2013.11.27

本の紹介『もしも心電図が小学校の必修科目だったら』

発売して、すぐに購入して、パラパラと読んで、しばらくほっておきした。でも、ここのところ、ずっと、ベストセラーにランキングされていて相当売れているようで、先週末の福岡出張の時に通読しました。

香坂先生は、我が慶應の若きエース循環器内科医で、教育の場面では、一緒に仕事をさせていただくことも多いです。本書は、彼が、医学界新聞で連載していた「循環器で必要なことはすべて心電図で学んだ」をまとめたものです。まとめるときに、「もしも心電図が小学校の必修科目だったら」というタイトルをつけて、各科目に配置し直したというのは、なかなか、よいアイデアでしたね。心電図をマスターするというより、心電図を通して、循環器内科を俯瞰するような内容です。体系的と言うより、一つ一つが独立したエッセイのようでもあり、彼の循環器内科の知識の深さとウィットが、大変知的興味をくすぐる一冊になっています。

この本読んでいたら、私も「電解質の深イイ話」という本でも書いてみたくなりました。

2013.11.08

ASN@Atlanta

アメリカ腎臓学会(ASN)に参加するために、Atlantaに来ています。

Atlantaは初の訪問ですが、来る前から、何もないと言われ、ほんとに何もないことにびっくりしました。私はConvension Centerのすぐ近くにある、Omni Hotelと言うところに泊まったのですが、ここから徒歩で行けるまともなレストランもなければ、お土産買うような場所、コンビニもありませんでした。まだ、脚力は不自由分ですし、あまり夜歩くのは望ましくないというアドバイスを受けていたので、ひたすら、ホテルにこもっていました。ホテルからは、こんな感じのダウンタンが見えていました。

食べ物も、南部料理(フライドチキン、キャットフィッシュ、オクラの揚げたものなど)というのは口には合いませんでしたが、地元の方に勧めていただいたKevin Rathbun Steakは、唯一の例外で、Dry-aged beefの素晴らしいTボーンステーキが食べられました。

Atlantaと言えば、Coca-Colaの本社があります。World of Coca-Colaという博物館があります。

CNNもAtlantaにあります。CNNの中を回るツアーもあります。

アトランタブレーブスの本拠地、Turner FIeldもあります。もう、シーズンも終わり、ひっそりとしていました。

Martin Luther King, Jr.が生まれた街でもあります。

少し足を伸ばして、Stone Mountainまで行きました。

また、Atlantaで学会やりますよ!と言われても、ちょっと萎えるなぁ。

2013.11.02

本の紹介『東大病院研修医』

前の2作「東大脳の作り方」「東大医学部–医者はこうして作られる」も興味深く読みましたが、前二作では、「桜蔭の1番、現役で東大理科三類」という著者のイメージが前面に出た印象を受けました。

本書では、彼女の2年間の初期研修(市中病院で1年、東大病院で1年)の様子が描かれています。当初、「精神科か皮膚科」を志望していた彼女が、意外にも外科を選んだ過程が書かれています。エピローグで書かれていた文章が印象的でしたので、引用します。

「余裕のない中でも、素直さと謙虚さを失わず、求められる仕事に真摯に向き合えること。メンタルが荒んでも仕方のない毎日でも、穏やかでフラットな精神状態を保ち、他人に優しく、自分に厳しくいられること。
こう書いていると、まるで聖人君子を目指すような気分になってきますが、そういう人になりたいから外科を選んだんだろうし、それで間違ってなかったと思っています。自分も、つくづく面倒なプライドを持ったものですが、そのストイックさを枯らせたら、自分ではないなあと言う気もします。
ライフワークバランスがもてはやされて久しい世の中ですが、いろんなものと折り合いつけて働くなんて、もっと年を取ってからでも、いくらでもできます。まだ若いうちから、仕事で傷つかない生き方なんて、心底つまらないと思います。努力の対価が点数で付く世界でずっと生きてきて、バランスと能率に縛られていた私を変えたのが、二年間の初期研修でした。
医者の仕事は、はっきり言って非効率とアンバランスの塊です。そこで多少の自己犠牲を厭わず、本気で立ち向かうからこそ、この仕事は尊いんだと思います。どこまでやれるのかは未知数ですが、たとえ自己満足でもいいから、守りには入りたくないです。新たな場所でも自分らしさをついえさせず、毎日を嘘のない笑顔で、働いて行ければと思います。」

もちろん、研修医の労働環境が非人間的であるべきだとは思いませんが、自分のことを振り返ってみれば、365日休みがなく、週のうち半分以上が当直で忙しかった1年目の研修医のときが一番充実して楽しかったです。毎日、たくさんのことを覚え、少しずつ先輩や同僚、まわりの医療職、患者さんの信頼を獲得していく喜びを感じた一年でもありました。初期研修は、どんな病院でやるのでも、どんな診療科でやるので、とことんやってみれば、自分の思ってもいなかった部分が引き出される可能性もあります。

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