カナダ・トロント大学の鈴木啓史と申します。私のラボではモデル動物の線虫を用いて神経の情報処理機構を回路レベルと分子レベルで解明する試みを続けています。今後の解析を進めていく上で、ポスドクを1、2名募集いたします。興味のある方は、是非メールにてお気軽にお問い合わせ下さい(hiroshi.suzuki@utoronto.ca、日本語可)
【 研究内容】
究極の目標である人間の脳の動作原理の解明に向け、その礎として、線虫の神経回路がいかに感覚入力を処理して行動出力に変換するか (the computational logic of the C.elegans neuronal circuit)の解明を目指しています。そのために、回路を全く損なわずに神経活動の伝播を光学的にモニターする目的でGFP-based calcium probe, cameleon を用いたin vivo neuroimaging using を開発し、さらにTRP-V1 channelを用いて特定の神経の活動を人為的にコントロールする手法を開発しました。それらの手法を併用してASE salt-sensory neurons の活動とその結果引き 起こされる行動の変化の観察からsalt chemotaxis behaviour の基本的動作原理 を明らかにすることに成功しました(Suzuki, H., Thiele T., et al. 2008 Nature). これらの手法をさらに発展させ、また、特注の蛍光イメージングシステム、行動イメージングシステム(worm tracker)などを用いて、より深く神経回路内部の情報処理機構を分子レベルで解明する試みを続けています。
さらに、上記のアプローチでwild-typeにおいて確立した実験手法をmutant worms に適応することで、種々の疾患遺伝子の神経回路に与える影響も調べています。我々の研究センターはproteomoics からhuman genetics まで幅広い分野をカバーするラボの集合体で、異なるレベルで得られた最新情報をやりとりしながら協力し合うチームとして神経変性疾患の研究に取り組んでいます。
【応募資格】
博士号取得者(見込みも可)。
分子生物学の基本手技の習得は望まれます。線虫・イメージングの経験は歓迎されますが必須ではありません(僕も2000年に留学するまでこれらの経験は皆無でした)。プログラミングの経験(Matlab, java, perl, C++)も非常に歓迎しますが必須ではありません。
【 勤 務 地】
トロント大学神経変性疾患研究センターCRND(http://crnd.med.utoronto.ca/)なお、鈴木はFaculty of Medicine, Department of Physiology との兼任です。
【 待 遇】
年額36,750カナダドル以上で、これまでの経験等を考慮に入れます(CIHR基準;http://www.nserc.ca/professors_e.asp?nav=profnav&lbi=f3)
トロント大学はカナダ最高峰の大学でありながら、アメリカのトップスクールにありがちな剣呑な雰囲気も無く僕としては気に入っています。Peter St. George Hyslopの率いる我々のセンターはアルツハイマー病などの神経変性疾患の研究では世界をリードしています。また、他の線虫のラボはJoe Culotti, Mei Zhen, Peter Roy, Andrew Spence, Brent Derry など、みな徒歩数分以内のところにあり、Joe Culotti, Mei Zhen のところには特にお世話になっています。一方、生活面でもトロントはニューヨークに比肩するほどの人種が多様で、特に中国人 をはじめとするアジア人のしめる割合が高く、また安全面でも日本人にとっても住みやすい都市と思います。その他、ジャズ・クラシック音楽をはじめとする都 市部での文化程度の高さと周辺部の湖や森林での自然の豊かさも魅力です。
僕の研究アプローチに賛同してくれる方や、さらに新しいアイデアを持って研究を発展させる意欲のある方が現れること期待して連絡をお待ちします。また、日本 国内・国外を問わず、適当と思われる心当たりの方がいらっしゃれば、この募集を転送していただければ幸いです。
鈴木啓史
Hiroshi Suzuki, MD&PhD
Assistant Professor
Centre for Research in Neurodegenerative Diseases(CRND)
Tanz Neuroscience Building, Room 321
6 Queen's Park Crescent West
Toronto, Ontario M5S 3H2
Tel: (416)978-4768
Fax: (416)978-1878
e-mail: hiroshi.suzuki@utoronto.ca
www.utoronto.ca/crnd
http://crnd.med.utoronto.ca/index.php?option=com_content&task=view&id=55&Itemid=50
【参考文献】
Suzuki, H., Thiele, T., Faumont, S. Ezcurra, M., Lockery. S., Schafer, W.R., (2008) Functional asymmetry in C. elegans taste neurons and its computational role in chemotaxis. Nature, 454: 114-118
Zhang, M., Chung, S.H., Fang-Yen, C., Craig, C., Kerr, R.A., Suzuki, H., Samuel, A.D., Mazur, E., Schafer, W.R. The egg-laying motor circuit of C. elegans: in vivo analysis of neural activity and function. Neuron submitted.
Ferkey DM, Hyde R, Haspel G, Dionne HM, Hess HA, Suzuki H, Schafer WR, Koelle MR, Hart AC. (2007) C. elegans G protein regulator RGS-3 controls sensitivity to sensory stimuli. Neuron, 53:39-52
Tomioka M, Adachi T, Suzuki H, Kunitomo H, Schafer WR, Iino Y. (2006) The insulin/PI 3-kinase pathway regulates salt chemotaxis learning in Caenorhabditis elegans. Neuron, 51: 613-25
Frøkjær-Jensen C., Kindt, K.S., Kerr, R., Suzuki, H., Martinez, K.M. Schafer W.R.(2006) Effects of voltage-gated calcium channel subunit genes on calcium influx in cultured C.elegans mechanosensory neurons. J. Neurobiol.66:1125-39.
Hilliard MA, Apicella AJ, Kerr R, Suzuki H, Bazzicalupo P, Schafer W.R. (2005) In vivo imaging of C. elegans ASH neurons: cellular response and adaptation to chemical repellents. EMBO J. 24: 63-72.
Suzuki, H., Kerr R, Bianchi L, Frokjaer-Jensen C, Slone D, Xue J, Gerstbrein B, Driscoll M, Schafer WR. (2003) In vivo imaging of C. elegans mechanosensory neurons demonstrates a specific role for the MEC-4 channel in the process of gentle touch sensation. Neuron. 39: 1005-17.
線虫C. elegansにおける蛍光イメージング実験 澤斉、鈴木啓史 バイオテクノロジージャーナル 5 321-326 (2005)
投稿者:鈴木啓史(hiroshi.suzuki@utoronto.ca)