2020.12.22

2020年ベスト本

今年も残り10日となりました。毎年、年末には、今年のベスト3みたいなことをブログに書いています。今年はあんまりネタがないのですが、できる範囲でやってみましょう。

まずは、今年のベストブック。
3冊選んでみました。
「ザリガニの鳴くところ」ディーリア・オーエンズ
「グレートギャッツビーを追え」ジョン・グリシャム
「2020年6月30日にまたここで会おう」瀧本哲史
僕としては、洋物の小説を選ぶのは珍しいのですが、今年は、コロナ禍の中で、いつもとは違う姿勢で本と向き合ったということでしょうね。「ザリガニの鳴くところ」は、おすすめです。

2020.10.01

本の紹介「電解質輸液塾第二版」

改訂版出来! たくさん刷ったので買って下さい。

電解質輸液塾第2版にあたってのご挨拶を転載します。

「電解質輸液塾」の第1版を出版したのが2013年3月。水・電解質の領域は、新しい薬がどんどん出て、ガイドラインが改定されるような領域ではないから、当分、改訂版は出さなくてもよいと思っていました。

2018年に、機会があり、水・電解質の2大教科書の一つである「Fluid, Electrolyte, and Acid-Base Physiology」を翻訳し、「ハルペリン 病態から考える電解質異常」としてメディカル・サイエンスインターナショナル社から出版させていただきました。この本は、難解であることで知られていますが、この翻訳作業を1人で行うことによって、自分の中の、水・電解質の考え方を再構成することができたと思っています。

ハルペリン翻訳後に、「電解質輸液塾」を読み直してみて気づいたのは、ハルペリンの教えを取り入れたとしても、「電解質輸液塾」は、ほとんど変更不要であるということでした。初学者どころか、腎臓専門医にも十分通用するものであり、水・電解質を学ぶには、ベストな本であるという結論に達しました(自画自賛ですいません)。

一方で、修正したり追加しなければいけないことも出てきました。Kの腎排泄の制御には、生理学で大きな進歩があったので、「尿細管でのK排泄制御の生理学(上級編)」を追加しました。初版に掲載していたTTKGは開発者のハルペリン自体が間違っていたので、もう使わないでくれと言っているので、削除しました。また、この7年間、水・電解質を学生達に教えている中で、気がついた、わかりやすい説明とかも取り入れてブラッシュアップしました。

ということで、本全体にわたってブラッシュアップしましたが、この本の本質は変わりません。改訂版と言うにはおこがましいレベルではありますが、ここに、最新の知見も入れた「電解質輸液塾改訂2版」をお届けできることをうれしく思います。

2020.05.01

本の紹介「診断推論 奥義伝授」

診断推論の第一人者野口善令先生の本。「誰も教えてくれなかった診断学-患者の言葉から診断仮説をどう作るか(医学書院)」を診断推論の入門編とすれば、本書は上級編に当たるもの。直感を鍛える方法、推論を進化する方法にまじめに取り組んだ本。

2019.10.14

本の紹介「僕は君たちに武器を配りたい」

瀧本哲史先生は、いつか「明日の教室」の講師にぜひお呼びしたい人の1人でした。しかし残念ながら今年の夏に亡くなられてしまいました。

この本は瀧本先生の書籍の中でも最も売れた本です。文庫化する際にエッセンスを集め、値段をおさえ誰にでも手に取れるようにされたとのこと。

私が好きな一説を紹介します。

社会に出てから本当に意味を持つのは、インターネットにも紙の本にも書いていない、自らが動いて夢中になりながら手に入れた知識だけだ。自分の力でやったことだけが、本物の自分の武器になるのである。資本主義社会を生きていくための武器は、勉強して手に入れられるものではなく、現実の世界での難しい課題を解決したり、ライバルといった「敵」を倒していくことで、初めて手に入るものなのだ。

「人生ではリスクを取らないことこそが、大きなリスクとなるのである」滝本先生のメッセージをすべての大学生に届けたい。

2019.09.14

オーディエンスレスポンスシステムsli.doの使い方

オーディオレスポンスシステムとは、講義者と学習者の双方向コミュニケーションを可能にするコミュニケーションツールです。参加者はユーザー端末を利用し、講義中に参加者から意見を集めたり、アンケートを実施したりし、その結果をリアルタイムに表示することによって、双方向性の講義を実現します。手を上げて答えることに躊躇するような学生も参加しやすく、他の人の意見を知ることができるなど、比較的簡単に、授業を双方向性にすることができます。以前は、クリッカーと呼ばれる物理的な端末が多かったですが、最近では、手持ちのスマホなどを使っておこなうタイプのものも増えてきています。

僕は、最近、sli.doを愛用していますので、ここでは、sli.doの使い方を紹介します。

■sli.doの概要

参加者は、自分のスマホ、タブレット、PCなどから回答します。ブラウザでslido.comにアクセスして、ハッシュタグにイベント名をいれるだけで参加できます。参加者は匿名で参加できるので、参加しやすいという利点もあります。
プレゼンターは、sli.doの管理画面で、事前に問題を作成します。


講義中には、手元のスマホで管理画面を操作し、問題を出したり、回答を表示させたりします。

問題は、選択肢から選ばせるクイズだけでなく、フリーコメントを入力するものなど、多様なものがつくれます。また、講義中に随時、質問を受けることができます。

講義中に講義のアンケートなども取れます。


sli.doの画面(問題と回答)は、PowerPointやkeynoteではなく、ブラウザに表示されます。Slido Switcher(https://www.sli.do/switcher)というアプリを使うと、sli.doの画面とPowerPointやkeynoteが統合されます。手元のiPhoneで、問題をコントロールすると、PCを操作しないでも、問題の画面をオンオフできます。

参加者からの回答はあとでまとめてダウンロードすることができます。

1イベントあたり、3つの設問までは無料で使えますので、まずは、無料でためしてみることをお勧めします。気に入ったら有料版を購入すれば良いと思いますが、教育機関に属していれば、Teacher plan $75/年で、ほとんど無制限に使えるようになります。ただし、複数人が使えるプランになると結構割高になります。

 

■実際にsli.doを使う手順(無料で使う場合を書きます)

事前準備

  • slido.comにアクセスし、SIGN UPでアカウントを作ります。メールが届いたらアカウント作成完了。
    ログインします。
  • 「create your first event」を押して、イベントを作ります。
  • Event名をつけて、Show me aroundを押す。
  • ここからは、問題を作っていきます。Live Pollsタブに移動して、Create Pollを押します。Multiple Choice、Open text、Ratingから選んで問題を作ります。

当日

  • 事前に、Slido Switcher(https://www.sli.do/switcher)を導入しておくことをお薦めします。
  • 参加者はスマホ、タブレット、PCなどのブラウザーからslido.comにアクセスして、ハッシュタグを入力して下さいと伝える。わかりにくければ、QRコードを作って誘導してもいいと思います。
  • アンケートを取るときには、該当する問題をactiveにします。
  • 参加者に自分のスマホ、タブレット、PCなどで回答してもらいます。
  • この際に、結果を参加者が入力するのをライブで見せる方法と、ある程度、回答が集まってからオープンすることを選ぶことができます。
  • 問題をinactivateすれば、自動的にPowerPointないしKeynoteに戻ります。
  • これを繰り返します。
  • 事後には、回答内容をダウンロードすることができます。

2019.08.30

本の紹介「「超」AI整理法」

あいかわらず、仕事術の本を読んでばかりで仕事が進みません。

野口悠紀雄氏と言えば、一世を風靡した押し出しファイリングを提案された「超」整理術の作者。78歳なれど、新しいテクノロジーをどんどん使って、ご自身の仕事術の改善に取り組んでいらっしゃいます。

この本も結構役立つことがたくさん書いてあったので、使えそうな仕事術を取り上げてみます。

まずは、情報の整理の方法として、2つのことを強調されています。一つは、情報量が莫大になっていて、情報を捨てることに労力をかけるのは時間の無駄なので、情報を「捨てること」をやめて「検索する」というふうにパラダイムシフトを起こす必要があるということ。もう一つは、「分類するな、ひたすら並べろ」。つまり、フォルダ形式で分類するのではなく、各情報に複数のタグをつけて、タグを検索することで情報を見つけるということです。

野口さんが提案する「超」メモ帳は、グーグルドキュメントにアイデアメモ、新聞記事の見出しの記録、TODOリストや携行品メモ、雑事メモや日記、リンク集というすべての情報を入れる。そして、それを音声検索を使って検索して、取り出すというものです。あとで、検索しやすいように日付やタグを埋め込むというのがコツとのことです。私の場合は、まったく同じことをEvernoteを使ってやっています。ほぼ遜色のないものが作れると思いますが、Evernoteのようなノートアプリを使うか、グーグルドキュメントを使うかは好みの問題でしょう。

野口さんが指摘するように、写真の検索は非常に難しいです。僕は、フォルダに撮影日とキーワード(地名や被写体)をつけてメインのコンピューター上で管理しています。野口さんは、すべての写真をグーグルフォトにおいて、日付と何が写っているかを「超」メモ帳の方に残し、そこから日付を頼りに写真の検索をしているそうです。僕がこの方法に乗り移ろうとすると、グーグルフォトの15Gという容量がネックになります。写真の解像度も落としたくありませんし。

前著でも、強調しておられましたが、音声入力を強く勧められています。特に、あるときパッと浮かんだアイデアを音声入力でメモに残すことを勧められています。長い文章を書くときに重要なのは、文章を書き始めることであり、そのハードルを越えるのには音声入力が有効であることを強調しています。

グーグルレンズの有効性として、検索、印刷物の情報をテキスト化、URLの読み取り、資料やデータの整理(名刺など)をあげられています。

twitterやnoteで、荒削りな物でもいいから文章を掲載し、それをブラッシュアップして、再構成することで本格的な文章に仕上げていくという仕事術を実践されているそうです。

印刷物からwebに誘導する方法としてQRコードの有効性を強調されています。

僕も、Evernoteや音声入力はかなり使っていましたが、この本を読んだ後、noteを始めて、1年後の書籍化を目指しています。また、グーグルレンズはかなり使うようになりました。

2019.07.06

本の紹介「仮病の見ぬきかた」

友人になぜ、最近ミステリーを読まなくなったのかを説明したときに、人が殺されるのが嫌なのと、トリックに偏りすぎるのが嫌いだと、その理由を説明した。ミステリーではあるけど、人が重層性を持って描かれている、佐藤正午が最近のお気に入りだとも話した。

「仮病の見抜きかた」は、珠玉のミステリー短編集である。医療現場が描かれているけど、人は殺されない。

そして、この短編集が素晴らしいところは、まっとうな医学書であると言うことである。

2019年前半の僕のベストブック。いったい、作者は、どんな人なんだろう。一度、話をしてみたい。

  

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