本の紹介『バイオ研究者が生き抜くための十二の智慧』

PIも研究以外の雑用で忙しい。でも、世の中には、このような雑用を簡単に片付けるためのノウハウを持ったスマートなPIがたくさんいます。本書は、中山敬一先生をはじめ錚々たるPIが、PIの仕事術を紹介した本です。かなりおもしろかったので、詳しく紹介します。

第 1 章 ラボノートの書き方

東京大学の水島昇先生は、ラボノートの総目次を定期的に作ることを勧めています。

第 2 章 試薬・実験データの管理

医科歯科の鰐田先生のラボでは、試料管理ソフトとして、ダイナコム社のLab Secretaryというソフトを使っているそうです。どんなソフトかちょっと興味があります。ver 4ということなので、結構浸透しているのかも知れません。

第 3 章 書類整理術

慶應の佐谷秀行先生の書類整理術は、(1)捨てる、(2)生の書類として「超」整理術の方法で封筒に入れてキャビネット保管、(3)スキャンしてEvernoteに飛ばす、(4)PC内のフォルダに整理してDropboxで保管。なかなか機能的で、しかも無理がなく、クラウドを利用しているので便利そうです。

第 4 章 EndNote を活用した文書作成術

九州大学の中山敬一先生がEndnoteを使って、業績集の作り方を紹介しています。

第 5 章 マテリアルリクエストへの対応

九州大学の中山敬一先生は、これまで、2000件あまりのリクエストに応えてきましたが、大切なことは、どんどん配ってしまう、マテリアル供与の見返りとして共著を要求することは原則としてしないということだそうです。手間を減らすために、簡易版のMTAや公的バンクに供託することを勧めています。

第 6 章 論文レフェリーコメントと闘う心構え

大阪大学の仲野徹先生がレフェリーコメントと戦う心構えを紹介されています。

第 7 章 論文レフェリーをこなす

九州大学の中山敬一先生は、論文レフェリーは、非常に憂鬱な作業であるが、それを断るのも良心が痛むと仰っています。しかし、断る場合には、「現在、他にたくさんの審査を抱えているので今回は勘弁して欲しい」「学会に出席するために2週間は外出するので対応できない」のどちらかの英文をコピペして使っているそうです。そして、必ず、別のレフェリーを推薦しているとのこと。実際に引き受けて、コメントを書くときには、(1)論文の内容のまとめ(Figureのタイトルをすべてコピペして、それをつなぎ合わせて、そこにいろいろと修飾語を付け加えたりして作っているそうです)、(2)全体的な印象とジャッジ、(3)個別の質問、(4)マイナーコメントという構成にしているそうです。文例もかなりたくさん紹介して下さっていますし、踏み込んだ内容で、いくつかのアイデアは使わせていただこうと思いました。

第 8 章 オーサーシップ

東京大学の水島昇先生がオーサーシップを決める原則について解説されています。

第 9 章 Skype でラボミーティング

テキサス大学の上野先生がSkypeでのラボミーティングについて話をしています。私も、最近になってはじめてSkypeミーティングを経験しましたが、画面共有などを使えば、かなり使い勝手は良いと思いました。より快適なWebミーティングにするには、Skype Premiumアカウント、または、GoToMeetingやWebExというサービス(これらはホスト以外はアカウントが不要という利点があるが、料金は高額)があるそうです。

第 10 章 Journal Club

東北大学の中山啓子先生は、ご自身のラボでやっているJournal Clubのやり方について詳細に紹介して下さっています。

第 11 章 メディアを介した研究成果の発信

東京大学の東原和成先生が、メディアの取材への対応について解説されています。

第 12 章 プレスリリースの書き方

生理学研究所の小泉周先生が、プレスリリースの書き方について、かなり詳細に解説されています。私も、最近、そのような仕事のお手伝いをしているので、さっそく、使わせていただこうと思いました。

番外編 
 ①ベンチワークの匠:ヒト型ロボット研究員『まほろ』
 ②マウス系統の寄託と提供~(理研BRC 編)
 ③バイオラボ秘書の仕事術

本書は、細胞工学の連載をベースにして、書き下ろしを加えて一冊にまとめたものです。あけすけな中山先生の記事をはじめ、私は大変おもしろく読ませていただきましたが、もう少し価格が安かったら良かったなぁと思いました。

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