2018.12.31

2018年を振り返って

大晦日の朝に見る夢を1年の最後の夢と言うのでしょうか。

僕は、ほとんど夢の内容を忘れてしまう人間なのですが、今日は珍しく、鮮明に覚えていました。東京大学医学部の3年生に、12回に渡って毎週火曜日の3限に腎臓内科学を教えるという夢でした。毎回新ネタということもあって、毎回準備不足で、授業の後半になってくると、準備していたものが足りなくなって、ぐだぐだになってしまう。プロジェクターの調子も悪くて、なかなか講義が始められない。そのうち、学生達もいやけがさして、回を追うごとに、出席する学生の数が減っていく。変な汗をかいて目が覚めました。

なにか、2018年の自分を戒めるような夢だったなぁと。2018年は、本当に、ゆっくりと物事を考える時間を持てませんでした。講義でもなんでも、今までの蓄積を使い回して、なんとか取り繕っていたような気がしています。自分としては、2018年の最大のプロダクツはハルペリンの翻訳をしたことなのですが、あらためて考えてみると、翻訳で使う脳の部位は、「考える」ことをおこなっている脳の部位とは、まったく違う場所だったなという印象があります。2018年は翻訳で使う脳の部位を使いすぎて、オリジナルのことを考える脳の部位に強く抑制がかかってしまったのではとさえ思っています。というわけで、来年は、きちんと物事を考える脳の部位を活性化して、しっかりとしたものを生み出していきたいと思っています。

来年は、次の単行本をと考えていましたが、本というのは、僕のレベルで書き下ろすことは不可能です。いきなり単行本ではなく、マイクロな文章をかきため、そこから作り上げるというのが僕のスタイルなので、そういう方向でやっていきたいと思っています。

というわけで、この年末何をしていたかというと、自分が持っているいくつかのブログを再設定していました。すっかり、Dreamweaverとか、Word Pressの操作も忘れてしまって、ずいぶん手間取りました。

日常的なことは、あいかわらずFaceBookに書いていくつもりですが、単行本をめざすような内容は、自分のブログの方に載せていきます。いろんなところで講義をさせてもらって参加者とも議論しながら、自分の考えの輪郭をはっきりとさせていければいいなと思っています。

2018年、皆様ありがとうございました。良い年をお迎え下さい。

ハルペリン 病態から考える電解質異常

メディカルサイエンスインターナショナル

2018.12.30

2018年ベスト本

よく考えたら、このブログを更新するのも1年半ぶり。Dreamweaverの使い方もさっぱり分からなくなってしまっているし、だれも新しい記事を期待していないだろうけど、2018年に一つだけ記事を書いておこう。

今年の後半は意外と本を読んでいました。

まぁ、面白かった本は、

沈黙のパレード
沈黙のパレード
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東野 圭吾
文藝春秋 (2018-10-11)
売り上げランキング: 373
世界のビジネスエリートが身につける 教養としてのワイン
渡辺 順子
ダイヤモンド社
売り上げランキング: 143
日常診療の中で学ぶプロフェッショナリズム
WENDY LEVINSON
カイ書林
売り上げランキング: 434,603
ある男
ある男
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平野 啓一郎
文藝春秋
売り上げランキング: 514
錆びた滑車 (文春文庫)
若竹 七海
文藝春秋 (2018-08-03)
売り上げランキング: 8,633
それまでの明日
それまでの明日
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原 りょう
早川書房 (2018-02-28)
売り上げランキング: 2,633
仏教と科学が発見した「幸せの法則」
アルボムッレ・スマナサーラ 前野隆司
サンガ
売り上げランキング: 83,819

ベストは「ある男」と「それまでの明日」どちらかでかなり迷いましたが、原寮の「それまでの明日」を選びました。今まで一冊も読んでいなかったことを後悔して、原寮作品をすべて読みました。

毎年、「今年のベストショット」もやっているのですが、今年はほんと写真欲が涌いてこず、2回ポートレート撮影をしたのと知床の旅行の写真ぐらいだったでしょうか。選ぶのもいやになったので、今年はなし。うまいものはありすぎて選べないので、こっちもなし。

2017.07.19

佐藤正午のおすすめ本

この記事は、実はだいぶ前に書いておいたのだけど、佐藤正午さんの『月の満ち欠け』が直木賞の候補に選ばれたので、受賞するにしても、受賞しないにしても7月19日にアップしようと思っていました。見事、直木賞受賞おめでとうございます。

昨年末、日本橋の丸善書店で見かけて、「鳩の撃退法」を買った。僕にとっては、かなり例外的な買い方だった。最近は、ハードカバーの本はなるべく避けているし、特に、上下巻に分かれているような本は、努めて避けている。

佐藤正午という作家を、初めて読んだ。「鳩の撃退法」が、どれくらい面白かったかは、昨年の僕のMy best fictionに選んだくらいで、相当面白かった。

僕が知らなかっただけで、佐藤正午は、たくさんの小説を書いている。「鳩の撃退法」以来、遡って、次々と彼の著作を読んでいる。「身の上話」、「アンダーリポート」、「ジャンプ」。どれも素晴らしい。今年の4月には、「月の満ち欠け」という小説が出て、むさぼるように読んだ。

その中でも、「ジャンプ」を読んで、あっと驚いた。

僕は、この1年くらい、本気で、小説を書こうとしているのだけれど、この小説と、僕の書こうとしていた小説の基本的なストラクチャが、とてもよく似ていたのである。もちろん、舞台設定やディテールは全く違うのだけれども、コアになる部分は、よく似ている。

佐藤正午の、どの作品にも通じているのが、偶然に起こる運命的な出会いだと思う。表面的には、ミステリー的な要素を持つ、ラブストーリーであり、小説のストラクチャは、かなり凝っている。時に、難解なほど凝っている。

小説の語りについても、非常にたくみである。人称の選択(一人称か、三人称か)、視点の問題(一人称一視点なのか、三人称一視点なのか、あるいは、1人称と三人称を交互に使うのか)、物語る順序(時間の経過を追うのか、現在と過去を交錯させるのか)など。

とりあえず、僕が読んだ本を紹介しておきます。☆が多いほど、おすすめです。


鳩の撃退法☆☆☆☆
デリヘルドライバー、直木賞作家の津田が主役のミステリー。ダメ男を書かせたら、天下一品の佐藤正午らしい作品。ちょっと長くて、下巻の途中は中だるみするけど。山田風太郎賞受賞作

鳩の撃退法 上
鳩の撃退法 上
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佐藤 正午
小学館
売り上げランキング: 92,388

月の満ち欠け☆☆☆
生まれ変わりという、ありえないことがテーマだけど、最後まで読み進めると、生まれ変わりがあってもおかしくない。くらいの気持ちになります。SF的ミステリー。

<
月の満ち欠け
月の満ち欠け
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佐藤 正午
岩波書店
売り上げランキング: 504

身の上話☆☆☆
書店の店員が、突然、東京に行き、宝くじで2億円当てた。自分の意思とは違う形で事件が次々とおこることに身を任せていく女の話。ミステリーかな。テレビドラマ化もされています。

身の上話 (光文社文庫)
佐藤 正午
光文社 (2011-11-10)
売り上げランキング: 49,499

アンダーリポート☆☆☆☆
交換殺人をテーマにしたミステリー。

アンダーリポート/ブルー (小学館文庫)
佐藤 正午
小学館 (2015-09-08)
売り上げランキング: 158,526

ジャンプ☆☆☆☆☆
コンビニに出かけていくと行って帰ってこなかった彼女。ミステリー的恋愛小説。僕の一番のお気に入り。

ジャンプ (光文社文庫)
佐藤 正午
光文社
売り上げランキング: 248,873

5☆☆☆
結婚8年目の記念にバリ島を訪れた中志郎と真智子。旅行中に起こったある出来事がきっかけで、志郎の中に埋もれていたかつて愛の記憶が蘇る。SF

5 (角川文庫)
5 (角川文庫)
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佐藤 正午
角川書店(角川グループパブリッシング)
売り上げランキング: 263,681

Y☆☆☆
時間を逆戻りできる北川によって、生み出された2つの人生。SF恋愛小説。

Y (ハルキ文庫)
Y (ハルキ文庫)
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佐藤 正午
角川春樹事務所
売り上げランキング: 167,075

永遠の1/2☆☆☆☆
もう一人の自分によって振り回される男の人生。デビュー作。すばる文学賞受賞作。

永遠の1/2 (小学館文庫)
佐藤 正午
小学館 (2016-10-06)
売り上げランキング: 197,592

2017.07.12

Logicool SPOTLIGHT プレゼンテーションリモートの円が黒に変更された

以前ご紹介したLogicool SPOTLIGHT プレゼンテーションリモートのアップデートです。

以前にも書いたように、とてもよいプレテーションリモコンなのですが、唯一の欠点が、円の色が白のため、白背景のスライドで使いにくいというのがありました。

ソフトウェアのアップグレードで、円は、黒(蛍光色の影がついている)に変更になりましたので、欠点が解消されました。

みなさん、「買い」ですよ。

2017.06.08

2017年6月積ん読本

現在、翻訳の仕事が忙しくて、あんまり本を読めてなくて、すごい勢いで本が積まれています。半分ほどは読み終わっていますので、簡単な感想も合わせて、紹介します。

砂の果実 80年代歌謡曲黄金時代疾走の日々
売野雅勇
朝日新聞出版 (2016-09-07)

「少女A」をはじめ、チェッカーズなどにたくさんの歌詞を提供した売野雅勇さんの自伝。80年代の音楽シーンが好きな方には、かなり面白い本です。

村上春樹 翻訳(ほとんど)全仕事
村上 春樹
中央公論新社

これみると、ほんとすごい量の翻訳をしていることが分かります。自分が、今、翻訳しているから、後半の柴田さんとの対談はかなりおもしろかった。

すごく評判なんだけど、僕が頭悪いからなのか、途中まで頑張って読んだけど、よくわからないので、ほったらかしてあります。

来月、大阪に行くときに利用します。

みみずくは黄昏に飛びたつ
川上 未映子 村上 春樹
新潮社

村上春樹好きなら、読まざるを得ない一冊。

ここから先は、医学書。医学書も4月から5月にかけてはいい本がたくさん出てくる。

INTENSIVIST Vol.9 No.2 2017 (特集:輸液・ボリューム管理)

メディカルサイエンスインターナショナル

すばらしい本です。無茶苦茶売れているみたいです。

ニッチなディジーズ
ニッチなディジーズ
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國松 淳和
金原出版

蹄の音を聞いたら、シマウマを思い浮かべずに、ウマを思う浮かべろ。でも、シマウマの時だってあるんだぞ。

南学 腎臓病学
南学 腎臓病学
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南学正臣
中山書店

名前に圧倒されて購入

実際には、ぼくらは、こうやって臨床推論をやりながら、それにそった身体診察をやっているんですよね。

研修医のアタマと心とからだ (モヤモヤ研修生活をどう乗り切るか?)
水野 篤
メディカルサイエンスインターナショナル

ちょっと、時間が出来たら、読んでみよう。

感染症プラチナマニュアル 2017
岡 秀昭
メディカルサイエンスインターナショナル

すごいベストセラー本になりましたね。なくてはならない一冊。

2017.05.09

僕の新作「なぜパターン認識だけで腎病理は読めないのか?」まもなく発売になります

この半年間で筑波の長田先生と2人で書き上げた腎病理のテキストブックが、いよいよ発売になります。正式発売日は5月20日。月末の日本腎臓学会では、どかんと平積みして売ります。腎臓病を勉強したい人はマストバイの一冊であると言い切れます。タイトルも「なぜパターン認識だけで腎病理は読めないのか?」と、かなりとがったタイトルにしました。

どんな本か理解していただくために、僕が書いた「あとがき」をこちらに、転載しますので、お読み下さい。

*****
「なぜパターン認識だけで腎病理は読めないのか?」のあとがき

これまで、腎病理を勉強しようと思ったことは、何度もあった。東京医学社の「腎生検病理アトラス」も読んだし、いくつかの英語で書かれた腎病理の教科書も読んだ。だから、こんな病気が、こんな病理像を呈するというのはある程度理解している。つもりだ。でも、実際の腎生検サンプルを顕微鏡で見て、診断書を書くことは僕にはできない。僕は、尿細管の研究者としてそれなりのキャリアを積んで、免疫組織だとかは、いっぱいやってきたから、読めたっておかしくないはずなんだけど、読めない。結局は、数年、腎病理の先生の元で修行をしないと腎病理の診断書は書けないものだと思っていた。

長田先生と仲良くなったのは、2年前くらいだった。腎病理の本を書きたいのだけれど、出版社はどこかいいかとか、そういうことを聞かれた。僕は、これまで何冊か単著の本を出していたし、医学出版社にはたくさんの知り合いがいたので、いくつかアドバイスをした。でも、長田先生が腎病理の本を出すところまでには至らなかったようである。

僕は、自分が勉強するときには、無理矢理、人に教えるということをしている。「自分の知っていることを教えるより、自分が知らないことを教える」ということをモットーにしている。いやがる学生をつかまえて教えることもあれば、本を書くこともある。でも、さすがに、腎病理に関しては、自分で本を書くというのは難しいので、どうしたものかと思っていた。そんな時、長田先生から、再度相談があった。

そうだ、長田先生との対談という形の本を書いてしまおう

と思ったのだ。僕が、長田先生に教えを乞うという形で、しかも、対談という形をとることで、新しい形のアイデアが実現できることになった。

この本は、二人の共著という形になっているけど、基本的には、長田先生の本である。でも、腎病理学者である長田先生が無意識におこなっている腎病理読影のプロセスを、ロジックとして言語化することに、僕はそれなりの役目を果たせたのではないかと思う。

もちろん対談本を書いたのは初めての経験だったが、2つの意味で刺激的だった。一つは、この本を作り上げる過程で、腎病理を学ぶことができたこと。実際に腎病理の診断書を書くには、それなりにトレーニングしなければならないだろうけど、診断書を読み解く力は、随分ついたんじゃないかと思っている。もう一つは、本を書くことが好きな人間にとって、こういう、ちょっと変わったプロセスで本を書き上げられたことがとても刺激的だった。

この本が出版される前に、何人かに原稿を読んでもらったんだけど、みんなから、「どうやって、この本を書いたんですか」と、聞かれた。この対談本がどのように作られたか、少しだけ、タネ明かしをしておこう。当初は、2人で本当に対談して、それをライターさんに書き起こしてもらうという案もあったけど、それはボツになった。数時間の対談でまとめられるほど、2人の考えも構造化はできていなかったから。やはり、数ヶ月かけて、お互いがキャッチボールをしながら、書くことになった。長田先生は筑波、僕は東京で、そんなに頻繁に会えるわけではない。そこで、Dropboxを使って、リモートで原稿を作り上げていくというプロセスをとることになった。ただ、実際に、ゼロの状態から、いきなり本を書くことは難しく、何回か僕のオフィスに、長田先生に来てもらって、原稿の方向性というかストーリーを決め、そこから、ディテールを書き進めるような形で原稿を書いていった。なかなか合う時間が取れないので、シカゴのアメリカ腎臓学会に出張しているときに、長田先生が宿泊されているホテルの部屋で二人で話し合いながら書いたと言うこともあった。

対談形式は取っているけど、実際には相手のセリフを勝手に作り上げて、互いに書き進めていったので、後になって「僕は、こんなこと言いませんよ」と言って、書き直すみたいな、擬似的な対談で作り上げた。

本を書き始めるときに2つのことを決めた。一つは、多少、学問的に断定することが難しいことであっても、私たちの意見として、はっきりとしたメッセージを伝える、ということ。もう一つは、この本をはじめから、最後まで読んでもらうことで、実際に、腎病理が読めるようになることにこだわるということだった。

今までになかったような、腎病理の本ができあがったと思う。ただ、ほんとに、腎病理が読めるようになるには、この本を読んだ後、一定期間、トレーニングをしなければならないだろう。でも、この本が、そのトレーニング期間を随分短くしてくれるのではないかと思っている。

2017.05.06

本の紹介か「みみずくは黄昏に飛びたつ」

川上さんの、村上春樹作品の理解すごいっていうのが、印象的な一冊。

村上春樹自身は、そんなこと言ったかなぁとかいって、煙に巻いている感じ。

『騎士団長殺し』は、たぶん、あまり売れ行きがよくなくて、このあと、返本ラッシュになるんじゃないかと思う。僕は、とても楽しめたけど、マーケットと本の出来というのは、一致しないことも多いから。

このインタビュー本の第1章の「優れたパーカッショニストは、一番大事な音を叩かない」は、「MONKEY」で読んで、とても、興味深くて、こうして本に収載されたのはよかったと思います。このインタビューの直後から、『騎士団長殺し』の執筆に取りかかって、10ヶ月で第1稿を書き下ろしたそうです。

村上春樹によれば、『騎士団長殺し』を書き始める時にあったのは、騎士団長殺しというタイトルと、「二世の縁」と第1章の出だしの文章「その年の五月から翌年の初めにかけて、私は狭い谷間の入口近くの山の上に住んでいた。」の3つ要素だけだったそうです。

いまだに、原稿はEG-Wordを使って書いていいるらしく、どんだけ、編集者泣かせなんだろうとか思いますが、なかなか興味深い一冊でした。

みみずくは黄昏に飛びたつ
川上 未映子 村上 春樹
新潮社

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