本の紹介『「寄り道」呼吸器診療』

この本を見て、「やられた」と思いました。実は、この何年間も、私がやろうと思っていたことをこの本の著者に実際にやられてしまったからです。

私は、この数年間、きちんと腰をすえて、腎臓内科の臨床をしっかり勉強したいと思っていました。もちろん、持続力がなく、努力も下手な人間ですので、なんらかのメディアを使って、自分を律する必要があると思っていました。その方法として、Journalに掲載された腎臓病の臨床に関わる気になる論文を取り上げ、ブログで紹介するということをやりたかったのです。そのために、ドメイン(nephrology.jp)も用意して、Wordpressをインストールしてありました。でも、私が教育の部署に移って、すっかり、そんな時間もとれなくなってしまい、このプロジェクトは頓挫しておりました(今でも、開始したいという意思は持っていますが)。

本書の著者の倉原氏は、卒後7年目の若手の呼吸器専門医で、まさに私がやろうとしていたことを、「呼吸器内科医」というブログでおこなっていました。私は知らなかったのですが、今、読んでみると、とても質の高く、毎日更新されている素晴らしいサイトです。

かねがね、後輩が、どうやって臨床の勉強をしたらいいですか?と聞かれたときに、アウトプットを定期的に出すような工夫をするのがいいと答えていました。その方略の一つが、ブログであるとも、言っていましたが、みんな?という顔をしていました。

「寄り道」呼吸器診療の本の出来が、すべての人に勧められる呼吸器内科の定番本かと言われれば、NOかもしれません。少なくとも、呼吸器診療全体をオーバービューするという目的の本ではないと思います。しかし、どのReseach Questionも、実際に呼吸器診療をおこなう際にわき起こる純粋な質問であり、それらに一つ一つ文献を上げながら、エビデンスをまとめています。エビデンスを集めて、無理矢理答えを出してしまうのではなく、分からないものは分からない、悩ましいことは悩ましいままにしてあるところも好感が持てます。著者が呼吸器診療を行う上での疑問を解決する過程そのものが、一冊の本になったと言えます。

著者紹介に書かれた、「子供の頃からの夢だった医師になることができ、自分を支えてくれたあらゆる人に感謝している毎日です」という言葉が、素敵ですね。

私も、子供の頃から医師になるのが夢でした。こうして夢を叶えられていることに、もっと感謝して、真摯な気持ちで医学、医療にもう一度向き合いたいと思いました。

というわけで、この本の紹介と言うより、倉原医師の医師としてのありように感銘を受けたことを紹介する記事になってしまいました。

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