本の紹介「研究者の英語術」
「ハーバードでも通用した研究者の英語術」
著者:島岡 要、出版社:羊土社 (2010-03)、ASIN:4758108404【amazon.co.jp】【bk1】【目次】
先日、ボストンで著者の島岡さんとお話をさせていただいたときに、もうすぐ2冊目の本が出るからと、教えていただいていておりました。帰国後、さっそく、献本いただいていたのですが、私の怠慢で、2ヶ月近く放置してしまいました。すいません。
研究者の英語術とは何か?限られた時間の中で、優先順位をつけるとすれば、ライティングの力であると、割り切ったことが、最大の特徴です。「流暢な英語が話せるようになる」という希望を捨てる勇気、と「機能的な英文が書けるようになる」という希望を持つ勇気、この言葉がこの本の理念を表しています。
しかし、本当に、英語が話せなくてもよいかといえば、もちろん、答えはノーなのです。でも、英語というと、どうしても英会話に重点を置きがちな日本人研究者に、もっと、きちんとした英語で論文やグラントを書かないと、研究者としては一人前にならないぞ伝えています。そう言う観点で書かれた英語本はこれまでなかったですね。
実は、ライティングに関して言うと、どのように書くかより、何を書くかすら日本人研究者にはわからないことが多いのです。
私が大学院生の時に、指導教授から、英語論文の査読をやってみろと言われたことがあります。自分の論文を書いたことがなかった私にとっては、論文にコメントをすることができても、査読ってどうやって書くの?何を書くの?まったくわかりませんでした。表立って、論文の査読はこう書きなさいとエディターが指定することはありませんが、実は、暗黙のフォーマットがあるのです。そのことに気づいたのは、自分の論文をいくつか発表し、論文の査読をいただいてからでした。たとえば、Major Revisionであれば、はじめに、その論文の要点をまとめたあと、どのような部分が評価できるかを書きます。その研究価値は認めつつ、以下の問題(concernという言葉の使い方もこのとき知りました)があるとして、その問題を箇条書きでリストアップする。多くの査読者は、そのようなフォーマットで書きます。
残念ながら、本書には、査読の書き方という章はありませんが、論文を投稿する際のカバーレター、推薦状、CVといった、滅多に見る機会のない、研究者に必須の文章の貴重な文例がたくさん載っています。
それだけで、この本は、自分で独立するつもりのある研究者には必須の英語本であると言えます。
ロジックの通った英語を書く。これについては、科学のわかるネイティブに一つ一つ添削してもらって、トレーニングするのがいいのでしょうね。なかなか、そう言う恵まれた環境にいる方は少ないと思いますが。