医学教育は、まずコンテンツありき
今回のウィーンは、私にとって、とても貴重な体験でした。
これまで、1年半あまり医学教育を専門としてやってきたのですが、何か、心にひっかかるというか、医学教育という世界に違和感を感じていました。今回、その違和感が何かに気づくことができました。
医学教育で議論されるのは、教育手法や評価手法、カリキュラム立案などが主で、コンテンツそのものはほとんど議論されませんす。バックグラウンドが様々な人が集まっているわけですから、お互いの領域のコンテンツの内容について議論することは難しいという事情もあります。
しかし、医学教育は、コンテンツがまずありきであり、それをいかに伝えるか、いかに定着させるかは、二次的と言ってもよいと考えます。私自身、学生時代は、講義を受けるというのが好きでなく、学習=自分で本を読み、そこから学ぶという姿勢でした。よいテキストブックに巡り会えれば、それでハッピーでした。今回、ウィーン医科大学で、ヨーロッパの医学がどのように発展してきたかを見聞した際、やはり、コンテンツが重要なのだと思いました。当時の医学書、解剖・病理の模型の充実度が、桁外れだったこと、それこそが、ヨーロッパの医学のレベルを支えていたのだと思います。
よいコンテンツを持ちながら、それを伝えるのが下手な人がいることも確かです。だから、いかに伝えるかの研究をする人が必要であることも理解しています。医学教育の世界に入ると、どうしても、コンテンツを横に置いておいて、伝え方、評価、カリキュラムの方にどうしても力が入ってしまいます。私も、そちらに集中しすぎて、コンテンツの重要度を下げていた可能性があります。しかし、自分が目指すものでは、伝えるコンテンツの質が高く、充実していることが、まず、重要。そこに、さらに、教育的手法を身につけることで、よりTeacherとしての質が高まる。私は、そのようなTeacherでありたい、と考えています。
「まず、コンテンツありき」これを、私の医学教育における信念として持ち続けよう。そう思いました。
The photo taken at Sigmund Freud Museum Vienna