University of Michigan Medical School ポスドク募集
クロマチン制御(Epigenetics)、特に神経細胞でのヒストン修飾の役割を研究したいポスドクを募集します。近年、多数のクロマチン制御因子遺伝子の変異が自閉症や精神遅滞の原因になっていることが急速に明らかになり、神経科学におけるクロマチン制御に注目が集まっています。例えば、これまで80強知られているX連鎖性精神遅滞症候群の原因遺伝子は約3割がシナプス関連因子、同じく約3割が核内タンパク質をコードしています。
しかしながら、神経科学とくに可塑性の分野では、シナプス因子の機能解析研究が主流であるためか、どのようにヒストン修飾制御因子の変異が神経疾患を起こすのかが、ほとんど理解されていません。クロマチン制御遺伝子変異の帰結に関する理解の欠如は、治療薬の開発に妨げになるため、この問題を研究することには重要な臨床上の意義があります。一方で、クロマチン制御因子を研究する分子生物学者の興味は、ヒストン修飾因子のカタログ化とES細胞などを用いたゲノムワイドの局在解析に集中しており、ヒストン修飾のとくに神経細胞での役割に関する理解が遅れています。
なぜヒストン修飾はあれほどまでに複雑である必要があるのだろうか?ヒストン修飾は単に転写のレベルやDNA修復の有無を制御しているだけなのだろうか?もう少し複雑な情報、たとえば転写の履歴や記憶がコードされている可能性はないだろうか?このような問題意識を持った上で、当研究室では以下の疑問に答えるべく研究を進めています。
1.神経疾患患者で見つかった変異は、ヒストン修飾因子の分子、神経細胞、個体レベルでの機能にどのような影響を与えるのか?
2.神経細胞での短期的、長期的な可塑性の制御において、ヒストン修飾制御はどのような役割をもっているのか?
アプローチは、分子生物学、生化学、神経細胞の形態観察、変異マウスの解析が主です。プロジェクトの性質に応じて、構造生物学、電気生理、行動生物学の専門家と共同研究を行います。
私たちの研究室は、アメリカ中西部の最大規模の公立大学であるミシガン大学の医学部人類遺伝学科に属しています。大学のあるAnnArborはとても安全な大学街で、現代的なレストランやバーも少なからずあります。湖をはじめ、四季おりおりの景色はとてもきれいです。カレッジフットボールの町でもあります。最寄のデトロイト国際空港には車で30分ほどの距離で、Deltaが日本への直行便を運行しています。大学では頻繁に外部研究所からの公演者が訪れ、最新の研究動向に触れる機会が多くあります。学科内外での他の研究室との交流も盛んです。
上記の研究に興味があり、創造的な研究をして、重要な成果を残したいと考えている意欲的な人を探しています。基本的に博士課程で査読論文をいくつか発表している人、フェローシップのサポートがある人を優先します。その後は1年毎に更新するかどうかの判断になります。海外学振の募集がそろそろ始まると思いますが、連絡を取り合って、研究計画を一緒に考えられればと考えています(その他のフェローシップでも同様です)。
研究室:http://www.brainchromatindynamics.com/
学科:http://www.hg.med.umich.edu/
参考文献:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=shigeki+iwase
興味のある方は、研究業績一覧を含めた英語のCVと、推薦者2-3名のリストをメールで送って下さい。その他不明な点などあれば気軽にメールください。
Shigeki Iwase PhD (岩瀬茂樹)
Assistant Professor
University of Michigan
Department of Human Genetics