日本医書出版協会で電子書籍の講演をした
日本医書出版協会で「電子書籍」について話して欲しいという依頼があったのが、1月。しかも、聴衆は医学出版社の専門家の方々。基本的には頼まれた講演は断らないことにしているので、これも、電子書籍を知るいい機会だと思っていましたが、さすがに、心配になってきたので、しっかり準備をすることにしました。
まず、講演に向けておこなったのは、
ブレインストーミング
出版界の方2人にお願いして、食事をとりながら、2時間話しまくって、講演の骨格を作りました。
そのあと、客観的なデータを見ながら、自分の仮説が間違っていないことを確認するために、以下の5冊をはじめとした、たくさんの資料を読み込むのに約1ヶ月。さらに、自分の大学の図書館の方に数回のレクチャーを受けました。
ひとりブレインストーミングには、最近手に入れた、ローディアのdot padのNo. 38が大活躍。
今日は、本当に満員で、しかも、ほとんどすべての医学出版社の偉い方ばかりでびっくりしましたが、自分のペースで話すことができました。よく考えてみれば、素人が専門家に向かって歯にものきせず、えらそうにしゃべっているのですからおそろしいです。でも、みなさん、喜んでいただけたようでよかったです。
まったくの新しい分野だと、1時間話すのに、100時間くらい準備が必要ですね。とりあえず、現在は、電子出版をよく知る人と論議をしても、負けない自信があります。
「出版大崩壊 (文春新書)」
著者:山田 順、出版社:文藝春秋 (2011-03-17)、ASIN:4166607987【amazon.co.jp】
今、電子出版をめぐる状況を把握したいのであれば、ベストの一冊。帯には、「禁断の書」などと書いてあるが、決してセンセーショナルな本ではなく、長年、出版社の編集長を務め、その後、実際に、電子出版の会社を立ち上げようとした(しかし、現実的にペイしないということがわかりペンディングした)ということから、冷静に、日本における電子出版事情を解説しています。
日本では、まだまだ電子出版は普及していない(唯一、普及しているのは、携帯エロ小説というのが意外)が、今後、本が減って、電子出版に移行する流れには逆らえないということ。そして、その流れは、出版社だけでなくて、文筆業を生業とする人にも強いダメージを与えること。悲観的な予想で結んでいます。
「電子書籍の衝撃 (ディスカヴァー携書)」
著者:佐々木 俊尚、出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン (2010-04-15)、ASIN:4887598084【amazon.co.jp】
佐々木氏の非常に緻密な解説。基本的には、佐々木氏は、電子書籍バンザイ。どんどん進めるべきという考えです。しかし、佐々木氏が描く電子書籍の世界は、アメリカでは、1年、2年のうちにやってくるでしょうが、日本にやってくるにはまだ時間がかかると思います。理論的には、電子書籍バンザイ。でも、さまざまな権利関係で、日本ではそううまくいかないでしょうね。
「電子書籍の時代は本当に来るのか (ちくま新書)」
著者:歌田 明弘、出版社:筑摩書房 (2010-10-07)、ASIN:4480065768【amazon.co.jp】
この本もバランスが取れていてよかったです。特に、Googleの狙う、すべての書籍をデジタル化するプロジェクトの話が詳しくてよかったです。
「電子書籍元年 iPad&キンドルで本と出版業界は激変するか?」
著者:田代真人、出版社:インプレスジャパン (2010-05-21)、ASIN:4844328700【amazon.co.jp】
この本もよい本だと思いますが、上記の3冊を読むうちに、電子書籍業界に詳しくなってしまって、ほとんど、知っていることばかりになってしまいました。
「我、電子書籍の抵抗勢力たらんと欲す」
著者:中西 秀彦、出版社:印刷学会出版部 (2010-07)、ASIN:4870852004【amazon.co.jp】
印刷業界紙のエッセイをまとめた一冊で、電子書籍の話は、はじめの数個のエッセイで触れられています。印刷会社の方が、電子出版において、著者と電子出版プラットフォームを結びつける立場として適任という指摘。なるほどと思いました。