで利用する
4)申請書をIllustratorで作る
付 録【秋月由紀】
1)これだけはマスターしたい 10の基本ツール
2)これだけはマスターしたい 10の基本操作
3)トラブルシューティング


2008.10.16

はじめてデジタル一眼を買った人への10のアドバイス

最近、まわりでデジタル一眼を買う人が増えていて、せっかく買ったのだけれど、設定がたくさんあるだけで、コンパクトデジカメとの違いが出せないと相談されることがあります。

私も他人に写真のことを教えられるような技術は持っていないのですが、自分なりに気をつけているポイントがあります。最近出版された「デジタル一眼上達講座」田中希美男著を読んでみたら、それがかなりかぶっているので、まんざら、我流というわけでもないのだなと思った次第です。

「デジタル一眼上達講座」を参考にしつつ、デジタル一眼をはじめて買った人への10のアドバイスを列挙してみます。

ISO感度を積極的に変更しよう

フィルム時代にはISO感度を1枚ずつ変えると言うことは出来ませんでしたが、ISO感度を自由に変えられるのがデジタルカメラの最大の長所。ISO 800くらい(カメラによってもっと高感度でもOK)まで、あげることで、とにかく、一定以上のシャッタースピードをかせぎましょう。初心者で一番多い失敗が、手ぶれです。1/125以上を確保すれば、まず手ぶれは起きません(それでも、被写体ぶれは防げません)。カメラによっては、オートISOという設定もあり、最大ISOを設定して、シャッタースピードが遅くならない程度にISO感度を自由に設定してくれるモードもあります。

ホワイトバランスはとりあえずオートでいいです

夕焼けの時など、特定の状況をのぞけば、基本的にはオートでいいでしょう。夕焼けはDaylightモードが夕焼けらしさを引き出せます。RAWであれば、あとで、ホワイトバランスを自由に変更可能です。

モードはオートモードではなく、プログラモードを使う。

オートモードの場合は、露出が足りないときには、勝手にストロボが光ってしまいます。プログラムモードを基本にしましょう。プログラムモードの場合で、ストロボを使わなければ、暗いところでは、シャッタースピードが遅くなってしまいます。ISO感度を上げることでシャッタースピードを上げて、手ぶれを防ぎます。被写界深度を気にするなら、AFモード、シャッタースピードを気にするなら、Sモードを使いますが、デジタル一眼には、プログラムシフトという機能が付いていますので、プログラムモードで、ある程度、絞りの設定、シャッタースピードの設定を決めることが出来ます。

背景をぼかしたければ、より望遠にして、絞りをあける。

これだけ教えただけで非常に喜ばれるのです。背景をぼやけさせたければ、できるだけ望遠にし、絞りを開けます。

ピント設定は、中央1点のスポットAFにする。

フォーカスは中央1点で合わせます。構図として、ピントのあった部分を中央から外す場合は、一旦、中央でフォーカスを取って、半押しのままで構図を作り直します。私は、ピントエリアを移動することをよくします。

シャッターの半押しをマスターする

カメラになれていない人は、半押しにせずにそのままシャッターを押し込んでしまいます。半押しでフォーカスが合ったのを確認してから、シャッターを切る習慣をつけましょう。

画質モードはJPEG、FINEにする

結婚式などの失敗が許されない場所では、保証のためにRAW+JPEGで撮りますが、通常は、JPEGにしています。

測光モードはマルチパターン

スポット測光は普通使いません。

露出補正は結構重要

白いものはプラス補正で、黒いものはマイナス補正などの鉄則もありますが、なかなか、露出補正は難しいです。私は同じ場面で、-0.3, 0, +0.3、または、-0.7, 0, +0.7の3つくらい振って撮ることをおすすめします。オートブランケットを使ってもいいでしょう。

ストロボは結構難しい

私は、ストロボの不自然感がいやなので、基本的に、ストロボは使いませんが、外付けストロボを使うときはバウンスやディフューザーを使って、なるべく影を柔らかくします。夜景シンクロ、日中シンクロは上手に使うと、使い出があります。

 

「カラー版 基本がわかる!写真がうまくなる!「デジタル一眼」上達講座 (アスキー新書 75) (アスキー新書 75)」

著者:田中 希美男、出版社:アスキー・メディアワークス (2008-08-08)、ASIN:4048672886【amazon.co.jp】【bk1】【目次】

上記の私の意見とだいたい一致していますが、さすが、第一人者説得力があります。安い本ですし、デジタル一眼を持ったばかりの人に最適。


2008.08.01

本の紹介「赤めだか」

「赤めだか」

著者:立川 談春、出版社:扶桑社 (2008-04-11)、ASIN:4594056156【amazon.co.jp】【bk1】【目次】

ずっと、気になっていた本でしたが、「サラリーマンより楽だと思った。とんどもない、誤算だった。落語家前座生活を綴った破天荒な名随筆」という帯が付き、丸善で平積みになっているのを見て買ってしまいました。

落語家の立川談春が、高校を中退して立川談志の元に入門してから、二つ目になるまでの四年間を語った随筆です。立川談春の私小説でありながら、前座というもっとも近くで見た立川談志の破天荒な魅力が満載の一冊。

立川談志という人物自体がおもしろいのですから、おもしろくて当たり前と思われるかもしれませんが、立川談春の文章がとてもうまい。噺家ゆえに当たり前なのかもしれませんが、文章のリズムがとてもよい。たぶん落語のリズムなんでしょう。

第1話 「これはやめとくか」と談志は云った。
第2話 新聞配達少年と修業のカタチ
第3話 談志の初稽古、師弟の想い
第4話 青天の霹靂、築地魚河岸修業
第5話 己の嫉妬と一門の元旦
第6話 弟子の食欲とハワイの夜
第7話 高田文夫と雪夜の牛丼
第8話 生涯一度の寿限無と五万円の大勝負
特別篇その1 揺らぐ談志と弟子の罪―立川流後輩達に告ぐ
特別篇その2 誰も知らない小さんと談志―小さん、米朝、ふたりの人間国宝

第1話から第8話までが、立川談春が入門から二つ目昇進するまでの課程で、一気に読ませます。でも、特別編その1は説教くさくていけねえや。まあ、でも、特別編その2で、また、ほろっとさせられるのですが。

今のところ、今年のベストかな。


2008.05.30

医学・バイオ研究者必携の英語本5冊

英語の問題は、留学しようがしまいが、医学・バイオ研究者にとって重大な関心事です。「研究者の書棚」では、たくさんの英語本を紹介しているわけですが、それじゃ、最終的にどの本がオススメなんですか?と、先日聞かれました。

というわけで、私なりに、必携の5冊を独断と偏見で選んでみました。本のタイトルをクリックすれば、私が書いた紹介文が読めるようにしてあります。

まず、英語論文を書く際に必要なのは次の2冊です。

日本人研究者が間違えやすい英語科学論文の正しい書き方

ライフサイエンス英語類語使い分け辞典

日常的な英語でのe-mailのやりとりに関しては、この1冊です。

相手の心を動かす英文手紙とe-mailの効果的な書き方

国際学会での発表や、研究者同士の会話、研究室内での会話に関しては、次の2冊が役立ちます。

困った状況も切り抜ける医師・科学者の英会話

医学・生物学研究者のための絶対話せる英会話 研究室内の日常会話から国際学会発表まで

2008.05.25

本の紹介「Illustrator CS3の仕事術」

「Illustrator CS3の仕事術」

著者:高橋 正之、出版社:毎日コミュニケーションズ (2008-05-14)、ASIN:4839927960【amazon.co.jp】【bk1

Illustratorはイラストを描くソフトであると同時に、ページ数の少ない印刷物作成のためのレイアウトソフトであります。医学バイオ系の研究者にとってIllustratorは、大判一枚刷りポスターの作成や論文のFigure作りになくてはならないソフトです。しかし、Illustratorの解説本というと、もっぱらイラスト作成に焦点をおいた本がほとんどで、印刷物のレイアウトソフトとしての機能に焦点を置いた本はほとんどありません。

私が2003年に大判一枚刷りポスターを作成した際に出会った本が、「Illustrator 10の仕事術」で、この本なくしては、ポスター作成が出来なかったと言うくらいお世話になりました。「1枚刷りポスターに挑戦」で紹介したところ、多くの方からも支持を得ました。その後、Illustratorのバージョンアップとともに、本書も続編が作られました。Illustrator CSの仕事術では2分冊(ビジネスグラフィック編クリエイティブテクニック編)になりましたが、Illustrator CS2の仕事術では1冊にまとめられました。本書Illustrator CS3の仕事術では基本的には、同シリーズの流れをくむ内容になっています。レイアウトがシンプルになった分、内容的にはやや薄くなったかもしれません(CS2のバージョンがもっともバランスがいいような気がします)が、初めて読む方にはこのくらいの方が読みやすいのかもしれません。

いずれにしても、Illustratorを使って、大判一枚刷りポスターや論文のFigureを作る方必携の一冊と言っていいと思います。


2008.04.24

本の紹介「Life Hacks PRESS vol.2」

「Life Hacks PRESS vol.2」

著者:大橋 悦夫、出版社:技術評論社 (2008-04-18)、ASIN:4774134635【amazon.co.jp】【bk1

あの「Life Hacks」の続編がいよいよ登場しました。私はGTDに「Life Hacks PRESS vol.1」で出会い、一時はHipstar PDAなどを自前で作ったりして、かなり入れ込んでいました。現在は、自分の生活の中でGTD的な考え方をうまく取り入れています。

vol.2では、巻頭特集で勝間和代、本田直之(レバレッジシンキングの作者)などの今をときめくLife hackerへのインタビュー、第1特集でシゴタノ!管理人大橋悦夫さん記事、第2特集でLifehacking.jpの管理人さんの記事が読めます。vol.2ではvol.1より本質的な部分でのLife hackingを考えるような構成になっています。

今回紹介されているツールはデジタルものだけで、文房具関係が少ないのは残念かな。


2008.04.20

奥田英朗漬け

1週間前から奥田英朗漬けになっています。

数年前から私の書棚に積ん読状態になっていた「イン・ザ・プール」に手を伸ばしました。「イン・ザ・プール」は精神科医・伊良部シリーズ第1作です。その後、精神科医・伊良部シリーズの第2作で直木賞受賞作となった「空中ブランコ」、第3作の「町長選挙」と一気に読み終えました。

医師以外の作者が書く医学ものは基本的にあまり好きでないということもあって、なんとなく避けていたのですが、読み始めたらおもしろくて止まらなくなりました。はちゃめちゃな伊良部先生が患者さんの憑きを落とすというスタイルは、まったく形は違うものの、京極夏彦の京極堂シリーズの憑物落しと、どこか通じるところがあります。

伊良部シリーズの中では、直木賞受賞作となった「空中ブランコ」が評価が高いようですが、はちゃめちゃさで上回る「イン・ザ・プール」の方が私は好きです。

伊良部シリーズではありませんが、この先は、評判の高い「邪魔(上)」「邪魔(下)」「最悪」あたりへ進もうと思っています。

「イン・ザ・プール (文春文庫)」

著者:奥田 英朗、出版社:文藝春秋 (2006-03-10)、ASIN:416771101X【amazon.co.jp】【bk1

 


「空中ブランコ (文春文庫 お 38-2)」

著者:奥田 英朗、出版社:文藝春秋 (2008-01-10)、ASIN:4167711028【amazon.co.jp】【bk1

 


「町長選挙」

著者:奥田 英朗、出版社:文藝春秋 (2006-04)、ASIN:4163247807【amazon.co.jp】【bk1

 


2008.04.15

2008年第1四半期に売れた本

2008年1月から3月までに研究留学ネットを通して、amazon.co.jpで購入された書籍でどんなものが売れたか集計してみました。もっとも売れた本ベスト20は以下の通りです。定番本(黒字のもの)は安定した人気があります。What's new!で新しく紹介した本(赤字のもの)が入っているという感じです。

他にも多くの本を紹介していますので、「研究者の書棚」をご覧下さい。

  書名  
1 切磋琢磨するアメリカの科学者たち amazon.co.jp
2 相手の心を動かす英文手紙とe-mailの効果的な書き方 amazon.co.jp
3 研究留学術 amazon.co.jp
4 GraphPad Prismによる生物統計学入門 amazon.co.jp
4 困った状況も切り抜ける医師・科学者の英会話 amazon.co.jp
4 国際学会のための科学英語絶対リスニング amazon.co.jp
7 医学・バイオ系のためのFig.作成ガイド amazon.co.jp
7 デジタル文献整理術-最新 EndNote 活用ガイド amazon.co.jp
9 日本人研究者が間違えやすい英語科学論文の正しい書き方 amazon.co.jp
10 怖いくらい通じるカタカナ英語の法則 amazon.co.jp
11 アクセプトされる英語医学論文を書こう amazon.co.jp
11 医薬研究者のための統計ソフトの選び方 amazon.co.jp
11 怪物と赤い靴下 amazon.co.jp
11 文献管理PCソリューション 第2版 amazon.co.jp
15 これから論文を書く若者のために 大改訂増補版 amazon.co.jp
15 理科系のための入門英語プレゼンテーション amazon.co.jp
15 ポスター発表はチャンスの宝庫 amazon.co.jp
18 JMPによる統計解析入門 amazon.co.jp
18 Keynote 2プレゼンテーション入門 amazon.co.jp
18 医学・生物学研究者のための 絶対話せる英会話 amazon.co.jp

書籍以外では圧倒的にレーザーポインタが人気です。リモコン付きレーザーポインタの紹介記事を読んで下さっている方が多いのだと思います。しかし、今回人気機種に変動があり、ここ1年間ダントツの人気であった、グリーンレーザーポインタのサシ-81が初めて首位の座から落ちましたが、これは、4月13日の記事でも書いたように、後継機種であるサシ-81Nとの切り替え時期に当たったせいだと思います。あと、赤色レーザーの新製品、サシ-41がいきなり首位の座にたちました。

  商品名  
1 KOKUYO レーザーポインター for PC サシ-41 amazon.co.jp
2 KOKUYO レーザーポインタ IC-GREEN for PC サシ-81 amazon.co.jp
3 KOKUYO プレゼンテーションマウス EAM-ULW2 amazon.co.jp
3 KOKUYO プレゼンテーションマウス EAM-ULW1 amazon.co.jp
4 KOKUYO レーザーポインタ for PC サシ-51N amazon.co.jp

2008.04.10

本の紹介「流星の絆」

「流星の絆」

著者:東野 圭吾、出版社:講談社 (2008-03-05)、ASIN:4062145901、【amazon.co.jp】【bk1

普段、めったにハードカバーの小説を買うことはありません。文庫本をポケットに入れて、旅に出たり、散歩しながら、読むのが好きです。ハードカバーだと気楽に楽しめません。

ここでも何回か紹介している(2007年8月18日2007年8月25日)ように、最近、旅行や休日に気楽に読む本として、東野圭吾氏の作品が気に入っています。まだ、20冊くらいしか読んでいないので、文庫で読破していないものも多いのですが、本屋に行って、新作が平積みで置いてあると、どうしても気になってしまいます。

ずっと、こらえていましたが、ついつい買ってしまいました「流星の絆」。

おもしろかったです。1日で読んでしまいました。


2008.03.31

本の紹介「理系のための口頭発表術」

「理系のための口頭発表術 (ブルーバックス 1584)」

著者:R.H.R. アンホルト、鈴木 炎、I.S. リー、出版社:講談社(2008/01/22)、ASIN:4062575841、価格:¥ 924(税込) 【amazon.co.jp】【bk1】【楽天ブックス

10年あまりにわたって、アメリカで学生や研究者向けのプレゼンテーションのバイブルである"Dazzle'Em With Style. THe Art of Oral Scientific Presentation"の日本語訳。

「口頭科学発表は、単なるノウハウやコツではなく、努力して習得する専門技能なのである」と書いてあるように、この本はプレゼンテーションのノウハウも紹介よりも、プレゼンテーションの論理展開や、科学的論理思考について力点が置かれている。

翻訳者のつとめる富山大学では、原著を教科書として採用しており、半年のトレーニングで、学生のプレゼンテーション能力は飛躍的に向上するということだから、ブルーバックスで値段も安いし、読んでおいて損はない一冊。


2008.03.09

本の紹介「松田聖子と中森明菜」

「松田聖子と中森明菜 (幻冬舎新書 な 1-2)」

中川 右介、幻冬舎(2007/11)、価格:¥ 861(税込)、ASIN:4344980638 【amazon.co.jp】【bk1】【楽天ブックス

普段、この手の本に手を出すことはないのだが、高校生時代、中森明菜に入れ込んでいた私は、なぜ、今になって、中森明菜?しかも、松田聖子と比べられること自体あまりないのに、なぜ松田聖子と中森明菜?と思って、本屋で購入した。

本書のタイトルは「松田聖子と中森明菜」となっているが、基本的に松田聖子について語られた本である。松田聖子の時代性を引き出す上で、前半では山口百恵が、後半では中森明菜が語られている。その意味では、このタイトルは?である。著者の「カラヤンとフルトヴェングラー」と引っかけているだけなのかもしれない。

本書の最大の特徴は、歌詞の解釈を除けば、できる限り資料を元に構成しており、膨大な参考文献が巻末につけられていることである。しかも、著者は関係者でもなく、関係者へのインタビューもおこなっていないのに、ここまで書けるというのは、まことに恐れ入ったという感じである。資料が残っているはずもない、松田聖子と郷ひろみの破局、中森明菜の自殺未遂事件などにはほとんど触れられていない。

松田聖子論というよりは、事務所のプロモーション、レコード会社のプロモーション、松田聖子の影のプロデューサーとも言える、作詞家の松本隆の意向、本人のおかれた状況、そしてちょっとだけ本人の意向、こういうものによって松田聖子がどのように作られていったかをたどることができる。アイドルに夢中になっているときには気づかないことも多く、20年の時間をおいて見つめ直すという読み方をすれば、まちがいなくおもしろい一冊である。

個人的には、結婚、引退を目の前にした山口百恵に、なぜ、宇崎龍道、阿木耀子は「ロックンロールウィドウ」などという未亡人の歌を歌わせたのか?この議論が一番興味深かった。


2008.03.05

本の紹介「文系のための生命科学」

「文系のための生命科学」

著者:東京大学生命科学教科書編集委員会、出版社:羊土社(2008/02)、ASIN:4758107211、価格:¥ 2,940(税込) 【amazon.co.jp】【bk1】【目次

米国滞在中に、一般のアメリカ人のサイエンスに対するリテラシーが日本人に比べて高いと強く感じました。たとえば、サイエンスを扱ったテレビ番組やラジオ番組が日本に比べて圧倒的に多い。日常会話の中でサイエンスの話が登場することが多いです。一つ象徴的な例をあげると、『日経サイエンス』の発行部数が3万部に届かないのに対し、その姉妹書である『サイエンティフィック・アメリカン』の発行部数は70万部に達しているということです。国民性や、研究者側の努力が少ないなども原因なのでしょうが、よい入門書が少ないというのも原因の一つでしょう。

本書は高校以来、生物に接していないような方でも容易に理解できるような構成になっていて、特にニュースで取り上げられるような社会的関心の高いテーマを中心に解説されています。解説陣も一流であり、文系だけといわずに多くの人に読んでもらいたい一冊と思います。


2008.02.02

本の紹介「怖いくらい通じるカタカナ英語の法則」

「怖いくらい通じるカタカナ英語の法則 (ブルーバックス (B-1574))」

著者:池谷 裕二、出版社:講談社(2008/01/22)、ASIN:4062575744、価格:¥ 1,050(税込) 【amazon.co.jp】【bk1】【楽天ブックス

ハヴュベナセヤロウ?この英語の意味が通じますか?関西弁ではありませんよ。

池谷氏は、「海馬は語る」などのベストセラーを著した新進気鋭の脳科学者です。彼が、2002年にニューヨークに留学した際に、英語に苦労したそうで、前書きには、自由の女神を見に行こうとタクシーの運転手にFerry Portヘ行ってくださいと言ったら、ヘリポートに連れて行かれたという逸話が書かれています。英語で苦労した留学生活の中で至った結論は、所詮英語特有の発音を身につけることは出来ない、カタカナ英語をより米国語に近いカタカナ語に置き換えるだけで、はるかに通じるようになる、というものでした。

彼が編み出した、怖いくらい通じるカタカナ英語の法則は、リエゾンの法則と、実際の発音に近いカタカナで英語を発音するという法則に集約されます。

前者は、消えやすい子音の順番「「h>th>g>d,t>l>f,v>r>b,k,m,n,s」を理解し、子音が重なったときには、消えやすい子音を消して発音する、などです。たとえば、「kind of 」であれば、nとdのうち、dが消えて、「カイナヴ」と発音したほうが、「カインドオブ」と発音するよりはるかに通じるというものです。

後者であれば、「L」はウと発音する。「W」はウオと発音する。「Are you」はオユ。米国語には促音、長音がなく、さらに「イ」の母音がない。minutesは「ミニッツ」ではなく「ミニツ」。morningの「i」はイよりはエに近いので、モーネンと発音する。などです.

紹介している英文も簡単なものがほとんどですが、いわゆる口語のことばで、あまり日本の教科書には登場しないものの、アメリカで生活すると毎日何回も聴くような英文が中心になっています。

でも、これを英語初心者にやっても発音が難しくなってしまうだけのような気がします。おそらく、この本を読んで、うん、うん、頷いて読むのは、留学して1,2ヶ月くらいたった人なんじゃないでしょうか。ある程度、アメリカでの生活をした人はかなりおもしろく読めると思います。CDもついていてこの値段。お買い得だと思います。

ちなみに、冒頭の「ハヴュベナセヤロウ?」は「Have you been to Seattle?」ということになります。

2008.01.13

本の紹介「スティーブ・ジョブズ 偉大なるクリエイティブ・ディレクターの軌跡」

「スティーブ・ジョブズ 偉大なるクリエイティブ・ディレクターの軌跡」

著者:林 信行、出版社:アスキー(2007/12/17)、ASIN:4756150721、価格:¥ 2,625(税込) 【amazon.co.jp】【bk1

Mac関連の有名ライター林信行さんの書かれたSteve Jobs本。テキスト量がそれほど多いわけではないので、この一冊で波瀾万丈のSteve Jobsの軌跡を理解することは出来ないかもしれないが、貴重なSteve Jobsの写真が満載であり、それだけでも、Macファン、Steve Jobsファンは持っていても損はない。


2008.01.02

週刊文春「大リーグファン養成コラム」終了

私は、ときどき週刊文春を買います。柳田先生がおっしゃるように、メインの政治・社会記事は、レベルが低いと感じることが多いのですが、エッセイやインタビュー記事を目当てに買っています。その中でも、阿川佐和子さんのインタビュー記事と並んで、お気に入りなのが、李 啓充氏の「大リーグファン養成コラム」。

李 啓充氏は、京都大学医学部卒業し、ハーバード大学に研究留学。そのまま、ハーバード大学の助教授として活躍されていましたが、コラムニストに転身されました。アメリカの医療制度に関する「市場原理が医療を亡ぼす―アメリカの失敗」「アメリカ医療の光と影―医療過誤防止からマネジドケアまで」「市場原理に揺れるアメリカの医療」などの素晴らしい本を書かれています。私の書いた紹介文はこちらにあります。

一方で、6年前より、週刊文春で「大リーグファン養成コラム」を連載されていました。「アメリカの知識人もすなる野球ライティングというふものを、自分もしてみむ」と思い立って始められた本連載は、日本にはない上質の野球コラムでした。やや、というよりかなりレッドソックスに入れ込んだ記事ではありましたが、日本ではあまり知られていないOPSという指標や、メジャーリーガーたちの心温まるエピソード、薬物汚染のことなど、充実したものでありました。

しかし、残念ながら、2007年いっぱいで連載終了ということになってしまいました。「このコラムがなくなって淋しい」と思ってくださる方がいらっしゃるなら、是非、拙著「怪物と赤い靴下」をお読みいただきたい、とのことです。ボストンの方、必読の一冊です。

「怪物と赤い靴下」

著者:李 啓充、出版社:扶桑社(2007/11/15)、ASIN:4594055176、価格:¥ 1,470(税込) 【amazon.co.jp】【bk1

2007.12.23

本の紹介「医学・バイオ系のためのFig.作成ガイド―論文・プレゼンに役立つPhotoshop/Illustrator活用法」

「医学・バイオ系のためのFig.作成ガイド―論文・プレゼンに役立つPhotoshop/Illustrator活用法」

著者:吉田 勝久、出版社:オーム社(2007/11)、ASIN:4274204790、価格:¥ 3,150(税込) 【amazon.co.jp】【bk1】【目次

医学・バイオ系の研究成果を、IllustratorやPhotoshopを用いて図表(Fig.)にまとめるための、知識とテクニックをまとめた一冊。

画像解析に適した画像データの取扱いから、論文・プレゼンテーションに用いるイラストやグラフの作成まで、研究者が知っておきたい、Fig.の作成に関する心構えとテクニックをていねいにまとめている。Photoshopはまだしも、Illustratorの活用に言及した書は少なく、価値が高い。

著者は博士課程を取得したばかりの若い研究者であるが、画像の知識が豊富であり、紹介されているテクニックには私も知らない物も多く、非常に学ぶことが多かった。

あえて言えば、カラー刷りだった方がいいかなと思うが、その分値段が割安になっている。おすすめの一冊。


2007.11.26

本の紹介、ニコンD300関連書籍

Nikon D300の関連書籍の発売ラッシュになっていますね。ついつい買ってしまうんだよなぁ。

「Nikon D300 オーナーズBOOK」

著者:出版社:モータマガジン社(2007/11)、ASIN:4862790453、価格:¥ 1,600(税込) 【amazon.co.jp】【bk1

 


「ニコンD300&D3スーパーブック―フラッグシップ2種類の完全ガイド (Gakken Camera Mook)」

著者:出版社:学習研究社(2007/11)、ASIN:405604998X、価格:¥ 1,995(税込) 【amazon.co.jp】【bk1

コメント


「使いこなす高性能一眼レフ ニコンD300」

著者:出版社:朝日新聞社(2007/12/08)、ASIN:4022723475、価格:¥ 1,890(税込) 【amazon.co.jp】【bk1

 


「Nikon D300 完全ガイド」

著者:Nikon D300 完全ガイド、出版社:インプレスジャパン(2007/12/21)、ASIN:484432506X、価格:¥ 2,100(税込) 【amazon.co.jp】【bk1

 


2007.11.06

本の紹介「白夜行」「百器徒然袋-風」

海外出張のひとつの楽しみは、ふだんあまり読めない文庫本をまとめ読みできること。今回は西海岸への直行便であったため、それぞれ1000ページ弱の文庫本を往路用と復路用に選んだ。

「白夜行 (集英社文庫)」

著者:東野 圭吾、出版社:集英社(2002/05)、ASIN:4087474399、価格:¥ 1,050(税込) 【amazon.co.jp】【bk1

今年になって東野圭吾を読みまくっていることは、ここここで紹介したが、ちょっと厚手だったので、避けていた本書を手に取った。私が10冊ほど読んだ、どの東野作品の印象とも異なり、この本は非常によくできているといわざるを得ない。今のところの東野作品のベスト1に躍り出たと思っている。


「百器徒然袋-風 (講談社文庫 (き39-12))」

著者:京極 夏彦、出版社:講談社(2007/10)、ASIN:4062758628、価格:¥ 1,140(税込) 【amazon.co.jp】【bk1

主役は中禅寺 秋彦ではなく、榎木津 礼二郎である。文庫本のサイズとしては分厚いが、中身は3編の中編小説でできている。しかも、その3つはいずれもプロットがつながっている。エンターテイメントサスペンスとしてみれば、非常によいできの一冊である。

2007.11.05

本の紹介「最新EndNote活用ガイドデジタル文献整理術 第3版」

「最新EndNote活用ガイドデジタル文献整理術 第3版」

著者:讃岐 美智義、出版社:克誠堂出版(2007/09)、ASIN:4771903298、価格:¥ 2,625(税込) 【amazon.co.jp】【bk1】【目次

EndNoteは論文執筆にEndnoteは欠かせないソフトウェアですが、奥が深く、なかなかすべての機能を把握しきれません。分厚い英語のマニュアルを読むよりこの本をおすすめします。作者は讃岐さんという方で知る人ぞ知るという方で、とてもわかりやすく、かつ、役立つ情報が満載の1冊になっています。

今回は、Endnote X1へのバージョンアップに伴って、全面的に改訂されています。 こういったソフトウェアに関する書籍というのは、ソフトウェアがバージョンアップするたびに、改訂に迫られるという、書き手にとっては地獄のような作業が必要になります。しかし、讃岐さんは、その要求にしっかり応えて、いち早く第3版を出されました。まことに誠実な方だと思います。さらに、今回はEndnote Webに関しても加筆をされています。

Endnoteをお持ちの方は必読の1冊です。


Endnote関連の書籍は「研究者の書棚:英語論文の書き方本」をご覧下さい。

2007.10.08

本の紹介「ライフサイエンス英語表現使い分け辞典

「ライフサイエンス英語表現使い分け辞典」

著者:河本 健、大武 博、出版社:羊土社(2007/10)、ASIN:4758108358、価格:¥ 6,825(税込) 【amazon.co.jp】【bk1】【目次

本書は、昨年出版された「ライフサイエンス英語類語使い分け辞典」に続くシリーズ第2弾である。前著は、生命科学分野の論文でよく用いられる重要単語を意味によって分類し、そこから文脈に最適なものを見つけることが出来るように工夫したものでああり、私も愛用している。本書は前著と独立したものだが、生命科学分野の論文執筆に重要な1300語の使い方に着目して詳しくまとめた活用辞典である。つまり、「ライフサイエンス英語類語使い分け辞典」は、日本語表現から英語へ、本書は、重要英単語から使い方やフレーズといった使い分けへ、という形であり、両方そろえると強力である。

「ライフサイエンス英語類語使い分け辞典」と本書に共通した特徴は、PubMed論文抄録3000万語における出現回数を提示することで、ライフサイエンスで、最も適切な使い方を示しているという点である。他動詞であれば、能動態で用いられることが多いのか受動態が多いのか、現在分詞が多いのかも知ることができる。例文が豊富に載っていて、かつ、それらはすべて、PubMed論文抄録から、すべてとられているというのもライフサイエンス研究者にはありがたい。

英語論文を書く際には必携の辞典と思うが、非常に詳しいゆえ、1100ページを越し、いわゆる辞書のような重さの本になっているので持ち歩くのは難しい。できれば、電子メディア版も作って頂ければと思う。


2007.10.03

本の紹介「失われゆく鮨をもとめて」

「失われゆく鮨をもとめて」

著者:一志 治夫、出版社:新潮社(2006/11/29)、ASIN:4103031514、価格:¥ 1,470(税込) 【amazon.co.jp】【bk1

何年か前までは、肉、肉、肉、と肉のうまい店を探していたが、年を取ったのか、最近では、あまり、肉を食べたいと思わなくなってきた。少し、贅沢をしようと思うと、最近では鮨を食べることが多い。回転寿司を食べないわけではないが、握り手と客のあいだに緊張感のあるカウンターで食べるのが好きだ。結構、値が張る店に行っても、握り手がだれていたり、周りの客がだれていると、鮨の味はそれなりの味になってしまう。本当に、満足できるのは年に数回である。

今回書店で気になって手にした『失われゆく鮨をもとめて』を購入に至ったのは、前書きに、著者が高得点を与えた寿司屋の名前が列挙してあったというひどく下世話な理由である。ちなみに、著者が自分の鮨ノートに高得点をつけたのは、四谷「すし匠」、銀座「さわ田」、学芸大「富源」、銀座「鮨 水谷」、新橋「しみず」、神泉「小笹」、神泉「秋月」、人形町「き寿司」であった。もちろん、この本で取り上げる目黒の住宅街にある鮨屋も高得点を得ているのだが、名前は本書では伏せられている(Googleを使えば簡単に店の名前を知ることはできる)。

本書は、その目黒の鮨屋の親方、佐藤衛司とともに、食材を訪ねて利尻、鹿嶋、勝浦、能登、築地、伊豆、奥志摩を旅する本である。鮨をもう一段知るためには、とてもよい本である。この本を読んでから、鮨屋に行けばきっと楽しくなるであろう。


2007.09.28

本の紹介「RICOH GX100 Perfect Guide」

「RICOH GX100 Perfect Guide」

著者:出版社:ソフトバンククリエイティブ(2007/09/28)、ASIN:4797343761、価格:¥ 1,680(税込) 【amazon.co.jp】【bk1】【目次

GX100はリコーの出している高級コンパクトデジタルカメラ。コアなファンがついている人気のデジタルカメラ。本書は、GX100を購入した手の人にはもちろん、ある程度、使いこなしている人にも役立つ情報が満載の1冊。私としては、GX100の愛用者が、マイセッティングをどのように設定しているのかがとても参考になった。

GX100に書いてあるロゴ「caplio」は不人気のようで、caplioのログをあえて消す人も多い。本書には、caplioのロゴを消すための、リコー銘機ロゴステッカー(GR1、XR、SINGLEXなど)が付録としてついている。しかも、このステッカーはリコーの許可を得ているというのだから、リコーという会社は懐が深い。こんなところも、GR digitalやGX100が、たくさんのファンがついている理由なのでしょう。

GX100を持っている人は、must buyの1冊。


2007.09.19

本の紹介「パソコンで簡単! すぐできる生物統計」

「パソコンで簡単!すぐできる生物統計―統計学の考え方から統計ソフトSPSSの使い方まで」

Roland Ennos、打波 守、野地 澄晴、羊土社(2007/08)、価格:¥ 3,360(税込)、ASIN:4758107165 【amazon.co.jp】【bk1】【目次

統計学の「Statistical and Dta Handling Skills in Biology」第2版の翻訳であるが、翻訳とは思えないほど、読みやすく、紙面も工夫されている。「統計学と生物学との関連性を強調し、数式は最低限にして、簡潔に書くように努めた」という著者の意図通り、初心者(学部学生、修士学生)でも、すらすら読み進めることが出来ると思う。基礎から話を進めつつも、一定以上の複雑な計算はSPSSにまかせるという姿勢は現実的である。簡潔な例題(解答付き)が多く掲載されているのも理解を助けてくれる。SPSSで統計処理をおこないたいと思っている人が初めて手に取る本としておすすめの一冊。


関連の書籍は「研究者の書棚」>「統計関連書籍」をご覧下さい

2007.09.18

本の紹介「生物と無生物のあいだ」

「生物と無生物のあいだ (講談社現代新書 1891)」

福岡 伸一、講談社(2007/05/18)、価格:¥ 777(税込)、ASIN:4061498916 【amazon.co.jp】【bk1

本書を実際に購入するまでには長い時間がかかった。レビューでかなりの評判、それも、生物学を題材にとった書物としては例外的なくらいに売れているのを知っていたので、本屋によっては、何度も手に取り、パラパラとめくってみたが、なかなか購入には至らなかった。そもそも、わたくし、生物学を一般向けに書かれた本があまり好きではない。話を一般の人にも理解してもらうとなると、どうしても教科書のようになってしまう本が多いからである。

でも、平積みされているのを何回も見て、とうとう買ってしまった。

本書の構成は、ロックフェラー大学で活躍した野口英世、オズワルド・エイブリー、ワトソン、クリックのDNA二重らせんの発見に至る研究史、著者自身のGR2狩人としての研究史、それらが「生物と無生物を分けているものは何か」という命題に絡み合いながらストーリーが進んでいく。生物学者とは思えぬ、文章の上手さ、本当にひとつの推理小説のように物語が進んでいく。くどくど説明すると教科書のようになる生物学の知識は、適切な比喩を用いることで、飽きない程度に、適切に説明していることにも感心した。

科学者が読んでも、いやにならないという意味で珍しい一般向け科学書。


2007.08.25

今週も東野圭吾漬け

文庫本を持って出かけるというクセが付いてしまうと、なかなか手放せなくなる。といことで、今週も引き続き、東野圭吾漬けになる。

最新作「夜明けの街で」からスタートし、「変身」に進み、本格推理ものはどうなのだろうと、「ある閉ざされた雪の山荘で」「仮面山荘殺人事件 」を読んでみた。

東野圭吾の特徴として、適度なボリュームと話の展開で読みやすい、どんでん返しが多い、叙述トリックが多い、という傾向がある。なんか、この勢いだと、東野圭吾全作を制覇したくなるのだが、60冊以上あるようなので、また、読みたくなったら読むようにしよう。東野圭吾ファンサイトで最も人気の高い「白夜行」などは後の楽しみに取っておこう。

とりあえず、今のところのベスト3は「秘密」「悪意」「容疑者Xの献身」。

2007.08.18

東野圭吾漬け

私はすでに夏休みを取ってしまったので、お盆の今週は、倍の仕事が待っているのだが、電車に乗ってもがらがらで、気持ち的に夏休み気分は否定できず。週末には名古屋、福岡の出張もあり、まとめて読書をしてみた。

初めに選んだのは、東野圭吾の「秘密」。思いの外、おもしろかったので、立て続けに「手紙」「悪意」と3日間で3冊読み、東野圭吾漬けになった。いずれも、プロットづくりが上手だと感心する。次は、最新作「夜明けの街で」に進む予定。

2007.07.27

立花隆の「私の読書日記」

週刊文春は2回に1回は買って読む、比較的好きな週刊誌。週刊文春には、私の読書日記というコーナーがあって、立花隆、鹿島茂、池澤夏樹、山崎努、酒井順子が交代で書評を紹介しています。立花隆氏の推薦本は、私のツボに入ることも多く、参考にさせていただいています。ちなみに、最新の回で紹介しているのは以下の3冊。どれも、読んでみたくなる本が並んでいます。

「ファーストマン(上)」

著者:James R. Hansen、日暮 雅通、水谷 淳、出版社:ソフトバンククリエイティブ(2007/05/29)、ASIN:4797336668、価格:¥ 2,499(税込) 【amazon.co.jp】【bk1

アポロ11号で人類最初の月着陸者となった宇宙飛行士、ニール・アームストロングの伝記。徹底的なマスコミ嫌いで、本書は、本人の全面的協力を得た決定版的伝記。


「ファーストマン(下)」

著者:James R. Hansen、日暮 雅通、水谷 淳、出版社:ソフトバンククリエイティブ(2007/05/29)、ASIN:4797336676、価格:¥ 2,499(税込) 【amazon.co.jp】【bk1

上記の下巻。


「マングローブ―テロリストに乗っ取られたJR東日本の真実」

著者:西岡 研介、出版社:講談社(2007/06/19)、ASIN:4062140047、価格:¥ 1,680(税込) 【amazon.co.jp】【bk1

徹底的な取材で田中角栄を追い詰めた立花隆氏も感心する、JR東日本の労組問題のルポタージュ。


「神は妄想である―宗教との決別」

著者:リチャード・ドーキンス、垂水 雄二、出版社:早川書房(2007/05)、ASIN:4152088265、価格:¥ 2,625(税込) 【amazon.co.jp】【bk1

利己的な遺伝子」で有名な有神論者を批判する本。


2007.07.01

2007年第2四半期に売れた本

2007年4月から6月までに研究留学ネットを通して、amazon.co.jpで購入された書籍でどんなものが売れたか集計してみました。もっとも売れた本ベスト20は以下の通りです。定番本(黒字のもの)は安定した人気があります。What's new!で新しく紹介した本(赤字のもの)が入っているという感じです。書籍の中に、唯一「Denim/竹内まりや」が食い込んでいます。

他にも多くの本を紹介していますので、「研究者の書棚」をご覧下さい。

  書名  
1 困った状況も切り抜ける医師・科学者の英会話 amazon.co.jp
2 切磋琢磨するアメリカの科学者たち amazon.co.jp
3 研究留学術 amazon.co.jp
4 理科系のための入門英語プレゼンテーション amazon.co.jp
5 相手の心を動かす英文手紙とe-mailの効果的な書き方 amazon.co.jp
5 国際学会のための科学英語絶対リスニング amazon.co.jp
7 デジタル文献整理術-最新 EndNote 活用ガイド amazon.co.jp
7 文献管理PCソリューション 第2版 amazon.co.jp
7 ライフサイエンス英語 類語使い分け辞典 amazon.co.jp
10 学会出席・研究留学のための理科系の英会話 改訂版(CD付) amazon.co.jp
10 アット・ザ・ヘルム amazon.co.jp
10 GraphPad Prismによる生物統計学入門 amazon.co.jp
10 Denim/竹内まりや amazon.co.jp
10 日本人研究者が間違えやすい英語科学論文の正しい書き方 amazon.co.jp
15 PowerPointのやさしい使い方から学会発表まで amazon.co.jp
15 アクセプトされる英語医学論文を書こう amazon.co.jp
15 ポスター発表はチャンスの宝庫 amazon.co.jp
15 医学・生物学研究者のための 絶対話せる英会話 amazon.co.jp
15 理科系のためのかならず書ける英語論文 amazon.co.jp
15 入門 医療統計学 amazon.co.jp

書籍以外では圧倒的にレーザーポインタが人気です。レーザーポインタ付きリモコンの紹介記事を読んで下さっている方が多いのだと思います。その中でもグリーンレーザーポインタのサシ-81が群を抜いて人気です。私も愛用していますが、唯一の欠点が電池の持ちが悪いこと。60分くらいのプレゼンを5回くらいやると電池がなくなります。でも、最近気づいたのですが、ケースの中に、単5電池を2つ入れるスペースがあるのです。これで、プレゼンの最中の電池切れも心配なくなりました。

  商品名  
1 KOKUYO レーザーポインタ IC-GREEN for PC サシ-81 amazon.co.jp
2 KOKUYO プレゼンテーションマウス EAM-ULW2 amazon.co.jp
3 KOKUYO プレゼンテーションマウス EAM-ULW1 amazon.co.jp
4 KOKUYO レーザーポインタ for PC サシ-51 amazon.co.jp

2007.06.30

本の紹介「解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯」

「解剖医ジョン・ハンターの数奇な生涯」

著者:ウェンディ・ムーア著 / 矢野 真千子訳、税込価格:¥2,310、出版:河出書房新社、ISBN:4309204767、発行年月:2007.4【bk1】【amazon.co.jp

ジョン・ハンターは,外科医にして解剖学者。彼が活躍した18世紀のイギリスにおいては、外科医の社会的地位は低かった。兄の開く解剖学校の助手を務めたが、当時、解剖用の献体がほとんど集まらない状況にあって、墓場泥棒を雇って死体を集めた。

当時、瀉血程度しか治療方法のない前近代的な医学を、ものすごい数の解剖に基づく知識で近代医学へと橋渡ししたジョンハンターは外科医の父と称されるが、その奇人ぶりも半端ではなかったらしい。

さらに、医学から、博物学へと興味を広げ、世界から動物を集め、博物館を開くにまで至った。その博物館はハンテリアン博物館として公開されている。

グロテスクなのが苦手な方はダメかもしれないが、かなりおもしろい一冊。


2007.06.25

腎臓内科学の推薦図書

腎臓内科学の推薦図書というページを作ってみました。

2007.06.23

本の紹介「健康・老化・寿命」

「健康・老化・寿命」

著者:黒木 登志夫著、税込価格:¥924、出版:中央公論新社、ISBN:4121018982、発行年月:2007.5【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

黒木登志夫氏は、癌研究者であり、現在は、岐阜大学の学長として独立法人化に伴う改革に精力的に尽力されています。

本書は、「寿命のある内に、自分なりの視点で、健康な人が年をとり寿命に達するまでを本に書こうと思っていた」という長年の著者の思いがまとまった一冊です。個人的好奇心、そして知的好奇心の赴くまま、病気、老化、寿命について考え、専門家の教えを請いながらまとめたものであります。時間の軸、生態学、科学者達のドラマ、文学という4つの視点から書かれています。

私この手の本は苦手で、買っても数ページ読んで放り出してしまうので、最近は買わないようにしていたのですが、黒木先生の朝日メディカルのコラムが好きだということもあって買ってみました。この手の本としては珍しく、飽きずに最後まで一気に読めてしまいました。個別の問題を突き詰めず、常に大局的な視点に立っていること、そして、黒木先生の文才によって、このようなできになっているのだと思います。最新の科学の成果も入れながら、大局的に「健康・老化・寿命」について紹介した本としては傑出のできだと思います。

2007.06.22

本の紹介「ラボ・ダイナミクス」

「ラボ・ダイナミクス」

著者:カール・M.コーエン著 / スザンヌ・L.コーエン著 / 浜口 道成監訳 / 三枝 小夜子訳、税込価格:¥3,570、出版:メディカル・サイエンス・インターナショナル、ISBN:4895924742、発行年月:2007.5【bk1】【amazon.co.jp】【目次

Cold Spring Harborの人気シリーズ「アット・ザ・ベンチ」「アット・ザ・ヘルム ~自分のラボをもつ日のために」(本書は名著)に続く第3弾。

本書は、理系人間のコミュニケーションスキルを解説した本です。私も含め、理系人間にはコミュニケーションが苦手という人が少なくありません。アメリカでは、頻繁に「よいメンターになるためには」といったセミナーが開かれており、コミュニケーションについて強い関心を持っています。留学して、ラボでうまくやっていくためにも一読をおすすめします。


2007.06.20

本の紹介 「マウス・ラットなるほどQ&A」

「マウス・ラットなるほどQ&A」

著者:中釜 斉編集 / 北田 一博編集 / 城石 俊彦編集、税込価格:¥4,620、出版:羊土社、ISBN:4758107157、発行年月:2007.6【bk1】【amazon.co.jp】【目次

動物実験において使用頻度の高いマウス、ラットの取り扱いについて解説された本です。本書は初心者を対象に、取り扱い方、繁殖交配方法、移植実験、抗体作製、ゲノム・表現型情報の入手方法にいたるまで、幅広い話題について触れているのが特徴です。さらに詳しい情報が必要な場合には、どんな書籍や文献を見ればよいのかということが丁寧に述べられています。ただし、実際に実験を行おうとすると本書だけでは情報が足りずに、紹介されている参考図書で調べざるを得ないことが少なくないように感じられました。本書でも何回も参考図書として紹介されている「初心者のための動物実験手技 〔1〕」はあらかじめ手に入れておいた方がよいでしょう。


関連の書籍は「研究者の書棚」>「バイオ実験関連書籍」をご覧下さい。

2007.06.18

本の紹介「ベトナムGXトラベラー」

「ベトナムGXトラベラー」

著者:横木 安良夫著、税込価格:¥2,100、出版:アスコム、ISBN:4776204290、発行年月:2007.6【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

私も購入したハイエンドコンパクトデジカメ、リコーGX100で撮ったベトナムの写真集です。私はEVFとレンズキャップの扱いに慣れず、いまいちGX100を使いこなせていませんが、この本を見てもう一度、出直してみます。


2007.06.14

本の紹介「あの世で罰を受けるほど」

「あの世で罰を受けるほど」

著者:キリンジ著、税込価格:¥1,575、出版:ぴあ、ISBN:4835616049、発行年月:2005.12【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

私がキリンジの音楽をよく聴くという話は「KIRINJI TOUR 2006」でも紹介しました。1年半前にキリンジ初のエッセイ集が出ているというのを知って、是非とも手に入れたいと思い、無事、bk1で手に入れることができました。本書は 『TVBros.』で好評連載していたキリンジのコラム「あの世で罰を受けるほど」約4年半分をまとめたものです。各コラムはかなりシニカルなもので、彼らの歌詞に通じるものがあります。『TVBros.』に掲載されたキリンジのインタビューや対談も掲載されており、キリンジファン必携の1冊となっています。


2007.06.12

本の紹介「沖縄離島の島あそび島ごはん」

「沖縄離島の島あそび島ごはん」

著者:今村 治華著、税込価格:¥1,533、出版:青春出版社、ISBN:4413075021、発行年月:2006.7【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

私たち家族は2006年初めに八重山諸島(石垣島を初めとして、小浜島、波照間島、黒島、竹富島、西表島、など)を旅行し、その魅力に打ちのめされてしまい、今年の夏の旅行は、2度目の八重山旅行になることは、すでに1年前から決まっていました。この旅行に向けて1年がかりで密かな準備を続けてきましたが、ようやく旅行の日程も決まりつつあります。「八重山が待っている」ということだけを心の灯火として、自分を見失いそうな日々を何とか生き延びています。

本書の著者、今村さんは八重山の魅力にとりつかれ、2003年に石垣島に移り住んできたライターです。本書は、グルメ本ではなく、八重山を旅行する際に、島で暮らしているかのごとく、収穫したり、作ったりしながら、働き者のお母さん達に出会える、そんな空間を集めた本です。美しい八重山、うまそうな食事の写真を見て、楽しそうな今村さんの顔を見て、2ヶ月後の八重山旅行に思いを馳せています。


2007.06.10

本の紹介「文献管理PCソリューション新版」

「文献管理PCソリューション新版」

著者:讃岐 美智義著、税込価格:¥3,990、出版:秀潤社、ISBN:4879623547、発行年月:2007.6【bk1】【amazon.co.jp】【目次

讃岐美智義氏は、これまでにも「デジタル文献整理術 最新EndNote活用ガイド」【bk1】【amazon.co.jp】「デジタルプレゼンテーション」bk1】【amazon.co.jpといった研究者、医者の立場に立ったコンピュータ使い方の本を著しています。どの本もわかりやすく明快な著作であり、私も愛読しています。

本書は文献検索ツールであるPubMed、医中誌の使い方とともに、検索結果をどのようにPC上で管理するかに力点を置いた書籍で、文献管理ツールであるEndNote,GetARef,RT2(讃岐氏オリジナルのソフト)などの使い方についてわかりやすく解説しています。2年ぶりに改訂するにあたって、あらたに、RefWorksを取り上げるとともに、すべてツールの解説を最新バージョンでの解説に書き直しています。手元にある旧版と比較して驚いたのは、すべてのキャプチャ画面を取り直されているということです。こんなことからも、作者の丁寧さがわかる、おすすめの1冊です。


関連の書籍は「研究者の書棚:英語論文の書き方本」をご覧下さい。

2007.06.09

bk1ブリーダープログラム2007年6月で終了

私がアメリカにいる間からとてもお世話になっていたオンライン書店bk1。研究留学ネットではbk1ブリーダープログラムというアフィリエイトプログラムを利用して、多くの書籍を紹介させて頂きました。残念ながら、2007年6月いっぱいでbk1ブリーダープログラムは終了するとのことです。

bk1も、スタート当初は、amazonと比較してもいいところがたくさんあったのですが、システム上の問題をうまく解決できず、もたついている間に、一気にamazonの勢いに飲み込まれてしまったという感じです。bk1自体は今後も続くようですが、先細りは避けられそうもないように思います。でも、私は、書籍はbk1で、書籍以外のものはamazonで、という購入スタイルを今後も続けていこうと思っています。

というわけで、今月中に、たまっている「本の紹介」をできるだけ掲載したいと思っています。

2007.04.27

本の紹介「困った状況も切り抜ける医師・科学者の英会話」

「困った状況も切り抜ける医師・科学者の英会話」

著者:Ann M. Körner著 / 瀬野 悍二訳・編、税込価格:¥3,780、出版:羊土社、ISBN:475810834X、発行年月:2007.5【bk1】【amazon.co.jp】【目次

Körner & 瀬野コンビによる「相手の心を動かす英文手紙とe-mailの効果的な書き方bk1】【amazon.co.jp】【目次】【当サイトの書評日本人研究者が間違えやすい英語科学論文の正しい書き方」【bk1】【amazon.co.jp】【目次】【当サイトの書評】に続く第三弾。今度は、英会話の本です。

このシリーズの特徴は、ネイティブスピーカーが書いて、日本人が翻訳しているという点です。他書では、日本人が書いて、ネイティブスピーカーが英文をチェックしているというパターンが多いです。ネイティブスピーカーが執筆する場合、なかなか日本人の陥りやすい間違いに言及できず、的外れなものとなりがちですが、長年日本人の英語を見てきたKörner博士はポイントをしっかりとらえており、ネイティブスピーカーならではの説明に深みがあります。

本書のタイトルが「困った状況も乗り切る」とあるように、日本人がもっとも苦手とする、相手に反対の意志や見解を効果的に表現するというNegative Interractionsについて多数の例文を掲載しているのが特徴です。たとえば、留学前の約束と違う場合、どのようにボスに意見すべきかを、「軽く不満を述べる場合」「強く抗議する場合」「それでも駄目な場合」というように状況に応じて非常に実践的な例文が掲載されています。また、学会中の夜のパーティでどのようにふるまうべきなのか、講演後の質問であからさまな敵対的質問にはどのように答えるべきなのか、などについても具体的に記載されています。本書は研究者・医師向けの英会話の本であると同時に、英語圏における研究者・医師の慣習・行動規範を知るための類を見ない書籍となっています。

欄外などを使って英語本来のニュアンスを伝えようとするKörner博士、そして訳者の瀬野先生の、誠実な本作りにひたすら敬服します。また、添付のCDの出来も白眉であり、リスニングの教材としても一級です。本書を含むKörner & 瀬野コンビによる3冊は、留学を目指す人を含め、多くの研究者・医師のバイブルと言えるものだと思いますが、その中でも、本書はmust haveアイテムであると思います。


研究者のための英語に関する書籍は「研究者の書棚:科学者のための英語本」をご覧下さい。

2007.04.20

2007年第1四半期に売れた本

2007年1月から3月までに研究留学ネットを通して、amazon.co.jpで購入された書籍でどんなものが売れたか集計してみました。もっとも売れた本ベスト20は以下の通りです。定番本(黒字のもの)は安定した人気があります。そこに、What's new!で強力プッシュした本(赤字のもの)が入っているという感じです。。

他にも多くの本を紹介していますので、「研究者の書棚」をご覧下さい。

  書名  
1 研究留学術 amazon.co.jp
1 切磋琢磨するアメリカの科学者たち amazon.co.jp
3 ライフサイエンス英語 類語使い分け辞典 amazon.co.jp
4 日本人研究者が間違えやすい英語科学論文の正しい書き方 amazon.co.jp
5 相手の心を動かす英文手紙とe-mailの効果的な書き方 amazon.co.jp
5 理科系のための入門英語プレゼンテーション amazon.co.jp
7 学会出席・研究留学のための理科系の英会話 改訂版(CD付) amazon.co.jp
8 初心者のための動物実験手技 1 (1) amazon.co.jp
8 学会・論文発表のための統計学 amazon.co.jp
8 アクセプトされる英語医学論文を書こう amazon.co.jp
11 世界屠畜紀行 amazon.co.jp
11 現場の必須テクニック Illustrator CSの仕事術 amazon.co.jp
11 GraphPad Prismによる生物統計学入門 amazon.co.jp
11 国際学会のための科学英語絶対リスニング amazon.co.jp
11 医薬研究者のための統計ソフトの選び方 amazon.co.jp
16 これから論文を書く若者のために amazon.co.jp
16 アメリカの研究費とNIH amazon.co.jp
16 デジタル文献整理術-最新 EndNote 活用ガイド amazon.co.jp
16 医薬研究者のためのケース別統計手法の学び方 amazon.co.jp
16 研究者のための文献管理PCソリューション amazon.co.jp

書籍以外では圧倒的にレーザーポインタが人気です。レーザーポインタ付きリモコンの紹介記事を読んで下さっている方が多いのだと思います。その中でもグリーンレーザーポインタのサシ-81が群を抜いて人気です。私も愛用しています。

  商品名  
1 KOKUYO レーザーポインタ IC-GREEN for PC サシ-81 amazon.co.jp
2 KOKUYO プレゼンテーションマウス EAM-ULW2 amazon.co.jp
3 KOKUYO レーザーポインタ for PC サシ-51 amazon.co.jp
4 KOKUYO プレゼンテーションマウス EAM-ULW1 amazon.co.jp

2007.04.11

本の紹介「京都桜百景」

「京都桜百景」

著者:土村 清治写真、税込価格:¥1,575、出版:山と渓谷社、ISBN:4635013359、発行年月:2004.3【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

京都の桜の名所を写真で紹介するといった趣旨の本ですが、ガイド的な要素もあり、今回の京都の桜巡りでとっても役立ちました。


2007.03.31

本の紹介「Lifehack with Mac—ストレスフリーの快適MACLIFEガイド 」

「Lifehack with Mac—ストレスフリーの快適MACLIFEガイド 」

著者:こもり まさあき著、税込価格:¥2,310、出版:ビー・エヌ・エヌ新社、ISBN:4861003946、発行年月:2007.4【bk1】【amazon.co.jp

LifehackとMacというキーワードに惹かれて、即買い。Macを使ってLifehackをおこなうための本かと思いましたが、実際には、Macを使いやすくするためのオンラインウェアやwebサービスを紹介した本でした。私はオンラインウェアを使ってシステムをいじったりするのがあまり好きではないのですが、本書を読んでいると試してみようかなと思ってきました。特に気になったのは、QuickSilver 。 ただのランチャーソフトだと思っていました。


2007.03.19

「Power Pointのやさしい使い方から学会発表まで」改訂第二版

  
「PowerPointのやさしい使い方から学会発表まで」改訂第二版

著者:谷口 武利編集、税込価格:\4,725、出版:羊土社、ISBN:4758108102、発行年月:2007.3【bk1】【amazon.co.jp】【目次

初版は研究者のためのPower Pointの入門書という色合いの本であったが、改訂版に当たって、時節をとらえた改訂が行われた。特に、後半では、アニメーションを効果的に使う方法、美しい図を書く方法、動画の作り方、など応用技術の充実が図られた。細かいポイントではあるが、プレゼンテーションパックの使用方法、配付資料の作製方法、WinowsとMacintoshの互換性対策、eラーニング資料の作製方法、一枚刷りポスターの作製方法などかなりツボを押さえた一冊に仕上がっている。現時点では、研究者向けのPower Point指南書としてはベストの一冊と言っていいだろう。


2007.03.05

「バイオ実験の知恵袋」

「バイオ実験の知恵袋」

著者:小笠原 道生著、税込価格:\3,675、出版:羊土社、ISBN:4758107106、発行年月:2007.3【bk1】【amazon.co.jp】【目次

本書は通常の実験指南書に載っていないようなアイデアやノウハウをまとめた本です。似たようなイメージの本として「手抜き実験のすすめ」という本がありますが、本書は、ラボの運営や、実験をする上での日頃のちょっとした工夫など、かなり広い範囲でのアイデアを扱っていて、ライフハックならぬ、ラボハックのような本です。

取り上げられているアイデアは300以上にのぼりますが、いくつか紹介してみると「傾斜プレートでコロニー形成速度を制御する」「ガラスビーズを用いてプレートに大腸菌を蒔く」「フェノール処理で回収率をあげるために、まず下層を除去する」「webカメラで電気泳動を監視する」「メッシュ付きカップを使ってwhole mount ISHをおこなう」「発泡ウレタン製フォームを保冷用のチューブコンテナとして使う」など、 便利に安価に上手に実験をおこなためのアイデアが満載です。


2007.02.16

「初心者のための動物実験手技 〔1〕」

「初心者のための動物実験手技 〔1〕」

著者:鈴木 潔編、税込価格:\3,873、出版:講談社、ISBN:4061393855、発行年月:1981.3【bk1】【amazon.co.jp

まさに、マウス・ラットさわったこともないという初心者に向けて書かれた実験書である。特に、この本は、採血の仕方、薬剤投与の仕方に多くのページを割いてきわめて丁寧に解説している。マウスの尾静脈からの採血や、ゾンデによる投与などは、これだけ詳しく書かれた本はないのではないかと思う。20年前に書かれた本であるが、マウス、ラットを使った薬理実験を考えている方には必携の本と言える。

関連の書籍は「研究者の書棚」>「バイオ実験関連書籍」をご覧下さい。

2007.02.15

「世界屠畜紀行」は久しぶりに出会ったすごい一冊

「世界屠畜紀行」

著者:内沢 旬子著、税込価格:\2,310、出版:解放出版社、ISBN:4759251332、発行年月:2007.2【bk1】【amazon.co.jp

「屠畜」とは、家畜を殺して食肉とする行為を指す言葉である。より一般的な用語は「屠殺」は、本書では使わず「屠蓄」という用語を用いている。

屠畜についての書籍・資料はきわめて少ない。それは、屠畜という行為が残酷であり、グロテスクであるということもあるが、日本を含め一部の国では屠畜にかかわる人々への差別の問題があるということも大きな原因であろう。しかし、食卓で肉を食べるのには誰かが家畜を殺し、さばくことが必要である。家畜がどのようにして食肉に変わるのか、その部分に対する強い興味からこのルポタージュは始まっている。一般の人にはまったく目に触れない「屠蓄」の作業について、著者本人の手による秀逸なイラストをもとに紹介している。イスラム圏における屠蓄、韓国での犬肉、バリ島での豚の丸焼き、エジプトでのラクダの屠蓄、モンゴルでの羊の屠蓄、東京芝浦屠場での豚・牛の屠蓄、アメリカでの機械化された屠蓄と、屠蓄を求めての著者の旅は世界各国へと広がる。屠蓄の方法にとどまらず、宗教が食のために動物を殺すことに対してどのようなexcuseを与えているのか、屠蓄に関わる人々がどうして差別を受けているのか、とテーマも広がっている。屠蓄についてつっこんでいけば、このような難しい問題に突き当たるのだが、あっけらかんとした内澤氏の強い好奇心が屠蓄という重たいテーマのルポタージュを実に軽妙に仕上げている。著者の前作「東方見便録」は、各国の「トイレ」事情のルポタージュであり、こちらも軽妙ながら、においが漂ってくるような出来であるという。

宗教、食文化、民俗学、差別問題がぎっしり詰まった1冊なのだが、読み出したら止まらなかった。久しぶりにすごい一冊に出会った。


2007.02.12

初・司馬遼太郎

恥ずかしながら、司馬遼太郎を読んだことがありませんでした。

常々、読んでみたいとは思っていて、本屋に寄るたびに手に取ってみたりするのですが、歴史小説がいまいち苦手なのと、「龍馬がゆく」「坂の上の雲」はそれぞれ7巻、8巻とかなりの分量があり、なかなか読み始めることができません。「龍馬がゆく」「坂の上の雲」は、老後の楽しみとして取ってあります。

本屋で、たまたま、手に取ったのが、「街道をゆく 沖縄・先島への道」【bk1】【amazon.co.jp】。この本が私の初・司馬遼太郎になったわけですが、この本のおもしろいこと。日数にしたら1週間程度の旅で、沖縄本島、石垣島、竹富島、与那国島の短い訪問なのでしょうが、実にすばらしい紀行文です。司馬遼太郎が紀行文の名手であることを実感しました。

この本と一緒に買ったのが「二十一世紀に生きる君たちへ」【bk1】【amazon.co.jp】。昨年テレビで取り上げられていて気になっていたものです。この本に収められている「二十一世紀に生きる君たちへ」は司馬遼太郎が初めてこども向けに書いた文章で、教科書に収録されたものです。自分が21世紀を迎えられないことを予見し、21世紀を担っていく子供たちに向けて、やさしいながら、力強いメッセージを伝えています。全文を「総理官邸キッズルーム」で読むことができます。

最後に、もうひとつ。新潮社のサイトでも売れ切れになっていて、以前から探していた「司馬遼太郎が語る第八集 医学が変えた近代日本」をたまたま紀伊国屋で見つけました。このCDは1988年に順天堂大学で行なわれた講演「医学が変えた近代日本」を収録したものです。こういったものが、Podcastで出るようになるとうれしいですね。

ところで、今日2月12日は11年前に司馬遼太郎が亡くなった日で、彼の好きだった菜の花にちなんで、「菜の花忌」と呼ばれています。

2007.01.28

「大学病院革命」

「大学病院革命」

著者:黒川 清著、税込価格:\1,365、出版:日経BP社、ISBN:482224556X、発行年月:2007.1【bk1】【amazon.co.jp】【目次

黒川先生は日本でもっとも有名な腎臓内科医であるが、それよりも有名な顔は、元東京大学第一内科教授、そして昨年まで務めた学術会議議長という顔である。また、現在の初期臨床研修制度の仕掛け人も黒川先生である。医学教育を政治的な側面から動かすことができるほとんど唯一の人であると言える。

現在の臨床研修医制度はさまざまなゆがみや問題も生んだが、とにかく、「混ざり合う」ということを目指した彼の目的はかなりの部分達成されたといえる。長年、誰もが手をつけられなかった医局制度の崩壊に引き金を引いたと言うことは、長い目で見れば評価されるべきであろう。しかし、この臨床研修制度改革も、今回の初期研修医プログラムの創設はあくまでも第一歩であり、彼の次なる目標は大学医学部のメディカルスクール化である。大学入試時点の偏差値でのみ、医師という進路が決まるという日本の医学部制度の問題点を解消するために、アメリカと同様に、4年間学部でリベラルアーツを学んだ後、4年間のメディカルスクールで医学部を学び、医師になるというシステムの導入を考えている。

医学教育の改革は、現在の「医療崩壊へまっしぐら」という状況を打開するための最も有効な解決策であることは確かである。しかし、医学教育改革の影響が出るにはかなりの時間がかかる。黒川先生は、かなり悪化している医師と患者の信頼関係を改善する一つの方法として、市民がボランティアとして病院に入り、医師や看護師をもっと身近に感じるようなシステムを作ることを提案している。そして、表題にある大学病院改革については、かなり思い切った意見を出している。大学病院は外来をやめるという提言である。現時点では、ほとんどの人がそんなことできるわけないと思うだろうが、私は、これはありなのではないかと思っている。

全体として、現時点では実現不可能に思える提言が多いが、そのような提言を実行しなければ問題が解決しないほど、現在の大学病院を含む日本の医療制度は疲弊してしまっている。

2007.01.12

「獄中記」

「獄中記」

著者:佐藤 優著、税込価格:\1,995、出版:岩波書店、ISBN:4000228706、発行年月:2006.12【bk1】【amazon.co.jp

鈴木宗男との関係を元に国策捜査によって512日間東京拘置所に勾留された元外務省官僚佐藤優氏の獄中記。拘留中に、弁護士や友人へ出した手紙を経時的にまとめたというスタイルをとっています。話はあちこちに飛びますが、意外と苦にならずに読めました。佐藤優氏は、あえて保釈を請求せず、獄中という環境を神学、哲学などの論文を読む貴重な機会として逆手にとりました。獄中記とはあるものの、獄中の様子や裁判の様子、検事の取り調べの様子はあえてほとんど語られておらず、彼の外交、インテリジェンス、国家観、宗教観を語ることによって、国策捜査に対する強烈な反論を述べた書であるといえます。かなりおもしろかったので、「インテリジェンス武器なき戦争」も読みましたが、こちらも傑作。

2007.01.01

2006年第4四半期に売れた本

2006年10月から12月までに研究留学ネットを通して、amazon.co.jpで購入された書籍でどんなものが売れたか集計してみました。もっとも売れた本ベスト20は以下の通りです。定番本(黒字のもの)は安定した人気がありますが、新しく紹介したもの(赤字のもの)の中には、コンピュータ関連の書籍が多かったようです。

他にも多くの本を紹介していますので、「研究者の書棚」をご覧下さい。

  書名  
1 相手の心を動かす英文手紙とe-mailの効果的な書き方 amazon.co.jp
1 研究留学術 amazon.co.jp
1 阻害剤活用ハンドブック amazon.co.jp
4 切磋琢磨するアメリカの科学者たち amazon.co.jp
4 学会出席・研究留学のための理科系の英会話 改訂版(CD付) amazon.co.jp
6 論文捏造 amazon.co.jp
7 GraphPad Prismによる生物統計学入門 amazon.co.jp
8 Life Hacks PRESS amazon.co.jp
8 デジタル文献整理術-最新 EndNote 活用ガイド amazon.co.jp
8 日本人研究者が間違えやすい英語科学論文の正しい書き方 amazon.co.jp
8 現場の必須テクニック Illustrator CSの仕事術 amazon.co.jp
12 国際学会のための科学英語絶対リスニング amazon.co.jp
12 小さな小さなクローディン発見物語 amazon.co.jp
12 理科系のための入門英語プレゼンテーション amazon.co.jp
15 バイオ研究がぐんぐん進むコンピュータ活用ガイド amazon.co.jp
15 医学・生物学研究者のための 絶対話せる英会話 amazon.co.jp
15 医師・研究者のための アメリカ留学完全ガイド amazon.co.jp
18 バムとケロのにちようび amazon.co.jp
18 ポスター発表はチャンスの宝庫! amazon.co.jp
18 画像解析テキスト-NIH Image,Scion Image,ImageJ実践講座 amazon.co.jp
18 医薬研究者のためのケース別統計手法の学び方 amazon.co.jp
18 研究者のための文献管理PCソリューション amazon.co.jp
18 科学論文がスラスラ書ける!パソコンのやさしい使い方 amazon.co.jp
18 医学・生物学研究者のためのホンネのアメリカ留学マニュアル amazon.co.jp

書籍以外のランキングも作ってみました。レーザーポインタ付きリモコンの紹介記事を書いたせいか、レーザーポインタ付きリモコンが人気です。

  商品名  
1 KOKUYO レーザーポインタ IC-GREEN for PC サシ-81 amazon.co.jp
2 KOKUYO プレゼンテーションマウス EAM-ULW1 amazon.co.jp
3 KOKUYO レーザーポインタ for PC サシ-51 amazon.co.jp
3 MacDrive 6 日本語版 for Windows amazon.co.jp
3 KOKUYO プレゼンテーションマウス EAM-ULW2 amazon.co.jp

2006.12.30

2006年のベスト~BOOK~

小説部門では、東野圭吾の「容疑者Xの献身」をあげます。昨年出版され、直木賞を取っている本ですので、今更なんですが、今年読んだ本と言うことでお許し下さい。本当は文庫版になってから読むつもりでいたのですが、どうしても欲求に勝てず、成田空港の本屋で買ってしまいました。

「容疑者Xの献身」

著者:東野 圭吾著、税込価格:¥1,680、出版:文芸春秋、ISBN:4163238603、発行年月:2005.8【bk1】【amazon.co.jp

ミステリーなので内容には触れませんが、私の中では、これまで読んだミステリーの中でもかなり上位に入ると思います。直木賞受賞作。


小説以外のノンフィクション・ビジネス書部門では、ダントツで「ライフハックプレス」ですね。Mook本なので、すぐになくなってしまうのかと思ったのですが、売れ続けているようです。

「ライフハックプレス」

著者:田口 元〔ほか〕著、税込価格:¥1,596、出版:技術評論社、ISBN:4774127280、発行年月:2006.4【bk1】【amazon.co.jp

Lifehack関連では一番のおすすめ。GTDのことも含めて、いろいろな具体的なアイデアが満載の本です。


読み終わっていないので番外ということにさせて頂きますが、以下の2冊かなりおもしろいです。読み終わっていたなら、「獄中記」が2006年Bestになっていた可能性大。

「獄中記」

著者:佐藤 優著、税込価格:¥1,995、出版:岩波書店、ISBN:4000228706、発行年月:2006.12【bk1】【amazon.co.jp

元外務省の佐藤 優が獄中で書いた手記をまとめたもの。


「インテリジェンス武器なき戦争」

著者:手嶋 竜一著 / 佐藤 優著、税込価格:¥777、出版:幻冬舎、ISBN:4344980115、発行年月:2006.11【bk1】【amazon.co.jp

元NHKワシントン支局の手嶋 竜一氏と元外務省の佐藤 優によるインテリジェンス(情報外交)に関する対談。


2006.12.26

「ライフサイエンス英語類語使い分け辞典」

「ライフサイエンス英語類語使い分け辞典」

著者:河本 健編集 / ライフサイエンス辞書プロジェクト監修、税込価格:¥5,040、出版:羊土社、ISBN:4758108013、発行年月:2006.6【bk1】【amazon.co.jp】【目次

私が英語論文を書くときに使うものをご紹介しましょう。

まず第一に、関連論文。自分の論文の筋道を立てる際に大量の関連論文を読みますが、その中で、良さそうな表現があれば、どんどんいただきます。これを骨組みとします。

次に、実際に自分の英語があっているのか、どの前置詞を使えばいいのか、こういったことはGoogleまたはGoogle Scholarを英語例文辞書として活用しています(活用方法についてはそのうち書きます)。

そして、頻度はだいぶ落ちますが、時々英和辞書、和英辞書として英辞郎を使います。

これまでは、だいたいこれだけで困らなかったのですが、もともとのボキャブラリーが少ないのか、書き上げた論文を見ていると同じ動詞や表現の繰り返しになっていることが多いです。上手な人の論文は、同じことを表現するのでもいろいろな動詞や表現を駆使しています。そんなときに便利かなと思って購入したのが、「ライフサイエンス英語類語使い分け辞典」。この本、なかなか使えます。ある単語の類語が調べられるのはもちろんなのですが、単に類語がリストアップされているだけでなく、それぞれの使い分けや、使用頻度まで書かれています。そして、代表的なライフサイエンス系の論文から採択した例文が載っています。羊土社のサイトにある紙面の紹介を見ていただくとわかりやすいと思います。

今までは紙ベースの辞書はいらないやと思っていましたが、この本はお薦めです。


2006.12.07

「GR DIGITALパーフェクトガイドvol. 2」

GR DIGITALを買ったとき、「GR DIGITALパーフェクトガイド」を手に入れようと思ったのですが、すでに絶版になっていました。仕方なく、オンラインの古書店から手に入れたのですが、定価の3倍も払うことになりました。でも、それだけの価値がある本だったと思います。

さて、GR DIGITAL発売1周年を記念して、「GR DIGITALパーフェクトガイド vol 2」が発売されました。

「GR DIGITALパーフェクトガイド vol.2」

著者:デジタルフォト責任編集、税込価格:¥1,500、出版:ソフトバンククリエイティブ、ISBN:479733844X、発行年月:2006.12【bk1】【amazon.co.jp】【目次

昨年刊行の「GR DIGITALパーフェクトガイド」の大好評を受け、第2弾が遂に刊行!巻頭には文化人および写真家の方々によるフォトギャラリーとインタビューを掲載。後半部分ではVol.1で伝えきれなかったGR DIGITALで作品を撮るためのポイントや、一風変わったおもしろい作品を撮るためのテクニックなどを紹介。さらにVol.1の読者からもっとも要望が大きかった画像処理やプリントについても、RAWデータの現像処理からプリントに関するテクニックまでをよりわかりやすく、詳細に解説していきます。Vol,2だけでも楽しめ、Vol.1があるともっと愉しい、Vol.1を購入された読者の方も要チェックのGR DIGITAL本です。


と、思ったら、vol 2の発売を記念して、vol 1の増刷が決まったそうです。もうちょっと待てばよかった。

「GR DIGITALパーフェクトガイド」

著者:デジタルフォト責任編集、税込価格:¥1,300、出版:ソフトバンククリエイティブ、ISBN:4797333944、発行年月:2005.12【bk1】【amazon.co.jp】【目次

GR DEGITALの開発秘話や、概観一覧&スペックの紹介とともに、操作と作例による全機能の解説や、プロカメラマンに学ぶシーン別撮影テクニック、森山大道ら写真家の作品も掲載。GR DEGITALを完全網羅する。


2006.11.14

11月の気になる本

近いうちにちゃんとレビューしますが、とりあえずご紹介まで

「GraphPad Prismによる生物統計学入門」

著者:平松 正行著、税込価格:¥6,090、出版:カットシステム、ISBN:4877835008、発行年月:2006.11【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

待望のGraphPad Prism 解説書登場。


「FileMaker Proすいすい」

著者:河上 聡著、税込価格:¥4,620、出版:秀潤社、ISBN:487962344X、発行年月:2006.11【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

 


「免疫染色 & in situハイブリダイゼーション最新プロトコール」

著者:野地 澄晴編、税込価格:¥5,355、出版:羊土社、ISBN:4897064198、発行年月:2006.10【bk1】【amazon.co.jp】【目次

 


「Rの基礎とプログラミング技法」

著者:U.リゲス著 / 石田 基広訳、税込価格:¥3,675、出版:シュプリンガー・ジャパン、ISBN:4431712186、発行年月:2006.10【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

 


「Rによる統計入門」

著者:赤間 世紀著 / 山口 喜博著、税込価格:¥2,310、出版:技報堂出版、ISBN:4765533352、発行年月:2006.8【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

 


「初めてのPerl 続」

著者:Randal L.Schwartz著 / brian d foy著 / Tom Phoenix著 / 伊藤 直也監訳 / 田中 慎司監訳 / 吉川 英興監訳 / 長尾 高弘訳、税込価格:¥3,360、出版:オライリー・ジャパン、ISBN:4873113059、発行年月:2006.10【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

「初めてのPerl」の続編


「Perl言語プログラミングレッスン 入門編」

著者:結城 浩著、税込価格:¥2,835、出版:ソフトバンククリエイティブ、ISBN:4797336803、発行年月:2006.10【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

 


「それでも私はpalmを使う 続」

著者:野村 弘明著、税込価格:¥2,079、出版:ピーワーク、ISBN:4939128105、発行年月:2006.9【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

「それでも私はpalmを使う」の続編


2006.10.26

「邪魅の雫」

「邪魅の雫」

著者:京極 夏彦著、税込価格:¥1,680、出版:講談社、ISBN:4061824384、発行年月:2006.9【bk1】【amazon.co.jp

久しぶりの京極夏彦の新刊。さすがに分厚い。比較的読むのが早い私でも読了まで1週間近くかかった。榎木津の出番も京極堂の出番も少なく、妖怪とのからみも少ない。いつもの作品であれば、京極堂によって、読み手の憑きものも落ちるのが、今回はすっきり落ちるということがなかったのが残念。でも、これだけの厚さの小説を読ませるのはさすが。ちなみに、初回限定版についてる特典の小冊子はファン必携と思います。


関連の書籍は「研究者の書棚」>「私の選ぶ推理小説ベスト3」をご覧下さい。

2006.10.02

「阻害剤活用ハンドブック」

「阻害剤活用ハンドブック」

著者:秋山 徹編 / 河府 和義編、税込価格:¥4,830、出版:羊土社、ISBN:4758108064、発行年月:2006.10【bk1】【amazon.co.jp】【目次

siRNAが使えるようになった現在においても、各種阻害剤は簡便さの点からいまだその地位を失っていない。しかし、いざ阻害剤を使った実験をしようと思っても、どのような阻害剤があるのかわからなかったり、逆に様々な阻害剤があって、どれを使うべきかわからないというケースが多い。

本書は、医学生物学研究のツールとして重要と思われる阻害剤を用途別にリストアップし、それぞれの特徴をまとめたハンドブックである。おそらくこのようなハンドブックがあればなと思っていた研究者は少なくないはずである。

さらに親切なことに、各阻害剤ごとに、どのような溶媒に溶かせばよいのか、至適濃度はどのくらいか、入手先、カタログ番号、代表的な参考文献まであげられているという親切さである。

持っていて損がない一冊と思う。


関連の書籍は「研究者の書棚」>「バイオ実験関連書籍」をご覧下さい。

2006.10.01

2006年第3四半期に売れた本

2006年7月から9月までに研究留学ネットを通して、amazon.co.jpで購入された書籍でどんなものが売れたか集計してみました。もっとも売れた本ベスト20は以下の通りです。定番本(黒字のもの)は安定した人気がありますが、新しく紹介したもの(赤字のもの)の中には、NIH関連本統計R関連の本もありました。

他にも多くの本を紹介していますので、「研究者の書棚」をご覧下さい。

  書名  
1 切磋琢磨するアメリカの科学者たち amazon.co.jp
2 学会出席・研究留学のための理科系の英会話 改訂版(CD付) amazon.co.jp
3 相手の心を動かす英文手紙とe‐mailの効果的な書き方 amazon.co.jp
4 研究留学術 amazon.co.jp
5 医学・生物学研究者のための 絶対話せる英会話 amazon.co.jp
5 科学者という仕事―独創性はどのように生まれるか amazon.co.jp
7 理科系のための入門英語プレゼンテーション amazon.co.jp
7 国際学会のための科学英語絶対リスニング amazon.co.jp
7 ポスター発表はチャンスの宝庫! amazon.co.jp
10 理科系のための状況・レベル別英語コミュニケーション amazon.co.jp
10 染色・バイオイメージング実験ハンドブック amazon.co.jp
10 日本人研究者が間違えやすい英語科学論文の正しい書き方 amazon.co.jp
10 デジタル文献整理術―最新 EndNote 活用ガイド amazon.co.jp
14 Life Hacks PRESS amazon.co.jp
15 現場の必須テクニック Illustrator CSの仕事術 amazon.co.jp
15 最適な実験を行うためのバイオ実験の原理 amazon.co.jp
17 アメリカNIHの生命科学戦略 amazon.co.jp
17 理科系のための入門英語論文ライティング amazon.co.jp
17 アメリカの研究費とNIH amazon.co.jp
17 医薬研究者のためのケース別統計手法の学び方 amazon.co.jp
17 データ解析環境「R」 amazon.co.jp
17 Rによる統計解析の基礎 amazon.co.jp
17 医学・生物学研究者のためのホンネのアメリカ留学マニュアル amazon.co.jp

書籍以外のランキングも作ってみました。レーザーポインタ付きリモコンの紹介記事を書いたせいか、レーザーポインタ付きリモコンが人気ですが、おもちゃも意外な人気があります。

  商品名  
1 KOKUYO レーザーポインタ IC-GREEN for PC サシ-81 amazon.co.jp
2 ドラえもん ひみつ道具 くうき砲 amazon.co.jp
3 エアロソアラ ミリタリーグリーン (Aバンド) amazon.co.jp
4 KOKUYO プレゼンテーションマウス EAM-ULW1 amazon.co.jp
4 エアロソアラ バーコードブラック (Aバンド) amazon.co.jp
6 KOKUYO レーザーポインタ for PC サシ-51 amazon.co.jp
6 MacDrive 6 日本語版 for Windows amazon.co.jp
6 KOKUYO プレゼンテーションマウス EAM-ULW2 amazon.co.jp

2006.09.26

「論文捏造」

「論文捏造」

著者:村松 秀著、税込価格:\903、出版:中央公論新社、ISBN:4121502264、発行年月:2006.9【bk1】【amazon.co.jp

本書は2004年に放送されたNHKのBSドキュメンタリー番組「史上空前の論文捏造」を書籍化したものである。私は番組の方は見ていないが、読み応えがあり、おすすめの一冊である。

本書が扱っているのは、ベル研究所の研究員、ヤン・ヘンドリック・シェーンがおこした不正事件である。シェーン研究員はわずか数年の間に、超伝導に関する研究をNature、Sienceをはじめとした一流紙に立て続けに発表し続け(最も多いときは、8日間で1報の割合)、ノーベル賞間違いなしといわれていた。しかし、それらのデータはほとんどすべてがデータの存在しない捏造データであることが明らかとなった。捏造論文の数が膨大で、しかもインパクトのあるデータであったため、これまでに明らかになった科学の不正事件の中でも最大規模のものといわれている。

世界中の研究者が追試をおこなうもうまくいかなかったが、どうして疑われなかったかといえば、1報目のアイデアが斬新だったこと、シェーン研究員の上司でもあり共同研究者であるバトログ博士が超伝導の世界の大御所研究者であったことがあげられる。しかし、インパクトのある論文がものすごいスピードで掲載され続けたことに、疑問を持つ研究者が多くなり、ついには、同じグラフを使い回したことがきっかけになりデータの捏造がばれてしまった。

本事件はベル研究所に設けられた不正解明委員会によって、報告書が作成されたが、NHKの取材班は、独自に大規模な取材をおこなった。取材対象者は、捏造論文を追試した世界中の研究者、ベル研究所の関係者、シェーン研究員の出身大学、捏造論文を発表したNature誌、Sience誌の編集部などである。残念ながら、シェーン研究員自身への取材はかなわなかったが、シェーン研究員の上司であるバトログへのインタビューにも成功しており、その取材経過で得られた情報は、多くのスクープを含んでおり、BSドキュメンタリー番組「史上空前の論文捏造」は、バンフテレビ祭ロッキー賞をはじめ多くの賞を受賞した。

番組の方も是非DVD化して欲しい。


2006.09.24

「物語 大学医学部」

「物語 大学医学部」

著者:保阪 正康著、税込価格:\798、出版:中央公論新社、ISBN:412150223X、発行年月:2006.9【bk1】【amazon.co.jp

保阪 正康氏が20年以上前に書いた「大学医学部」「新大学医学部」は、医学部の医局講座制、医学部の教育について詳細に記述した、類書を見ない詳細なドキュメンタリであり、ベストセラーになった本です。私も、購入して何度も繰り返し読んだ記憶があります。

先日、立ち寄った本屋に、新刊書として本書が並んでおり、帯には「ベストセラー『医学部残酷物語』待望の続編登場」とあったので、購入しました。

読んでみてびっくりしたのですが、1部、2部、3部のうち2部は20年以上前に書かれた「大学医学部」を再構成したものでした。今回1部、3部を新たに書き下ろしたということですが、217ページのうち2部に155ページが割かれているわけで、すでに「大学医学部」を読んでいた私には目新しいところは少なかったです。20年以上前の記述を再構成しているわけですから、今の医学部の姿とはかけ離れた記述がほとんどになってしまっています。この本を読んで、今の医学部も同じなんだと想像してしまう人がいるのではないかと心配になります。


2006.09.12

「これからホームページをつくる研究者のために」

「これからホームページをつくる研究者のために」

著者:岡本 真著、税込価格:\2,940、出版:築地書館、ISBN:480671335X、発行年月:2006.8【bk1】【amazon.co.jp

研究者コミュニティーでは、まだごく一部にとどまっている個人サイトの公開が、名刺と同程度に普及するよう願って書き上げたそうです。著者はACADEMIC RESOURCE GUIDE (ARG) しというメールマガジンで学術系サイトの新着情報・更新情報について情報発信されてきた方です。本書の内容に関しては、かなりの部分『これからホームページをつくる研究者のために』サポートブログ で知ることができます。本書には、「ホームページの作りかた」「htmlの書き方」などのテクニカルな部分の記載に関しては一切ありません。研究者が運営する様々な形態のウェブサイトを紹介することで、研究者がインターネットを活用するための方法論のヒントを与えてくれる本です。

本書の著者も述べていますが、日本人研究者で自分のウェブサイトを持っている人は非常に限られています。しかも、タイムリーに更新しているような人は非常にまれといってもいいのではないでしょうか?

一般の方の間でブログサービスが盛んになってきたのは、htmlやプログラムについて全く知らないでも、はてなやgooなどの既存のサービスを使って、ブログが公開できるようになったことが大きいと思います。htmlにつての理解、公開するサーバーの構造の理解などが、研究者が自分のウェブサイトを持つことの大きな障壁になっていることは間違いないでしょう。最近、我々の周りで何人かが研究室のラボを立ち上げましたが、多くの場合、外部の委託業者に依頼して、大金をはたいてウェブサイトを立ち上げています。研究者で自分、もしくは自分のラボのウェブサイトを立ち上げている場合は、(1)ラボヘッド自体がhtmlに詳しく、自分ですべてコーディングしている(2)ラボ内のコンピュータに詳しい大学院生あたりに任せてウェブサイトを作らせる(3)外部に委託する、のいずれかのケースでしょう。いずれにしても、このようなハードルを越えてウェブサイトを公開しているケースはまだまだ多くはないと思います。

Mobable Typeがblogを爆発的にはやらせたのと同じように、 htmlに関する知識がほとんどなくてもそこそこの見栄えのwebサイトが作れるようなサービスができれば、もっと多くの研究者がウェブサイトを公開するのではないかと思います。

2006.09.07

お気に入りの絵本

今ではなかなか出来なくなってしまいましたが、ベッドの中で子供に絵本を読んであげる時間は私の好きな時間のひとつです。子供が小さな時には1冊で眠くなってしまうのに、大きくなると、3冊、4冊と読む本の数が増えていきます。いつのまにか1時間も本を読んでいるということもありました。

わが家は本に対する出費はいとわないので、たくさんの絵本が本棚に並んでいます。

絵本は、実際に手に取ってみないと、その良さがわからないものです。海外に住んでいる場合、なかなか「よい絵本」を得ることが難しいです。日本から来る方からいただいたおみやげでもっともうれしかったのは絵本でした。私も、海外に住む小さなお子さんを持つ友人へのおみやげには、絵本を選ぶことが多いです。

私のお気に入りの絵本を紹介したいと思います。

楽しさでいうなら、島田ゆかさんのバムケロシリーズをイチオシしたいと思います。島田ゆかさんは4冊のバムケロシリーズと2冊のガラゴシリーズを書かれています。どれもおすすめというか、1冊読むと必ず他の本も欲しくなります。ある本で登場したキャラクターが他の本では小さく脇役で登場したり、そういった作者の遊びを探すのが楽しいです。まず1冊というのであれば、「バムとケロのにちようび」か「かばんうりのガラゴ」をおすすめします。

「バムとケロのにちようび」【bk1】【amazon.co.jp
「バムとケロのそらのたび」【bk1】【amazon.co.jp
「バムとケロのさむいあさ」【bk1】【amazon.co.jp
「バムとケロのおかいもの」【bk1】【amazon.co.jp
「かばんうりのガラゴ 」【bk1】【amazon.co.jp
「うちにかえったガラゴ」【bk1】【amazon.co.jp

 

ちょっと重たくなりますが、感動的なものであれば、「100万回いきたねこ」をおすすめしたいと思います。最後には涙ぐんでしまうかもしれませんが、100万回でも繰り返し読みたくなる本です。どちらかというと大人向けの絵本なのかもしれませんが、子供も好きな1冊です。

「100万回生きたねこ」【bk1】【amazon.co.jp

2006.07.27

2006年上半期に売れた本

2006年1月から6月までに研究留学ネットを通して、amazon.co.jpで購入された書籍でどんなものが売れたか集計してみました。もっとも売れた本ベスト20は以下の通りです。定番本(黒字のもの)と新しく紹介したもの(赤字のもの)が半々といった感じです。

他にも多くの本を紹介していますので、「研究者の書棚」をご覧下さい。

  書名  
1 相手の心を動かす英文手紙とe‐mailの効果的な書き方 amazon.co.jp
2 切磋琢磨するアメリカの科学者たち amazon.co.jp
3 研究留学術 amazon.co.jp
4 小さな小さなクローディン発見物語 amazon.co.jp
5 Life Hacks PRESS amazon.co.jp
6 ポスター発表はチャンスの宝庫! amazon.co.jp
7 理科系のための入門英語プレゼンテーション amazon.co.jp
8 日本人研究者が間違えやすい英語科学論文の正しい書き方 amazon.co.jp
9 医学・生物学研究者のためのホンネのアメリカ留学マニュアル amazon.co.jp
10 科学者という仕事―独創性はどのように生まれるか amazon.co.jp
11 医薬研究者のためのケース別統計手法の学び方 amazon.co.jp
12 画像解析テキスト―NIH Image,Scion Image,ImageJ実践講座 amazon.co.jp
13 医学・生物学研究者のための 絶対話せる英会話 amazon.co.jp
14 デジタル文献整理術―最新 EndNote 活用ガイド amazon.co.jp
15 国際学会のための科学英語絶対リスニング amazon.co.jp
16 アクセプトされる英語医学論文を書こう! amazon.co.jp
17 これから論文を書く若者のために 大改訂増補版 amazon.co.jp
18 理科系のための状況・レベル別英語コミュニケーション amazon.co.jp
19 研究者のための文献管理PCソリューション amazon.co.jp
20 学会・論文発表のための統計学 amazon.co.jp

あと、レーザーポインタ付きリモコンの紹介記事を書いたせいか、レーザーポインタ付きリモコンを購入される方も多くなっています。ランキングは以下の通りですが、1位の「KOKUYO レーザーポインタ IC-GREEN for PC サシ-81」がダントツの人気です。私も、このグリーンレーザーポインタの愛用者ですが、間違いなくおすすめの一品といえます。

  商品名  
1 KOKUYO レーザーポインタ IC-GREEN for PC サシ-81 amazon.co.jp
2 KOKUYO プレゼンテーションマウス EAM-ULW2 amazon.co.jp
3 KOKUYO レーザーポインタ for PC サシ-51 amazon.co.jp
4 KOKUYO プレゼンテーションマウス EAM-ULW1 amazon.co.jp
5 コードレスプレゼンター BM-1000 amazon.co.jp

2006.07.02

「染色・バイオイメージング実験ハンドブック」

「染色・バイオイメージング実験ハンドブック」

著者:高田 邦昭編集 / 斎藤 尚亮編集 / 川上 速人編集、税込価格:¥7,245、出版:羊土社、ISBN:4758108048、発行年月:2006.7【bk1】【amazon.co.jp】【目次

最近では、蛍光顕微鏡によるマルチカラーの写真が必須になっていますが、なかなかいい本がありませんでした。蛍光ではなく、酵素抗体法であれば、「渡辺・中根酵素抗体法 改訂4版」【bk1】【amazon.co.jp】が間違いなくイチオシなのですが。

本書は 光学顕微鏡,共焦点レーザー顕微鏡,蛍光顕微鏡,電子顕微鏡などの使い方、組織の固定・切片作製から,蛍光抗体法,免疫電顕法などの実験手法,画像処理の方法にまで言及しています。ちょっとお値段高めですが、それだけの価値はあると思います。


関連の書籍は「研究者の書棚」>「バイオ実験関連書籍」をご覧下さい。

2006.06.30

「最適な実験を行うためのバイオ実験の原理」

「最適な実験を行うためのバイオ実験の原理」

著者:大藤 道衛著、税込価格:¥3,990、出版:羊土社、ISBN:475810803X、発行年月:2006.7【bk1】【amazon.co.jp】【目次

現在、分子生物学の実験はキットが全盛になっています。私が分子生物学の実験手法を習った研究室では、キットは使うことは御法度であり、すべて、1つずつ試薬を買い求めて、実験系を組み立てていました。時間的に見ればやや遠回りであったのかもしれませんが、キット全盛になった現在においてもtrouble shootingするときなどにおいて、そのときの経験は今でも私の財産になっています。

本書は、既存のバイオ実験手法を、それらが生まれた経緯や原理にさかのぼって解説することで、読者に実験手法の選択、改良や新たな手法の開発のヒントを提供するものです。日頃、キット一筋になっているような方には目から鱗が落ちる一冊だと思います。


関連の書籍は「研究者の書棚」>「バイオ実験関連書籍」をご覧下さい。

2006.06.27

「学会出席・研究留学のための理科系の英会話【改訂版】」

「学会出席・研究留学のための理科系の英会話【改訂版】」

著者:広岡 慶彦著、税込価格:¥2,310、出版:ジャパンタイムズ、ISBN:478901231X、発行年月:2006.6【bk1】【amazon.co.jp】【目次

研究留学ネットの売れている本リストでも常に上位に入っている「学会出席・研究留学のための理科系の英会話」が全面改訂し、読者の希望に応えCD付きで再登場しました。

本書は国際会議に出席したときや研究留学したときのシチュエーションを想定して、日本ではあまり聞かないが、アメリカでは常套句といった生きた英会話例文を中心に解説。巻末の推薦状の書き方、学会のレセプションの司会やスピーチを頼まれたとき、も参考になります。ネイティブスピーカーが音読した付属CDを繰り返し聞けば、会話と聞き取りの練習に効果的だと思います。


関連の書籍は「研究者の書棚」>「科学者のための英語本」をご覧下さい。

2006.06.05

「ストレスフリーの仕事術」

「ストレスフリーの仕事術」

著者:デビッド・アレン著 / 田口 元監訳、税込価格:\1,575、出版:二見書房、ISBN:4576060732、発行年月:2006.6【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

GTD(Getting Things Done)の提唱者であるデビッド・アレン氏の2冊目の著作。1作目の「仕事を成し遂げるための技術」【bk1】【amazon.co.jp】はやや読みにくい本ですが、本作は、百式管理人の田口さんが監訳をされていて、訳もレイアウトもとても読みやすくなっています。

本書は、デビッド・アレン氏がニュースレターとして配信したGTDを使いこなすための52のヒントをまとめたものです。したがって、GTDについて全く知らないという人よりは、GTDは知っているのだけれども、GTDをもっと使いこなしたい、その根底に流れる考え方をより詳しく知りたいという人に最適な本です。ただし、監訳をされた田口さんが書かれた、まえがきと後書きがすばらしく、GTDについて初心者にわかりやすくまとめてくれていますので、GTD初心者の方でも十分読みこなせるようになっています。GTD初心者の方は、第5章の「基礎を忘れずに」と監訳者のまえがき、あとがきを読んだ後、本文の第1章から読み進めるとよいと思います。

GTDを実行するためのgadget類に関しては、「Life Hacks PRESS ~デジタル世代の「カイゼン」術~」が参考になると思います。


GTDについての関連エントリー

2006.05.17

「医学・ライフサイエンス画像解析テキスト」

「医学・ライフサイエンス画像解析テキスト」

著者:小島 清嗣編集 / 岡本 洋一編集、税込価格:¥5,775、出版:羊土社、ISBN:4758108005、発行年月:2006.5【bk1】【amazon.co.jp】【目次

NIH imageを使いこなすための実践書として初版が登場したのが1997年。多くのNIH Image愛用者の絶大な信頼を得ましたが、その後、着実に改訂が行われてきました。Scion Imageの記述を追加して、2001年に第2版が出版され、さらに、今回、Image Jの記述が追加された第3版が出版されました。お値段もちょっと安くなりました。

NIH ImageはMac OS9用に開発された、無敵の研究用画像解析ソフトです。Scion社が自社のグラフィックボード用に開発したWindows版がScion Imageです。さらに、プラットホームに依存しないJava版がImage Jです。いずれもフリーであり、多くの研究者がこれらのソフトを使って画像解析をおこなっています。細胞数のカウント、電気泳動ゲルのバンドの解析などPhotoshopでもできないさまざまな解析ができます。本書は日本語で書かれた唯一のNIH Image, Scion Image, Image Jの解説書。持っていて損はないと思います。


2006.05.11

「科学者という仕事」

「科学者という仕事」

著者:酒井 邦嘉著、税込価格:¥819、出版:中央公論新社、ISBN:4121018435、発行年月:2006.4【bk1】【amazon.co.jp】【目次

hypoxia research:blogで激賞されていたので、買ってみました。 私は、正直言って、この手の本は苦手で、「科学者とは」と大上段に振りかぶられてしまうとダメなのです。でも、この本はそんなことを感じさせずに一気に読み通すことができました。アインシュタイン、朝永振一郎博士、キューリー夫人といった多くの著名な研究者の逸話を紹介し、彼らの研究にまつわる苦楽を知ることで、科学者として必要な素質についてくみ取って欲しいという構成のおかげでしょう。とにかく感心させられるのは、科学者のみならず、文筆家、奇術師などのものすごい量の名言を、紹介していることです。私が一つ、心を奪われた堀田先生の言葉を引用します。

研究者はみんな研究が好きで好奇心があり、そういう才能を持った人の集まりです。(中略)ところがしばらくは知ると、実は自分の才能のない部分がrare-limiting factorとなってきます。実験は大好きだが論文下記が下手な人などがその好例です。飛躍ばかりで論理的に進められない人、論理的だが飛躍のない人、PIになったのに下につく人との人間関係をうまく構築できない人、超有名なのに異性でしくじる人、などなどです。つまり人生のレースは才能で勝負しているように見えるが、じつは最後は才能のない部分をいかにカバーできるかが肝心です。つまり本当は「ない才能で勝負」するのです。まあ、これが人生の面白さとも言えるものではないでしょうか。

研究者を目指す方におすすめの一冊です。


2006.04.28

「アップル・コンフィデンシャル 2.5J」

「アップル・コンフィデンシャル2.5J 上」

著者:オーウェン・W.リンツメイヤー著 / 林 信行著、税込価格:\2,100、出版:アスペクト、ISBN:4757212542、発行年月:2006.5【bk1】【amazon.co.jp

「アップル・コンフィデンシャル2.5J 下」

著者:オーウェン・W.リンツメイヤー著 / 林 信行著、税込価格:\2,100、出版:アスペクト、ISBN:4757212550、発行年月:2006.5【bk1】【amazon.co.jp

米国の IT ジャーナリスト、オーウェン・リンツメイヤー氏のベストセラー『アップル・コンフィデンシャル 2』に、これまで 16 年間、取材を続けてきた林信行氏による書き下ろしパートを加えた本で、アップルが 30 周年を迎えた直後の 4 月に発売となる。アップルオタクの人は持っていて損のない一冊。

2006.04.19

「知的生産の技術」

「知的生産の技術」という本を読んでみました。これもGTDに触発されたものです。

「知的生産の技術」

著者:梅棹 忠夫〔著〕、税込価格:¥777、出版:岩波書店、ISBN:4004150930、発行年月:1980【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

本書の初出は1969年。当時は大ブームをおこしたそうで、その後もロングセラーを続けています。

37年前の本で、現代の知的生産の技術の強力なツールであるパソコンが抜けていますが、時間を超えて、耳を傾けるべき内容に満ちています。特に、前半部分の「発見の手帳」「カードを使った知的生産の技術」に関しては大いなる刺激を受けました。内容を一部紹介します。

ダ・ヴィンチには奇妙なくせがあった。ポケットに手帳を持っていて、なんでもかでも、それに書き込むのである。ダ・ヴィンチの精神に魅せられ、筆者は「手帳」に「発見」を書き留めた。毎日の経験の中で、何かの意味で、これは面白いとおもった現象を記述するのである。あるいは、自分の着想を記録するのである。筆者は、この手帳に、自分で、「発見の手帳」という名を付けていた。
「発見」はまったく突然にやって来るものである。それをその場でとらえて、即刻記録するのであるから、その記録の装置としての手帳は、いつでも身に付けていなければならない。これが、「発見の手帳」についての、第一原則である。大きさに関しては、新書判のたけを少し短くしたくらいの大きさで落ち着いた。また、机がなくてもかけるという条件を満たすために、表紙には、思い切って厚いボール紙を使った。書く際には、一ページ一項目という原則を確立し、ページの上覧に、そのページの内容をひと目でしらせる表題を付けた。

私は筆者が実際にどんなタイプの手帳を使っていたのかはしらない。でも、現代でこの手帳に一番近いのはmoleskineだと思う。その後、筆者はノートの欠点を克服するためノートを捨てて、カードに書くことにした。

ノートの欠点は、ページが固定されていて、かいた内容の順序が変更できないということである。ノートは、内容の保存には適していても、整理には不適当である。 そのため、筆者はノートをやめて、すべてカードにかくことにした。 カードは小さいものはよくなく、思い切って大きくしたほうがよい。筆者はB6判をつかっていた。罫線の間隔を十分に広くとって、ほどほどに厚い紙をつかって「クル」ことがやりやすくした。 こうして、自分で設計したものを、図書館用品の専門店に注文してつくらせた。このカードは、大変評判が良くて、希望者がたくさんあったので、まとめて大量につくって、あちこちに分譲した。その後いつの間にか、わたしの設計したこの型のカードがずいぶん普及してしまい、逆にわたしに、「カードはこれがいい」と勧めてくれる人も出てきた。ついにわたしは、文房具店の店先で、わたしのカードが商品として売られているのを発見した。その商品には、「京大型カード」という名がつけてあった。
カードについてよくある誤解は、カードは記憶のための道具だ、というかんがえである。英語学習の単語カードなどからの連想だろうが、これは実は、完全に逆なのである。カードにかくのは、そのことを忘れるためである。忘れても構わないように、カードに書くのである。標語風にいえば「記憶するかわりに記録する」のである。いわば「忘却の装置」である。カードにかいてしまったら、安心して忘れていいのである。

2006.04.18

文房具にはまる

Rhodia_coverGTDがきっかけとなり、最近、文房具にはまっています。

以前にも紹介したRhodiaはすっかり生活の中にしみ込んでいます。一番よく使うのは、No.16。持ち歩きにはNo.11。以前、挫折したmoleskine(日本語表記はモレスキンとするとの公式アナウンスがありました)も再び使い始めました。

最近のお気に入りはRhodia No.11のカバー です。

文房具関連の魅力的な本を紹介します。

「やっぱり欲しい文房具」

著者:土橋 正著、税込価格:¥1,659、出版:技術評論社、ISBN:4774126098、発行年月:2006.1【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

 


「文房具を楽しく使う 筆記具篇」

著者:和田 哲哉著、税込価格:¥1,680、出版:早川書房、ISBN:415208622X、発行年月:2005.11【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

 


「文房具を楽しく使う ノート・手帳篇」

著者:和田 哲哉著、税込価格:¥1,680、出版:早川書房、ISBN:4152085827、発行年月:2004.7【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

 


2006.04.14

「これから論文を書く若者のために 大改訂増補版」

「これから論文を書く若者のために 大改訂増補版」

著者:酒井 聡樹著、税込価格:\2,730、出版:共立出版、ISBN:4320005716、発行年月:2006.4【bk1】【amazon.co.jp】【目次

この本は、「若手研究者のためのお経」というサイトが単行本としてまとめられたものです。英語論文に限定しない、論文の書き方が解説されており、さらにいうならば、論文を発表することを前提とした研究の進め方について書かれた本でもあります。初めて論文を書こうとしている大学院生・学部生は必読の本と思います。今回、25%もの大幅増補改訂が行われ、さらに中身が充実しました。


2006.04.02

Getting things done (GTD)

Life Hacks PRESS ~デジタル世代の「カイゼン」術~」を読んで「Getting things done(GTD) 」を知りました。

GTDはデビッドアレン氏が提唱した仕事術、というか、生活習慣(Life Hacks)です。手法的な部分にだけ注目すれば、仕事術の一つに過ぎませんが、GTDの本質は別の部分にあります。

労働集約型の社会から知識集約型の社会に移行しつつある現代では、仕事の終わりが曖昧になってきています。そして「終わりのはっきりしない仕事」がどんどんふってきて、頭の中に「終わっていない仕事」をたくさん抱えることになります。このような「終わっていない仕事(Open Loop)」が現代のビジネスパーソンのストレスの元になっているとデビッドアレン氏は指摘しています。

こうしたストレスをなくすための手法として、

  • 信頼できるシステムを構築し、そこに「あなたの注意を引くことすべて」を保管する。
  • 次の物理的なアクションを定義する。
  • それを定期的にレビューする

というGTDを提唱しています。頭はよく忘れるし、しかも忘れたことをよく思い出すので、「あなたの注意を引くことすべて」を保管する場所として、あなたの頭以外の信頼できるシステムを構築することが重要です。システムは、紙メディア(Rhodiaなどを使うのもよい)、電子手帳、デジタルツールなど、自分にあった方法を利用します。GTDの効果は、仕事を効率的におこなえることに加え、ストレスから解放され、そこから新しいアイデアが生まれてくると言うことにあります。

GTDの具体的な手法については「Getting Things Done (a.k.a. GTD) (1) (2) (3) (4)」にも書かれていますが、より詳しく知るためには下記の本をお読み下さい。

「仕事を成し遂げる技術」

著者:デビッド・アレン著 / 森平 慶司訳、税込価格:¥1,890、出版:はまの出版、ISBN:4893613332、発行年月:2001.9【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

Getting things doneを提唱したデビッドアレンの「Getting Things Done : The Art of Stress-Free Productivity 」の邦訳版です。私はまだ手に入れていませんが、やや読みにくい本のようです。


「Life Hacks PRESS ~デジタル世代の「カイゼン」術~」

著者:田口 元, 安藤 幸央, 平林 純, 角 征典, 和田 卓人, 金子 順, 角谷 信太郎 著、税込価格:¥1,596、出版:技術評論社、ISBN:4774127280、発行年月:2006.3【amazon.co.jp

上記のGTDの原典がやや読みにくいこともあり、GTDを理解するなら、こちらの「第1章:10分でわかるGTD」を読んだ方がよいかも。GTDを実践するための紙ツールやデジタルツールなども紹介されています。他の章では、Life Hacksのためのマインドマップ活用法、Google活用法なども紹介されています。


2006.03.26

研究留学ネットで紹介して売れた本(2006年第1四半期)

2006年第1四半期に研究留学ネットを通して、amazon.co.jpで購入された書籍でどんなものが売れたか集計してみました。もっとも売れた本ベスト20は以下の通りです。書籍ではありませんが、リモコン付きレーザーポインタが3点ランクインしています。

他にも多くの本を紹介していますので、「研究者の書棚」をご覧下さい。ちなみに2005年1年間で売れた本のベスト20はこちらです。

  書名  
1 相手の心を動かす英文手紙とe‐mailの効果的な書き方 amazon.co.jp
2 研究留学術 amazon.co.jp
3 小さな小さなクローディン発見物語 amazon.co.jp
4 KOKUYO レーザーポインタ IC-GREEN for PC サシ-81 amazon.co.jp
5 切磋琢磨するアメリカの科学者たち amazon.co.jp
6 KOKUYO プレゼンテーションマウス EAM-ULW2 amazon.co.jp
7 理科系のための入門英語プレゼンテーション amazon.co.jp
8 日本人研究者が間違えやすい英語科学論文の正しい書き方 amazon.co.jp
9 ポスター発表はチャンスの宝庫! amazon.co.jp
10 医学・生物学研究者のための 絶対話せる英会話 amazon.co.jp
11 国際学会のための科学英語絶対リスニング amazon.co.jp
12 医学・生物学研究者のためのホンネのアメリカ留学マニュアル amazon.co.jp
13 医薬研究者のためのケース別統計手法の学び方 amazon.co.jp
14 科学英語論文の赤ペン添削講座 amazon.co.jp
15 KOKUYO レーザーポインタ for PC サシ-51 amazon.co.jp
16 アクセプトされる英語医学論文を書こう! amazon.co.jp
17 デジタル文献整理術-最新 EndNote 活用ガイド amazon.co.jp
18 バイオ研究がぐんぐん進むコンピュータ活用ガイド amazon.co.jp
19 医薬研究者のための統計ソフトの選び方 amazon.co.jp
20 科学論文がスラスラ書ける!パソコンのやさしい使い方 amazon.co.jp

2006.03.23

「入門医療統計学」

「入門医療統計学」

著者:森実 敏夫著、税込価格:¥3,990、出版:東京図書、ISBN:4489006810、発行年月:2004.7【bk1】【amazon.co.jp】【目次

必要な数式は最低限に抑えられつつも、医療統計に必要な手法について基本的なものから、ROC分析、Kaplan-Meier生存分析、多重ロジスティック回帰分析、比例ハザード分析などの分析手法にまで解説しています。また、エクセル、JMP、SPSSといった統計ソフトを用いた計算方法についても紹介しており実用的です。バランスがとれた一冊でおすすめです。

関連の書籍は「研究者の書棚」>「統計関連書籍」をご覧下さい。

2006.03.22

「実感と納得の統計学」

「実感と納得の統計学」

著者:鎌谷 直之著、税込価格:¥4,410、出版:羊土社、ISBN:4897064953、発行年月:2006.4【bk1】【amazon.co.jp】【目次

P値などの計算が容易になるにつれ、統計学の本質はますます理解されにくくなっている現状を考え、統計的解析の本質をよく理解したいという読者の要望に応える目的で書かれた一冊です。統計学の本質的な理解よりも、当面の論文作成のためにとりあえずP値を計算する方法を知りたいだけの研究者向けの本ではないとのことで、かなりしっかりとした統計学の本になっています。

関連の書籍は「研究者の書棚」>「統計関連書籍」をご覧下さい。

2006.03.09

「医薬研究者のための統計ソフトの選び方 改訂2版」

「医薬研究者のための統計ソフトの選び方 改訂2版」

著者:奥田 千恵子著、税込価格:¥2,520、出版:金芳堂、ISBN:476531197X、発行年月:2005.8【bk1】【amazon.co.jp】【目次

いくつかの市販の統計ソフトの機能や特徴をExcelと比較することにより、Excelの次に用いる統計専用ソフトを選ぶ指針を示した貴重な本です。第1版では、Excel、SPSS、Statview、Prismを使って、いくつかの例題を解いてみて各ソフトの解析手順や出力などを詳細に比較していました。しかし、第1版が出版された直後にStatviewが開発中止になってしまったために、第2版では、Statviewの代わりにJMPが取り上げられ、Excel、SPSS、JMP、Prismの機能比較がおこなわれています。どの統計ソフトを使おうかと迷われている人にも参考になると思います。

統計関連書籍は「研究者の書棚:統計関連書籍」をご覧下さい。

2006.03.08

「マウスカラーアトラスと写真で見る脳実験マニュアル」

「マウスカラーアトラスと写真で見る脳実験マニュアル」

著者:黒川 衛編集、税込価格:¥7,140、出版:羊土社、ISBN:4897064945、発行年月:2005.12【bk1】【amazon.co.jp】【目次

脳の研究で、いざ、実験するとなっても、手術はどうするのか、麻酔はどうするのか、そもそも部位の同定ができない、組織切片の染色はどうするか?こういった基本的な実験手技や知識は各研究室で口頭伝承で伝えられることが多く、脳研究をおこなっていない研究室で新たに脳の研究を始める場合には、どこかの研究室に習いに行かなくてはなりませんでした。本書は脳研究に必要な解剖、組織染色、手技、培養、特殊な手術、行動解析など脳研究者に必要な知識を網羅した貴重な一冊です。脳研究者には必携の一冊と思います。また、マウスの基礎知識も満載なので、分野を問わずマウスを扱う研究者にも役立つと思います。

実験動物取り扱いに関する書籍は「研究者の書棚:バイオ実験関連書籍」をご覧下さい。

2006.02.24

「Mind Hacks」

「Mind Hacks」

著者:Tom Stafford著 / Matt Webb著 / 夏目 大訳、税込価格:¥2,940、出版:オライリー・ジャパン、ISBN:4873112710、発行年月:2005.12【bk1】【amazon.co.jp】【目次

オライリー出版の本は、主にコンピュータプログラミングを扱っており、この本はかなり異色な本になっています。「精神がハック」できるわけではありませんが、最新の脳科学を基にした解説と簡単な実験で、脳と心のはたらきを説明する新しい脳の本。


2006.02.16

「若い研究者へ遺す 小さな小さなクローディン発見物語 」読みました

昨日紹介した「小さな小さなクローディン発見物語」読みました。

すばらしい本でした。

一節を引用します。

研究の世界では、セレンディピティという言葉がよく使われます。(中略)ともすると、この言葉は「犬も歩けば棒に当たる」と同義語のように使われる時があります。これは間違っています。確かに歩き回っていると大きな宝にぶつかることはきわめて稀にはあるかもしれません。でも、滅多にはありません。さらには、ぶつかっても気づかない人もいます。(中略)本当の意味でセレンディピティを持ち合わせている人は、皆が気づかない宝がすぐそばに落ちているのに気づくのです。

それでは、研究者にはどのような能力が要求されるのでしょう?もちろん、歩き回らなければ宝の近くを偶然通りかかることもないので、動き回ること(すなわちじっけん科学では手を動かして実験すること)は必須条件です。でも、どうして大部分の人が気づかないのに、ある特定の人だけ気づくのでしょう。ある人だけに「見える」、僕は、これはその人の「視力」の差だといつも言います。

最後の月田先生ご本人の「謝辞」、そして、月田早智子先生の「おわりに」は涙なくして読めません。

2006.02.15

「若い研究者へ遺す 小さな小さなクローディン発見物語 」

「小さな小さなクローディン発見物語」

著者:月田 承一郎著、税込価格:¥1,890、出版:羊土社、ISBN:4897068509、発行年月:2006.2【bk1】【amazon.co.jp】【目次

昨年12月に52歳の若さで逝去された京都大学月田承一郎先生が、亡くなるひと月前に遺した渾身の書き下ろしの一冊です。クローディンの発見にいたるまでの月田先生の歩んできた道のりをつづりながら、若い生命科学者にどうしても伝えたかったことを語られています。


2006.02.06

「Photoshopの画像処理マニュアル」

「Photoshopの画像処理マニュアル」

著者:小島 清嗣編集 / 岡本 洋一編集、税込価格:¥4,830、出版:羊土社、ISBN:4897064902、発行年月:2005.11【bk1】【amazon.co.jp】【目次

医学生物学研究にフォーカスしてPhotoshopの使い方を解説した一冊。いまひとつ理解しないままなんとなくPhotoshopを使っているという人に役立つと思います。視野をずらしながら撮影した画像のタイリング、スキャンニングの際に目的別に読み取り解像度を設定する方法、明視野顕微鏡画像の補整の仕方、微分干渉顕微鏡画像の補整の仕方、PowerPointで上手に見せる方法、など私としても役立つ情報満載でした。


コンピュータ関連の書籍は「研究者の書棚:コンピュータ関連本」をご覧下さい。

2006.02.03

研究留学術第4刷出版

研究留学術

研究留学ネットを1冊の本にまとめた研究留学術も第4刷まで増刷され、私の手元にも最新版の第4刷が届きました。今回は、PART1第2章ビザの章を徹底的に書き直し、現在のビザ申請手続きにマッチするものに書き直すことができました。改訂版ではないため、書き直しは最低限しかできませんでしたが、URLの確認を含め、できる限り最新のものとなるようにしました。4月から留学という方も多いと思いますが、是非お手元に1冊お持ち頂ければと思います。書店には一部第3刷の在庫が残っているようですので、「2006年1月20日 第1版第4刷発行」となっているか確認して購入されることをお勧めします。

研究留学術——研究者のためのアメリカ留学ガイド
著者:門川俊明編著、出版社:医歯薬出版社、価格:¥3,200、ISBN:4-263-20171-X【bk1】【amazon.co.jp】【目次

2006.01.23

「バイオ研究がぐんぐん進むコンピュータ活用ガイド」

「バイオ研究がぐんぐん進むコンピュータ活用ガイド」

著者:門川 俊明企画編集、税込価格:¥3,360、出版:羊土社、ISBN:489706922X、発行年月:2006.2【bk1】【amazon.co.jp】【目次

現在のバイオ研究ではあらゆる場面でコンピュータスキルが要求されます。バイオ研究でしか使わないようなソフトもたくさんあり、これらをマスターする必要があります。プレゼンテーションソフトにはどのようなものがあるか、文献管理ソフトにはどんなものがあるか、どんなソフトをマスターしなければならないのか、そういったバイオ研究に必要になるソフトを網羅的に紹介しているのがこの書籍です。昨年Keynoteのレビューを実験医学に書いたのをきっかけに、本書の編集のお手伝いをしてきて、ようやく上梓することができました。基本的には大学院生など、あらたにバイオ研究の世界に飛び込んできた若い研究者を対象とした本ですが、研究者のコンピューター通の方々の丸秘テクニックを満載していますので、中級者の方でも十分読みがいのある1冊になっていると思います。What's new!で時々紹介するコンピュータテクニックの話が便利と思って下さるような方にはきっとお気に入りの1冊になると思います。

コンピュータ関連の書籍は「研究者の書棚:コンピュータ関連本」をご覧下さい。

2006.01.01

2005年に研究留学ネットで紹介して売れた本ベスト20

2005年1月から11月までに研究留学ネットを通して、amazon.co.jpで購入された書籍でどんなものが売れたか集計してみました。もっとも売れた本ベスト20は以下の通りです。ダントツに売れたのが売れたのが「切磋琢磨する研究者」。こちらで紹介直後に、Amazonでの売り上げランキングが100位台にまで押し上げられたほどです。あとは、英語に関連する本が多いようです。

他にも多くの本を紹介していますので、「研究者の書棚」をご覧下さい。

  書名  
1 切磋琢磨するアメリカの科学者たち amazon.co.jp
2 理科系のための入門英語プレゼンテーション amazon.co.jp
3 研究留学術 amazon.co.jp
4 医学・生物学研究者のための 絶対話せる英会話 amazon.co.jp
5 ポスター発表はチャンスの宝庫! amazon.co.jp
6 理科系のための実戦英語プレゼンテーション amazon.co.jp
7 理科系のための状況・レベル別英語コミュニケーション amazon.co.jp
8 学会出席・研究留学のための理科系の英会話 amazon.co.jp
9 医学・生物学研究者のためのホンネのアメリカ留学マニュアル amazon.co.jp
10 医薬研究者のためのケース別統計手法の学び方 amazon.co.jp
11 現場の必須テクニック Illustrator CSの仕事術 基本/ビジネスグラフィック編 amazon.co.jp
12 アクセプトされる英語医学論文を書こう! amazon.co.jp
13 研究者のための文献管理PCソリューション amazon.co.jp
14 バイオ研究で絶対役立つプレゼンテーションの基本 amazon.co.jp
15 学会・論文発表のための統計学 amazon.co.jp
16 日本人英語の弱点を克服する医学英語論文の賢い書き方 amazon.co.jp
17 道具としての統計学?医薬研究者の視点からみた amazon.co.jp
18 日本人研究者が間違えやすい英語科学論文の正しい書き方 amazon.co.jp
19 バイオサイエンス研究留学を成功させる とっさに使える英会話 amazon.co.jp
20 アメリカNIHの生命科学戦略 amazon.co.jp

2005.12.29

「相手の心を動かす英文手紙とe-mailの効果的な書き方」

「相手の心を動かす英文手紙とe-mailの効果的な書き方」

著者:Ann M. Körner著 / 瀬野 悍二訳・編、税込価格:¥3,990、出版:羊土社、ISBN:4897064899、発行年月:2005.12【bk1】【amazon.co.jp】【目次

先日紹介した「日本人研究者が間違えやすい英語科学論文の正しい書き方」【bk1】【amazon.co.jp】の第二弾。今度は、英文手紙とe-mailの本です。

私自身、研究者向けの英文手紙の本としては「科学者のための英文手紙の書き方 増補版bk1】【amazon.co.jpがバイブルだと思っているのですが、さすがにちょっと英語が古くさくなっています。「生命科学者のための実践!英文email講座」bk1】【amazon.co.jpも悪くないのですが、例文の数が少ないのが難点でした。例文をたくさんのせた英文手紙の本が出れば売れるなと思っていたのですが、この本は私がほしがっていた本にかなり近いものになっています。研究者が英文で手紙を書かなければいけない様々なシチュエーションを想定して多くの例文が掲載されています。さらにそれらの例文はCD-ROMとしてついてきますので、コピーペーストで英文手紙が完成します。さらに、私には、「好印象を与える手紙の書き方」という章が参考になりました。現時点における研究者向け英文手紙の書き方本のone of bestといえるでしょう。

ひとつ納得したのは、今の時代、E-mailはスパムメールやなんだかわからないメールに埋もれてしまい、なかなか相手にアピールすることは難しい。そこで、これだけE-mailが普及している現在だからこそ、大事なメールは手紙で出すというものです。確かに、アプライレターなどは手紙の方が有効かもしれませんね。


研究者のための英文手紙の書き方に関する書籍は「研究者の書棚:科学者のための英語本」をご覧下さい。

2005.12.20

今年読んだ本

仕事関係でなく今年私が読んだ本の紹介。

「ダ・ヴィンチ・コード 上」

著者:ダン・ブラウン著 / 越前 敏弥訳、税込価格:\1,890、出版:角川書店、ISBN:4047914746、発行年月:2004.5【bk1】【amazon.co.jp

「ダ・ヴィンチ・コード 下」

著者:ダン・ブラウン著 / 越前 敏弥訳、税込価格:\1,890、出版:角川書店、ISBN:4047914754、発行年月:2004.5【bk1】【amazon.co.jp

いまやコメントする必要もない大ベストセラー。買っておいたものの、重くてなかなか読むことができませんでしたが、アメリカへの学会出張の際の飛行機の中で読むことができました。最高傑作かといわれれば、?ですが、プロットもよくできており、非常によくできたエンターテーメントだと思います。


「予想脳」

著者:藤井 直敬著、税込価格:\1,260、出版:岩波書店、ISBN:4000074512、発行年月:2005.10【bk1】【amazon.co.jp

藤井さんの著ということで、発売直後に買いましたが、高次機能はちょっと苦手で、まだ積ん読状態になっています。


「卵でピカソを買った男」

著者:山田 清機著、税込価格:\1,575、出版:実業之日本社、ISBN:4408106305、発行年月:2005.7【bk1】【amazon.co.jp

私の友人が書いた本です。鶏卵の生産・販売を手がけるイセ食品の伊勢彦信会長の半生記と彼のビジネスモデルの秘密を探る本です。


「占星術殺人事件」

著者:島田 荘司〔著〕、税込価格:\750、出版:講談社、ISBN:4061833715、発行年月:1987.7【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

ミステリー史上の名作ということで、家の本棚に長いこと積まれていましたが、ようやく読むことができました。たしかに、トリックはアッという様なものですね。


2005.12.09

「国際学会のための科学英語絶対リスニング」

「国際学会のための科学英語絶対リスニング」

著者:田中 顕生著 / Robert F.Whittier著・英文監修 / 山本 雅監修、税込価格:¥4,830、出版:羊土社、ISBN:4897064872、発行年月:2005.10【bk1】【amazon.co.jp】【目次

英語論文の書き方、英語での発表の仕方に関する本はたくさん出版されています。でも、リスニングに関する本ってなかったのではないでしょうか?ある意味、もっとも書籍にしにくいものであり、多くの方が待ちに待った本なのではないかと思います。本書は、前半で、英語のプレゼンテーションや国際学会進行の上でよく使う表現をまとめてあり、後半では、実際におこなわれたプレゼンテーション5つをスクリプト付きで紹介しています。数としては5つに過ぎませんが、こういったものを覚えるほど繰り返すというのがリスニング、やプレゼンテーション上達への王道なのだと思います。さらに言えば、こういう口演がスクリプトとPowerPointファイル付きでたくさんPodcast配信されたらいいなと思います。とりあえず、お薦めの一冊として紹介しておきます。

英語でのプレゼンテーション関連の書籍は「研究者の書棚:研究者のためのプレゼンテーション本」をご覧下さい。

2005.12.08

「デジタル文献整理術」

「デジタル文献整理術」

著者:讃岐 美智義著、税込価格:¥2,625、出版:克誠堂出版、ISBN:477190295X、発行年月:2005.8【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

EndNoteは論文執筆にEndnoteは欠かせないソフトウェアですが、奥が深く、なかなかすべての機能を把握しきれません。分厚い英語のマニュアルを読むよりこの本をおすすめします。作者は讃岐さんという方で知る人ぞ知るという方で、とてもわかりやすく、かつ、役立つ情報が満載の1冊になっています。私はこの本で、医中誌の取り込みの際にはMedline形式ではなく、Refer/BiblX形式でないとダメとわかって、助かりました。改訂新版となっています。

Endnote関連の書籍は「研究者の書棚:英語論文の書き方本」をご覧下さい。

2005.12.07

「それでも私はpalmを使う」

「それでも私はpalmを使う」

著者:野村 弘明著、税込価格:¥2,079、出版:ピーワーク、ISBN:4939128091、発行年月:2005.11【bk1】【amazon.co.jp

これは、私の現在の心境そのものである。

ソニーがPalmから撤退して半年が経つ。今後日本語版のPalmが投入される可能性はほとんどないだろう。私の現在のPalmマシーンであるクリエTH-55は今でも元気に活躍中である。でも、いつか、このマシーンはをなくしたり、故障したりして使えなくなる日が来るだろう。その時、私はどうすればよいのか?10年あまりPalmを使い続けた私には紙の手帖に戻るということは考えられない。予備のために、TH-55の中古機でも備蓄しておこうかと思っているが、なかなか踏ん切りがつかない。もうひとつの可能性は英語版Palmを日本語化して使うという方法である。元々は英語版Palmを日本語化するというのが当たり前だったわけで、その意味では「クリエ以前」に戻るだけなのだが、英語版Palmを日本語化するとなるといろいろなノウハウが必要である。そんな状況に心強い味方となるのが本書である。TH-55が元気なうちに、英語版Palmをサブ機として使ってみようかと思っている。今なら、Palm TXあたりか。

Palm関連の書籍は「研究者の書棚:コンピュータ関連本」をご覧下さい。

2005.11.06

「日本人研究者が間違えやすい英語科学論文の正しい書き方」

「日本人研究者が間違えやすい英語科学論文の正しい書き方」

著者:Ann M. Körner著 / 瀬野 悍二訳・編、税込価格:¥2,730、出版:羊土社、ISBN:4897064864、発行年月:2005.9【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

1985年以来のべ7000編以上の投稿論文原稿の査読修正にたずさわってきた著者による書『Guide to Publishing a Scientific Paper』の日本語訳です。著者は査読修正は日本からのものも多く、英語を母国語をしない研究者(特に日本人研究者)に共通する問題点を認識しており、それを指摘しています。

最後にある、投稿の際の編集長に当てたカバーレターの文例、査読結果に対する返事の文例は貴重ですが、この点に関しては、いろいろな場面を想定してもっとたくさんの文例をあげてくれた方がよかったと思います。

著者はBioscript(http://www.bioscript.com/)という論文校正会社の代表ですが、現在は新規の顧客からの査読修正の依頼は受け付けていないそうです。残念。


2005.11.05

『研究留学術』第4刷

『研究留学術』の版元の在庫もほとんどなくなりつつあり、第4刷りを刷って頂くことになりました。ビザの項目を含め、古くなっている記述をできる限り最新のものに直す予定です。第4刷が出来上がるまでの数ヶ月は、『研究留学術』はかなり手に入りにくくなるかもしれません。急いで必要という方は見つけたら買っておいた方がいいでしょう。あんまり急がないという方は第4刷を待った方がいいでしょう。

在庫は【bk1】【amazon.co.jp】 あたりをチェックしてみて下さい。

2005.08.18

「ゲノム情報はこう活かせ!」

「ゲノム情報はこう活かせ!」

著者:岡崎 康司編集 / 坊農 秀雅編集、税込価格:¥4,410、出版:羊土社、ISBN:4897064856、発行年月:2005.9【bk1】【amazon.co.jp】【目次

ゲノム情報をさまざまに活用して遺伝子機能解析や疾患研究を行う方法について解説した,今までありそうでなかった1冊!


バイオインフォマティクス関連の書籍は「研究者の書棚:バイオインフォマティクス関連書籍」をご覧下さい。

2005.05.06

「日常診療にすぐに使える臨床統計学」

「日常診療にすぐに使える臨床統計学」

著者:能登 洋著、税込価格:¥3,990、出版:羊土社、ISBN:4897066948、発行年月:2005.5【bk1】【amazon.co.jp】【目次

Evidence-based Medicineを日常診療に役立てるために好適な、臨床統計学の入門書。


統計関連の書籍は「研究者の書棚:統計関連書籍」をご覧下さい。

2005.03.30

「科学英語論文の赤ペン添削講座」

「科学英語論文の赤ペン添削講座」

著者:山口雄輝著・Robert F.Whittier英文監修、税込価格:¥ 3,360(本体:¥ 3,200)、出版:羊土社、ISBN:4897064791、発行年月:2005.03【bk1】【amazon.co.jp】【目次

第1章では「論理的な文章をつくる9つのルール」を、第2章では「論文英語に大切な7つのポイント」について述べています。これだけでいいのかと、ちょっと心配になりますが、この本のメインは第3章の「実践! 赤ペン添削講座」。実際に、JBCなどに通った文章(というか、校正前の原文)をもとに、赤ペンを入れて修正を加えています。ただ校正の様子を見せているだけでなく、そこから、一般則を導き出している、なかなか意欲的な本です。

関連書籍は研究者の書棚:英語論文の書き方本をご覧下さい。

2005.03.15

「写真術プロの裏技 京都を撮る」

昨年の紅葉の時期、強行軍出かけた京都写真旅行。自分なりにはかなり楽しかったし、一部公開させて頂いた写真も好評だったので、また、いつか行ってやろうと思ってこんな本をパラパラ見ています。

「写真術プロの裏ワザ 京都を撮る」

著者:水野克比古著、税込価格:¥ 2,100(本体:¥ 2,000)、出版:講談社、ISBN:4062683946、発行年月:2004.10【bk1】【amazon.co.jp

京都を写す写真作家、水野克比古氏の写真技術を照会する本。絞りだとかそういう些末なテクニックではなくて、被写体となる寺院、花の適切な時期、シチュエーション、構図などに重点を置いた本です。同じ条件でとってもこんな風にはとれないんですよね。少しでも近づけるように頑張ります。

でも、こんな本を読むと毎月行きたくなりますね。じゃあ、京都に住めば?

2005.03.05

「研究者のための文献管理PCソリューション」

「研究者のための文献管理PCソリューション」

著者:讃岐美智義著、税込価格:¥ 3,780(本体:¥ 3,600)、出版:秀潤社、ISBN:4879622842、発行年月:2005.03【bk1】【amazon.co.jp】【目次

讃岐美智義氏は、これまでにも「デジタル文献整理術 最新EndNote活用ガイド」【bk1】【amazon.co.jp】「デジタルプレゼンテーション」bk1】【amazon.co.jpといった研究者、医者の立場に立ったコンピュータ使い方の本を著しています。どの本もわかりやすく明快な著作であり、私も愛読しています。

本書は比較的初心者の方をターゲットとして、PubMed、医中誌の利用から、EndNote,GetARef,RT2(讃岐氏オリジナルのソフト)などの文献管理ソフトの使用法にも言及しています。まだ、自分の文献検索、整理法が確立していない方に是非おすすめしたいと思います。


関連の書籍は「研究者の書棚:英語論文の書き方本」をご覧下さい。

2005.01.27

英語でのプレゼンテーションのための本

さて、ここ数日、英語でのプレゼンテーションの話が続きましたが。締めとして、英語でのプレゼンテーションをこれから控えている方に「英語でのプレゼンテーションのための本」としてまとめておきました。

この中でも、あえておすすめをと言われれば、私は以下の2冊を選びます。

「医学・生物学研究者のための絶対話せる英会話 研究室内の日常会話から国際学会発表まで」

著者: 東原 和成著、出版:羊土社、発行年月:1999.4、本体価格: ¥3,950【bk1】【amazon.co.jp

研究者が遭遇する場面に分けて基本的な会話例を掲載しています。研究者の英会話入門書としておすすめ。特に、英語でのプレゼンテーションをする方には参考になります。


「理科系のための入門英語プレゼンテーション」

著者:広岡慶彦著、税込価格:¥ 2,625(本体:¥ 2,500)、出版:朝倉書店、ISBN:4254101848、発行年月:2003.04【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

研究者向けプレゼン英語本。国際学会で必要な英会話についても言及。「理科系のための実践英語プレゼンテーション」がやや難しいという意見もあり、その入門編として作られました。入門者向けの例文と中級者向けの例文を並べて掲載するというスタイルになっています。英語でのプレゼンテーションに関する本としては、「医学・生物学研究者のための絶対話せる英会話」と並ぶおすすめ本です。


2005.01.13

「切磋琢磨するアメリカの科学者たち」

「切磋琢磨するアメリカの科学者たち」

著者:菅裕明、税込価格:¥ 1,890(本体:¥ 1,800)、出版:共立出版、ISBN:4320056205、発行年月:2004.10【bk1】【amazon.co.jp】【目次

はじめに言ってしまおう。研究留学を志す人、研究留学中の方すべてが読むべき本です。地味で目立たない本で、私も見逃していたのですが、すばらしい本です。

この本は簡単に言ってしまえば、「アメリカのサイエンスの仕組み」をその構成成分である大学教育の仕組み、PhDコースの仕組み、アメリカの教員の仕組み、科学研究費の仕組みのすべてにわたり非常に丁寧に解説した本です。どの構成要素が欠けても「アメリカのサイエンスの仕組み」を理解できません。こういった本はややもすると、抽象的、概念的、または全体の統計的なデータを示すだけになりがちですが、著者は、アメリカで、PhDコース、ポスドク、テニュアトラックの教員を実際に経験し、各種科学研究費を取得し、審査する立場も経験されている方なので、記述は詳細で具体的です。テニュアトラックで実際にテニュアをとれなかった研究者はどうするか?なぜ、大学は新しいPIを雇い入れるために、スタートアップ費用として一人の若い研究者に50万ドルもの費用を払うのか?こういったことにきちんと言及している本はありませんでした。

NIHの科学研究費審査の仕組みはアメリカのサイエンスを支える仕組みとして非常に重要です。NIHの科学研究費審査の仕組みについては、「アメリカの研究費とNIH 」【bk1】【amazon.co.jp】、「アメリカNIHの生命科学戦略」【bk1】【amazon.co.jp】でも解説されていますが、本書の著者はNIHの研究費を申請取得する立場、審査する立場の両方を経験されており両方の立場から、NIHの科学研究費審査の講評(採用、不採用だけを知らせるのではなく、建設的な批評)こそが、NIHの科学研究費審査の公正性を保証していると同時に、若いnew PIの教育的効果を持っていると指摘しています。また、著者ご本人がNIHから受け取った審査の講評の実物もNIHの許可を得て掲載されています。

アメリカの科学者達が切磋琢磨するドライビングフォースが何なのかを実に明快に解説した本といえます。逆に言えば、このドライビングフォースがない日本にうわべだけアメリカのシステムを取り入れても効果がないということを指摘しているわけです。

値段もリーズナブルですし、是非みなさん読んでみてください。


関連書籍は「研究者の書棚:米国のサイエンスしくみを理解する本」をご覧下さい。

2005.01.03

「DNAチップ実験まるわかり」

「DNAチップ実験まるわかり」

著者:佐々木博己編・青柳一彦編、税込価格:¥ 3,465(本体:¥ 3,300)、出版:羊土社、ISBN:4897068886、発行年月:2004.12【bk1】【amazon.co.jp】【目次

最近ではいろいろな会社からゲノムワイドのDNAチップが発売され、値段もなんとか手が届くところまで安くなってきています。とはいっても、やはりかなり値段がするもので、いろいろなメーカーのものを試すというのはできません。どこのメーカーのものが評判がいいのか実際に使っている人の意見を聞きたいという方も多いと思います。本書は、各メーカーから発売されているゲノムワイドのDNAチップを実際の使用者の視点から比較しているという貴重な本です。カスタムメイドDNAチップをオーダーする際のノウハウなども満載です。ちょっとマイクロアレイを使ってみたいという方には必見の書です。


関連書籍は「研究者の書棚:バイオ実験関連書籍

2004.12.16

廣岡慶彦氏著の英語の本の紹介

廣岡慶彦氏が書かれた研究者向けの英語の本の紹介です。生物医学系ではなく、表紙も地味目なのでうちの大学の生協ではちょっと目立たないのですが、研究者向けの英語本としては結構売れているようです。今回、5冊とも手に入れてみました。

廣岡慶彦氏はアメリカで15年間UCSDで核融合炉工学の分野の研究者として研究をおこなうともに学生の指導をおこなっていました。彼によれば、最初の5年間は英語で毎日苦しみ、次の5年間はやっと原稿なしにプレゼンができるようになり、最後の5年間は並のアメリカ人よりプレゼンがうまいと言われるようになったそうです。何とかなるさと準備もせずにプレゼンに出かけてなんとなるようになったのは、渡米後10年経ってだそうです。

廣岡氏の著作は、ジャパンタイムズから2冊、朝倉書店から3冊出ています。ジャパンタイムズのものは、英語論文の書き方、研究者向け英語でのコミュニケーションの2冊、朝倉書店の方が出版が新しく、中上級者向け英語でのプレゼン、入門者向け英語でのプレゼン、研究者向け英語でのコミュニケーションの3冊になっています。

廣岡氏の本に共通しているのは、「この表現は日本の英語の教科書などにはほとんど出てこないが、アメリカの日常では決まり文句、こういったシチュエーションでの常套句」といった例文を中心に載せていることでしょう。確かに、「日本では聞いたこともないけど、アメリカではみんなが使っている」と、アメリカにいたときに感じた私の感覚によく一致していました。やや高飛車な印象を受ける解説文だったりしますが、これくらいズバリ言ってくれた方がありがたいです。難点は、例文の数が少ないこと。著者の意図としては、「こんなに少しで大丈夫だろうかと心配する前にまず本書で取り上げた表現をマスターしてください」とのことです。折に触れて、辞書のようにして使うというよりは、通読してマスターするというタイプの本です。

おすすめは「理科系のための状況・レベル別英語コミュニケーション」「理科系のための入門英語プレゼンテーション」でしょうか。

「学会出席・研究留学のための理科系の英会話」

著者:広岡慶彦著、税込価格:¥ 2,100(本体:¥ 2,000)、出版:ジャパンタイムズ、ISBN:4789009890、発行年月:1999.12【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

国際会議に出席したときや研究留学したときのシチュエーションを想定して、日本ではあまり聞かないが、アメリカでは常套句といった生きた英会話例文を中心に解説。巻末の推薦状の書き方、学会のレセプションの司会やスピーチを頼まれたとき、も参考になります。


「理科系のためのはじめての英語論文の書き方」

著者:広岡慶彦著、税込価格:¥ 2,310(本体:¥ 2,200)、出版:ジャパンタイムズ、ISBN:4789010384、発行年月:2001.03【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

英語論文執筆の基礎知識、論文執筆上の修辞法、論文各セクションの描き方のコツ、付録となっています。


「理科系のための実戦英語プレゼンテーション」

著者:広岡慶彦著、税込価格:¥ 2,835(本体:¥ 2,700)、出版:朝倉書店、ISBN:4254101821、発行年月:2002.04【bk1】【amazon.co.jp】【目次

研究者向けプレゼン英語本。国際学会で必要な英会話についても言及。あとから「理科系のための入門英語プレゼンテーション」が執筆されたので、中上級者向けということになっています。


「理科系のための入門英語プレゼンテーション」

著者:広岡慶彦著、税込価格:¥ 2,625(本体:¥ 2,500)、出版:朝倉書店、ISBN:4254101848、発行年月:2003.04【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

研究者向けプレゼン英語本。国際学会で必要な英会話についても言及。「理科系のための実践英語プレゼンテーション」がやや難しいという意見もあり、その入門編として作られました。入門者向けの例文と中級者向けの例文を並べて掲載するというスタイルになっています。


「理科系のための状況・レベル別英語コミュニケーション」

著者:広岡慶彦著、税込価格:¥ 2,835(本体:¥ 2,700)、出版:朝倉書店、ISBN:4254101899、発行年月:2004.02【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

シリーズ最新刊。研究者が国際会議や海外で遭遇するシチュエーションを想定して、日本ではあまり聞かないが、アメリカでは常套句といった生きた英会話例文を中心に解説。「理科系のための入門英語プレゼンテーション」で好評だった入門者向けの例文と中上級者向けの例文を並べて掲載というスタイルになっています。

関連書籍は「研究者の書棚:科学者のための英語本」と「研究者の書棚:研究者のためのプレゼンテーション」をご覧下さい。

2004.11.04

「一歩進んだPalm」

「一歩進んだPalm」

著者:粟飯原輝人編、税込価格:¥ 3,675(本体:¥ 3,500)、出版:羊土社、ISBN:4897066883、発行年月:2004.11【bk1】【amazon.co.jp】【目次

右脳^^部屋」を主宰されている粟飯原氏による第2弾のPalm本です。前作の「医療に使えるPalm」【bk1】【amazon.co.jp】は医療関連のソフトウェア(Palmwareと呼ぶ)の紹介に終始していたような印象がありますが、第2弾の本著は医療の現場でPalmが活躍するソリューションを具体的にわかりやすく紹介しています。「一歩進んだ」との枕詞がついていますが、「Palmを持っていないけれども、どの機種を買えばよいのか」、「WindowsやMacとのデータの同期はどうするのか」といった入門者向けの情報から丁寧に解説されています。圧巻は第5章の「データベースや辞書の作り方」でしょう。医療者がPalmを使う最大のメリットは、とてもすべては覚えきれない薬やその用量をはじめとした各種リファレンスをコンパクトなPalmに収められることだと思っています。アメリカではたくさんの医療者向けデータベースが手に入りますが、日本のものは十分にそろっているとは言い難い状況です(それでもPalm版「今日の治療薬」のおかげでだいぶ状況は改善しています)。各病院に採用された医薬品のデータベースやお手製のデータベースをPalmに入れるにはどうすればいいのか、代表的なデータベースソフトを紹介しながら、オリジナルのデータベースの作り方を解説しています。また、ファイルメーカーmobileを使った症例管理も魅力的なソリューションです。第6章の「Palmの達人はこう使っている!」では、Palmの達人たちがどんなPalmwareを自分のPalm機にインストールしているか、どんな使い方をしているかという興味のある記事です。私自身はUS Roboticsという会社がPalmを作っている頃からのPalmフリークではあります。その頃のPalm機はOSが英語しか扱えなかったので、いろいろなパッチをあてて日本語化して使っていたのですが、1ヶ月に1回くらいフリーズし、そのたびに全部やり直さなければならなかったというのがトラウマになって、現在では、極力デフォルトのまま使うようになっています。しかし、本著は、そんな私を「また、Palmをいじってみよう」と思わせる、そんな好著であります。

2004.10.30

実験動物取り扱いについての書籍

マウスの扱い方や、解剖、採血の仕方、私の分野でいえば血圧の取り方などは、あまりに当たり前すぎて、こういったことを扱っている書籍も少なく、研究室の上司から秘伝の方法として代々研究室内で引き継がれているというのが現状ではないでしょうか。しかし、他の研究室の人と話をしてみると、ずいぶん違う方法でやっていたりして驚くこともしばしばです。

実験動物の基本的な取り扱い方をまとめた本は少なく、たいてい数年で絶版になって手に入らなくなるので、見つけたら買っておいて損はないと思います。

「実験動物の技術と応用 入門編」

著者:日本実験動物協会編、税込価格:¥ 5,775(本体:¥ 5,500)、出版:アドスリー、ISBN:4900659444、発行年月:2004.05【bk1】【amazon.co.jp】【目次

齧歯類のみならず、中型動物の取り扱いにまで言及している書物は少ないです。


「実験動物の技術と応用 実践編」

著者:日本実験動物協会編、税込価格:¥ 10,290(本体:¥ 9,800)、出版:アドスリー、ISBN:4900659452、発行年月:2004.06【bk1】【amazon.co.jp】【目次

齧歯類のみならず、中型動物の取り扱いにまで言及している書物は少ないです。


「基礎と臨床のための動物の心電図・心エコー・血圧・病理学検査」

著者:菅野茂編・局博一編・中田義礼編、税込価格:¥ 5,250(本体:¥ 5,000)、出版:アドスリー、ISBN:490065938X、発行年月:2003.04【bk1】【amazon.co.jp】【目次

主要な動物種(マウス、ラット、ウサギ、イヌ、サル)を中心にして、それらの循環機能検査法に関する基礎的な考え方と技術を具体的に記述。


「マウスラボマニュアル 第2版」

著者:東京都臨床医学総合研究所実験動物研究部門編、税込価格:¥ 8,400(本体:¥ 8,000)、出版:シュプリンガー・フェアラーク東京、ISBN:4431710124、発行年月:2003.05【bk1】【amazon.co.jp】【目次

基礎技術よりも、遺伝子操作マウスなど新しめの技術についての記述が多いようです。


「マウス解剖イラストレイテッド」

著者:野村慎太郎著、税込価格:¥ 3,675(本体:¥ 3,500)、出版:秀潤社、ISBN:4879622494、発行年月:2002.05【bk1】【amazon.co.jp】【目次

はさみの入れ方から臓器の取り出し方まで、動画付きで初心者向きの本です。


「マウスの断面解剖アトラス 改訂版」

著者:岩城隆昌共著・山下広共著・早川敏之共著、税込価格:¥ 15,750(本体:¥ 15,000)、出版:アドスリー、ISBN:4900659584、発行年月:2002.12【bk1】【amazon.co.jp】【目次

ひたすらマウスの解剖図をのせるというアトラスです。自分が専門でない臓器を取り出す際にはこの手の本は非常に役立ちます。


「実験動物の断面解剖アトラス ラット編」

著者:早川敏之〔ほか〕著、税込価格:¥ 21,000(本体:¥ 20,000)、出版:チクサン出版社、ISBN:4885006295、発行年月:1997.12【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

2004.10.26

「市場原理が医療を滅ぼす」

李啓充先生の新しい本が出ました。

「市場原理が医療を亡ぼす」

著者:李啓充著、税込価格:¥ 2,100(本体:¥ 2,000)、出版:医学書院、ISBN:4260127284、発行年月:2004.10【bk1】【amazon.co.jp】【目次

現在の日本の医療は、医療機関経営への株式会社の参入容認、混合診療解禁の方向に流れています。しかし、日本に先んじて市場原理を取り入れた米国の医療はどうなったか。国民の7人に1人が満足に医療を受けられない無保険者となり、利益を追求するあまり「犯罪」をおかした株式会社病院など、アメリカの失敗を紹介することで、日本の経済界主導の医療改革に警鐘を鳴らしています。李啓充先生の著作は、ボストングローブ誌などローカルな新聞に取り上げられた事例を多く紹介しているため、具体的で説得力があります。本著の中で紹介されている「Cost, access, quality. Pick any two」という言葉は医療保険政策の本質をついた言葉です。コストを抑制してアクセスも保証して質もよくする、三つとも同時に達成することなど夢物語だと言っているわけですが、日本の医療はどの2つを選んでいるのでしょうか?

李啓充先生の他の著作

『市場原理に揺れるアメリカの医療』【bk1】【amazon.co.jp
『アメリカ医療の光と影』【bk1】【amazon.co.jp

もお薦めですが、個人的には、週刊文春に毎週連載されている『大リーグファン養成コラム』が一番おすすめだったりして、、、。

2004.10.03

「理系のためのMacで始める研究生活」

「理系のためのMacで始める研究生活」

著者:多田真作著、税込価格:¥ 924(本体:¥ 880)、出版:講談社、ISBN:4062574543、発行年月:2004.09【bk1】【amazon.co.jp】【目次

理系の研究者の中でも、シェアの下がっているMacの解説本をこの時期に、しかもブルーバックスから出すということで、かなり意欲的な本です。macオタクを自称する私は迷わず買いました。著者の方は研究者を中心としたマックのユーザーグループLaboFinderの代表を長い間務めていた方です。

著者の方は化学が専門とのことで、私たち医学生物学が専門の研究者とは使うソフトも思いの他、異なっていますし、シェアウェア、フリーウェアを中心に紹介するというものなので、比較的多くのソフトを使っているつもりの私でもほとんど聞いたことのないソフトが多く登場してきます。

「理系のためのMacで始める研究生活」というタイトルにつられて、医学生物学系の大学院に入り立ての方が購入したとしても、実践的にはあまり役立たないでしょう。化学分野の研究者でこれからMacを使おうという方には役立つのかもしれませんが、ソフトの使い方を説明するより、パソコンを使った知的生産技術の原理、仕組みの解説に力点を置いている本ですから、タイトルから受けるような初学者向きの本ではけっしてありません。原理、仕組みからさらに理解を深めたいという中級以上のMac使いの方のための本だと思います。

私の個人的な感想としては、他の分野の方がどのような使い方をしているのかを知り、また、MacのOSでのグラフィックの扱いの本質的な部分を学べたという点でてとも興味深かったとともに、ほとんどタイトルからは脱線した、将来的な学術論文のあり方について述べた第4章も興味深いものでした。

2004.09.18

本の紹介

たまには本の紹介でも

「抗ペプチド抗体実験プロトコール 新版」

著者:大海忍著・辻村邦夫著・稲垣昌樹著、税込価格:¥ 4,410(本体:¥ 4,200)、出版:秀潤社、ISBN:487962277X、発行年月:2004.09【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

私は、バイオ実験本の中でも3本の指に入る名著だと思っています。新版での追加はそれほど多くないようです。


「できマス!プロテオミクス」

著者:小田吉哉編集・夏目徹編集、税込価格:¥ 3,780(本体:¥ 3,600)、出版:中山書店、ISBN:4521016618、発行年月:2004.09【bk1】【amazon.co.jp】【目次】


「注目のエピジェネティクスがわかる」

著者:押村光雄編集、税込価格:¥ 3,990(本体:¥ 3,800)、出版:羊土社、ISBN:4897069645、発行年月:2004.09【bk1】【amazon.co.jp】【目次】


「基礎から先端までのクロマチン・染色体実験プロトコール
〜 注目のゲノム動態、エピジェネティクスの解析法と染色体改変、イメージング技術のすべて」

著者:押村 光雄、平岡 泰編、税込価格: ¥5,460 (本体: ¥5,200)、出版:羊土社、ISBN:4-89706-416-3、発行年月:2004.8【bk1】【amazon.co.jp】【目次】


「培養細胞実験ハンドブック
〜 細胞培養の基本と解析法のすべて」

著者:黒木 登志夫、許 南浩編集、税込価格: ¥7,350 (本体: ¥7,000)、出版:羊土社、ISBN:4-89706-884-3、発行年月:2004.8【bk1】【amazon.co.jp】【目次】


「ユビキチンがわかる
〜 タンパク質分解と多彩な生命機能を制御する修飾因子」

著者:田中 啓二編集、税込価格: ¥3,990 (本体: ¥3,800)、出版:羊土社、ISBN:4-89706-963-7、発行年月:2004.8【bk1】【amazon.co.jp】【目次】


「統合ゲノミクスのためのマイクロアレイデータアナリシス」

著者:I.S.コハネ、A.T.コー、A.J.ビュート著、星田 有人訳、税込価格: ¥4,725 (本体: ¥4,500)、出版:シュプリンガー・フェアラーク東京、ISBN:4-431-71068-X、発行年月:2004.7【bk1】【amazon.co.jp】【目次】


「即活用のためのバイオインフォマティクス入門」

著者:美宅 成樹、広川 貴次著、税込価格: ¥3,780 (本体: ¥3,600)、出版:中山書店、ISBN:4-521-01731-2、発行年月:2004.7【bk1】【amazon.co.jp】【目次】


「ゲノミクス・プロテオミクス・バイオインフォマティクス入門」

著者:A.Malcolm Campbell、Laurie J.Heyer共著、松尾 洋監訳、佐藤翻訳事務所訳、税込価格: ¥6,090 (本体: ¥5,800)、出版:オーム社、ISBN:4-274-19732-8、発行年月:2004.6【bk1】【amazon.co.jp】【目次】


2004.09.05

抗菌薬の考え方、使い方

たまには臨床関係の本の紹介でも。

メールマガジン「抗菌薬の考え方、使い方」はアメリカで感染症のフェローをしてらした岩田 健太郎さんが発行しているメールマガジンで、アメリカでの抗菌薬に対する考え方、使い方を解説したものです。私も毎週土曜日に届くのを楽しみに読んでいました。このたび、このメールマガジンが単行本化されました。単行本化に際して、小児への抗菌薬の使い方が加筆されています。本書では、日本で使用できない薬も入っているので、必ずしも、日本でのそのまま使えるわけではないのですが、抗菌薬の考え方、使い方の哲学を教えてくれる良書です。アメリカの医者が必ずしも彼の哲学のように抗菌薬を使っていないというのも興味深かったです。

「抗菌薬の考え方,使い方」

著者:岩田 健太郎、宮入 烈著、税込価格: ¥3,990 (本体: ¥3,800)、出版:中外医学社、ISBN:4-498-01758-7、発行年月:2004.8【bk1】【amazon.co.jp


岩田さんは以下の2冊も書かれています。いずれもおすすめです。

「悪魔の味方」

著者:岩田健太郎著、税込価格:¥ 1,890(本体:¥ 1,800)、出版:克誠堂出版、ISBN:4771902658、発行年月:2003.06【bk1】【amazon.co.jp】【目次

著者の岩田健太郎氏は日本の医学部を出た後、最近までニューヨークの病院で感染症専門の内科医としてアメリカの医療の現場にいらっしゃった方です。彼は「アメリカ医療の現場から」というメールマガジンで、アメリカの医療に関するエッセイを発信しており、今回、メールマガジンの内容をグレードアップさせて1冊の本にまとめました。米国医療の実際、知られざる実態から9.11、バイオテロまで、医療関係者はもちろん、そうでない方にも、おすすめの1冊です。


「バイオテロと医師たち」

著者:最上丈二著、税込価格:¥ 693(本体:¥ 660)、出版:集英社、ISBN:4087201619、発行年月:2002.10【bk1】【amazon.co.jp

 


感染症関連では次の2冊も必携です。

「レジデントのための感染症診療マニュアル」

著者:青木 真著、税込価格: ¥6,300 (本体: ¥6,000)、出版:医学書院、ISBN:4-260-10992-8、発行年月:2000.8【bk1】【amazon.co.jp】【目次

日本語で書かれた関する最もプラクティカルで“筋の通った”感染症の臨床マニュアル。著者の方はやはり、アメリカで感染症のフェローをされていた方です。アメリカでの抗菌薬の考え方、使い方をベースにして、日本で使用可能な抗菌薬に合わせてアレンジされています。私はこの本を感染症のバイブルとして愛用しています。


「サンフォード感染症治療ガイド 日本語版 2004」

著者:David N.Gilbert〔ほか〕編集、出雲 正剛、戸塚 恭一、橋本 正良日本語版監修、金沢 健司〔ほか〕日本語版訳、税込価格: ¥3,400 (本体: ¥3,238) 、出版:ライフサイエンス出版、ISBN:4-89775-189-6、発行年月:2004.5【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

これも必携の1冊ですね。日本語版もあります。


2004.06.29

「あくせくするな、ゆっくり生きよう!」

若菜さんのページで勧められていた「あくせくするな、ゆっくり生きよう!」を買って読んでみました。

読み終えて、机に置いておいたこの本を見つけた妻曰く、

「こんな本読んでいる暇があったら、ゆっくり休んだら」

合掌。

2003年1月23日のWhat's new!と同じ流れだな。)

 

「あくせくするな、ゆっくり生きよう!」

著者:加リチャード・カールソン〔著〕ジョセフ・ベイリー〔著〕大沢 章子訳、税込価格: ¥560 (本体: ¥533)、 出版:角川書店、ISBN:4-04-288701-5、発行年月:2001.9 【bk1】 【amazon.co.jp

2004.06.28

気になる本の紹介

気になる本の紹介を紹介します。

「超基本フレーズでここまで話せるバイオ研究ラボ英会話」

著者:加藤(玉水)しおり著・Mike Cohen英文監修、税込価格:¥ 2,940(本体:¥ 2,800)、出版:羊土社、ISBN:4897063760、発行年月:2004.06【bk1】【amazon.co.jp】【目次

紹介されているフレーズは、えっ、こんな易しい英語、というものが並んでいます。でも、こういった英語がきちんと使えれば、ラボでサバイブできるのです。本書の前書きにあるように「難しい言い回しは結局通じないことが多いので、なるべく簡単な言葉で話そうになる。ニュアンスの違いなどに留意すれば、このような優しい単語で何とかやっていけるのである」まさしく、私が渡米数ヶ月で感じていたことそのものです。


「東京大学バイオインフォマティクス集中講義」

著者:高木 利久監修、東京大学理学部生物情報科学学部教育特別プログラム編集、税込価格: ¥2,940 (本体: ¥2,800)、出版:羊土社、ISBN:4-89706-881-9、発行年月:2004.6【bk1】【amazon.co.jp】【目次

去年受けたいなと思っていた集中講義(定員超オーバーの人気講座だったようです)をまとめた講義録です。


「遺伝子が明かす脳と心のからくり
〜東京大学超人気講義録」

著者:石浦 章一、税込価格: ¥1,680 (本体: ¥1,600)、出版:羊土社、ISBN:4-89706-882-7、発行年月:2004.7【bk1】【amazon.co.jp】【目次

2004.06.24

「「超」英語法」

「「超」英語法」

著者:野口 悠紀雄、税込価格: ¥1,575 、出版:講談社、ISBN:4-06212-266-9、発行年月:2004.3【bk1】【amazon.co.jp】【目次

今回、作者は20年ぶりの留学(スタンフォードでの客員教授として)を前にして、彼の英語勉強法を一冊の本にまとめました。この本で書かれている「超」英語法を一言で言えば、実用英語は英語を「話す」ことではなく、「聞く」ことである、ということです。そう考えれば、英語学校に行って「話す」練習をすることはあまり意味がなく、現在インターネット上にたくさんあるリソース(たとえば、audible.com)などを使って、ひたすら「聞く」練習に徹することが実用英語を身につけるのに最も重要であるというのが彼の主張です。彼独特の極論が展開されていますが、「うん、うん」とうなずく部分も多いです。留学を前にして英語の勉強をしたいという方は読んでみても損はないと思います。

2004.05.11

「アメリカNIHの生命科学戦略」

「アメリカNIHの生命科学戦略
〜全世界の研究の方向を左右する頭脳集団の素顔〜」

著者:掛札 堅、税込価格: ¥987 (本体: ¥940)、出版:講談社、ISBN:4-06-257441-1、発行年月:2004.4【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

著者の掛札堅氏は1960年にCiity of Hope医学センターに留学し、1967年にNIHの主任研究員となられ、その後、長年にわたってNIH で研究を続けられています。その間、日米ガン協力プログラムのアメリカ側事務局長も務められています。本書は、NIHから生まれたノーベル賞級の研究と、その舞台裏を紹介するとともに、NIHグラント制度をはじめとしたNIHの成り立ち、構成などにも言及されています。NIHグラントに焦点をおいた名著として、白楽ロックビル先生の「アメリカの研究費とNIH」bk1】【amazon.co.jpは何回か、紹介してきていますが、本書は、むしろNIHの歴史的な成り立ちや舞台裏に重点が置かれています。設立当時には思いもしないような方向でNIHが発展し、世界最大の医学生物学研究機関になった経緯がよくわかります。特に、著者はNIHと日本の研究交流に関するNIH側の責任者でもあることから、日本学術振興会の海外学振のNIH専用枠、日米癌化学療法のフェロー制度の設立の経緯が明らかになっていて興味深く読めます。なお、現在NIHに研究留学している研究者は350人とのことです。

2004.05.10

「骨単」

「骨単 〜ギリシャ語・ラテン語(語源から覚える解剖学英単語集 骨編)〜」

著者:原島 広至、本文・イラスト、河合 良訓監修、税込価格: ¥2,730 (本体: ¥2,600)、出版:エヌ・ティー・エス、ISBN:4-86043-050-6、発行年月:2004.3【bk1】【amazon.co.jp】【目次

医学部の学生時代、骨学といえば暗記中心の解剖学の中でも、もっとも味気ない学問で、骨の名前を暗記するのに四苦八苦したのを覚えています。

「骨単」なるインパクトのあるタイトルの本を本屋で見かけたときは、医学部学生向けの暗記のための語呂合わせか何かのたぐいの本だろうと思っていました。でも、結構あちこちで評判になっていて、実際に購入みたら、これがおもしろいこと。

「骨単」の著者の原島氏は解剖学者でなく、なんとデザイナーの方で、たまたま古本屋で手にした解剖学書に興味を持ち、高校時代に独学で学んだギリシャ語と結びつければ、一つの本になると考えたのがこの本の企画のきっかけになったようです。したがって、この本は解剖学用語としての英語、ギリシャ語、ラテン語の枠を超えた本になっています。

たとえば橈骨の記述はこんな具合になっています。

raius:橈骨はラテン語radiusより。原義は「一転から発する光線、放射線」で転じて「車輪のスポーク」つまり車輪から放射状に出る棒の意。橈骨は「車輪のスポーク」に形が似ていることから。数学の「半径」raiusやradianも同じ語源。「光線」を意味する英語rayはラテン語から古フランス語を経由して英語に入る途中、radiusの後半の子音が落ちてしまった。radioactive「放射性の」、radio「ラジオ」、radiator「(熱を放散させる)ラジエター」等は皆radiusに由来する。日本名の橈骨の橈は「かい、オール」のこと。橈の本来の音は「どう」だが、解剖学では濁らずに「とう」と読む。「どう」という同一発音の「胴、同、動、導、洞、瞳」との重複を避けるため。

こんな調子で、英語の解剖用語、日本語の解剖用語を語源から解説しています。著者のギリシャ語、ラテン語に対する造詣の深さ、ただ脱帽するのみです。恥ずかしながら、私はこの本で、内耳を構成する骨(きぬた骨、あぶみ骨、つち骨)の由来を知りました。

このように、この本は骨学に関する百科事典のようなもので、今風にいうなら、「骨学トリビアの泉」ということになるでしょうか。今後、「肉単」、「脳単」、「臓単」が続編として刊行予定だそうです。

へぇ〜、へぇ〜、へぇ〜、へぇ〜、へぇ〜、、、、。20へぇ〜入れておきます。

2004.04.24

統計の本

THさんから統計の本を推薦して頂きました。以下推薦のコメントです。

統計の本、私もいろいろと当たってみましたが(このサイトのお薦めも参考にさせて頂きました)、今のところ以下の本が一番良かったのでご報告します。最も、当方は、統計に関して全くの素人でして、本書も入門書として適切かと思われます。

「Intuitive Biostatistics」

著者:Harvey Motulsky、税込価格: ¥4,418、出版:Oxford University Press、ISBN:0195086074、発行年月:1995.9 【amazon.co.jp】 【amazon.com


調べたらこの本には日本語訳が出ていて、「数学いらずの医科統計学」という日本語タイトルが付けられています。と思ったら、なぜかうちの本棚にも並んでいました。作者のHarvey MotulskyはPrismという統計ソフトの作者です。Prismは日本での知名度はいまいちですが、Win版もMac OS X版もあり、アメリカでは結構使われているソフトです。

「数学いらずの医科統計学 〜コンピュータ・エイジのための統計学指南」

著者:Harvey Motulsky、津崎 晃一監訳、税込価格: ¥4,935 (本体: ¥4,700)、出版:メディカル・サイエンス・インターナショナル、ISBN:4-89592-175-1、発行年月:1997.12 【bk1】 【amazon.co.jp


2004.04.10

気になる本の紹介

その他の気になる本を紹介します。

「細胞骨格・運動がわかる
〜その制御機構とシグナル伝達ネットワーク」

著者:三木 裕明編集、税込価格: ¥4,095 (本体: ¥3,900)、出版:羊土社、ISBN:4-89706-962-9、発行年月:2004.4 【bk1】【amazon.co.jp】【目次


「絵とき再生医学入門
〜幹細胞の基礎知識から再生医療の実際までイッキにわかる!」

著者:朝比奈 欣治、立野 知世、吉里 勝利著、税込価格: ¥3,465 (本体: ¥3,300)、出版:羊土社、ISBN:4-89706-880-0、発行年月:2004.4【bk1】【amazon.co.jp】【目次


「タンパク質実験ノート 上 改訂第3版
〜抽出・分離と組換えタンパク質の発現」

著者:岡田 雅人、宮崎 香編、税込価格: ¥3,990 (本体: ¥3,800)、出版:羊土社、ISBN:4-89706-918-1、発行年月:2004.4【bk1】【amazon.co.jp】【目次


「タンパク質実験ノート 下 改訂第3版
〜分離同定から機能解析へ」

著者:岡田 雅人編、宮崎 香編、税込価格: ¥3,885 (本体: ¥3,700)、出版:羊土社、ISBN:4-89706-919-X、発行年月:2004.4【bk1】【amazon.co.jp】【目次


「タンパク質研究のための抗体実験マニュアル
〜免疫沈降や発現クローニング,フローサイトメトリーなど抗体を使った実験のコツと最新プロトコール」

著者:高津 聖志〔ほか〕編、税込価格: ¥5,355 (本体: ¥5,100)、出版:羊土社、ISBN:4-89706-414-7、発行年月:2004.3【bk1】【amazon.co.jp】【目次


「決定版!プロテオーム解析マニュアル
〜発現解析・機能解析の最新プロトコールからデータ整理,トラブル対処法まで」

著者:礒辺 俊明、高橋 信弘編税込価格: ¥6,510 (本体: ¥6,200)、出版:羊土社、ISBN:4-89706-415-5、発行年月:2004.3【bk1】【amazon.co.jp】【目次


「医師のための英文履歴書の書き方
〜 ダイナミックなキャリア・プレゼンテーションのために」

著者:シャロン・L.イェニー著、米国医師会編、斎藤 中哉訳、税込価格: ¥2,940 (本体: ¥2,800)、出版:メジカルビュー社、ISBN:4-7583-0406-8、発行年月:2004.3【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

「発生における細胞増殖制御 (Springer reviews)」

著者:竹内 隆、岸本 健雄編、税込価格: ¥5,040 (本体: ¥4,800)、出版:シュプリンガー・フェアラーク東京、ISBN:4-431-71031-0、発行年月:2004.2【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

「時計遺伝子の分子生物学 (Springer reviews)」

著者:岡村 均、深田 吉孝編、税込価格: ¥4,830 (本体: ¥4,600)、出版:シュプリンガー・フェアラーク東京、ISBN:4-431-71023-X、発行年月:2004.4【bk1】【amazon.co.jp】【目次】

「留学はいかが?
〜Let's create your one & only!」

著者:小谷 順一編、税込価格: ¥3,780 (本体: ¥3,600)、出版:メジカルセンス、ISBN:4-944130-45-7、発行年月:2004.1【bk1】【amazon.co.jp】【目次】


2004.04.09

「バイオ研究で絶対役立つプレゼンテーションの基本」

今回のリニューアルに際して、本の紹介のページもだいぶパワーアップしました。名前も『研究者の書棚』として、研究者の方に役立つ本を集めてあります。

今日は、羊土社から出た本を紹介します。

「バイオ研究で絶対役立つプレゼンテーションの基本」

著者: 大隅 典子、税込価格: ¥3,360 (本体: ¥3,200)、出版:羊土社、ISBN:4-89706-879-7、発行年月:2004.4【bk1】【amazon.co.jp】【目次

「あとがき」にもかかれているように、この本はPowerpointを一つの道具として使っているものの、PowerPointの使い方マニュアルではなく、あくまでも生命科学分野におけるプレゼンテーションの基本をこの道に入ったばかりの大学院生などに紹介するための本です。したがって、PowerPointの使い方の紹介は第2章だけで、あとは、学会、ラボ内でのプログレスリポート、セミナーなど場面ごとのプレゼンテーションのノウハウや、リハーサルの方法などに多くのページが割かれています。まだ、PowerPointを使った発表になれていない大学院生レベル向けの本かなと思います。

2004.04.04

「アット・ザ・ヘルム」

あの「アット・ザ・ヘルム」の日本語訳が出ました。すでに留学している方はもちろん、これから留学する方にもおすすめしたいと思います。

「アット・ザ・ヘルム 〜自分のラボをもつ日のために」おすすめ

著者:キャシー・バーカー著、浜口 道成監訳、税込価格: ¥5,040 (本体: ¥4,800)、出版:メディカル・サイエンス・インターナショナル、ISBN:4-89592-357-6、発行年月:2004.2【bk1】【amazon.co.jp】【目次

アメリカで新しく自分のラボを持つようになった新米PI(Principal Investigator)のための本です。
・ スタッフやポスドクをどのように採用するか(具体的な面接の方法にまで言及)
・ PIとして論文を書く際の注意点(First authorが書くのか、それとも、PIが書くのか、Authorshipはどうするか、など)
・ ミーティングやセミナーの運営の仕方
・ ラボ内でのトラブルの解決法(セクシャルハラスメントの問題、ラボ内の恋愛の問題、ラボスタッフの解雇の仕方)
など非常に具体的なアドバイスが多くのっています。また、この本はKathy Barkerという女性のPIが書いていますが、実際には、彼女の友人である多くのPIをインタビューして彼ら/彼女らの意見を掲載しています。この本はアメリカで独立し自分の研究室を持とうという人には必携の本といえましょう。また、実は、アメリカに研究留学をしようとする方にも必携の本といえます。アメリカ人がどのような形でポスドクを採用するのか、アメリカの研究室におけるPIとポスドクの関係はどのようになっているのか、アメリカのPIがどのように考えているかを理解することは、自分の行きたいラボに採用され、PIと良好な関係を保って留学生活を送る上できわめて重要なことと思います。

2004.02.17

「統計的多重比較法の基礎」

『統計的多重比較法の基礎』をbk1で注文したらさっそく届きました。bk1では2-3日以内に出荷になっていましたが、土曜日の夜中に注文して、月曜の夜中に発送案内があって、火曜日の昼間に勤務先に届きました。bk1で宅配便指定にすると、ほとんど最短で手に入ります。優秀。こんな本、でかい書店を回ってもあるかどうかわからないので、こういうときは、オンライン書店はありがたい。

ただ、中身をあけてみたら数式だらけの本でした、、、。これもオンライン書店の怖いところ。

これでもかというばかりの多重比較法のオンパレード。「これほど多重比較法について詳しい本はない」という言葉は嘘ではありません。3群以上のパラメトリックな検定というのは我々にとって最も縁の深い検定法です。今回はちょっとがんばってみます。大事そうなところだけでもこちらで報告します。報告がなかったら案の定、めげたと思ってください。

『統計的多重比較法の基礎』
著者:永田 靖、吉田 道弘著、本体価格: ¥3,800、出版:サイエンティスト社、ISBN:4-914903-46-6、発行年月:1997.11【bk1】【amazon.co.jp


2004.02.16

「学会・論文発表のための統計学」

年に数回むらむらとわき上がる統計勉強熱。いつも不完全燃焼で終わってしまうのですが、今回は、、、、。

『学会・論文発表のための統計学 統計パッケージを誤用しないために 』
著者: 浜田 知久馬、本体価格: ¥3,200、出版:真興交易(株)医書出版部、ISBN:4-88003-602-1、発行年月:1999.10【bk1】【amazon.co.jp

この本は統計パッケージに頼って統計解析をおこなっている研究者がおちいりやすい盲点について解説した本です。この本を読んだからといって、統計解析ができるわけではないですが、統計パッケージに頼りきりになって、闇雲に星印をつけている人にはハッとすることも多いでしょう。とても読みやすい本で、私も1日で読み切ってしまいました。私としては、第4章の多重性と多重比較はとても役立ちました。

3群以上の比較にt検定を複数回繰り返すということは統計的に間違い(第1種の過誤を増大させる)であることはよく知られていますが、では、多重比較をどのような検定方法でおこなえばいいのかというと、実はなかなか難しく、基準群が存在して、他のすべての群とを比較するならDunnett検定、Scheffeが使える条件はかなり緩いけれども検出力が低い、Duncan法はt検定を繰り返すのと同様に第1種の過誤が大きくなってしまい不適切な方法であることが知られている、というわけで、一般的にはTukey法が使うことが多いとのことです。また、群間に用量による単調性があれば、Williams検定が検出力が高い。

などということが書いてあります。ちなみに、他の本によれば、最近ではHolmの方法が汎用性が高く、検出力も高いという話もあります。この辺は、生物学の論文でも非常によく使う方法で、私ももっと勉強しなければならないですね。というわけで、ちょっと難しめの本のようですが、これしかないという名著だそうで、以下の本にチャレンジしてみようかと思っています。

『統計的多重比較法の基礎』
著者:永田 靖、吉田 道弘著、本体価格: ¥3,800、出版:サイエンティスト社、ISBN:4-914903-46-6、発行年月:1997.11【bk1】【amazon.co.jp

他のおすすめ統計書籍はこちら


2003.04.11

手抜き実験のすすめ

大学院時代にお世話になった研究室は決してお金がないということはなく、むしろ、研究費は潤沢でしたが、何でも自分でやるというのが方針のラボでした。オリゴヌクレオチドの作成や精製は自分でやりましたし、白黒の写真の現像も自分で暗室にこもっておこなっていました。思い出してみれば、キットを使った経験はほとんどありません。現在の何でもキットのご時世からは信じられない話かも知れませんが、そのときの経験は今でもとても役に立っています。

そして、もうひとつよく言われたことが、オリジナルのプロトコールを忠実に守り、自分で勝手に省略したり変更したりしてはいけないということでした。オリジナルのプロトコールには、行間に書かれたTIPSが隠れていて、問題ないだろうと勝手に変更したり省略したりすると、うまくいかないことが多いと言われました。私も多少遠回りに思えたことでも出来る限り忠実に守っていました。

ただ、その研究室を離れると、ついつい安易な道をえらび、手抜きを覚えていきました。時に痛い目に遭うこともありましたが、手順が省けるというのはスピードの点から言うと重要です。たとえば、大腸菌のトランスフォーメーションでヒートショック後にアンピシリン入りのプレートにまくまでに60分間SOCで大腸菌を培養する。これはアンピシリン耐性遺伝子が発現するまでに小一時間かかるからと教えられましたが、実際には、この60分間の培養が必要ないということがわかったときには毎日の実験が1時間スピードアップしました。また、アガロースゲルを作る際、アガロースゲルが溶けてから型に流し込むまで10分くらい温度が下がるのを待ちますが、2倍の濃度で電子レンジでアガロースを溶かし、溶けたら等量の室温のバッファーを加えれば、すぐに型に流し込めます(固まってしまいそうで怖いのですが、絶対に固まりません)。これも私の実験のスピードアップに大きく貢献しました。

羊土社の新刊「手抜き実験のすすめ」は実験医学に4年間にわたって連載された手抜きテクニックを集めたものです。上に紹介した2つのテクニックも含め、たくさんの手抜きテクニックが紹介されています。紹介されたテクニックの中には、チップやチューブはオートクレーブする必要なしというのものまでありますが、私は今のところオートクレーブはしています。

こういう手抜きテクニックというのは、各研究室秘伝だったりして、なかなか知ることが出来ないもので貴重です。ちなみに、パート1の部分は実験をする上での心構えになっていますが、ちょっと冗長かもしれません。

「手抜き実験のすすめーバイオ研究五輪書」
著者:福井 泰久、岩松 明彦著、本体価格: \2,900、出版:羊土社、ISBN:4-89706-358-2、発行年月:2003.4【bk1】【amazon.co.jp

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