本の紹介「大金持ちも驚いた105円という大金」

「大金持ちも驚いた105円という大金」

著者:吉本 康永、出版社:三五館 (2009-05-22)、ASIN:4883204685【amazon.co.jp

成毛眞ブログで紹介されていて気になった一冊。

私は、本書で「せどり」という職業というか、ビジネス手法があることを初めて知った。

著者は、地方の予備校教師にして、定年を間近に控え、4000万円のローンをかかえ、路頭に迷いそうになる。若いときからたくさんの本を読んでいて、たまたま、手元にある本をアマゾンマーケットプレースに出品したら高く売れたことをきっかけに、「せどり」稼業に精を出すようになる。

ブックオフの105円コーナーの中で、高い値が付きそうな本を見つけて買い求めては、それを、それなりの値段をつけて、アマゾンマーケットプレースに出品するという形で利益を得ていく。このように、「同業者の中間に立って品物を取り次ぎ、その手数料を取ること」を「せどり」という。

著者は結局、予備校の仕事はやめて、「せどり」稼業に専念し、月に100万円を超える売り上げを得るようになる。ただ、それだけの本なのだが、彼の独特の文章力と、ところどころにはさまれる、高額で売れた商品の紹介に引き込まれて、あっという間に読み切ってしまった。

私は、一度だけブックオフに蔵書を売ったことがあるが、その値の付け方にあきれ果ててしまった。ブックオフの買い取り値の根拠がどのようになっているかはわからないが、少なくとも本を愛して、価値の高い本に高い値をつけるという方法ではなかった。

そこに、105円コーナーに価値のある本が紛れ込むという余地が生まれる。そのような、価値より安く売られている本をめざとく見つけるのが、「せどり」屋なのである。また、アマゾンマーケットプレースという仕組みが、リアルの古書店を開かなくても、本をさばけるという機会を与えてくれている。

だから、本の価値に無頓着なブックオフとアマゾンマーケットプレースという場が、たまたま作ってくれたビジネスチャンスであり、おそらく、「せどり」の市場は大きなものではなく、たくさんの業者が参入できるものではないし、いつ崩壊してしまうかわからないビジネスモデルである。

私は、前から、アマゾンマーケットプレースで1円で売られている本があることが不思議でならなかったが、この本を読んで、1円でも儲けることの出来る仕組みがわかった。1円で出品されている本でも、発送料として、お客は、360円が取られる。ただし、このとき、amazonから出品者に払われるのは260円+1円である。普通は、赤字になるわけだが、大手の古本屋だと、大量発送することで、宅配料の割引を受けることで、なんとか、261円以下で発送できるらしい。まぁ、それでも、1冊で、数十円の利益にしかならないのだが。

著者は、最高1ヶ月に150万円ほどの売り上げがあったようだが、その場合、純利益は、半分弱だそうだ。しかし、これだけの売り上げを得るためには、毎日何カ所ものブックオフをまわり、家には、10000冊を超える在庫を抱える必要があるとのこと。サイドビジネスで「せどり」稼業をしても、せいぜい、10-20万円の売り上げしか期待できないようである。

私は、こういう、裏稼業というか、自分の知らない世界を覗くのが好きなので、とてもおもしろく読めた。


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