本の紹介『安部公房とわたし』
この本、言ってみれば暴露本です。著者の山口果林は安部公房と不倫関係にあり、安部公房が山口果林のマンションで倒れ亡くなるなど、十分にセンセーショナルでした。
でも、安部公房がなくなって20年も経つと、暴露本の放つ毒のようなものはかなり薄まっています。安部公房研究家にとっては、新しい事実も明らかになるという意味では一級の文献とも言えるでしょう。
でも、どこかもの悲しくて、暴露本なのか、安部公房を振り返る本なのか、山口果林の自伝なのか、よくわからなくなりましたが。やはり、ただの山口果林の自伝なのだと思います。
文章もどこかまとまりがなくて、落ち着かないのですが、230ページに紹介されている、安部公房没後十年を記念して、郷土誌「あさひかわ」に投稿した「安部公房氏と旭川」という文章は抑制が効いた素晴らしい文章だと思いました。