本の紹介『診断のゲシュタルトとデギュスタシオン』
4月は、医学書マニアにとってはうれしい月。たくさんの医学書が出版されます。近年の出版不況のせいか、非常にアイデアにとんだ良書が多くなったと個人的に感じています。今日、ご紹介する『診断のゲシュタルトとデギュスタシオン』も、そんな良書です。
ゲシュタルトは、ドイツ語の「形」のことです。「見た目」と言った方がわかりやすいでしょうか。
その病気の患者さんを見た経験がある医師は、見ただけで診断が出来るけれども、見たことがない人には、好発年齢、性差、症状を伝えてもなかなか診断が思い浮かびません。そういう病像を全体としてとらえて診断することがゲシュタルト診断なんだと私なりに考えました。教科書からは学べないけれども、臨床の現場ではもっとも重要な臨床能力の一つです。以前、どの大学でもあった、患者さんに講堂に来てもらって行うような臨床はそのようなゲシュタルト診断を醸成するには有効な教育方法であったのでしょうが、現在では、そのような教育手法が行われることは少なくなっています。そういう意味で、ありそうでなかった、医学書です。
たとえば、偽痛風の章で、須藤先生は、偽痛風を「退院熱または転院熱」として遭遇することが多いと指摘されています。また、PMR患者が起き上がる様子のスケッチなどは、まさに、ゲシュタルトそのものでしょう。
この本が驚異的なのは、単著ではなく、たくさんの方が執筆している本にもかかわらず、非常によく出来ていると言うことです。これは、編者の岩田先生の力なのでしょう。